大腸内視鏡検査における画像強調内視鏡観察(image-enhanced endoscopy:IEE)は病変発見および質的診断の向上に有用であることが多数報告されている.その精度向上のため新たな内視鏡機器の開発が進んでおり,長きにわたり使用されてきたキセノン光にかわる光源としてレーザーやLEDを光源とした内視鏡が登場し活用されている.また適切な観察手技の検証も随時行われており,病変の発見や見逃しの防止についてはnarrow band imaging(NBI),blue laser imaging(BLI)およびlinked color imaging(LCI)などの特殊モードの有用性が示唆されている.一方で病変の診断においてはpit pattern観察に加えて,NBIおよびBLIを用いた表面血管や構造の観察が簡便に使用でき世界的にも普及している.特に本邦にて作成されたNBI拡大統一分類であるJNET分類はNBIおよびBLIで使用でき質的な診断が可能であり治療方針の決定に有用である.
Several reports demonstrate the efficacy of lesion detection and characterization by image-enhanced endoscopy (IEE). The LASER and LED endoscopic systems appeared instead of endoscopic systems with Xenon light. These systems enable us to perform blue laser/light imaging (BLI), narrow-band imaging (NBI), linked color imaging (LCI), and texture and color enhancement imaging (TXI) for lesion detection and characterization. This chapter shows the efficacy of various IEE, including lots of clinical images and research reports.
大腸内視鏡検査においては病変の発見および病変の診断を効率的に行うことが重要である.病変発見においては白色光観察(WLI)ではポリープの見逃しが22-28%に発生することが報告されている 1)~3).この見逃しを防ぐためにこれまで種々の研究が行われてきたがその中でも画像強調内視鏡観察(image-enhanced endoscopy:IEE)を用いた観察法の工夫が確実に病変発見能を向上させうる工夫の1つとして期待されている 4),5).病変診断においては本邦で確立されたpit pattern観察により腺腫,癌およびSSL(sessile serrated lesion)などの確実な診断が可能であるが一方で簡易に代表的なIEEであるnarrow band imaging (NBI)およびblue laser imaging(BLI)を用いた観察が昨今世界的にも普及している(Table 1) 5)~11).特に本邦における拡大統一分類であるJNET分類は質的な診断が可能であり治療方針の決定に有用である.本稿では腫瘍発見および病変診断におけるIEEの現状と今後の展望について実際の画像を多数提示しながら詳説する.
最新のIEEが可能な大腸内視鏡スコープ.
NBIは2006年に佐野・武藤らとオリンパス社により腫瘍発見およびその質的診断の向上を目的として開発された狭帯域光観察モードである 12).その原理はキセノン光源内視鏡の分光特性を特殊なフィルターにより酸化型ヘモグロビンの吸収波長である415nmおよび540nmに変更することで,粘膜の表面構造や表面血管を強調しえる.このことにより大腸腫瘍の発見および質的診断能の向上のため現在世界的に広く使用されている.NBIのポリープ発見能の向上については初期の研究では病変の視認性は向上させるものの画面が暗く解像度が十分でないこともありその有用性についてcontroversialな報告がみられた(Table 2) 13),14).しかし2012年に本邦でのEVIS LUCERA ELITE SYSTEM(Olympus Co., Tokyo, Japan)や海外でのEVIS EXERA Ⅲの新システムの登場によって明く広い視野,高画質となり,昨今のmeta-analysisでは腺腫発見率についてNBIはWLIに比して良好な前処置であれば1.30(95%CI:1.04-1.62,p=0.04)と有効であると報告されている(Figure 1) 15)~19).さらに2020年7月にはこれまでのキセノン光源からLED光源に改良された新しい内視鏡システムEVIS X1(CV-1500, Olympus Co., Tokyo, Japan)が登場している.Violet,blue,green,amber,red の5つのLEDを光源とし従来の面順次式撮影(大腸専用スコープ:CF-XZ-1200)に加えて,色ズレの少ない同時式撮影(大腸専用スコープ:CF-EZ1500D)も可能であり,これまで以上に明るく高画質なNBI観察および後述するTexture and color enhancement imaging(TXI)モードとの使い分けでポリープ発見能のさらなる向上に期待がもたれる(Table 1)(Figure 2,3) 20).2022年1月現在は,専用の細型スコープはなく旧来の細型スコープ(PCF-H290I)を用いることとなるがその画像もEVIS X1システムに接続することで明るく鮮明になっている(Figure 4).
