日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
迷入した膵管ステントの回収にプレローデッド胆管ステントのプッシャーカテーテル及び細径生検鉗子が有効であった2症例
広島 康久 福地 聡士木下 慶亮林 友和梶本 展明井上 邦光村上 和成
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2020 年 62 巻 9 号 p. 1607-1613

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要旨

症例1は膵・胆管合流異常症の精査目的にERCPを施行した61歳女性,症例2は左肝内胆管拡張の精査目的にERCPを施行した77歳男性.いずれの症例もERCP後膵炎の予防目的に膵管ステントの留置を行ったが,症例1は留置する際に迷入,症例2は膵管ステント留置後の経過観察中に迷入が判明した.いずれの症例もプレローデッド胆管ステントのプッシャーカテーテルを挿入し,細径生検鉗子を誘導することで迷入膵管ステントの回収に成功した.迷入膵管ステントを回収する際に主膵管内でのデバイスの操作が困難であるため,難渋する症例も多い.今回,プレローデッド胆管ステントのプッシャーカテーテルを利用して細径生検鉗子での迷入膵管ステントの回収に成功した2症例を経験したため報告する.

Ⅰ 緒  言

内視鏡的膵管ステント留置術は慢性膵炎の疼痛緩和やERCP後膵炎の予防などを目的に施行されている 1),2.一方で膵管ステント留置に伴う偶発症として,膵管ステントの迷入も報告されている 3),4.今回,ステント留置時に迷入した膵管ステントの回収にプレローデッド胆管ステントのプッシャーカテーテル及び細径生検鉗子を用いて内視鏡的に回収することができた2例を経験したので報告する.

Ⅱ 症  例

症例1:61歳,女性.

主訴:なし.

生活歴:飲酒なし,喫煙なし.

既往歴:髄膜腫術後,右卵巣嚢腫.

現病歴:膵・胆管合流異常症を疑われたため,前医でERCPを施行された.ERCP後膵炎の予防目的に片側pigtail型膵管ステント(5Fr,4cm,AdvanixTM Pancreatic Stent:ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社)を留置しようとした際に,腸管蠕動に伴って引き込まれる様に膵管ステントが迷入した.前医で膵管ステントの回収を試みるも,難渋したため当科紹介となった.

入院後経過:ステントは主膵管の屈曲に沿うように迷入していた(Figure 1).ステント内にガイドワイヤー(0.035inch:Radifocus Guidewire M:テルモ株式会社)を留置し直線化に成功し,膵管ステントは尾側へ移動した.その後,スネア鉗子やステントリトリーバー(Soehendra:クックジャパン株式会社)での回収を試みたができなかった.主膵管の拡張を認めず,デバイスの操作が困難であることが原因のひとつとして考えられた.ERCP後膵炎の危険性もあったため内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)チューブ(Nasal Pancreatic Drainage Set:クックジャパン株式会社)を膵管ステントの遠位側に一旦留置して終了した.術後の経過で腹部症状は認められなかったが,入院第2日の腹部CTで膵周囲の脂肪織濃度上昇を認め,術前には基準値内(施設基準:39-115IU/L)であった血清アミラーゼ値が610IU/Lと上昇していた.入院第10日にERCP後膵炎が軽快したことを確認して,再度,迷入膵管ステントの回収を試みた.前回のERCPの経過より抜去に難渋することが予想されたため,適応外の処置具を用いる可能性とそれぞれの偶発症について,本人・家人へ術前に説明し同意を得た.初めにENPDチューブ内にガイドワイヤー(0.025inch:VisiGlide:オリンパス株式会社)を挿入し,十二指腸スコープ(TJF-290V:オリンパス株式会社)をファーター乳頭まで誘導した.ガイドワイヤーのみ主膵管内に挿入し,ENPDチューブを抜去した.次に膵管ステントの手前でデリバリーシステムの挿入を行うため,バルーンカテーテル(4mm:Hurricane:ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社)を用いて膵管拡張を行った(Figure 2-a).プレローデッド胆管ステント(8.5Fr,5cm:Through&Pass:ガデリウス・メディカル株式会社)から胆管ステントを外して,インナー及びプッシャーカテーテルから成るデリバリーシステムのみをガイドワイヤーに沿わせて挿入した.プッシャーカテーテルの先端がステントの近位側まで挿入されたことを確認してインナーカテーテルとガイドワイヤーを抜去し(Figure 2-b),プッシャーカテーテル内に細径生検鉗子(Radial JawTM4P:ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社)を誘導してステントを把持した(Figure 2-c).プッシャーカテーテルと共にステントを慎重に抜去し,迷入膵管ステントの回収を行った(Figure 2-d).抜去後にENPDチューブ(Nasal Pancreatic Drainage Set:クックジャパン株式会社)を留置した.術後,血清アミラーゼ値が898IU/Lと上昇したが,腹部症状なく経過しENPDチューブからの排液も良好であった.入院第12日にENPDチューブを抜去し,入院第13日より食事を開始した.食事を開始後も経過問題なく,入院第17日に当科退院となった.

