日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
健康寿命延伸を目的とした医療の取り組みと内視鏡診療の展望
水野 英彰 竹内 弘久阿部 展次
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2020 年 62 巻 5 号 p. 538-549

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抄録

わが国においては高齢化が進行している.その一方で,平均寿命は年々伸びているが健康寿命は変化していないことが問題点としてクローズアップされている.この対策として,フレイル・サルコペニア・ロコモティブシンドロームといった健康寿命延伸を目的とした部門横断的な医療全体の取り組みが行われている.アウトカム向上因子は,いずれも共通し,薬物療法・栄養介入・運動介入の3本柱が連携することが重要とされている.特に栄養介入はアウトカム向上の中核的因子である.栄養の安定供給には,消化管における消化・吸収が適切に機能し,摂食意欲が維持されていることが必要である.しかし,消化管の老化が原因とした器質性疾患や機能性疾患は年々増加しており,その結果,腸内細菌叢の変化・低栄養・フレイルにつながる点が危惧されている.つまり,消化管の老化そのものが健康寿命を損なう可能性があり,健康寿命延伸の根幹は,消化管疾患改善や消化管の老化予防にあると考えられる.今後,内視鏡診療を含めた消化器領域で健康寿命延伸を目的としたエビデンスのさらなる構築とアウトカム向上に向けた対策の発展が望まれる.

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© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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