NBIによるポリープ発見の有用性.
上行結腸のⅡa 15mm,LST偽陥凹型,high grade adenoma:キセノン光源内視鏡(EVIS LUCERA ELITE)による観察(PCF-H290I使用).
a:WLI:上行結腸のⅡa 15mm,high grade adenoma.
b:NBIにて病変は茶色調となり視認性は向上する.
c,d:弱拡大(c),強拡大(d)にてわずかに不整なsurface patternおよびvessel patternを認めJNET Type 2Bと診断.
上行結腸のⅡa 20mm,LST平坦型,high grade adenoma:LED内視鏡(EVIS X1)による観察(CF-XZ1200I使用).
a:WLI:上行結腸のⅡa 20mm,high grade adenoma.
b:TXIにて病変は赤色調となり視認性は向上する.
c:NBIにて病変は茶色調となり視認性は向上する.概してEVIS LUCERA ELITEの画像に比して鮮明である.
d:NBI拡大にて不整なsurface patternおよびvessel patternを認めJNET Type 2Bと診断.
直腸のⅡa 35mm,LST顆粒型,low grade adenoma:LED内視鏡(EVIS X1)による観察(CF-EZ1500I使用).
a:WLI:直腸のⅡa 35mm,low grade adenoma.
b:TXIにて病変は赤色調となり視認性は向上する.
c:NBIにて病変は茶色調となり視認性は向上する.
d:NBI非拡大にて口側辺縁は鮮明となる.概してEVIS LUCERA ELITEの画像に比して明るい.
e,f:NBI near focus拡大にて不整なsurface patternおよびvessel patternを認めJNET Type 2Bと診断.
横行結腸のⅡa 15mm,sessile serrated lesion:LED内視鏡(EVIS X1)による観察(PCF-H290I使用).
a:WLI:横行結腸のⅡa 15mm,sessile serrated lesion.
b:TXIにて病変は赤色調となり視認性は向上する.
c:NBIにて病変は茶色調となり視認性は向上する.概してEVIS LUCERA ELITEの画像に比して鮮明である.
d:NBI拡大にて腺管拡張および血管拡張を認めSSLと診断.
BLIは2012年に上市された同時式撮影のレーザー光源内視鏡(LASEREO, Fujifilm Co., Tokyo, Japan)による狭帯域光観察モードである(Table 1).その原理は410nmのレーザー光にて粘膜の表面血管や構造を強調し,450nmのレーザー光の出力調整により蛍光体を励起させて明るさを確保している 21).BLIには2つのレーザー光の出力バランスによりコントラストの強い拡大に適したBLIモードとそれより少し明るい病変の指摘に適したBLI-brightモードの2つがある.そしてわれわれは以前に国立がん研究センター中央病院や東病院など国内数施設での多施設共同研究において白色光観察に比してBLI-brightで患者あたりのポリープ発見数がWLIに比べて有意に向上することを報告している(1.84±2.09 vs. 1.43±1.64,p=0.001)(Figure 5,6) 22).さらにBLIはWLIに比べて腺腫の見逃し防止に有効とするrandomized control trial(RCT)も本邦より報告されている 23).一方で欧米ではレーザー内視鏡は普及しておらず,そのかわりにLED光源内視鏡システム(ELUXEO, Fujifilm Co., Tokyo, Japan)が2016年2月よりヨーロッパで使用が開始され現在世界的に普及している(Table 1).レーザー内視鏡のBLIと同じようにLED光を用いて狭帯域光観察であるBlue light imaging(こちらもBLIと称される)が可能である 24).その原理はblue-violet,blue,green,redの4つのLED光を用いたMulti light technologyによるBLIにより粘膜表面の血管や構造の強調が可能であり大腸ポリープ発見や病変の境界診断についてもその有用性が示唆されている(Figure 7,8).そして2020年より本邦でもこのLED内視鏡システムが上市されており,現在われわれは近畿大学や自治医科大学と一緒にレーザー内視鏡システムとの非劣性を検証する多施設共同研究を展開しておりその結果が待たれる(Figure 9).またこれ以外にもプロセッサー光源一体型のコンパクトな3色のLED光を用いた内視鏡システム(ELUXEO Lite:6000シリーズ,EP-6000,Fujifilm)も上市されておりこちらでもLaser内視鏡に劣らない鮮明な狭帯域光観察であるBLIやLinked color imaging(LCI)観察が可能でありクリニック医師を中心に普及している(Figure 10) 25).
