日本消化器内視鏡学会雑誌
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資料
キャリアサポートに関する女性内視鏡医へのアンケート調査結果
原田 直彦 平岡 佐規子中村 真一白鳥 敬子春間 賢河合 隆森田 圭紀横井 千寿南 ひとみ
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2019 年 61 巻 6 号 p. 1264-1271

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要旨

【目的】女性内視鏡医キャリアサポート体制に関する女性内視鏡医の意見を明らかにする.

【方法】本学会女性会員4,281名に対し「女性内視鏡医のキャリアサポートに関するアンケート調査」を行った.

【結果】169名(3.9%)より回答を得た.キャリアサポート研修受講者は14%のみであった.運営されている研修内容は充実しているが,受講機会・受講者数が少ない.キャリアサポート体制について多数の改善点が指摘された.復職支援体制が十分な場合には,多くが市中病院常勤を希望した.

【結論】女性内視鏡医のキャリアサポート体制は未だ不十分である.解決すべき点としては,研修施設の増加・情報整備,各地方での研修施設整備,保育所・託児所の整備等である.

Ⅰ 緒  言

近年,女性医師は増加しており,医師国家試験合格者の30%を占めるに到っているが,日本消化器内視鏡学会の女性会員は少なく13%である(2016年12月16日時点女性会員数:4,703名).女性患者は女性医師による診察を希望することが多く,内視鏡検査,中でも大腸内視鏡検査においては,女性被験者は女性内視鏡医による検査を希望する割合が高く,女性内視鏡医の育成が望まれている 1.しかしながら,女性患者の要望を満たす十分な人数の女性内視鏡医は未だ育成されていない.臨床現場における女性医師の必要性は高まっており,出産,育児などライフイベントを契機に女性医師が離職すると人員が減った臨床現場は多忙となり,残されたスタッフは過剰労働を余儀なくされる.よって,女性内視鏡医の離職を予防すること,復職を促すことが,臨床現場の職場環境を改善するためにも必要と思われる 2)~4.そしてそのためには,専門医取得等へのキャリアサポート体制整備が求められる 5.猶,キャリアサポート体制は,女性内視鏡医復職のみならず,留学後,病気休職後,基礎研究後の男性医師復職にも適用できるため,内視鏡医療を志す人的財産の活用手段として指導施設に整備することが望まれる 5).

キャリアサポート体制を整えても女性内視鏡医の希望内容とのミスマッチにより利用されなければ意味がない.そこで,キャリアサポート体制に対する女性内視鏡医の意見を明らかにする目的で,2017年1月10-25日の間,附置研究会「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した教育研修体制確立に関する研究会」より日本消化器内視鏡学会女性会員に対し「女性内視鏡医のキャリアサポートに関するアンケート調査」を行ったので結果を報告する.

Ⅱ 目  的

女性内視鏡医キャリアサポート体制に関する女性内視鏡医の意見を明らかにする.

Ⅲ 方  法

2017年1月10-25日の間,附置研究会「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した教育研修体制確立に関する研究会」より日本消化器内視鏡学会女性会員に対し「女性内視鏡医のキャリアサポートに関するアンケート調査」(Figure 1)を行った.女性会員に対し本学会からEメールによりアンケートを依頼した.回答は匿名化し集計を行った.

Figure 1 

女性内視鏡医のキャリアサポートに関するアンケート調査.

Ⅳ 結  果

2017年時点での女性会員4,705名中メールアドレス登録のあった4,281名にメールを送信し,169名(3.9%)より回答を得た.

回答のあった女性内視鏡医のプロフィールとして年齢は40歳台47%,30歳台28%,50歳台22%,20歳台2%であった(Figure 2).

Figure 2 

回答者の年齢.

現在の勤務形態(複数回答可)は,市中病院勤務(常勤)32%,主に内視鏡検査(検診を含む)27%,市中病院勤務(非常勤)11%,主に内視鏡治療10%,臨床研究・基礎研究9%,検診施設9%,診療所(開業)7%であった(Figure 3).

Figure 3 

現在の勤務形態.

既婚75%,未婚19%,その他5%,未記入1%であった.

子供は有り67%,なし31%,未記入2%であった.初産時の卒後年数は6年目が最多であった(Figure 4).

Figure 4 

初産時の卒後年数.

認定医・専門医資格の内,消化器内視鏡専門医85.8%,消化器病専門医80.5%,内科認定医75.7%が多かった(Figure 5).消化器内視鏡専門医取得時の卒後年数は8年目が最多であった(Figure 6).

Figure 5 

認定医・専門医資格.

Figure 6 

消化器内視鏡専門医取得時の卒後年数.

キャリアサポート研修に関する質問では,何らかのキャリアサポート研修を受けた者は14%に過ぎなかった.数少ない受講者の内,出身医局・大学・所属病院関連の研修が最多であり(Figure 7),研修期間は1カ月以上であった.内視鏡手技修得にどの練習機器が有用であるかの問には,該当なしが最多であった(Figure 8).指導者は消化器内視鏡専門医・指導医が多く,100例以上の検査が経験できていた.治療内視鏡は75%で経験できており,研修を通じて消化器内視鏡専門医を取得した者は70%であり,取得予定者が13%であった.

Figure 7 

受講した研修の形態.

Figure 8 

内視鏡手技修得に有用であった練習機器.

キャリアサポート研修において解決すべき問題点(複数回答可)では,「研修施設の増加」,「研修施設の情報提供が少ない」,「研修施設の保育所・託児所整備」,「各地方での研修施設整備」が多かった.「その他」の意見の中に「指導医へのインセンティブ」が複数見られた(Figure 9).

Figure 9 

内視鏡のキャリアサポート研修において解決すべき問題点.

