日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
大腸弾性線維腫様ポリープの1例
久保 公利 , 木村 伯子, 松田 宗一郎, 間部 克裕, 加藤 元嗣
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2019 年 61 巻 11 号 p. 2478-2482

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要旨

症例は52歳,女性.検診で便潜血陽性を指摘され,精査目的に当科に紹介となった.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に白色光遠景観察で3mm大の白色隆起病変を認め,NBI近景拡大観察を行ったところ,腺開口部は開大し表面平滑で立ち上がりが滑らかなポリープとして観察された.特殊な粘膜下腫瘍を疑い生検を施行した.病理学的にHE染色で粘膜下層に変性した膜様の構造物を認め,Masson trichrome染色で血管周囲に集簇する弾性線維の増生を認めたことから弾性線維腫様ポリープと診断した.大腸弾性線維腫様ポリープは比較的稀で注意すべき疾患として報告する.

Ⅰ 緒  言

非腫瘍性の大腸隆起性病変の1つに弾性線維腫様ポリープがある.病理学的には弾性線維が粘膜下層もしくは粘膜筋板に集積しポリープ状の形態を呈する病変である.その内視鏡像の特徴については十分には解明されていない.今回,大腸弾性線維腫様ポリープの1例を経験したので報告する.

Ⅱ 症  例

症例:52歳,女性.

既往歴:子宮筋腫.

現病歴:検診で便潜血陽性を指摘され,精査目的に当科に紹介となった.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に白色光遠景観察で3mm大の白色隆起病変を認め(Figure 1),NBI(Narrow Band Imaging)近景拡大観察を行ったところ,表面平滑で立ち上がりが滑らかなポリープであり,腺開口部は開大しvessel patternは認識不可,surface patternは周囲の正常粘膜と類似していることから,JNET分類TypeⅠとして強調観察された(Figure 2).形態から特殊な粘膜下腫瘍を疑い,Jumbo鉗子を用いて生検を施行した.病理学的にHE染色で粘膜下層に変性した膜様の構造物を認め(Figure 3),Masson trichrome染色で血管周囲に集簇する弾性線維の増生を認めた(Figure 4).以上の所見から弾性線維腫様ポリープと診断した.病理組織学的に断端陽性の可能性があるが,変性疾患であることから追加治療は行わなかった.

Figure 1 

下部消化管内視鏡検査.

上行結腸に白色光遠景観察で3mm大の白色隆起性病変を認める(矢印).

Figure 2 

下部消化管内視鏡検査.

NBI(Narrow Band Imaging)近景拡大観察を行ったところ,表面平滑で立ち上がりが滑らかなポリープであり,腺開口部は開大しvessel patternは認識不可,surface patternは周囲の正常粘膜と類似していることから,JNET分類TypeⅠとして強調観察された.

Figure 3 

病理組織学的所見.

HE染色で粘膜下層に変性した膜様の構造物を認めた.

Figure 4 

病理組織学的所見.

Masson trichrome染色で血管周囲に集簇する弾性線維の増生を認めた.

Ⅲ 考  察

胃腸管弾性線維腫様ポリープは,弾性線維が消化管の粘膜下層もしくは粘膜筋板に集積しポリープ状の形態を呈する稀な非腫瘍性病変であり,遠城寺らにより初めて報告された 1).

