日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
膵癌早期診断における内視鏡の役割と課題
花田 敬士 南 智之清水 晃典
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キーワード: 膵癌早期診断, EUS, ERCP, SPACE, EUS-FNA
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2019 年 61 巻 1 号 p. 16-24

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抄録

近年,良好な予後が期待出来るStage 0,Ⅰ膵癌の画像および臨床徴候の報告が散見される.多数例の集積報告から,契機となる画像所見はUSの膵管拡張が最も重要で,CTで腫瘍が描出されなくてもMRI(MRCP),EUSで膵全体を俯瞰する必要性が示唆されている.膵癌診療ガイドライン2016では,小型腫瘍性病変が同定された場合はEUS-FNAの施行を検討し,膵管狭窄および口径不同,周囲の膵嚢胞性病変を認めた場合はERCP下連続膵液細胞診(SPACE)の施行を提案している.小型腫瘍性病変に対するEUS-FNAの正診率は高率であるが,経胃的穿刺の場合はtract seedingの可能性を念頭におく.SPACEは特に上皮内癌の診断に有用であるが,検査後の膵炎に注意する.また,危険因子を有する症例に対するEUSの介入は,早期診断に有用である可能性があり,一部の地域医療圏では病診連携を生かした取り組みが成果をあげている.一方で,内視鏡的に採取した十二指腸液,膵液中の遺伝子異常,miRNAの変化に着目した新規マーカーの研究も進捗している.早期診断され切除となった症例では,再発の形式が進行癌と異なる可能性が報告されており,今後CTにEUSを加えた長期的な経過観察法の検討が求められる.

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© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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