S状結腸のⅡa 3mm,low grade adenoma:レーザー内視鏡システム(LASEREO)による観察(EC-L600ZP7使用).
a:WLI:S状結腸のⅡa 3mm,low grade adenoma. 血管透見の消失によりかろうじて指摘しえる.
b:LCIにてポリープは淡赤色調となり視認性は向上する.
c:BLIにて病変は茶色調となり視認性は向上する.
d:BLI拡大にて整な腫瘍性パターンでありJNET 2A.
横行結腸のⅡa 10mm,sessile serrated lesion:レーザー内視鏡システム(LASEREO)による観察(EC-L600ZP7使用).
a:WLI:横行結腸のⅡa 10mm,sessile serrated lesion.
b:LCIにてポリープは淡赤色調となり視認性は向上する.
c:BLIにて病変は淡茶色調となり視認性は向上する.
d:BLI拡大にて拡張血管・拡張腺管を認める.
横行結腸のⅡa 10mm,low grade adenoma:LED内視鏡システム(ELUXEO)による観察(EC-760ZP-V/M使用).
a:WLI:横行結腸のⅡa 10mm,low grade adenoma.
b:LCIにて病変の辺縁部が淡赤色調となり視認性は向上する.
c:BLIにて病変は茶色調となり視認性は向上する.
d:BLI拡大にて整な腫瘍性パターンでありJNET Type 2Aと診断.
直腸のⅡa 30mm,LST結節混在型,high grade adenoma:LED内視鏡システム(ELUXEO)による観察(EC-760ZP-V/M使用).
a:WLI:直腸のⅡa 30mm,high grade adenoma.
b:LCIにて病変中央の隆起が赤色調,周囲の平坦部が淡発赤調となり視認性は向上する.
c:BLIにて病変は全体に茶色調となり視認性は向上する.
d:BLI拡大にて中央の隆起部は不整な腫瘍性パターンでありJNET Type 2Bと診断.
e:平坦部は整な腫瘍性パターン.
f:内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)にて切除し中央部はhigh grade adenoma,平坦部はlow grade adenomaであった.
直腸のⅡa 30mm,LST結節混在型,high grade adenoma:LED内視鏡システム(ELUXEO)とレーザー内視鏡システム(LASEREO)の比較.
a:WLI,LED:直腸のⅡa 30mm,high grade adenoma.
b:WLI,レーザー:LEDに比してわずかに暗いが赤みは強い.
c:LCI,LED:病変が淡赤色調で強調される.
d:LCI,レーザー:LEDに比して背景粘膜の赤みが強くコントラストも強い.明るさはほぼ同等.
e:BLI,LED:不整なsurface patternおよびvessel patternを示しJNET Type 2Bと診断.
f:BLI,レーザー:コントラストはLEDに比してやや鮮明だがやや暗い.
下行結腸のⅡa 15mm LST偽陥凹型,high grade adenoma:レーザー内視鏡システム(ELUXEO Lite)による観察(EC-6600使用).
a:WLI:下行結腸のⅡa 15mm,high grade adenoma.
b:LCIにて明るい視野であり病変が淡赤色調となり視認性は向上する.
c:BLIにて病変は茶色調となり視認性は向上する.
d:BLI拡大にて鮮明なsurface patternおよびvessel patternを示し不整な腫瘍性パターンでありJNET Type 2Bと診断.