大腸弾性線維腫様ポリープの症例報告は,PubMedで,“colon polyp”,“colon”,“elastosis”,“elastofibroma”,“elastofibromatous polyp”,をキーワードに1985年から2018年までの期間で検索し,医学中央雑誌で,“大腸ポリープ”,“大腸”,“弾性線維”,をキーワードに1985年から2018年までの期間で検索した限りでは24例の報告が認められた 2)~10).自験例を含めた26例の内視鏡所見の特徴と発見契機や診断方法について記載のあったものを表にまとめた(Table 1).性別は男性13例,女性13例,平均年齢は60歳(45-83歳),ポリープの発生部位はS状結腸10例,横行結腸4例,上行結腸3例,下行結腸2例,直腸2例,盲腸1例,結腸とのみ記載5例であった.33例中32例とほとんどが単発の病変であり,肉眼型はIs9例,Ip4例,平坦型1例,記載なし12例であり,腫瘍径は1-20mm(中央値5mm)であった.発見契機の多くはスクリーニングの下部内視鏡検査であった.弾性線維腫様ポリープの診断が検査時に可能であった症例はなく,すべて生検や治療内視鏡後の病理組織学的検査により確定診断されていた.また外科的切除後の検体 7)やアミロイドーシス精査の直腸生検 3)で偶然に発見された症例も認められた.弾性線維腫様ポリープを形成する病態については,いまだ十分には解明されていないが,弾性線維の沈着が血管周囲に多いこと,沈着した弾性線維内に免疫組織学的に平滑筋組織を認めることから,粘膜下組織の血管が障害されることにより弾性線維が過剰に蓄積すると推測されている 5)~8),10).本例でも組織学的に血管周囲に集簇する弾性線維の増生が認められた.

Table 1 

大腸弾性線維腫様ポリープの報告26例のまとめ.

内視鏡所見の特徴を記載した報告は本症例を含めて11例ある 2),4)~6),9)~11).いずれも表面が平滑であるのが特徴であり,色調は白色調もしくは黄色調で,形状は無茎性もしくは有茎性であった.弾性線維が粘膜下層もしくは粘膜筋板に集積しており,粘膜面が正常であることから表面は平滑であったと考える.OdagiriらはS状結腸に認めた4mmの黄色隆起病変に対して超音波内視鏡(EUS)検査を行い,第2層内に低エコーであるがわずかに輝度の高い病変であったと報告しているが,神経内分泌腫瘍を疑いESD(Endoscopic Submucosal Dissection)を施行していた 9).本病変を疑った場合,白色光観察や拡大観察に加えてEUSによる質的診断を行い,不要な治療を避けるため生検を行うという検査戦略が望ましいと考えられる.また,本症例では色素観察を行っておらず反省すべき点であった.

大腸弾性線維腫様ポリープを発見した際の対応については,報告例が少ないことから現時点で定まったストラテジーはない.Hobbsら 6)によると貧血と血便がそれぞれ1例認められており,この場合には治療適応と考えられる.またこれまでに悪性化の報告はないが,大館らは1例に腺腫を合併していたと報告しており 10),腺腫の合併を疑う場合にも治療適応と考えられる.

近年,内視鏡診断において画像強調処理法,拡大内視鏡の普及により,従来の通常内視鏡検査では発見と正確な診断が困難であった病変が発見されている 12),13).また近年,LASEREO(富士フイルム)に搭載された画像強調処理LCI(Linked Color Imaging)が大腸ポリープの視認性を改善するとの報告がある 14),15).われわれはごく最近,LCI観察により白色隆起病変が橙色に強調観察された大腸弾性線維腫様ポリープの1例を報告した 11).画像強調処理法,拡大内視鏡観察は,今後の診断において有用である可能性がある.

本例はNBI近景拡大観察で腺開口部が開大し,立ち上がりが滑らかであることから特殊な粘膜下腫瘍を疑いJumbo鉗子を用いた生検で診断された.表面が平滑で立ち上がりが滑らかな大腸隆起性病変を認めた場合,粘膜下腫瘍とともに弾性線維腫様ポリープも念頭において診断にあたることが重要と考えられた.また弾性線維腫様ポリープの内視鏡像の特徴については十分には解明されておらず,今後の症例の蓄積が望まれる.

Ⅳ 結  語

本例はNBI観察後の生検により大腸弾性線維腫様ポリープと診断した1例であるが,その内視鏡像は非常に興味深く,大腸隆起性病変の診療を行っていく上で教訓的な症例と考えられた.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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