日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
有茎性早期大腸癌の取扱い
福澤 誠克
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キーワード: 早期大腸癌, 有茎性, T1癌
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2022 年 64 巻 10 号 p. 2255-2267

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抄録

有茎性早期大腸癌の病理組織学的特徴として粘膜筋板が錯綜する場合も多く,早期大腸癌の治療方針を決定する上で重要な粘膜下層(submucosa:SM)浸潤度の評価法において,他の肉眼型と区別が必要とされる.実際のSM浸潤度の測定法は,粘膜筋板の走行が同定または推定可能な症例は,病変の粘膜筋板下縁から浸潤最深部を測定する.また,粘膜筋板の走行が同定・推定できない部分は病変表層から測定するとされている.しかし有茎性病変の場合は,粘膜筋板が錯綜し,同定できないことがある.その場合,SM浸潤距離は頭部と茎部の境を基準線とし,そこから浸潤最深部への浸潤距離を測定するとしているが,この粘膜筋板の同定・推定においては病理医間でも評価にばらつきがあるのが実際である.一方,現在の大腸癌治療ガイドラインでは,cTis癌・cT1軽度浸潤癌(SM垂直浸潤距離が1,000μm未満の浸潤)と診断できれば内視鏡治療の適応となり,cT1高度浸潤癌(SM垂直浸潤距離が1,000μm以深の浸潤)と診断した際は,リンパ節郭清を含む外科的手術が推奨されているが,有茎性早期大腸癌を含む隆起型病変の深達度診断の精度は表面型病変に比較し劣るとする報告が多い.同時に,有茎性T1b癌のリンパ節転移リスクにおいては,非有茎性pT1b癌と比較し,転移リスクが少ないとの報告もある.実際,有茎性早期大腸癌は他の肉眼型の早期大腸癌と比較し,内視鏡による一括切除は容易ではあり,内視鏡治療が先行して行われる機会も多い.今後は無茎性大腸癌と区別した,有茎性大腸癌における内視鏡診断,治療適応とともにSM浸潤度評価法を含めたさらなる検討が必要と考える.

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© 2022 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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