2018 年 60 巻 9 号 p. 1598-1610
消化管の難治性出血,穿孔,瘻孔に対する救済治療は,既存の内視鏡機器及び技術では限界とされてきた.近年,その救済治療の役割を担う内視鏡用の全層縫合器,Over-The-Scope Clip(以下OTSC)システムが登場し,内視鏡治療の最後の砦となる革新的なデバイスとして注目される.
本機器は,簡便な機構で消化管壁に対する強固な縫合,かつ専用鉗子の補助による大きな創面や瘻孔の縫合閉鎖という従来機器にない特性をもつ.それゆえ,救済治療に傑出した臨床的効果をもたらしうる.2018年4月より,一定の施設基準を満たした条件下ではあるものの,内視鏡による穿孔・瘻孔閉鎖の手技点数が新規に追加された.その費用面でのハードルが下がり,活用しやすい環境も整ってきた.そこで本稿では,本機器の適応,特性が十分に理解された上で,実臨床で有意義に生かされるようその使用のコツを解説する.