Figure 1 

初回のERCP所見.

迷入した片側pigtail型膵管ステント(白矢印がステント近位端,黒矢印がステント遠位端)は屈曲に沿うように迷入を認めた.

Figure 2 

a:迷入膵管ステントは初回のERCPの膵管内操作の影響で膵尾側に位置していた.ガイドワイヤーのみ主膵管内に挿入し,ENPDチューブを抜去した.迷入膵管ステントの近位側でバルーンカテーテルでの膵管拡張を行った.

b:インナー及びプッシャーカテーテルから成るデリバリーシステムのみをガイドワイヤーに沿わせて挿入し,プッシャーカテーテルの先端が迷入膵管ステントの手前まで挿入されたことを確認してインナーカテーテルとガイドワイヤーを抜去した.

c:プッシャーカテーテル内に細径生検鉗子を誘導して,迷入膵管ステントを把持し,ステントの回収に成功した.

d:迷入膵管ステントをプッシャーカテーテル(黒矢印)と細径生検鉗子(白矢印)と共に抜去した後の画像.

症例2:77歳,男性.

主訴:なし.

生活歴:飲酒なし,喫煙30本/日×30年.

既往歴:気管支喘息治療中,くも膜下出血術後,右腎細胞癌術後.

現病歴:左肝内胆管拡張の精査目的に当科に紹介となった.左肝内胆管へ内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)チューブ(Nasal Biliary Drainage Set:クックジャパン株式会社)を留置する目的でERCPを施行し,胆管深部挿管時に膵管ガイドワイヤー法を用いた.胆管深部挿管に引き続き,ERCP後膵炎の予防目的で膵管ステント(5Fr,7cm,Geenen Pancreatic Stent:クックジャパン株式会社)を留置した.ERCP後膵炎を含めた短期的な偶発症は認められず,連続細胞診を提出後にENBDチューブをベッドサイドで抜去し一旦退院となった.ERCP第13日に細胞診の結果説明及び膵管ステントを抜去する目的で当科を受診した.上部消化管内視鏡検査を施行し,膵管ステントが確認できなかった.レントゲン下に確認し,膵管ステントの迷入を認めたため回収目的に同日入院となった.なお,本症例も症例1と同様に主膵管の拡張が認められず,抜去に難渋することが予想されたため,適応外の処置具を用いる可能性とそれぞれの偶発症について,本人・家人へ術前に説明し同意を得た.

入院後経過:主膵管にガイドワイヤー(0.025inch:VisiGlide:オリンパス株式会社)の挿入を行ったが,ステント内へのガイドワイヤーの挿入は困難であった.迷入膵管ステントの近位側が主膵管の屈曲部に位置していたため(Figure 3-a),バルーンカテーテル(4mm:Hurricane:ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社)をステント脇に位置させて加圧し,圧着させた状態でステントの位置を遠位側へ移動させた(Figure 3-b).症例1と同様にプレローデッド胆管ステント(8.5Fr,5cm:Through&Pass:ガデリウス・メディカル株式会社)のデリバリーシステムのみをガイドワイヤーに沿わせて挿入し,インナーカテーテルを抜去した(Figure 3-c).プッシャーカテーテル内に細径生検鉗子(Radial JawTM4P:ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社)を誘導して,迷入膵管ステントの回収を行った(Figure 3-d).引き続きENPDチューブ(Nasal Pancreatic Drainage Set:クックジャパン株式会社)を留置して終了した.術後,血清アミラーゼ値が835IU/Lと上昇したが,腹部症状なく経過しENPDチューブからの排液も良好であった.入院第3日にENPDチューブを抜去し,入院第4日より食事を開始した.食事を開始後も経過問題なく,入院第5日に退院となった.