出産・育休後の復職にあたり解決すべき問題点(複数回答可)では,「病児保育,院内保育の整備」,「施設幹部,上司,同僚の理解」,「勤務体制整備(非常勤勤務,フレックスタイム)」,「保育所・託児所の整備」,「夫の理解,支援」が上位であった(Figure 10).

Figure 10 

出産・育休後の復職にあたり解決すべき問題点.

復職支援体制が十分であった場合の希望(複数回答可)は市中病院勤務(常勤)が最多であった(Figure 11).

Figure 11 

復職支援体制が十分であった場合に将来働きたい職務形態.

Ⅴ 考  察

日本消化器内視鏡学会女性会員4,281名に対しアンケートを送信し回答が得られたのは169名(3.9%)のみであった.回答率が低いため,本アンケート回答が本学会女性会員全体の意見を反映しているとは言い難い.しかしながら,回答者のプロフィールを見ると40歳台,既婚,子供有り,消化器内視鏡専門医を有しているものが多数であり,これまでにキャリアを積んだ女性内視鏡医の貴重な意見を反映しているものと思われる.附置研究会名でのアンケート調査であったことが低い回答率になったものと推察されるため,今後同様のアンケートを行う際には附置研究会からではなく,本学会名で行うとより回答率が高くなると思われる.

キャリアサポート研修受講者は14%のみであり,研修のほとんどは,出身医局・大学・所属病院関連のものであった.内視鏡手技修得にどの練習機器が有用であるかの問には,該当なしが最多であったが,本アンケートの回答者が40歳代の消化器内視鏡専門医取得者が多く,胃モデル,大腸モデル等の初学者向けの練習機器がレベルにマッチしなかったためと推察された.復職支援を目的とした研修には,ESD,ERCP,EUSなどのより高度な練習機器の導入が必要と思われる.

今回のアンケート回答者が経験したキャリアサポート研修は,100例以上の内視鏡検査を経験できるものがほとんどであり,治療内視鏡を75%で経験できており,消化器内視鏡専門医取得者+取得予定者で83%を占めていた.現在運営されているキャリアサポート体制は充実しており成果も上げており,筆者施設ではキャリアサポート体制研修を受けた12名の内,3名が消化器内視鏡専門医を取得している.しかし,全体としては受講機会,受講者数が少なく不十分と言わざるを得ない.

キャリアサポート研修において解決すべき点として,「研修施設の増加」,「研修施設の情報提供が少ない」,「研修施設の保育所・託児所整備」,「各地方での研修施設整備」があげられ,研修体制の整備・情報提供に加え保育所・託児所の整備が不十分であるため受講機会が制限されていると推察される.上記問題を解決することにより受講機会を増やすことができると思われる.現在,ほとんどの指導医は指導に対する評価や報酬はなく,ボランティアとして指導を行っている.今後は指導に対する評価,報酬を与える「指導医へのインセンティブ」も検討すべき課題と思われる.

女性会員がいくらキャリアを積んでも復職が困難であれば意味をなさない.出産・育休後の復職には,「病児保育,院内保育の整備」,「施設幹部,上司,同僚の理解」,「勤務体制整備(非常勤勤務,フレックスタイム)」,「保育所・託児所の整備」,「夫の理解,支援」等の問題を解決すべきと思われる 2)~5.上記問題については,本学会のみでは解決し得ないことも多く,他学会との連携,自治体からの支援,社会への周知等の多面的な解決策が求められる 6

上記の問題が解決された場合には,多くの女性会員が市中病院勤務(常勤)を希望しているため,キャリアサポート体制,復職支援と切れ目のない女性内視鏡医支援が本邦の内視鏡医療を充実させることに繋がると期待される.

内視鏡分野におけるキャリアサポート対策が遅れると女性医師は対策が進んでいる他分野を選択することとなり,消化器内視鏡分野へのリクルートが困難となる.幾つかの他学会では,女性医師へのキャリアサポート体制が多く企画,運営されている 4),7.例えば,日本循環器学会では男女共同参画委員会セミナーが各地で開かれており,2017年11月には第12回が開催された.また,「女性研究者奨励賞」による優秀論文の顕彰等が行われている 7.日本腎臓学会では男女共同参画委員会による相談コーナーの設置 7,日本皮膚科学会ではキャリア支援委員会による相談会,「メンターからの助言集」発行を行っている.海外に目を向けるとWIGNAP(Women in GI Network in Asia Pacific)がアジア太平洋地区のみならず,他地区と連携し女性内視鏡医のキャリアを支える活動を行っている 8

それに比し,本学会の対策は後手に回っていると言わざるを得ない.急ぎ対策を進める必要があるが,幸い2017年より本学会総務委員会のワーキングループとして「女性内視鏡医キャリアサポート委員会」(委員長:中村真一)が組織されており大いに期待される.

Ⅵ 結  論

女性内視鏡医のキャリアサポート体制を受講する機会は少ない.現行運営されているサポート体制の内容は充実しており有効ではあるが,さらに増加させる努力が必要である.女性内視鏡医の復職を促すためにもキャリアサポート体制を含めた多面的な対策が必要と思われる.

謝 辞

アンケート調査・集計にご協力頂いた本学会女性会員の皆様,飯田紀子氏に深謝致します.

追記:本論文の内容は第3回「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した教育研修体制確立に関する研究会」(2017年)で発表した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:平岡佐規子(田辺三菱(株),栄研化学(株)),春間賢(アストラゼネカ(株),第一三共(株),アステラス製薬(株),大塚製薬(株),武田薬品(株),ゼリア新薬工業(株),富士フイルム(株),マイランEPD合同会社),河合隆(武田薬品(株),大塚製薬(株),アストラゼネカ(株),第一三共(株))

文 献
 
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