日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
最新文献紹介
急性下部消化管出血に対する緊急下部内視鏡検査と待機的下部内視鏡検査の有効性と安全性
岡 志郎
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2020 年 62 巻 2 号 p. 298

詳細
抄録

【背景】急性下部消化管出血に対して,受診後24時間以内に施行する緊急下部内視鏡検査の有効性と安全性は確立されていない.

【目的】急性下部消化管出血患者において,受診後24時間以内に施行する緊急下部内視鏡検査(緊急群)による出血源同定率と受診後24時間後96時間以内に行う待機的内視鏡検査(待機群)による出血源同定率を比較検討した.

【方法】緊急下部内視鏡検査の優越性を検証する本邦15施設オープンラベルランダム化比較試験を行った.主要評価項目は出血源同定とし,副次評価項目は30日以内再出血,内視鏡治療成功の有無,追加内視鏡検査の有無,Interventional Radiologyの必要性,外科手術の必要性,輸血率,入院期間,30日以内血栓塞栓症の発生,30日以内死亡率,腸管洗浄に関連した有害事象,内視鏡に関連した有害事象を検討した.

【結果】2016年7月から2018年5月までに170例が登録され,緊急群81例,待機群81例に割り付けられた.出血源同定率は両群で有意差がなかった(緊急群17/79(21.5%)vs.待機群17/80(21.3%),差分0.3,95%信頼期間-12.5~13.0:p=0.967).30日以内再出血率(緊急群15.3%vs.待機群6.7%),内視鏡治療成功率(緊急群93.3%vs. 待機群100%),輸血率(緊急群38.0%vs.待機群32.5%),平均入院日数(緊急群7.1日vs. 7.6日),30日以内血栓塞栓症(緊急群0%vs.待機群1.3%),30日以内死亡率(緊急群0%vs.待機群0%)に両群間に差を認めなかった.腸管洗浄に関連した有害事象の発生(緊急群45.6%vs.待機群35.1%),下部消化管内視鏡検査に関連した有害事象の発生率(緊急群1.3%vs.待機群0%)であった.

【結語】急性下部消化管出血において24時間以内の緊急下部内視鏡検査は24時間後96時間以内に行う待機的内視鏡検査と比較して出血源同定率および30日以内再出血率を改善しなかった.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top