日本消化器内視鏡学会雑誌
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SARS-CoV-2消化管症状95例の検討
蘆田 玲子
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2020 年 62 巻 9 号 p. 1686

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抄録

【目的】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染患者の消化管症状を95例で検討した単一施設後方視的研究である.

【方法】新型コロナウイルスの診断は咽頭スワブからRNAを抽出し,リアルタイムRT-PCR法を用いて行われた.また,便検体や内視鏡検査によって得られた食道,胃,十二指腸,直腸粘膜の生検組織からもRNAを抽出した後,RT-PCR法により新型コロナウイルスの有無を検出した.

【結果】95例中,58例が消化管症状を呈した.11例は入院当初から症状があり,47例は入院後に症状が出現した.主な消化管症状は下痢が最も多く(24.2%),次いで食欲不振(17.9%)および悪心(17.9%)が多く,他にも嘔吐(4.2%),胃食道逆流症(2.1%),心窩部不快感(2.1%),上部消化管出血(2.1%)が出現した.また,入院中に下痢症状が出現した患者は,抗菌薬使用の影響が考えられた.入院患者65例の便検体を検査し,消化管症状があった42例中22例(52.4%)で便検体からSARS-CoV-2ウイルスが検出され,消化管症状がない患者でも23例中9例(39.1%)からウイルスが検出された.消化管症状のある6例に内視鏡検査を実施したところ,重症患者1例で,食道にびらんと円形の小潰瘍(直径4-6mm)が散在しており,ごく少量の出血を伴っていた.重症患者2例においては生検した食道,胃,十二指腸,直腸すべての検体からSARS-CoV-2ウイルスが検出された.また,非重症患者4例中,1例で十二指腸検体からウイルスが検出された.

【結論】消化管はSARS-CoV-2の伝染経路であり標的臓器ともいえる.

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© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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