日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
胆膵疾患診療におけるConfocal laser endomicroscopy
中井 陽介 小池 和彦
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2021 年 63 巻 10 号 p. 2183-2191

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要旨

共焦点レーザー内視鏡(Confocal laser endomicroscopy;CLE)は,消化管領域では既に有用性が確立されている拡大内視鏡の一つであるが,確定診断が困難な胆管狭窄や膵嚢胞性腫瘍に対しても有用性が報告されてきた.胆道・膵臓疾患においては,内視鏡的逆行性膵胆管造影(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)ガイド下,超音波内視鏡(Endoscopic ultrasonography;EUS)ガイド下に,細径プローブをカテーテルあるいは穿刺針内を通して病変にアクセスすることで画像診断を行う.胆管狭窄の良悪性の鑑別,膵嚢胞性腫瘍の膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal mucinous papillary neoplasm;IPMN)や膵漿液性嚢胞腫瘍(Serous cystic neoplasm;SCN)などの特徴的な画像所見がこれまでに報告されており,臨床研究においても高い診断能が示されてきた.また最近になり膵嚢胞性腫瘍異型度の診断も可能であるという報告も出てきており,治療方針に直結する診断が可能となる可能性がある.また最近では胆道狭窄に対しては経口胆道鏡(Peroral cholangioscopy;POCS),膵嚢胞性腫瘍に対しては超音波内視鏡下経穿刺針的鉗子生検(EUS-guided through-the-needle biopsy;EUS-TTNB)などの有用性も報告されており,今後はこのような他のモダリティとCLEの比較あるいは組み合わせなどの検討も待たれる.コスト・保険適応などの問題はあるが,今後胆膵疾患における大規模臨床試験により本邦におけるCLEの位置づけが確立されることを期待したい.

Ⅰ はじめに

消化器領域における内視鏡診断は,存在診断から鑑別診断,さらには深達度診断へと発展を遂げてきた.消化管領域では,超拡大内視鏡であるEndocytoscopyが開発され,細胞異型の内視鏡観察まで可能となってきており,Gold standardである病理診断に迫ろうとしている.共焦点レーザー内視鏡(Confocal laser endomicroscopy;CLE)はさらに高い拡大倍率での観察を可能にするデバイスであるが,さらなる特徴としてプローブ・タイプであることから狭い管腔での内視鏡診断が求められる胆膵領域においても内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)や超音波内視鏡検査(EUS)ガイド下に施行可能な点が挙げられる 1.海外からは従来の診断技術での診断困難な膵嚢胞性腫瘍・原因不明の胆管狭窄に対するCLEの有用性が報告されている一方で,消化管疾患の診断と異なり,そもそもGold standardである病理診断を得ることが切除例以外ではしばしば困難なため,胆膵疾患のCLEの診断能の正確な評価自体も難しい点が大きな課題である.また本邦ではコスト,造影剤の適応の問題などもあり十分に広まっていないのも現状である.本稿では,胆膵疾患,特に膵腫瘍・indeterminate biliary strictureに対する画像診断法としてのCLEの現在のエビデンス,今後の課題と将来展望について概説する.

Ⅱ Confocal Laser Endomicroscopy

CLEにはスコープ・タイプとプローブ・タイプのものが存在したが,現在では専用のシステムに接続して用いるプローブ・タイプの,Mauna Kea Technologies社のCellvizioシステム(Figure 1)が使用されている.プローブは,対象臓器により複数のものが市販されており,それぞれプローブ径,解像度,共焦点深度が若干異なる(Table 1).胆膵領域においては,EUSガイド下に19-gauge fine needle aspiration(FNA)針内を通して挿入するAQ-FlexTM19とERCPで用いる造影カテーテル内を通して挿入するCholangioFlexTMの2種類が選択される.これに対して消化管領域で用いられるプローブは内視鏡の鉗子チャネルを通して直接挿入可能であることから挿入可能なプローブ径が太く,解像度が1μmであるのに対して,AQ-FlexTM19,CholangioFlexTMではプローブ径が細いことから解像度も3.5μmとやや劣っている.

