悪性胆道狭窄に対する胆道ドレナージでは,現在,endoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)が第一選択として広く行われている.しかし,手技困難時には,percutaneous transhepatic biliary drainage(PTBD)のほか,endoscopic ultrasound-guided biliary drainage(EUS-BD)も次善策として挙げられる.本稿では,ERCP手技困難時におけるEUS-BDの方法および一般的なEUS-BDとPTBDとの選択方法について,当院の経験をもとに概説した.あらゆる胆道閉塞に対応するには,内視鏡的ドレナージ単独,PTBD単独の胆道ドレナージでは,いずれも限界がある.このため,内視鏡医とinterventional radiology専門医の双方がベストドレナージを目指すという明確な目的を持ち,戦略的パートナーシップを組む姿勢が重要である.
Interventional radiology(IVR)が担当する領域は非常に広く,血管系治療のみならず,胆道,消化管,腎尿路のような非血管系領域も担っている.その中で,胆道系に対しては,胆膵内視鏡医とIVR医はともに,“ドレナージ”という共通の目的を有している.ただし,目的は同じであるが,その手法は異なり,胆膵内視鏡医が行う胆道ドレナージ法は,endoscopic retrograde biliary drainage(ERBD)もしくはendoscopic ultrasound-guided biliary drainage(EUS-BD)であり,IVR医が行う胆道ドレナージ法は,percutaneous transhepatic biliary drainage(PTBD)である.胆膵内視鏡医がPTBDも行う施設は問題ないが,胆膵内視鏡医とIVR医が別々に積極的に胆道ドレナージを行っている施設は,その棲み分けが重要になってくる.時として,棲み分けが難しい局面が生じ,いわゆる「縄張り争い(ターフバトル)」が生じることもある.
国立がん研究センター中央病院は,2014年に日本初の癌特化IVRセンターを開設し,多くのIVR医や技師,そして学会認定のIVRナースのエキスパートも配置し,積極的に胆道系IVRを数多く施行している施設である.肝胆膵内科でも2017年から,endoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)のほか,EUS-BDを含むinterventional EUSなどの胆膵の治療内視鏡を本格的に導入し,積極的に施行している.
本稿では,当院において,胆道ドレナージが必要な症例に対して,内視鏡医によるドレナージ(ERCP,EUS-BD)とIVR医によるPTBDをどのように選択しているかを概説する.さらにEUS-BDとPTBDの併用が必要な症例に関しては,戦略的に経皮的アプローチと内視鏡によるコラボレーション治療を行っており,新たな低侵襲治療の可能性についても言及したい.
なお,当科では,切除可能症例やconversion surgeryが狙える症例にはEUS-BDを行っていないため,本稿での対象は切除不能悪性胆道狭窄症例に限定した.
当科における切除不能悪性胆道狭窄に対する初回胆道ドレナージの基本戦略をFigure 1に示す.
当科における切除不能悪性胆道狭窄に対する初回胆道ドレナージの基本戦略.
初回の胆道ドレナージは経乳頭もしくは経吻合部ドレナージを第一選択とすることでIVR医とも合意が得られていたが,何らかの理由によりそれらが不可である場合の次の手段(レスキュー方法)を,EUS-BDとするかPTBDとするかに関しては,合意形成まで時間を要した.しかし,その過程で,IVR医にEUS-BDのメリットとデメリットの理解を深めてもらうことができ,レスキュー方法としてEUS-BDを先行させる戦略をとることで合意が得られた.
ただし,術後腸管における肝門部狭窄症例や,肝門部狭窄に対するマルチステント留置後のre-interventionに関しては,施術結果の不確定要素が大きく,困難であることが判明した時点で交代するという協力体制で臨み,どちらかの手技に固執して長時間をかけることを避け,臨機応変に対応するようにしている 1).
