日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
消化管狭窄に対するバルーン内視鏡と細径内視鏡を用いた新しいアプローチ;Balloon endoscopy and ultra-thin endoscopy method (BUT method)
菊池 大輔 , 鈴木 悠悟, 田中 匡実, 野村 浩介, 山下 聡, 松井 啓, 落合 頼業, 早坂 淳之介, 飯塚 敏郎, 布袋屋 修
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2019 年 61 巻 11 号 p. 2510-2517

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要旨

ダブルバルーンやシングルバルーンなどのバルーン内視鏡の技術により従来は観察が不可能であった小腸の精査が可能となり,現在では広く普及している.バルーン内視鏡の技術と細径内視鏡を応用することで狭窄を超えた内視鏡的アプローチ(Balloon endoscopy and ultra-thin endoscopy method:BUT method)ができるようになっている.狭窄を超えることは病態の正確な把握に有用であるのみならず,止血やイレウス管挿入などの治療にも応用ができる.非常にシンプルな方法であるが,覚えておくと役に立つことがある.今回BUT methodの適応と手技的なコツについて概説する.

Ⅰ はじめに

消化管狭窄は悪性腫瘍や炎症・瘢痕など様々な原因で起こりうるが,狭窄部を超えた内視鏡的なアプローチが困難なことがある.上部消化管の狭窄では狭窄症状を有し,内視鏡が狭窄部を超えることができない時にはバルーン拡張やステント挿入の適応となりうる.しかし下部消化管の狭窄,特に小腸や遠位大腸などでは症状が出現しづらく,かつ拡張に伴う穿孔などの偶発症を考慮すると拡張やステントの適応となることは少ない.しかし下部消化管においても狭窄部位を超えてその口側の内視鏡観察を行うことは病態の把握において大きなメリットがある.

近年,ダブルバルーン内視鏡 1),2)やシングルバルーン内視鏡 3),4)などのバルーン内視鏡を用いて小腸へのアプローチも可能となり,多くの施設で行われるようになっている.バルーン内視鏡は小腸の精査のみならず,胆膵内視鏡や高度癒着を伴う消化管精査など他分野においても広く用いられている 5),6).また,低侵襲な検査という観点から現在多くの施設で細径内視鏡による経鼻内視鏡が行われている.近年では画像解像度が向上し飛躍的にその用途は広がりつつある 7),8).

われわれは下部消化管狭窄に対してバルーン内視鏡と細径内視鏡を用いた対策(Balloon endoscopy and ultra-thin endoscopy method:以下BUT method)を行っておりその適応と実際の手技のコツについて解説する.

Ⅱ BUT methodの適応

下部消化管の狭窄のため通常径内視鏡が通過できない症例すべてがBUT methodの適応となるわけではない.直腸やS状結腸の狭窄ではバルーン内視鏡のオーバーチューブを用いずに細径内視鏡のみで検査が可能である.中部回腸の狭窄ではオーバーチューブを用いて直線化した消化管でも細径内視鏡では到達が困難である.また,横行結腸から上行結腸の大腸癌による狭窄でも,口側の内視鏡観察が治療方針に影響をしない場合にはBUT methodは行っていない.つまりわれわれは,BUT methodの適応を,下行結腸から回腸下部の狭窄で,狭窄部の口側の内視鏡的アプローチが治療方針の決定に重要な時としている.

具体的には炎症性腸疾患に伴う下行結腸から回腸下部の狭窄の際は,炎症を起こした部位が単発か多発かの情報は非常に有用である.また,下行結腸から横行結腸左側の癌性狭窄では,狭窄口側に副病変があるか否かで手術術式が異なる可能性がありうる.また,横行結腸や上行結腸の大腸癌イレウスで経肛門イレウス管やステントを挿入する際に,ガイドワイヤのみで狭窄部を超えるとガイドワイヤの先端で消化管の穿孔を起こすリスクがある.狭窄部を細径内視鏡で通過した後にガイドワイヤを留置することで穿孔のリスクを軽減できる 9),10).

Ⅲ BUT methodの手技

1.内視鏡の準備

まず,バルーン内視鏡用のオーバーチューブと細径内視鏡を準備する.オーバーチューブはダブルバルーン内視鏡用のもの(TS-1314B,富士フイルムメディカル社製)も,シングルバルーン内視鏡用のもの(オリンパス社製)もどちらでも利用可能であるが当院ではダブルバルーン内視鏡用のものを使用している.狭窄部位に応じて使用するオーバーチューブを選択する.狭窄が結腸の場合はEC-450 BI-5用の有効長950mm全長1,050mmのオーバーチューブ(TS-131-101,富士フイルムメディカル社製)を用いる.狭窄が回腸に存在する時にはEC-450 T5用の有効長1,350mm全長1,450mmのオーバーチューブ(TS-1314B,富士フイルムメディカル社製)を用いている.