Figure 1 

Cellvizioシステム(Mauna Kea Technologies社,Image courtesy:Mauna Kea Technologies).

Table 1 

Confocal Laser endomicroscopyの各種プローブ.

CLE観察のためには上述のプローブと,プローブを接続するシステムが必要となり,またプローブの再利用は可能であるが,胆膵領域で使用するAQ-FlexTM19,CholangioFlexTMでは1本のプローブの使用回数は10回に制限されている.消化器領域のCLE観察時には,10% Fluoresceinの5cc静脈内投与が一般的である.Fluoresceinは眼科領域では本邦でも保険収載されている蛍光造影剤であり,比較的安全とされているが,CLEへの使用は保険収載されていない点に留意が必要である.本邦では,静脈内投与せずに,観察部位に直接散布する適下法の報告 2もされているが,得られるCLEの画像は静脈内投与で見られる血管内からの造影剤のleakなどはないため若干異なることには注意が必要である.

CLEの実際の手技は,対象となる病変にEUSあるいはERCPで膵腫瘍・膵嚢胞あるいは胆管狭窄病変にアクセスし,CLEプローブによる観察準備をした後にFluoresceinを静脈内投与し,観察を行う.膵腫瘍・膵嚢胞ではEUSガイド下にAQ-FlexTM19をプレロードした19-gauge FNA針で穿刺した後に,プローブをFNA針からわずかに出した状態で腫瘍内あるいは嚢胞壁に接触させて観察する.ERCPでの胆管あるいは膵管病変では,まず胆管・膵管造影で病変を確認して,病変にプローブをプレロードした造影カテーテルを誘導して,同様に狭窄部に接触させて観察を行う.最近ではERCPによる胆管造影に加えて,経口胆道鏡Peroral cholangioscopy(POCS)を用いて直接内視鏡で観察後にプローブをPOCS下に病変をCLEで観察する報告も増えている.

CLEはVirtual biopsyと言われるように病理診断に近い拡大像が内視鏡検査中に得られるという大きな利点がある一方で,通常の病理観察とは異なり病変に対して垂直方向からプローブをあてて観察するため,得られる画像は病理検体とは異なる点は理解しておく必要がある.そのためCLEの診断基準について十分理解した上で,画像診断を行う必要がある.また病理診断に対するCLEの長所としては,内視鏡的生検では“点”での診断に対して,CLEではより広い範囲での観察を行うことで“領域”の診断が可能な点が挙げられる.

Ⅲ 膵嚢胞性腫瘍に対するConfocal Laser Endomicroscopy

膵嚢胞性腫瘍に対するCLEは,19-gauge FNA針を用いて腫瘍を穿刺した後に,穿刺針を通してプローブを挿入,観察するため,通常のプローブ・タイプでのprobe-based CLE(pCLE)と対比させて,needle-based CLE(nCLE)とも呼ばれる.膵嚢胞性腫瘍は,良性から悪性まで多岐にわたる疾患を含有しており,これまでは超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)による細胞診および嚢胞液のがん胎児性抗原(CEA)測定による評価が一般的であった 3.しかし細胞診の特異度は高いものの感度が低いこと,CEAは粘液性と非粘液性の鑑別は可能であるが,悪性度とは相関しないことが課題であった.また近年になりCEAによる粘液・非粘液性腫瘍の鑑別自体も正診率が69%にとどまるなど十分ではないことが前向き多施設研究 4で報告されている.本邦では,EUS-FNAによる播種のリスクが診断面でのメリットを上回ると考えられる 5ことから,EUS-FNAは積極的には行われず,画像診断を中心に診断が行われてきた.