このように,胆道ドレナージが必要な症例に関しては,IVR医との情報共有が不可欠なため,他科コンサルト症例か当科の症例かを問わず,基本的には全例を対象にドレナージ自体の適応の有無,アプローチ方法,予定最終形についてIVR医/技師とのカンファランスを行い,治療方針を確認している(Figure 2).この方法により,内視鏡医とIVR医がお互いの技術から学びあい,新しい発見が生まれることもあり,両者が患者にとってのベストドレナージを目指すという明確な目的を持ち,戦略的パートナーシップを組む姿勢につながっている.またEUS-BDは逸脱,迷入による腹膜炎などの重篤な偶発症も起こり得る手技である.当科では術翌日に単純CTでステントの位置に問題がないかを確認しているが,垣根のない連携を日々行っていたことから,逸脱が未然に防げた症例も経験している.
IVR医/技師とのカンファランス風景.
IVR医/技師に翌日のドレナージ予定症例を説明し,治療方針を確認する.
当科の内視鏡チーム内においてもまた,治療方針に関して1つの方法に拘泥せず,2の手3の手を議論するようにしている.これは,①治療戦略を俯瞰的に考える力がつくこと,②チーム全体として統一された治療戦略が明確になること,③不測の事態に直面した場合でも対応する力が身につくこと,という3つの点から非常に重要であると考えている.
EUS-BDは,ERCPのような経乳頭的アプローチとは異なり,EUSガイド下に経消化管的に胆管にアプローチをする画期的な方法である 2).EUSガイド下治療は,胆道ドレナージのみならず,仮性囊胞・被包化壊死などの膵(周囲)液体貯留ドレナージ,胆囊ドレナージ,膵管ドレナージなど,広範囲にわたるドレナージで行われている.
EUS-BDの特徴は,胆管狭窄の部位,腸管再建の有無,病態により,穿刺対象と穿刺ルートを選択できることにある 3).穿刺対象としては,左葉,後区域の肝内胆管,肝外胆管が挙げられ,穿刺ルートは主に胃体部から左肝内胆管を穿刺するルートと,十二指腸球部から後区域肝内胆管および肝外胆管を穿刺するルートがある.
ここでは当科で施行している手技の基本戦略について述べる.
EUS-guided choledochoduodenostomy(EUS-CDS)(Figure 3)EUS-guided choledochoduodenostomy(EUS-CDS).
a:シェーマ.
b:超音波内視鏡を用いて十二指腸球部より総胆管を穿刺してガイドワイヤを留置.
c:ステントリリース後.胆管壁にnotchが形成されているのがわかる(矢印).
d:内視鏡による観察.
EUS-CDSは,2001年Giovanniniらにより初めて報告された,十二指腸球部と肝外胆管の間にステントを留置する経消化管的瘻孔形成術である 4).遠位胆管閉塞が適応となる 5).切除不能中下部悪性胆道狭窄症例に対しては,経乳頭的ドレナージ(endoscopic biliary drainage:EBD)のみならず,EUS-CDSのprimary drainageとしての安全性,有効性についての報告 6)もなされており,当科としても,両者の選択肢について患者さんに説明し,症例に応じてEBDかEUS-CDSかの選択を行っている.特に,膵管閉塞のない膵癌では膵炎の合併症が危惧されるため,十二指腸狭窄で乳頭が潰れかかっている症例や乳頭部癌などに関しては,開存期間やre-interventionが容易であるEUS-CDSを基本的には第一選択としている.使用するステントは,自己拡張型のフルカバーメタリックステントを第一選択としており,オリンパス社のX-Suit NIRステント10mm×6cmを使用している.このステントはレーザーカットタイプのステントであり,編み込みタイプのステントと比べ拡張力(radial force)が弱いため,胆管壁に適度なnotchができやすく(Figure 3-c矢印),瘻孔形成後,早期の逸脱防止に有用と考えている.また,ステント長に関しては,ある程度十二指腸側に余裕をもってステント留置を行う必要があるため6cmを用いている 7).
