胃十二指腸潰瘍は古くから出血や疼痛などの症状とともに難治性病変の恐ろしさが知られてきた.しかし潰瘍治療の歴史は,H2受容体拮抗薬の開発と潰瘍の主原因であったヘリコバクター・ピロリ菌の発見によって大きく変化し,従来難治性で外科的手術の適応とされたものも内科的治療で治癒せしめることが可能となった.また潰瘍の診断と治療のいずれにおいても内視鏡の存在を欠かすことはできず,現在特に潰瘍出血の治療の中心は多彩な内視鏡的止血術にあるといえる.完全に克服されたと思われた胃十二指腸潰瘍であるが,本邦の超高齢社会において,併存疾患の存在や抗血栓薬ならびに非ステロイド性抗炎症薬内服患者の増加によって,患者背景が少しずつ変化していることに注意しなければならない.出血症例では今日においても内視鏡止血困難で血管内治療(IVR:Interventional Radiology)や手術への移行症例は存在し,ハイリスクな高齢症例では慎重な対応が求められる.本稿では主にこの四半世紀における胃十二指腸潰瘍治療の歴史を振り返るとともに,患者背景の変化と注意点についても概説する.