このような状況の中でnCLEは膵嚢胞性腫瘍に対する診断能向上を目指して多くの臨床研究 6)~10が行われてきた(Table 2).膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)ではPapillary projection(Figure 2 6,膵漿液性嚢胞腫瘍(Serous cystic neoplasm;SCN)ではSuperficial vascular network(Figure 2 8,膵粘液性嚢胞性腫瘍(Mucinous cystic neoplasm;MCN)ではEpithelial band 10などの特徴的な所見が報告されており,特異度は非常に高いことが知られている.一方で嚢胞壁,特に多房性嚢胞においては必ずしも均一な病理所見を呈するわけではないことは切除標本の病理評価からも明らかである.nCLEで観察可能な嚢胞壁は,病変の部位や穿刺方向などに規定されることから,nCLEの感度は必ずしも高くないことには注意が必要である.通常の嚢胞液の採取のみを目的としたEUS-FNAで用いる22-gauge FNA針よりも太径の19-gauge FNA針を用いること,また穿刺針が嚢胞内に挿入されている時間も長いことから膵炎などの偶発症が多い可能性も指摘されている.

Table 2 

膵嚢胞性腫瘍に対するconfocal laser endomicroscopyの主要な前向き研究.

Figure 2 

膵嚢胞性腫瘍におけるCLE所見.

a:IPMN(Intraductal papillary mucinous neoplasm)に特徴的なPapillary projection.

b:SCN(Serous cystic neoplasm)に特徴的なSuperficial vascular network.

(Image courtesy: Mauna Kea Technologies. The CONTACT clinical trial, 2013).

また実際の治療方針,特にIPMNの切除適応を決定するためには,粘液性腫瘍の診断ではなく,悪性度,異型度の評価が必要である.初期のnCLEの報告(Table 2)では,粘液性・非粘液性腫瘍の鑑別を念頭においた診断能の検討が中心であった.近年になりIPMNにおける異型度の判定におけるnCLEの有用性の報告も出てきている 11.異型度も含めた病理診断が得られたIPMN26例におけるnCLEの評価では,乳頭状上皮の“width(幅)”と“darkness(濃度)”が高度異型および癌の診断において,それぞれ85%,84%の正診率が得られたことが報告されている.具体的にはWidthでは50μm以上,Darknessでは90pixel intensity以上が有意であったとされているが,多数例での検証とともに,実臨床においては,内視鏡検査中にon timeで評価が可能なComputer-assisted diagnosis(CAD)による自動診断が必要と考えられる.

一方で近年はEUS-FNAを用いた新しい手技として,19-gauge FNA針の中を通すことが可能な細径生検鉗子である超音波内視鏡下経穿刺針的鉗子生検(EUS-guided through-the-needle biopsy;EUS-TTNB)も報告 12されている.これまでの嚢胞液中の細胞診では細胞成分が少ないため病理診断が困難であったのに対して,EUS-TTNBで用いられる生検鉗子は通常の鉗子よりも小さいものの,嚢胞壁を直接採取して組織学的評価が可能であることが報告されている.膵嚢胞性腫瘍に対するEUS-TTNBのシステマティック・レビューでは,技術的成功率は98.5%と高く,粘液性・非粘液性の鑑別では,嚢胞液細胞診の感度40%・特異度100%に対して,TTNBの感度88.6%・特異度94.7%と,感度は大きく改善を認めている 13.また上述のように治療方針の決定に大きく寄与するとされる異型度の評価においても,嚢胞液細胞診では54.7%に対して,TTNBでは71.5%と高率に診断できる 14など,これまでの嚢胞液細胞診と比較しても組織検体の採取が診断能の向上につながっていることが示されている.nCLEとTTNBの組み合わせによる膵嚢胞性腫瘍の診断の検討も報告されている.44例の膵嚢胞性腫瘍の検討では,TTNB・nCLEの成功率は88.6%・97.7%であり,FNA・TTNB・nCLEの組み合わせによる診断能は93.2%,また診療方針に影響した症例も52.3%と高率に認めた 15.今後はTTNB検体を用いた遺伝子解析なども期待されるところであり,画像診断としてのnCLEと病理診断としてのTTNBの比較,あるいは組み合わせとしての診断などコスト・ベネフィットも含めた検討が待たれる.

いずれにしても健診などで発見される機会が増えている膵嚢胞性腫瘍における治療方針の決定は,非常に重要な課題であり,現在本邦では画像診断によるSurveillanceが基本的には行われているが,今後nCLEあるいはTTNBなどの新しいモダリティにより,粘液性・非粘液性の鑑別だけではなく,悪性度の評価,特に切除の必要性の判断などが可能となるのであれば大きく診療方針が変わる可能性がある.