EUS-guided hepaticogastrostomy(EUS-HGS)(Figure 4)EUS-guided hepaticogastrostomy(EUS-HGS).
a:シェーマ.
b:超音波内視鏡を用いて胃よりB3にステントを留置.
c:内視鏡像.胃内にステントを確認できる.
d:翌日単純CT撮影.胃と左肝管間にステントを確認できる(矢印).
EUS-HGSは,2003年Burmesterらにより初めて報告された,胃と左肝内胆管の間にステントを留置する経消化管的瘻孔形成術である 8).左肝内胆管が穿刺・ドレナージ対象であり,穿刺ルートが胃であるため,肝門部胆管閉塞や術後再建腸管,十二指腸閉塞症例なども適応候補となり,前述のEUS-CDSに比べて治療適応の広い手技といえる 3).当科でも,術後再建腸管,十二指腸閉塞症例で,狭窄がBismuth type Ⅱまでの肝門部狭窄~中下部胆管狭窄の症例に対しては,EUS-HGSを第一選択としている.使用するステントは,EUS-CDSと同様にオリンパス社のX-Suit NIRであるが,サイズは8mm×8cmを使用している.本ステントの特徴は,EUS-CDSと同様,胆管壁にnotchができることから,逸脱しにくいため,胆管内に長くステントを置く必要がないことであり,これにより,ステントによる区域性胆管炎を減少させることができると考えている.またフルカバーステントであることから,ステント閉塞時にはステントの抜去が可能であり,re-interventionが容易であることもメリットであると考えている.
近年,EUS-HGS専用のプラスチックステント(ITステント,ガデリウス・メディカル社)の有用性も報告されている 9).メタリックステントでは胆管瘻孔部の末梢胆管は死腔となり,区域性胆管炎のリスクが上昇するのみならず,ドレナージ効率も落ちてしまうデメリットがあるが,プラスチックステントではこのようなことがない.当科も,中枢側の胆管穿刺の必要がある場合など,症例に応じてこのプラスチックステントを使用している.
EUS-guided hepaticoduodenostomy(EUS-HDS)(Figure 5)EUS-guided hepaticoduodenostomy(EUS-HDS).
a:シェーマ.
b:左肝管にuncovered metallic stentが留置されていた(片葉ドレナージ).後区域へのドレナージを試みたが不可能であった.
c:EUS像.B6を穿刺している.
d:ERC像.B6を19G FNA針にて穿刺.
e:NIRステント8mm×8cmを留置.
f:十二指腸下行脚にステントを観察できる.
EUS-HDSは,2013年Parkらにより初めて報告された 10),十二指腸と右肝内胆管(通常,B6)の間にステントを留置する経消化管的瘻孔形成術である.これまでの報告はすべて症例報告であり 11)~15),確立した手技ではないが,肝門部狭窄に対して,後区域肝内胆管のみのドレナージが必要な症例や,re-interventionで後区域のドレナージが困難な症例に対してなど,特に後区域へのre-interventionが必要な症例を中心に,治療戦略の1つの手技として組み入れている.ステントはEUS-HGS同様,オリンパス社のNIRステント8mm×8cmを使用している.
EUS-guided rendezvous technique(EUS-RV)EUS-RVは,EUSガイド下で経消化管的に胆管を穿刺・造影した後に,ガイドワイヤを十二指腸乳頭部や再建腸管吻合部を越えて消化管内に誘導し,内視鏡下でこのガイドワイヤを用いて深部挿管を得る方法であり,2004年にMalleryらにより最初に報告された 16).EUS-RVの最終形は,EBDと同様であり,瘻孔形成術ではなく,経乳頭的ドレナージの補助としての役割 3)である.したがって良性疾患に対しても使用可能であり,十二指腸乳頭部あるいは胆管吻合部への到達は可能であるが深部挿管が困難な場合には,EUS-RVを第一選択とする施設も多い 7).