Figure 3 

a:迷入膵管ステントは主膵管の屈曲部に位置していた(白矢印がステント近位端,黒矢印がステント遠位端).

b:バルーンカテーテルを迷入膵管ステント脇に位置させて加圧し,圧着させた状態で迷入膵管ステントの位置を遠位側へ移動させた.

c:プレローデッド胆管ステントのデリバリーシステムのみをガイドワイヤーに沿わせて挿入し,インナーカテーテルを抜去した.

d:プッシャーカテーテル内に細径生検鉗子を誘導して,迷入膵管ステントの回収を行った.

Ⅲ 考  察

膵管ステントは慢性膵炎や膵液体貯留に対する膵ドレナージの他に,ERCP後膵炎に対する予防的膵管ドレナージにも使用されている.膵管ステント留置術の有用性が報告されている一方で,閉塞性膵炎や膵膿瘍,膵管ステントの迷入や逸脱といった偶発症も報告されている 5.ステント迷入は頻度が少ないながらも報告されており,留置後の経過で自然迷入している症例やステント挿入時の迷入症例も認められているため,ステント留置の際には注意が必要である.迷入ステントの回収には各種鉗子やバルーンカテーテル,バスケットカテーテル,スネア鉗子,ステントリトリーバーなどが使用されている 6)~13.近年では膵管鏡下でのステント回収も報告されている 12.当初,回収にはバルーンカテーテルやスネア鉗子を使用して試みたが,症例1及び症例2いずれも主膵管の拡張を認めず,デバイスの操作が困難であることが,迷入膵管ステントの回収に難渋した要因として考えられた.そこで,主膵管内でのデバイスの操作が困難な状況で回収デバイスを迷入膵管ステントの近位側まで誘導できる方法として,プレローデッド胆管ステント(8.5Fr,5cm:Through&Pass:ガデリウス・メディカル株式会社)のプッシャーカテーテルを留置することを検討した.使用したプレローデッド胆管ステントはインナーカテーテル及びプッシャーカテーテルの先端にそれぞれ不透過マーカーがあり,迷入膵管ステントの近位側への留置を正確に行うことが可能である.プッシャーカテーテルの留置後は細径生検鉗子(Radial JawTM4P:ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社)を比較的スムーズに迷入膵管ステントの近位側まで誘導することができた.ステント回収時は把持後にプッシャーカテーテルも含めて抜去を行った.2症例を通じて,主膵管内での回収デバイスの操作が困難な症例ではプッシャーカテーテル及び細径生検鉗子での回収は有効であると考えられた.本法はデリバリーシステムを挿入する前にバルーンカテーテル(4mm:Hurricane:ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社)を用いて,迷入した膵管ステントの位置調整及び膵管拡張を行っている.拡張を有さない膵管内でのバルーンカテーテルの操作は膵炎のリスクがあるため,慎重な操作が必要である.今回,最大径が4mmのバルーンカテーテルを使用しているが,膵管造影での膵管径を考慮し,低圧でゆっくりと拡張していき,拡張時の患者の疼痛やバイタルの変動がないことを確認しながら慎重に拡張を行った.また,膵管迷入ステント抜去の際は症例に応じて様々な処置具を用いることが多く,その大部分は適応外使用であり,合併症の危険性有する手技である.報告の2症例は,その旨を本人・家人に説明して処置を行った.今後,使用するデバイスや処置の内容が定形化してくると,患者にとって利点があるものと考える.本法を含めた膵管迷入ステントの代表的な回収方法の特徴を表に示す(Table 1).

Table 1 

各種回収方法の特徴.

膵管ステントの迷入時の回収方法は重要であるが,膵管ステントの迷入しないように予防することも必要である.ステント留置の際は慎重な内視鏡操作に加えて,主膵管の形状を評価し,ステントの形状や長さ,ステント遠位側の留置部位の選択をすることが重要であると考えられる.また,迷入した際に回収に難渋した場合は,迷入膵管ステントの回収に執着せずにENPDチューブや追加ステントの留置を行って,一時的に膵液の流出路を確保することも重要である.

Ⅳ 結  語

今回われわれはプレローデッド胆管ステントのデリバリーシステム及び細径生検鉗子を用いて膵管内に迷入した膵管ステントの回収に成功した2症例を経験した.拡張を有さない主膵管内でのデバイスの操作が困難な場合に有効な方法であると考えられた.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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