オーバーチューブのサイドに小さな切れ込みを5-10cm毎に作成する.狭窄部位に応じて部位を変更する.例えば横行結腸中部に狭窄がある時は,オーバーチューブ先端から50cmから5-10cm毎に作成する.消化管を直線化した時の肛門から狭窄部までの距離を想定して作成する.切れ込みはオーバーチューブの長軸と同じ方向に作成する.短軸方向に切れ込みを作成すると,屈曲した状態のオーバーチューブの出し入れの際に消化管を傷つける可能性があるので切れ込みは長軸方向に作成している.穴を作成すると挿入中に残液が流出しやすくなるのであくまでも切れ込みのみ作成する.切れ込み作成時にオーバーチューブ内部の送脱気のための管を損傷しないように気をつける.また切れ込みの場所が暗いところでもわかりやすくしておくと細径内視鏡挿入時に便利である.

狭窄部まで挿入した後に内視鏡を抜去するために,フードやスコープ先端バルーンは装着しないで準備する.

2.その他の準備

患者の前処置は慎重に行うべきである.狭窄症状がなく,CTやレントゲン上も消化管の拡張を認めない時には,大腸内視鏡や経肛門小腸鏡に準じて前処置を行う.当院では前日20時より絶食とし,前日20時にピコスルファートナトリウム(ラキソベロン液Ⓡ)1本を適量の水分に溶かして内服させる.当日はモサプリドクエン酸塩水和物(ガスモチン錠Ⓡ)を朝8時に内服とし,その後検査時間に応じて大腸内視鏡と同様の方法で腸管洗浄液(モビプレップⓇもしくはニフレックⓇ)を服用する.狭窄が高度の場合はこのような前処置は危険であるため,症状と狭窄の程度に応じて前処置は適宜方法を変更する必要がある.

BUT methodの際には検査前より維持輸液による点滴を行い,塩酸ペチヂン15mgを投与し検査を開始する.状況に応じて塩酸ペチヂンを追加もしくはジアゼパムを併用としている.酸素飽和度,血圧,脈拍などのバイタルサインをモニターしながら検査を行う.

3.実際の手技

3-1.狭窄部までの挿入

狭窄部までの挿入は通常の小腸鏡と同様である.スコープ先端フードが非装着であるためひだをかき分けることがしづらい.このため適宜オーバーチューブを利用し消化管を短縮しながら挿入することがコツである.オーバーチューブ先端バルーンを固定点として利用しながら,適宜アングルとトルクを調整しつつ挿入するが,その際にダブルバルーンと同様にpushのしすぎはしないように心がける 11),12).また適切に消化管を短縮するためには,消化管内のガスは少なくするべきであり,可能な限り送気量は少なくする.またCO2送気が望ましいと考えられる.BUT methodは通常内視鏡が通過できないような狭窄を有する症例が対象であり,基本は透視下で検査を行う.軸保持短縮での挿入が望ましいが,S状結腸などではループ形成をすることが多いため,脾湾曲部付近で直線化をレントゲンなどでも確認し,深部へ挿入する.

3-2.狭窄部到達後(Figure 1~3)

Figure 1 

BUT methodのシェーマ.狭窄のため通常内視鏡は通過不可能である.狭窄部までスコープ先端バルーンを非装着で挿入する.狭窄部の肛門側までオーバーチューブを挿入し,オーバーチューブ先端バルーンをインフレートした状態で消化管を直線化する(黄色枠線).その後内視鏡を抜去し,オーバーチューブに前もって作成していたスリットから細径内視鏡を挿入する(青枠線).細径内視鏡をより深部へ挿入する時には肛門近傍のスリットから挿入する.

Figure 2 

BUT methodのシェーマ.細径内視鏡であると狭窄は通過可能である.オーバーチューブがあるためS状結腸のループ形成が予防できる.細径内視鏡挿入時はオーバーチューブを牽引しながら可能な限り消化管を直線化することがコツである.

Figure 3 

BUT method施行時の実際の写真.

a:スコープ先端バルーンは非装着で用意する.

b:狭窄部まで挿入する.その際に可能な限り送気量を少なくすることがコツである.

c:狭窄部まで到達したらオーバーチューブを挿入し内視鏡を抜去する.オーバーチューブの端に手袋などをつけて残液の流出を予防する.

d:前もって作成したスリットから細径内視鏡を挿入する.殿部に近い部位での操作となるためスリットの場所をわかるようにマジックなどでマーキングすると便利である.

狭窄部に到達した後はオーバーチューブ先端バルーンをインフレートした状態で消化管を可能な限り直線化する.レントゲンで直線化しているか否かを確認するほうがベターである.その後ゆっくりと内視鏡をオーバーチューブから抜去する.その際に肝湾曲部もしくは脾湾曲部のような屈曲部においてわずかに抵抗を感じることがあるのでオーバーチューブが抜けないように注意をする.その後検査前に作成したスリットから細径内視鏡を挿入する.スリットから細径内視鏡を挿入する際にスリット位置をわかりやすくしておくと便利である.オーバーチューブから内視鏡を抜去すると残液が流出することがある.オーバーチューブの端に手袋などを巻きつけておくと流出を予防することができる.