ERCPは経乳頭的胆管膵管内アプローチであり,自然なドレナージである一方,PTBDとEUS-BDは経皮的もしくは経消化管的に瘻孔を形成してドレナージを行う.これらはドレナージを行う手法という意味では同じ手技であるが,PTBDと比べた場合,EUS-BDには以下の3つのメリットがある.
①一期的な完全内瘻が可能
PTBDは基本的には一時的であっても,作る瘻孔を“外瘻”もしくは“内外瘻”とする必要があるため,体外にチューブを出す必要があるのに対し,EUS-BDは,基本的に一期的な“内瘻状態”を作り上げることができる.すなわちEUS-BDではチューブフリーの状態を瘻孔形成の時点から作り上げることが可能である.
②腫瘍を介さないドレナージが可能
PTBDで完全内瘻化を行うためには,ERCPによるEBDと同様に「腫瘍を介したドレナージ」が必要であり,必ず胆汁を乳頭から十二指腸に流すというルートが必要である.腫瘍を介したドレナージの場合は,腫瘍内をステントが通過するため,ingrowthやovergrowthによる抜去困難や,腫瘍出血などのリスクを伴う.また,乳頭をステントで覆う必要がある場合には,膵炎のリスクも発生する.一方,EUS-BDでは,腫瘍や乳頭を介さないドレナージが可能であるため,腫瘍のingrowthや膵炎のリスクが少なく,後述するように抜去も容易であり,開存期間延長も期待される.
③Re-interventionが容易
EUS-BDで瘻孔部に留置するステントは,プラスチックステントもしくは,フルカバーメタリックステントであり,さらに②に記載したように,ステントは腫瘍を介していないため,overgrowthによる閉塞がない.このため,ステント閉塞などのトラブル時においても抜去+交換が可能である.また,アクセスルート(瘻孔形成部)が胃や十二指腸,胃全摘後の食道直下の空腸など,内視鏡でアクセスしやすい部位であるため,re-interventionが容易である.一方,PTBDでのre-interventionには再穿刺による新たな瘻孔形成が必要となる.後々のre-interventionを考慮し,re-interventionが必要となる病態および予後が予想される場合には,EUS-BDを優先させることも多い.
一方で,PTBDはEUS-BDより先に確立した手技であり,PTBD用の様々なデバイスが使用可能であること,手技の確かさ,手技時間の早さの点ではPTBDが優位であると考える.
EUS-BDとPTBDの臨床的成功率,有害事象を比較したメタ解析(3件の無作為化比較試験と3件の後方視的検討)では,臨床的成功率は同等(OR 1.48,95%CI 0.46-4.79)であるが,有害事象はEUS-BDの方が少なかった(OR 0.34,95%CI 0.20-0.59)と報告されているものの 17),EUS-BDは専用デバイスが未完成であり,手技の難易度と偶発症率が高いこともしっかり認識しておく必要がある.ゆえに,患者の病態のみならず,手術を行う医師の技量もあわせて,最適な治療法を選択する必要があるだろう.
当院では,予定した手技が不成功に終わった際に,二期的に施行するのが望ましくないと考えられる場合や,困難が予測される場合は,たとえEBDを予定している患者さんであっても,EUS-BD,PTBDのすべてのドレナージの可能性を説明するようにしている.
先述のとおり,困難症例に関しては,困難であることが判明した時点で交代するという協力体制で臨んでいるため,難易度が高い症例は,IVRセンターで手技を行い,困難時はPTBDへコンバートするか,連携できる環境下で治療を行っている.
二期的に行う時間や体力がある症例に対しては,必ずしも一期的に行う必要はないが,performance status(PS)不良例や病態進行症例には,可及的速やかにベストドレナージを行うために,すべての手技について説明し,後は手技中に臨機応変に対応していくことを患者さんに理解していただくよう努めている.