Ⅳ 胆管狭窄に対するConfocal Laser Endomicroscopy

原因不明の胆管狭窄,いわゆるindeterminate biliary strictureの診断は,依然として大きな課題である.悪性病変を過小評価すると病変が進行し,切除のタイミングを逸する可能性がある一方で,過大評価による切除が行われ,結果的に良性病変であった場合の切除の侵襲も大きいことも懸念される.近年ではPOCSの有用性が報告されているが,満足できる正診率が得られているとは言えないのが現状である.特にPOCSの画像所見での診断は感度が高いのに対して,POCS下狙撃生検では特異度は高いが感度が低いため,画像所見との不一致が問題になることが多かった.これはPOCS下生検で用いる鉗子のサイズが小さいこと,POCS自体の操作性の制限もあり,検体が十分に取れないことに起因していると考えられる.このように既存の診断技術が不十分であるindeterminate biliary strictureは,新しい診断技術として画像診断と病理診断の両方の特徴を兼ね備えたCLEの,よい適応病変と言える.当初CLEによる良悪性の診断基準としてMiami分類 16と呼ばれる基準が提唱された.悪性病変では,Dark clumps,Thick(≥20μm) white bandsやThick(≥40μm) dark bandsといった特徴的な所見(Figure 3)が提唱された.しかし臨床上も病理診断の際にも,特に問題となる炎症性狭窄の鑑別が曖昧であるという欠点があった.そのため新たなParis分類 17では,炎症性狭窄の所見としてDark granular pattern in scalesやThickened reticular structuresなどが新たに追加された(Figure 3).この分類を用いた112例の胆管狭窄の検討 18では,病理診断の感度・特異度が56%・100%であったのに対して,CLEでは感度89%・特異度71%と,感度は良好であった.病理検査の結果を加味すると88%の正診率が得られていた.Table 3に胆管狭窄に対するCLEの成績 18)~22をまとめる.Caillolらの報告 21では,初回ERCP時にCLEを施行した場合は正診率87%であったのに対して,ステント留置後・胆管炎後の症例のCLEでは正診率は73%に低下したことが報告されている.これはPOCSと同様にステントの接触や炎症などの修飾により診断能が低下したと考えられ,可能な限り初回ERCP時に精査を行うべきと考えられる.

Figure 3 

胆管狭窄におけるCLE所見.

a:正常胆管に見られるReticular network.

b:炎症性狭窄で見られるDark granular pattern in scales.

c:悪性狭窄で見られるDark clumps.(Image courtesy: Mauna Kea Technologies. The ERCP registry, 2011).

Table 3 

胆管狭窄に対するconfocal laser endomicroscopyの主要な前向き研究.

近年では上述のようにindeterminate biliary strictureにおけるPOCSの有用性が報告されている.特に本邦でも広く使用されているSpyGlass Direct Visualization System(SpyGlass DSボストン・サイエンティフィック・ジャパン)の国際共同研究 23では,POCSの内視鏡診断では感度・特異度が86.7%・71.2%に対して,POCSガイド下生検では特異度は100%と高いのに対して感度は75.3%とやや低下するという,これまでのPOCSの既報と同様の結果であった.これに対して,本邦からPOCSとCLEの組み合わせによるさらなる診断能の向上の試みが報告されている 22.Tanisakaらの30例の前向き研究では,POCSの感度・特異度100%・76.9%と特異度が低いのに対して,CLEの感度・特異度は94.1%・92.3%と特異度の面ではCLEが優れているという結果であった.特にPOCS下にCLEを行うことで,POCS下狙撃生検同様により,病変の適切な部位をターゲットすることでより正確な診断が可能となり,透視下でのCLEと比較しても診断能が向上する可能性がある.コスト面で解決すべき点は残されているが,POCSとCLEの組み合わせの診断は,いわば病理のマクロ・ミクロ所見に相当する内視鏡診断モダリティとも言え,理想的な診断法となる可能性がある.膵嚢胞性腫瘍においても同様に,われわれが報告したDETECT study 7のthrough-the-needle cystoscopyおよびnCLEの組み合わせによる診断能の向上が得られていることから,POCSなどでターゲット部位を選択した上で,高拡大のCLEを行うことでより高い診断能につながる可能性があると考えている.