細径内視鏡を挿入する際,抜去時に抵抗を感じた部位でオーバーチューブが屈曲していることが多い.この際にはバルーンをインフレートし少し手前に牽引しながら細径内視鏡の先端を回旋させながら挿入すると比較的スムースに挿入することが可能である.オーバーチューブの先端が消化管壁に垂直になっていると細径内視鏡がオーバーチューブから脱出しづらい.このような時には無理をせずにオーバーチューブをデフレートし5cm程度抜去し再度細径内視鏡を挿入するべきである.決して無理に細径内視鏡をpushすることはしないように心がけるべきである.

3-3.検査後

検査後は翌日まで絶食とし,翌日に腹部の診察,腹部レントゲン,採血をチェックして食事を再開する.当院では翌日まで入院で経過観察としている.当院では今までに穿孔や出血などの重篤な偶発症は経験していない.

4.症例

(1)小腸出血の症例(Figure 4).間欠的な血便のため経肛門的小腸鏡を施行した.下部回腸に狭窄と伴う瘢痕が認められスコープは通過不可能であった.その後も出血症状が認められたためBUT methodを行った.細径内視鏡にて狭窄部は通過可能であり,狭窄部の口側に出血を伴う潰瘍性病変が認められ,APCにて焼灼止血を行った.

Figure 4 

小腸出血の症例.

a:狭窄部位は下部回腸,バウヒン弁から10cm程度口側である.

b:狭窄のため小腸鏡は通過不可能である.

c:BUT methodを行い,狭窄を超えると凝血塊の付着した潰瘍性病変が認められた.

d:APCにて焼灼止血を行った.

(2)横行結腸の狭窄症例(Figure 5).便潜血陽性のため他院で下部消化管内視鏡を施行され,横行結腸中部から多発する隆起性病変と狭窄を認めスコープは通過しなかった.生検で悪性所見は認められず,口側消化管の精査のためにBUT methodを行った.盲腸から横行結腸にかけて多発する潰瘍瘢痕が認められ,反転での観察では狭窄部口側にも多発する隆起性病変と狭窄が確認された.生検で悪性所見が認められなかったため経過観察をしていたが,10カ月後に穿孔を来たし緊急手術が行われ,同部位からmucinous adenocarcinomaが検出された 13).

Figure 5 

横行結腸の狭窄症例.

a:狭窄部位は横行結腸右側である.

b:狭窄のため通常下部消化管内視鏡は通過不可能である.隆起性病変が多発し,狭窄が認められる.

c:BUT methodを行い,細径内視鏡で盲腸まで挿入可能であった.盲腸から上行結腸にも多発する潰瘍瘢痕が認められた.

d:狭窄部を超えて反転操作で観察すると狭窄部の口側の観察も可能であった.狭窄口側も多発する隆起性病変とそれに伴う狭窄が認められた.生検を行うも癌細胞は採取されなかった.

(3)イレウス管挿入症例(Figure 6).便通異常のため下部消化管内視鏡を施行され,横行結腸中部に狭窄を伴う2型腫瘍を認めた.口側消化管の高度の拡張を認めたため,経肛門的イレウス管挿入を行った.ガイドワイヤは通過したものの,イレウス管が挿入時にたわんでしまい留置困難であった.このためBUT methodを施行した.細径内視鏡で狭窄部を通過し,ガイドワイヤを留置した.イレウス管はオーバーチューブ内を通過して挿入するため,たわむことなく狭窄を通過し留置が可能であった.最後にオーバーチューブを切断し終了した.

Figure 6 

イレウス管挿入の症例.

a:狭窄部位は横行結腸中部である.

b:横行結腸中部に2型腫瘍が認められ下部消化管内視鏡は通過不可能である.

c:下部消化管内視鏡からガイドワイヤを挿入し通過可能であった.その後イレウス管挿入を試みたが,S状結腸と横行結腸が屈曲してしまいイレウス管が挿入困難であった.

d:BUT methodで再度狭窄口側まで細径内視鏡を挿入したうえでガイドワイヤを留置した.その後オーバーチューブを利用しイレウス管を挿入した.肛門側消化管がたわまずにイレウス管挿入可能であった.最後にオーバーチューブを切断し終了した.

Ⅳ 最後に

バルーン内視鏡は,従来観察できなかった小腸へのアプローチを可能とし,そのメリットは非常に大きい.また細径内視鏡もより狭い管腔へのアプローチを可能とすること,低侵襲であることなど大きなメリットを有する.この二つの内視鏡技術を組み合わせたBUT methodは狭窄を有する下部消化管診療における新たなアプローチ法として有用であると考えられる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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