当院での肝門部悪性狭窄に対するドレナージの方針をFigure 6に示す.当院では,化学療法を目的とする場合は,可能な限り全肝ドレナージを基本としている.一方で,best supportive care(BSC)を目的とした場合には,肝不全を予防し,黄疸によるそう痒感や胆管炎を改善する必要最低限のドレナージを基本とする.このように,ドレナージ手法が異なっていても(PTBDでもEUS-BD/EBDでも),最終治療方針は統一しておくことが重要であると考えてる.このような共通コンセプトのもと,初回胆道ドレナージはEBDを第一選択としている.
当院における切除不能な肝門部悪性胆道狭窄に対するドレナージ方針.
しかし,Bismuth type Ⅳのような多発のいわゆる泣き別れを伴う肝門部狭窄症例については個別に検討する.胆膵内視鏡医の間では,肝門部狭窄に対する胆道ドレナージでは,より侵襲が少ない内視鏡ドレナージが第一選択であると捉えているが,ESGE clinical guideline 2017 18)では,Bismuth type ⅠおよびⅡにはERCPを,Bismuth type ⅢおよびⅣにはPTBDもしくはPTBDとERCPの併用が,弱い推奨ながら提案されている.このように,肝門部ドレナージについては未だに議論の余地が多く,Bismuth type ⅣをEBDで全肝ドレナージするには長時間を要するため,症例毎に検討している.
EBDが困難な症例に対しては,PTBDかEUS-HGSを選択する.Bismuth type ⅠおよびⅡであれば,全肝ドレナージが可能であるEUS-HGSを行う.Bismuth type Ⅲ以上で両葉ドレナージが必要な場合には,PTBDを依頼する.
EUS-HGSは,HGS単独で全肝ドレナージが可能な症例に対して選択するのが基本戦略である.しかしながら,近年ではEUS-HGSからの肝門部狭窄に対するアプローチ(bridging)のような応用手技も報告が増えている 15).特に,有腹水症例の場合は,PTBDによる偶発症のリスクが増加する懸念もあり,EUS-HGSからの肝門部へのbridgingを行う場合もある(Figure 7).EUS-BDの場合,瘻孔形成部分にメタリックステントを留置することにより,有腹水症例であっても腹水内への胆汁漏出を防ぐことが可能となる.
EUS-HGS+肝門部狭窄へのbridging(一期的留置).
胆嚢癌,十二指腸狭窄のため十二指腸ステントが留置されている症例.
その後,肝門部狭窄を来したが有腹水のため,EUS-HGS+肝門部狭窄へのbridgingを行うこととした.
a:B3を穿刺.
b:肝門部にBismuth type Ⅱの狭窄を認める.
c:FNA針からカテーテルに交換しガイドワイヤをB6およびB8に留置.
B8にuncovered metallic stent(8mm×8cm)を留置.
d:引き続きPartial stent in stentの形で,B6にuncovered metallic stent(8mm×8cm)を留置.
e:最後にB3から胃内にNIR stent 8mm×8cmを留置(EUS-HGS).
f:完成形.
Child法再建やRoux-en-Y再建法の場合は,通常の十二指腸鏡では困難であるため,大腸内視鏡やバルーン内視鏡を使用している.当科では,バルーン内視鏡にはシングルバルーン内視鏡(single-balloon endoscopy:SBE)を用いている.2016年に胆膵内視鏡治療用に新しく開発されたオリンパス社のshort type SBE(有効長152cm 鉗子口径3.2mm:SIF-H290S)が使用できるようになった.多くの症例はこのスコープ1本のみでドレナージ可能であるが,泣き別れ症例で複数本のステント留置が必要な場合は,より鉗子口径の大きいCFスコープの方が手技が容易である.このため,まずは同社のCFスコープCF-H260AI(鉗子口径3.7mm)を使用し,到達困難時にはSBEに変更している.Child法による再建でのCF-H260AIによる吻合部到達率は,当科では82%である.経吻合部ドレナージが困難な場合には,PTBDかEUS-HGSへコンバートする.