BLIやNBIはポリープ発見に有用でありながら画面が暗いこと,残液が赤くなることなどが課題とされており,それらの問題を解決しえる観察法としてLCIおよびTXIが挙げられる.LCIはレーザー内視鏡システム(LASEREO)のBLI-brightモードのレーザー出力バランスにプロセッサー内で病変部の赤色と正常粘膜の白色を強調することでコントラストを増し,BLIよりも明るい視野でヘリコバクターピロリ関連性胃炎の診断や病変の視認性を向上させるモードとして開発された(Figure 5,6) 24),26).また前述のLED内視鏡(ELUXEOおよびELUXEO-lite)においてもLCIは施行可能であるが,レーザー光源とLED光源でやや色合いや明るさが異なり,大腸における病変視認性を向上させるための適切な設定としてレーザー内視鏡ではB8C2,LED内視鏡ではB8C3を推奨している(Figure 7,8,10).これまでLCIにおいては大腸病変の視認性の向上や見逃しの防止やadenoma detection rate(ADR)向上についてのいくつかの研究が報告されている(Table 3) 27)~37).ブラジルからの報告ではレーザー内視鏡を用いてWLI,LCI,BLI-brightの3つのモードによる全大腸の内視鏡観察についてADRが43.2% vs. 54.0 % vs. 56.9%(WLI vs. LCIのみ有意差:p=0.02)でありLCIが有用であったとされている 27).一方で欧州からのLED内視鏡を用いた報告では同じ部位を反復して観察するTandem studyのsettingでは右側大腸(盲腸・上行結腸)における腺腫の見逃し防止の有用性についてLCIでWLIに比べて有意に減少するとしている(11.8% vs. 30.6%,p<0.001) 28).昨今の本邦からのレーザー内視鏡を用いたRCTでは全大腸においてLCIとWLIを比較し腺腫発見率では47.1% vs. 46.9%(p=0.93)と有意差はなく,左側(下降結腸からS状結腸)においてのみADRが有意に向上したとするものもある 29).また香港からのLED内視鏡を用いた報告ではLCIをNBI(EXERA)と比較し,観察時間(min)は8.6±3.1 vs. 10.0±4.1(p=0.003)とNBIで有意に長いものの,ADRは39.7% vs. 51.5%(p=0.05)とNBIに高い傾向であったとする報告もある 32).われわれも右側大腸の見逃しの防止のためのLCI追加30秒観察を考案し実践している.これは盲腸から上行結腸までのWLI観察を終えた後に再度同部位を30秒間LCI追加観察を行う手技であり右側大腸のADRが26.2%から36.9%に向上したことを報告している 33).別の本邦からのレーザー内視鏡を用いたRCTではSSLの見逃し率の低下が報告されている 34).またLCIの病変の表面型のポリープに対する視認性の向上について国立がん研究センター中央病院および東病院,福岡筑紫病院との多施設共同研究を行い静止画においてLCIがWLIに比して視認性が向上していることを示している 35).一方でLCIとBLIとの間には視認性の優劣は認められなかった.同様の静止画を検証する研究はほかにもありLCIの視認性が報告されている 36).昨今のreviewでもWLIに比してLCIでPDRおよびADRともに有意に増加することが示されている 37).また昨今咽頭・食道・胃においてはLCIについてWLIに比して有意に腫瘍性病変が発見される大規模研究の結果も報告されている 38).現在本邦において数個の大腸に関する大規模多施設共同研究が進行しておりその報告が待たれる.
BLI, LCIによるポリープ発見の有用性.
一方TXIにおいてはLED内視鏡システム(EVIS X1)にて白色光観察で撮影された画像をシステム内で構造,色調,明るさを向上させ病変の視認性を向上する原理である 20).TXIにはTXI1とTXI2と2つのモードがありTXI1の方が色調が強化され赤みが強い画像となっておりポリープの視認性向上に有用と考えられるが2022年1月時点ではそのような報告はなく今後の研究に期待がもたれる(Figure 2,3,4).