Ⅴ 膵固形性腫瘍に対するconfocal laser endomicroscopy

膵嚢胞性腫瘍に対するCLEと同様に,膵固形性腫瘍に対するnCLEの報告 24)~26もされている(Table 4).悪性の所見として,Dark clumpやDilated irregular vessels with fluorescein leakageなどが提唱されているが,その診断能の報告はばらつきも大きい.膵嚢胞性腫瘍ではEUS-FNAで得られる嚢胞液中の細胞診検体は細胞成分が乏しく病理診断が困難であるため,CLEによる診断能の向上が期待されるのに対して,固形性腫瘍ではそもそもEUS-FNAの診断能が高いことから,CLEはEUS-FNAのancillary testとしての意味合いが強い.特に膵固形性腫瘍ではEUS-FNAの高い感度が知られている一方で,陰性的中率は低いことから,Giovannini 25は初回EUS-FNAで診断がつかない場合にnCLEの有用性があるとしている.ただし近年ではEUS-FNAにおいても組織検体を十分に採取することが可能な組織針が広く使用されるようになり,迅速細胞診(Rapid on-site evaluation;ROSE)を行わなくても少ない穿刺回数で病理診断が得られることから,EUS-FNAに追加して行う意義は現時点では限定的と言わざるを得ない.

Table 4 

膵固形性腫瘍に対するconfocal laser endomicroscopyの主要な研究.

Ⅵ 今後の課題と将来展望

胆膵領域におけるCLEの最大の課題としては,前述のように消化管領域と比較してGold standardである病理との対比が困難であることが挙げられる.消化管領域では,バレット食道に対するCLEは,病理診断との比較により診断基準が確立された上で,内視鏡治療中に診断をしてさらにはラジオ波焼灼治療か粘膜切除かの治療選択を行うというストラテジーが報告 27されており,胆膵領域においてもon timeで確実に診断が可能で,かつ治療選択につながることが示される必要がある.また消化管領域で用いられるプローブと比較すると胆膵疾患に対するCLEのプローブは細径化のトレードオフとして画像解像度の低下が挙げられる.Virtual biopsyとも呼ばれるCLEでは病理所見と類似の画像所見が得られるべきと考えるが,現在の胆膵疾患用プローブの解像度では病理所見との対比にまではいたっていない.また現在はCLEの診断基準がある程度確立されているものの,主観的診断となる傾向があり,また拡大率が高いことから画像自体の安定性が悪く,内視鏡手技中のon timeでの診断が難しいため,今後はCADの活用 28なども期待される領域である.また病理診断では疾患の鑑別に免疫染色が有用であることも多く,CLEにおいても免疫抗体を伴う造影の可能性が期待される.筆者は動物実験における有用性 29),30を報告しているが,造影剤の安全性など解決すべき課題は残されている.

胆膵領域におけるCLEは良好な成績が報告されているものの,そのエビデンスレベルは必ずしも高くなく,膵嚢胞性腫瘍ではEUS-TTNB,胆管狭窄ではPOCSとの比較あるいは併用の成績など,適応・コストなども含めて検討すべき点は多い.本邦においてはCellvizioシステムおよびCLEプローブは承認を受けているものの,造影剤のFluoresceinはCLEでの使用は適応外であること,また手技自体の保険点数がついていないことで,比較的高価なプローブの費用がかかることから,海外と比較しても普及が遅れているのが現状である.しかしいまだに確定診断が困難で治療方針に悩むことが多い胆膵疾患において,CLEは有用な診断モダリティの一つとなりうるものであり,他の画像診断・長期経過観察などの点で優れている本邦においても,大規模臨床研究での評価が今後行われ,CLEの位置づけが適切に評価されることを期待したい.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:中井陽介(富士フイルム株式会社)

文 献
 
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