2023 年 65 巻 1 号 p. 93
【背景】消化管上皮下病変(gastrointestinal subepithelial lesion:GI-SEL)に対する超音波内視鏡ガイド下の針生検(EUS-FNB)の位置づけは明確ではない.そこで,GI-SEL診断におけるEUS-FNBの有効性,実行可能性,安全性を評価することを目的に本研究を施行した.
【方法】2015年1月以降に発表されたものを対象にPubMedとEMBASEで検索し,システマティックレビューならびにメタアナリシスを行い,診断率,手技成功率(検体採取率),有害事象を算出した.試験の質の評価にはJadadスケールとNewcastle-Ottawaスケールを用い,出版バイアスの測定にはFunnelプロットとEggerの検定を用い,不均一性の分散と感度を探るために感度とサブグループ解析を行った.
【結果】969例の患者を分析した16編の研究が解析対象となり,13編は質が高い研究と判断された.診断率,手技成功率,有害事象は,それぞれ85.69%(95%信頼区間(CI):82.73-88.22,I2=41.8),98.83%(95% CI:96.73-99.97,I2=54.3),1.26%(95% CI:0.35-2.54,I2=0.0)であった.サブグループ解析では,臨床的な影響因子は同定されなかった.
【結論】EUS-FNBは,診断率,手技成功率,安全性に優れており,GI-SELの診断に最適な選択肢となる有望な手技である.
GI-SELの中で頻度が高いGISTは悪性腫瘍に位置付けられており,GI-SELからの組織採取は重要である 2).上皮性病変は鉗子生検で診断が容易であるが,GI-SELは腫瘍が粘膜面に露出していない場合が多く,組織採取が困難である.その問題点を解決する手技として,EUS-guided fine-needle aspiration(EUS-FNA)が普及した 2).しかし,穿刺時に消化管壁と一緒に病変が逃げてしまう,病変が硬く穿刺が難しいなどの理由で,GI-SELのEUS-FNAは検体採取率が低いことが問題視されてきた 3).一方,近年は,先端形状を工夫したFNB針が開発された.EUS-FNBを行うことで,量と質の良い検体を採取できるようになり,GI-SELでも高い検体採取率の報告が散見されるようになった.しかし,少数例の研究が多く,メタアナリシスも2編のみ 1),4)である.
本研究は,GI-SELに対するEUS-FNA(EUS-FNBを含む)の3編目のメタアナリシスである 1).合計969例のEUS-FNBにおいて,診断率85.69%,手技成功率98.83%という良好な成績であった.なお,EUS-FNBの高い検体採取率から,膵腫瘍ではrapid on-site evaluation(ROSE) 5)の不要論が起きている 6).本研究ではROSEに関する解析はなく,今後はGI-SELのEUS-FNBにおけるROSEの必要性と意義,ならびにmacroscopic on-site evaluation 7)の検討も必要と考える.なお,FNB針は先端の形状に特徴があり,出血や穿孔が危惧される.しかし,本研究では出血12例,腹痛2例,発熱1例がみられたが,いずれも保存的治療や内視鏡治療で改善し,安全性に問題がなかった.
本研究では,GI-SELに対するEUS-FNBの有効性と安全性が証明されたが,FNB針の種類による診断性能の違いは未だ不明であり,20mm以下のGI-SELでの有効性も確立されていない.したがって,今後はこれらの点に関する大規模試験が必要である.