これらの報告を踏まえて大腸内視鏡観察においてWLI,NBI,TXI,BLI,LCIのいずれのモードで観察するのがよいかについては現時点での結論はないが,少なくともWLIだけでは不十分ではないかと筆者らは考えている.NBIやBLIは残渣が赤くなり画面がやや暗くなるため観察時間が長くなる課題があり前処置不良例では使用がしづらい.またLCIは多数のpositiveな報告があるものの差異がないとする報告もある 6).そしてTXIについてはいまだエビデンスが不足している.だが種々のモードの利点欠点を鑑みながら適宜使用しWLI観察に頑なにとらわれず見逃しのない観察を行うことが重要と考えておりわれわれの施設では右側結腸においてはWLI観察後に30秒の追加観察をNBIおよびLCIとも行うようにしている 33),39).
NBIを用いた大腸腫瘍拡大診断の有用性は種々報告されており,2016年にsurface patternおよびvessel patternの両所見を加味する本邦の統一NBI拡大分類であるJNET分類が完成し現在広く活用されているが,同分類はBLIでも使用が可能である(Figure 11) 40)~47).われわれの施設ではpit patternに似たsurface patternの理解から始めその後vessel patternの理解を進めていくよう初学者に指導している.Pit patternとsurface patternの対比を考えるとType 2AはⅢL,Ⅳ,Ⅲs型pitに類似しており整なパターンといえ,Type 2BはVI型pitに類似しており不整なパターン,Type 3はVN型pitに類似し破壊パターンといえ,これらを考慮しながら所見をみていくと理解が得られやすい.またJNET分類は病理と対応しており,概してType 1は過形成性ポリープ(HP)およびSSL,Type 2Aはlow grade adenoma,Type 2Bはhigh grade adenoma・Tis癌・T1a癌,Type 3はT1b癌の病理診断を推定することができ治療方針の決定に有用である.実際にJNET分類がこのように病理と対応していたかを検討した報告では大腸2,933病変を解析し,Type 1,Type 2A,Type 2B,Type 3の正診率は99.4%,77.1%,78.1%,96.6%とされており,特にType 2Bについてはpit pattern観察を加えることが推奨されている 43).またType 1の病変をHPとSSLに鑑別するためには拡張血管や拡張腺管が有用である(Figure 6) 48)~50).そして初学者がNBI拡大観察とpit patternの対応をよりはやくに習熟するためにlow grade adenoma,Tis癌,粘膜下層深部浸潤癌などの症例でNBI観察後にインジゴカルミンやクリスタルバイオレットによるpit pattern観察を行いその比較を行うとよい(Figure 12).BLIでも同様に色素との対比が理解への近道であるがBLIとNBIではややsurface patternやvessel pattern,さらには色素内視鏡の見え方が異なるため慣れが必要である(Figure 13).さらに色素内視鏡とNBIの検討においてややNBIで不整をとらまえover diagnosisになることも示唆されているため実臨床での十分な経験が必要である 51).また病変内で種々のJNET分類のパターンが混在する病変は稀ならず存在し白色光観察をたよりに病変全体を観察し最も病変の特徴を示す箇所の観察を漏れなく行うことが重要である.実臨床においてはwhite opaque substance(WOS)などの影響でsurface patternの評価が困難なもの,逆に血管所見に乏しい病変なども存在するためsurface patternおよびvessel pattern双方の理解が必要である 52).
NBIおよびBLIによるJNET分類.
直腸のIs 30mm, high grade adenoma:LED内視鏡(EVIS X1)による観察(CF-XZ1200I使用).
a:WLI:直腸のIs 30mm,high grade adenoma.
b:TXIにて病変全体が赤色調となり視認性は向上する.
c:NBIにて病変は全体に茶色調となり視認性は向上する.
d:NBI拡大にて肛門側の結節部は不整な腫瘍性パターンでありJNET Type 2Bと診断.
e:平坦部は整な腫瘍性パターン.
f:e部のインジゴカルミン散布像.整なⅣ型pitを認める.
g:クリスタルバイオレット染色の近接像.
h:e部のクリスタルバイオレット拡大像.腺口不整を呈するVI型軽度不整pitを認める.