この場合,通常乳頭と同様に,Bismuth type ⅠおよびⅡであればEUS-HGSで,あるいはRoux-en-Y再建法の場合は再建空腸から胆管への瘻孔形成であるEUS-guided hepaticojejunostomy(HJS)で全肝ドレナージが可能であるためEUS-HGSを行い,Bismuth type Ⅲ以上で両葉ドレナージが必要な場合にはPTBDを依頼している.
悪性肝門部狭窄に対するre-interventionに対する治療戦略Figure 8に当科における,悪性肝門部胆道狭窄に対するre-interventionの治療戦略の概要を図示した.
当科における悪性肝門部狭窄に対するre-interventionの治療戦略.
肝門部へのマルチステント留置後のre-interventionが困難な場合,以前は最初からPTBDとすることが多かったが,近年ではEUS-BDによる治療が可能となった.
当科はドレナージ必要領域を,左葉,後区域,前区域の3つに分けて考えている.この場合,EUS-BDでアプローチが可能な領域は,左葉と後区域である.左葉はEUS-HGSで,後区域はEUS-HDSでドレナージを施行することができ,また一期的にステントを留置することも可能である(Figure 9).
一期的なEUS-HDS & EUS-HGS.
a:経皮的に4本のステントが肝門部にside by sideの形で留置されている.
b:再狭窄時のCT.左葉と後区域胆管が著明に拡張している.
c:B6を19G針で穿刺し造影.
d:B6から十二指腸にNIRステント8mm×8cmを留置.
e:B3から胃内に穿刺.
f:EUS-HDS & EUS-HGSの完成形.
一方,前区域ドレナージはEUS-BDでは困難であることから,前後区域が泣き別れていない症例で,EUS-HDSによる右葉全体のドレナージが可能な症例のみがドレナージの対象となるが,通常はPTBDを依頼することが多い.
Re-intervention後の既存のルートからのドレナージは,開存期間が短いことが指摘されている 19).このため,肝門部マルチステント後のEUS-BDによるre-interventionは,より長期の開存期間が得られる可能性がある.
これまでの議論では,PTBDとEUS-BDの違いと担当科間の棲み分けが議題であったが,前述のとおり,最大の目標は患者さんに対するベストドレナージである.術後腸管の肝門部左右胆管泣き別れや,肝門部ドレナージのre-interventionなどに対しては,EUS-BD単独またはPTBD単独では困難な症例がある(Figure 10).このような場合,PTBDとEUS-BDのコラボレーションが非常に有用な方法となる場合が多い.また,このようなコラボレーション治療は,胆道ドレナージだけでなく,新たな領域にも応用が利くため 20),今後の新たな治療の創出にもつながると思われる.
Roux-en-Y再建を伴う肝門部悪性狭窄による胆管炎.
EUS-BDやダブルバルーン小腸内視鏡検査で困難であり,PTBDとEUS-BDのランデブー法を施行した.
a:シングルバルーン内視鏡による吻合部への到達が困難のため,EUS-HGSを施行.
b:それでも胆管炎を惹起.ダブルバルーン小腸内視鏡検査で吻合部狭窄に到達.前区域,後区域の多発狭窄を認めたが,屈曲が強く,プラスチックステント1本をB8へかろうじて留置したのみ.
c:B6からPTBD施行し,HGSルートを介して胃内にガイドワイヤを誘導するランデブー法を施行.
d:内視鏡医とIVR医のコラボレーション治療風景.
e:EUSルートから肝門部狭窄へのbridgingを施行.
f:PTBD&EUS-HGSの完成形.
胆道系ステント治療において,経皮的ドレナージと内視鏡的ドレナージには,特にEUS-BDで,大きな相違点がある.これらの特徴をよく理解し,胆膵内視鏡医とIVR医はターフバトルを行うのではなく,戦略的パートナーとして胆道ドレナージ治療にあたることが重要である.
本解説の執筆にあたりご高閲いただきました国立がん研究センター中央病院放射線診断科 荒井保明先生,曽根美雪先生,菅原俊祐先生,および肝胆膵内科 奥坂拓志先生に深謝します.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし