日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
十二指腸cold snare polypectomy(D-CSP)の適応とコツ
滝沢 耕平
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2022 年 64 巻 8 号 p. 1490-1498

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要旨

表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial non-ampullary duodenal epithelial tumors:SNADET)の診療機会が増加している.これまで非乳頭部の小さな腺腫は生検等により経過観察されることが多かったが,生検による診断精度が十分ではなく,また生検によりその後の内視鏡切除が困難となることもあるため,安全かつ簡便に切除可能であれば早めに切除も考慮すべきと考える.cold snare polypectomy(CSP)は大腸ではすでに10mm以下の腺腫に対する標準治療の一つと考えられているが,十二指腸においても同様に「10mm以下の腺腫と考えられる病変」に対しては有効な治療法と考えられる.本稿では十二指腸CSPに関して手技の概要からコツまで概説する.

Abstract

The frequency of detection of superficial non-ampullary duodenal epithelial tumors is increasing in clinical practice. To date, small non-ampullary adenoma has often been observed by biopsy; however, biopsies may not be diagnostically accurate, and subsequent endoscopic resection may be challenging owing to the fibrosis after biopsies. Therefore, prompt removal is recommended for lesions that are amenable to safe and easy resection. Cold snare polypectomy (CSP) is one of the well-established standard treatments for colonic adenomas measuring ≤10mm. Notably, CSP is also an effective therapeutic strategy for management of lesions categorized as duodenal adenomas measuring ≤10mm. In this article, we outline the procedure and technical tips for duodenal CSP.

Ⅰ はじめに

胃や食道における現在の内視鏡治療の主役はもちろんESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)であるが,十二指腸では少し状況が異なる.もともと十二指腸腫瘍は遭遇頻度が低く,正直あまり注目されていなかった.機器の進歩および十二指腸腫瘍が広く認知されるようになったため,徐々に発見頻度も増えたが,ガイドライン等の治療に関する指針は存在しなかった.2016年に多施設アンケート調査 1が行われ,全国13施設から1,397例の治療成績(1993~2016年)が集計された.その中で十二指腸ESDの偶発症発生頻度は術中穿孔12%,後出血4.5%,遅発性穿孔4%,緊急手術移行5.4%であり,胃ESDの全国成績 2と比べると,それぞれ術中穿孔6倍,遅発性穿孔10倍,緊急手術移行27倍と非常に高率であった.実際にESD後の遅発性穿孔や緊急手術を経験したり,この報告をみて十二指腸ESDを止めたという施設も少なくないと聞いている.そのような背景もあり,非乳頭部の比較的小さな十二指腸腺腫はこれまでは積極的に治療はせずに経過観察されることが多かった.しかし毎年繰り返し生検が行われると粘膜下層に繊維化を来してしまうため,経過観察中に生検でgroup4や5が検出されたために治療を行うことになった際に,EMR(内視鏡的粘膜切除術)のために粘膜下層に局注するも繊維化のため病変が持ち上がらず,仕方なく慣れていないESDをしたところ,粘膜下層の高度な繊維化のため穿孔を来してしまい,緊急手術に…というのが最悪のシナリオである.このような事態を回避するために,もし安全かつ簡便に切除ができるのであれば,繰り返す生検による経過観察よりも発見時に切除してしまった方がいいのではないかと考えた.当時は大腸の小腺腫に対してcold snare polypectomy(CSP)が導入され,10mm以下の大腸腺腫に対する標準治療の一つになろうとしていた時期であり,このCSPが十二指腸の腺腫にも有用なのではとわれわれは考え,2015年に十二指腸の小腺腫に対してもCSPを初めて導入した 3.全く報告がなかったため,まず自施設の小規模な前向き試験で安全性を確認した後に 4,多施設での安全性と有効性を検証する目的で大規模な多施設臨床研究を開始した 5.この試験を通じて多くの施設が十二指腸CSP(duodenal cold snare polypectomy:D-CSP)を経験することにより一気に全国に拡がり,現在では市民権を得つつある.まだエビデンスの少ない手技ではあるが,その実際について本稿では基本から解説する.

Ⅱ CSPの概説

CSPは原則として局注は行わずに,スネアを用いて病変を絞扼し,通電せずにそのままスネアを締める力のみで切除する方法である.かつて日本では小さな大腸ポリープに対しては通電を用いたホットポリペクトミーやホットバイオプシー,あるいはEMRが標準的な手法であった.通電をせずに切除してしまうのは術者と介助者のタイミングが合わなかった際に生じるもので,通称「チギレクトミー」として扱われることが多かった.欧米では以前よりCSPの有効性が報告され,本邦でも徐々に行われるようになり,ホットポリペクトミーに比べて偶発症発生頻度の少ない手技として瞬く間に広まり,現在では小さな大腸腺腫に対する標準治療の一つとなっている.昨年日本消化器内視鏡学会より刊行された大腸cold polypectomyガイドライン(大腸ESD/EMRガイドライン追補)では大腸CSPの適応として,「腺腫と術前診断された10mm未満の病変」と記載されている 6

Ⅲ 手技の解説とコツ

1.術前準備

D-CSPで使用するスコープはダウンアングル機能が重要である.それは病変を6時方向にもってきて,上から下に押さえつけるようにスネアリングを行うためである.これまで食道や胃のESDで用いることの多かったGIF-Q260J(オリンパス)スコープはダウンアングルが90°と小さめであったが,新しい上部治療用スコープGIF-H290T(オリンパス)はダウンアングルが120°と大幅に改良されており,D-CSPにもより適したスコープと考えられる(Table 1).また,十二指腸深部の病変では上部治療用スコープでは届きにくい場合があり,大腸用のPCFスコープを用いることもある.ダウンアングルの効きもよく,またスネアが出てくる位置も異なるため,病変を6時方向にもってくるのが難しい場合など,スコープ個々の適性や特徴を十分に理解し,個々の病変ごとに最善のスコープを選択する必要がある.

Table 1 

スコープ別スペック比較表.

スネアについても形状や開き方,ワイヤーの硬さや細さ(切れやすさ)などについて個々のスネアの特性を事前に十分に把握することが大切で,病変ごとに最も適したものを選択するようにしている(Table 2).当院では主に切れ味を求める場合にはスネアマスタープラス(オリンパス)(Figure 1-a)などワイヤー径の細いスネアを用い,ヒダ上などで少し病変を押さえつけるような切除になる場合はワイヤーに硬さのあるキャプチベーターⅡ(ボストンサイエンティフィック)(Figure 1-b)などのスネアを選択することが多い.スネアのサイズは大きければよいというものではなく,むしろ小さめのスネアの方が切れ味がよい印象がある.D-CSPの対象となる病変は10mm以下の病変であることがほとんどであるため,スネアは10mmで十分と考える.

Table 2 

スネア別スペック比較表.

Figure 1 

スネア形状の比較.

a:スネアマスタープラス(画像提供 オリンパス株式会社).

b:キャプチベーターⅡ(画像提供 ボストンサイエンティフィックジャパン).

2.スネアリングから切除

十二指腸腫瘍は境界明瞭なことが多いが,治療を開始するにあたって,まず病変範囲とくに肛門側境界をよく観察する.初学者はスネアを出してからスコープをねじって病変に合わせがちであるが,あらかじめ病変を6時方向もしくはスネアの出る位置に合わせ,そこでスコープを固定してからスネアを出していく.病変サイズが小さい場合には,スネアを全開にして上から病変にかぶせるように,スネアの中心に病変をセットし,周りの非腫瘍粘膜を含めるようにスネアリングする.虫取り網で虫を捕まえるのと同じ感覚である.病変サイズがやや大きい場合やスネアがかけにくい場合は,いきなりスネアを全開にするのではなく,まずスネアの先端を病変肛門側のヒダなどの非腫瘍粘膜部に押しつけて固定し,そこから徐々に手前方向にスネアを開いていく.スネアの先端を支点にすることにより肛門側の断端を確保し,押しつけながらスネアを開くことにより,スネアが左右横方向に広がる.左右の病変境界がしっかりスネア内に収まっていることを確認したら,最後に手前の口側断端に注意しながら絞扼を完了させる.マーキングは病変境界がよほど不明瞭でない限りは必要ないと考える.ただしスネアが滑って絞扼しにくい場合にはマーキングをひっかかりとしてスネアをかける場合もあるので試してみてもよいかもしれない.蠕動が強い場合には,禁忌となる併存疾患がなければブスコパンを0.5A静注する.ただしスネアリングしにくい部位の場合には逆に蠕動の力を利用してスネアに病変を飛び込ませて絞扼する場合もあるため,必ずしも全例で蠕動を抑えた方がいいとは限らない.絞扼したら,筋層を掴んでいる可能性も否定はできないため,病変を持ち上げながらわずかにスネアを緩めてもらい,筋層を下に振るい落としてから再度絞扼し,そこからは躊躇せずに介助者にスネアを一気に締めてもらい切除を完遂させる.十二指腸腫瘍はなぜかヒダ上に存在することを多く経験する.十二指腸の輪状ヒダ(Kerchring皺襞)は粘膜層と粘膜下層のみから成り,大腸のヒダとは異なり筋層が含まれないため,ヒダごと切除しても穿孔の心配はないので思いきって切除してよい.もしスネアを絞扼しても病変を切り切れなかった場合は,一度スネアを緩めて絞扼し直してから再度切除を試みる.切れないからといって,やみくもにスネアを力任せに引っ張ったり,スコープごと引き抜こうとするのは重大な臓器損傷の危険性があるため断じてすべきではない.このままD-CSPでは切除が難しいと判断した場合は,通電による切除に変更する.多くの場合,切れない部分は白いスジのように残存するため(粘膜筋板やブルンネル腺の場合が多い),局注は必要とはせずにそのままスジの部分だけエンドカットでポンっと切除可能であることが多い.

3.切除後(検体回収,予防縫縮など)

D-CSPでは切除後の検体回収がとても重要である.切除した病変を把持鉗子で優しく掴み,そのままスコープごと抜去して検体を回収する.吸引による回収では検体がボロボロになってしまう恐れがあり決して行うべきではない.そして回収した検体はESD検体と同様にボードに伸ばしてピンで固定し,ホルマリン固定して病理診断に提出する.このようにすることにより,ESDと同様,正確な病理組織診断を受けることが可能となる.

検体回収後は再度スコープを挿入し,切除後の潰瘍底をよく観察し,出血・穿孔・遺残について確認する.切除直後はoozingが認められることがあるが,水洗しながら様子をみている間に勢いが弱まるようであれば止血処置は不要である.もし止血処置が必要な場合はクリップを用いる.通電を伴う凝固止血は遅発性の偶発症発生リスクを考慮し,極力行わないようにすべきである.出血や穿孔がないことを確認した後に,遺残をチェックする.ちなみに切除後の遺残やフォロー時の局所再発のチェックにはnarrow band imaging(NBI)観察が有用と考えている.

予防的縫縮に関しては,家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)患者10名の十二指腸病変に対してCSPを332回施行し,クリップなどの予防的縫縮はしなかったが重篤な偶発症は認めなかったとする報告がある 7.理論的にもD-CSP後では粘膜下層を十分に潰瘍底に残すことができるため,多少の膵液胆汁曝露で遅発性に穿孔するリスクは低いと考えられる.また粘膜下層浅層で切除されているため粘膜下層深部の血管にダメージを与えておらず,出血のリスクも同様に低いと考えられ,予防縫縮は必須ではないと考える.一方でD-CSP後の潰瘍底は小さく,また潰瘍底周囲に局注液による粘膜のむくみがないため,クリップ縫縮は非常に容易であることから,単発病変の場合などは安心のためクリップ一つで縫縮してしまうことも実際には多い.

4.治療後のマネージメント(入院,病理評価,フォローなど)

D-CSPは侵襲が少なく偶発症発生割合も非常に低いため,大腸CSPと同様に将来的には外来でも施行可能と考えているが,現在はまだ安全性が確立していないため,3泊4日の入院治療としている.翌日のセカンドルック内視鏡に関しては十二指腸の場合は内視鏡による送気等の刺激がクリップの脱落や遅発性穿孔の誘因となる可能性も否定できないため,後出血や遅発性穿孔などを疑う場合を除いては通常行っていない.クリップが脱落していないことは腹部レントゲンで確認可能である.問題なければD-CSP翌日(POD1)から飲水開始,POD2に食事再開し,POD3に退院としている.

D-CSPでは通電を伴わず,また病変周囲の非腫瘍粘膜を十分に含めて切除するのがやや困難であるために,水平断端(horizontal margin:HM)が陽性や不明という結果になることが少なくないが,内視鏡で明らかな遺残なしと判断した場合は例えHM陽性や不明であっても経過観察としている.静岡がんセンターでのCSP施行例においても約半数がHM±であったが,フォロー内視鏡を施行した46例(観察期間中央値19カ月)において遺残再発が認められたのは1例(2%)のみであった 8.当院では3カ月後に内視鏡で切除部を確認して遺残再発がなければ,HM陽性もしくは不明であった症例に関しては,その後の3年間は6カ月ごとのフォローとしている.もし病理結果が癌だった場合,エビデンスはないが,粘膜内癌で脈管侵襲陰性かつ深部断端(vertical margin:VM)陰性であれば経過観察としている.もし粘膜下層浸潤,脈管侵襲,VM陽性もしくは不明のいずれかが認められた場合には外科切除を推奨している.昨年刊行された十二指腸診療ガイドライン 9においても,1)腺腫/pTis/pT1a, 断端(-)かつly0,v0であれば経過観察(1年後EGD(上部消化管内視鏡)),2)腺腫/pTis/pT1a,HM(+)かつly0,v0の場合は慎重な経過観察(2-3カ月後EGD),3)pT1b or VM(+) or ly/v(+)の場合は追加外科切除(膵頭十二指腸切除術+リンパ郭清)が推奨されている(Figure 2).

Figure 2 

十二指腸腫瘍内視鏡治療後のアルゴリズム(文献より一部抜粋・改編).

Ⅳ 手技の実際

D-CSPを施行した2症例を提示する.

<症例1>(Figure 3)(文献より一部変更して転載)

Figure 3 

内視鏡画像(症例1).

a:白色光観察像.

b:NBI観察像.

c:スネアで絞扼.

d:切除後潰瘍底.

e:クリップ縫縮後.

f:切除後検体(NBI).

g:病理組織像.

h:3カ月後の内視鏡像.

十二指腸下行部,Vater乳頭より肛門側に10mm大の扁平隆起性病変を認め,十二指腸腺腫と診断した(Figure 3-a,b).スネア(Captivator Ⅱ,15mm)を用いて病変周囲の非腫瘍粘膜を含むように軽く脱気しながら絞扼し(Figure 3-a,b),通電せず一気に切除を行った(Figure 3-c).潰瘍辺縁に内視鏡的には遺残は認められなかった.軽度oozingが認められたのみで,止血を要する出血は認められなかった(Figure 3-d).切除後潰瘍底の胆汁や膵液からの曝露による遅発性出血・穿孔を予防する目的でクリップによる縫縮を行った(Figure 3-e).所要時間(スコープ挿入から抜去まで)は20分であった.翌日(POD1)の内視鏡検査ではクリップはすべて残存し,明らかな遅発性偶発症は認めなかった.採血でもWBC 7,430/μL,CRP 0.08mg/dLと上昇を認めず,発熱や腹痛等の自覚症状も認めなかった.POD1から飲水開始,POD2に食事再開し,POD4に退院となった.

切除標本径は13×12mm,病理結果はTubular adenoma,12×11mm,HM±,VM-であった(Figure 3-f,g).3カ月後の内視鏡検査(Figure 3-h)ではD-CSP後の潰瘍は瘢痕化しており,明らかな遺残所見は認めず,瘢痕中心からの生検結果においても遺残は認めなかった.

<コメント> D-CSPを始めてから2例目の症例.現在であれば15mmではなく10mmのスネアを選択するかもしれない.まだ安全性に自信がなかったため多数のクリップを用いて前後のヒダも用いて完全縫縮しているが現在であればここまでしっかり縫縮する必要はないかもしれない.本文中でも述べたとおり,切除後の検体を丁寧に回収し,しっかり伸ばしてピンでとめて病理診断に提出するのが重要である.

<症例2>(Figure 4)(文献10より一部変更して転載)

Figure 4 

内視鏡画像(症例2).

a:白色光観察像.

b:NBI観察像.

c:スネアリング.

d:CSP直後の潰瘍底.

e:クリップで完全縫縮後.

f:切除検体.

十二指腸下行部に6mm大の0-Ⅱa病変を認めた(Figure 4-a,b).スネア(スネアマスタープラス,10mm)を用いて口側断端に注意しながらCSPを施行した(Figure 4-c).軽微なoozingのみで止血処置を有する出血なし,穿孔なし,遺残なしと判断した(Figure 4-d).クリップ(シュアクリップ)3個で完全縫縮した(Figure 4-e).切除検体サイズ10×8mm.病理結果はtubular adenoma with mild to moderate atypia,6mm,断端陰性であった(Figure 4-f).

<コメント> スネアリングの際にはなるべく病変周囲の非腫瘍粘膜を付けて絞扼し,マージンを確保するようにするのがポイントである.