直腸のⅡa 50mm,LST結節混在型,Tis:LED内視鏡システム(ELUXEO)による観察(EC-760ZP-V/M使用).
a:WLI:直腸のⅡa 50mm,LST結節混在型,Tis.
b:LCIにて関心領域である病変結節部が赤色調となり視認性は向上する.
c:BLI拡大にて画面右の平坦顆粒部は全体に整であり画面左の結節部の立ち上がりは不整を示す.
d:BLI拡大にて結節部は不整な腫瘍性パターンでありJNET Type 2Bと診断.
e:cの平坦部のインジゴカルミン散布像.整なⅣ型pitパターン.
f:d部のクリスタルバイオレット拡大像.腺口不整を呈するVI型軽度不整pitを認める.オリンパス社内視鏡のクリスタルバイオレット像に比べて青色調となる.
今後の展望としては昨今の本邦のサーベイランスガイドラインにおいてもIEEによる病変の発見および拡大観察による質的診断の有用性が示唆されていることからさらに多くの内視鏡医への普及が望まれる 53).また確実な拡大診断により治療すべき病変を確実に選別し過不足のない内視鏡治療が行われることが重要である 54).新たな機器への期待としては,さらなる見逃しの防止や確実な診断のための取り組みとしてArtificial intelligence(AI)を併用した内視鏡観察が挙げられる.すでに市販されているAIもありIEEとの併用により臨床での病変の発見や診断への有用性が示唆されている 55)~58).さらには新たに登場した観察法と既存の色素内視鏡の併用もその精度向上の可能性があるように思われ今後さらなる検討が期待される(Figure 14,15).そしてこれらのIEEの進歩に検診の普及が伴うことで本邦で急増している大腸癌罹患および死亡が減少に転じることを切に願う.
S状結腸のIs 30mm,Tis:レーザー内視鏡システム(LASEREO)による観察(EC-L600ZP使用).
a:WLI:直腸のIs 30mm,Tis.一部に陥凹を有する(黄色矢印).
b:LCIにて病変全体が赤色調となりさらに陥凹部の関心領域は赤色調が強くなる.
c:隆起頂部のBLI拡大にて不整を示す.
d:陥凹部のBLI拡大にて不整な腫瘍性パターンだが破壊パターンは認めず構造は残存しておりJNET Type 2Bと診断.
e:頂部のクリスタルバイオレット像.不整なVI軽度不整pit.
f:e部のクリスタルバイオレット+LCI像.血管情報が付加され比較的整ったパターンが認められる.
g:陥凹部のクリスタルバイオレット像.pitは残存しており不整なVI高度不整pit.
h:e部のクリスタルバイオレット+LCI像.血管情報が付加され不整なパターンだが太径血管の出現がないことが確認できる.
上行結腸のⅡa 40mm,LST結節混在型,Tis:LED内視鏡システム(EVIS X1)による観察(PCF-H290I使用).
a:WLI:上行結腸のⅡa 40mm,Tis.
b:TXIにて病変全体が赤色調となり関心領域の結節がより赤色調となる.
c:結節左側のNBI拡大にて不整を示す.
d:c部のunderwater下のNBI拡大.ハレーションがなく接写することなくさらに拡大率が増しより鮮明が画像が得られる.
e:結節部のインジゴカルミン散布像.不整なⅤ型pitを認める.
f:e部のインジゴカルミン+TXI像.青みが強調されpitの視認性が増す.
g:結節部のクリスタルバイオレット像.腺口不整を認めVI軽度不整pit.
h:g部のクリスタルバイオレット+TXI像.コントラストが高まりpitの描出が明瞭となる.
代表的なIEEであるNBI,BLI,LCIに加えて新たなIEEであるTXIも交えて病変の発見および診断における有用性を種々の画像やエビデンスを交えて詳説した.WLIに加えて種々のIEEを活用することでより精巧な内視鏡診療を行うことが可能でありそのさらなる普及が望まれる.
謝 辞
本稿を執筆するにあたりご協力をいただきました京都府立医科大学 消化器内科 伊藤義人教授,土肥統,廣瀬亮平,杉野敏志,小林怜央,橋本光,冨田侑里,村上貴彬,森本泰隆,および関連する医局員の先生方および同附属病院超音波内視鏡診療部 保田宏明部長および関係各位の方々に心より感謝いたします.また症例のご提供およびご指導をいただきました粉川隆文先生に深謝いたします.
本論文内容に関連する著者の利益相反:吉田直久(富士フイルム株式会社,EAファーマ株式会社)