Ⅴ 十二指腸CSPの長所と短所

D-CSPの長所は,まず手技が簡便で,少しのコツで誰でもすぐ施行できるということである.また,通電を行わないため患者さんへの侵襲も少なく,大腸CSPと同様に将来的には外来でも施行可能と考えている.偶発症に関しても,切除直後の止血を要するような出血や後出血も比較的希である.術中穿孔は聞いたことがなく,人間のスネアを閉じる力のみで筋層に穴をあけるのはほぼ不可能ではないかと考えている.遅発性穿孔の発症リスクも極めて低く,これはD-CSPでは粘膜下層の浅層で切除されるため,切除部に粘膜下層が比較的しっかり残るため,膵液胆汁の曝露によっても早々に穿孔を生じないものと考えている.さらに,局注を行わないため切除後の潰瘍底周囲にむくみがなく,そのためクリップ閉鎖も非常に行いやすい.また,生検等による繊維化が強く通常のEMRではnon-liftingとなってしまうような症例も,局注を行わないため病変が局注により陥没せず,そのまま切除可能なことが多く,前医生検施行例なども治療対象外とはならないことも長所の一つと言える.

D-CSPの短所としては,病変周囲の非腫瘍粘膜を十分に含めて切除するのがやや困難であることと通電を伴わないために水平断端(HM)が陽性や不明という結果になることが少なくないことが挙げられる.ただし前述のごとく静岡がんセンターでCSP施行46例のうち約半数がHM±であったが,実際に遺残再発を認めたのは1例(2%)のみであった 8.重要な短所として切除検体にほとんど粘膜下層が含まれないことが挙げられる.つまり癌であった場合に粘膜下層浸潤を評価することができない.そのため粘膜下層に浸潤する可能性のある癌はD-CSPの対象とすべきではないと考えられる.

Ⅵ 十二指腸CSPのエビデンス

初めに静岡がんセンター単施設でD-CSPの安全性を評価する目的で前向き試験を行った.21例に対してCSPを施行し,主要評価項目である遅発性の偶発症(後出血,遅発性穿孔)は1例も認めなかった 4.次に多施設での安全性および有効性を評価する目的で,大規模な多施設臨床研究(D-COP trial)を開始した.2018年1月~2019年2月に日本全国86施設から10mm以下のSNADETs 430病変が登録された.CSPの完遂割合86%,一括切除割合90%,後出血0.7%,術中穿孔0%,遅発性穿孔0%であり,主要評価項目である12カ月間の局所再発割合は3.8%(95%信頼区間2.1-6.3%)で閾値7%を下回ったため非劣性が示された.10mm以下のSNADETに対するCSPは安全で,12カ月間の遺残再発割合も既報のEMRに劣らない有効な治療法と考えられた 5

Ⅶ 十二指腸CSPの適応病変

2021年8月に十二指腸癌診療ガイドラインが初めて刊行された 9.この中で内視鏡治療手技の一つとしてD-CSPは紹介されているが,その詳しい適応については明記されていない.大腸と同様に十二指腸においてもCSPでは粘膜筋板までほぼ粘膜全層性に切除可能であるが,粘膜下層を十分に切除することは困難であるため,粘膜下層に浸潤する可能性のある癌および癌を疑う病変に対してD-CSPは控えるべきであり,その適応は腺腫に留めるべきと考える.またサイズに関しては,10mmを超える病変ではD-CSPで切除できずに通電を要したり,術前に腺腫と診断しても切除後に癌と診断される割合が増えるため,サイズの上限は原則10mmまでとしている.10mmを超える腺腫や癌を疑う病変に対してはunderwater EMR(UEMR)を選択することが多い.なお,本法は局注を用いないため,生検瘢痕を有する場合もD-CSPの適応外とはしていない.むしろそのような病変に局注を行うと局注液が生検瘢痕周囲のみに入ってしまい,病変が埋没してスネアがかけられなくなってしまうことがあり,生検瘢痕を有する病変には局注を行わないD-CSPやUEMRがよいと考えている.

Ⅷ おわりに

十二指腸cold snare polypectomy(D-CSP)について,基本的概念から実際の手技,現在までのエビデンス等について概説した.手技的には大腸のCSPとほとんど変わりがないため,ぜひ小さな腺腫を生検で経過観察するくらいなら,一度CSPを試していただければと思う.ただしCSPではSM浸潤を評価できないため,癌を疑う病変に対してはいくらサイズが小さくてもCSPを行うのは慎むべきであることを肝に銘じていただきたい.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2022 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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