日本消化器内視鏡学会雑誌
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悪性胃排出路閉塞に対する超音波内視鏡下胃空腸吻合術と十二指腸ステント留置術,腹腔鏡下胃空腸吻合術
阿部 展次
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2023 年 65 巻 11 号 p. 2357

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【目的】悪性胃排出路閉塞に対する超音波内視鏡下胃空腸吻合術,腹腔鏡下胃空腸吻合術,十二指腸ステント留置術の成績を比較検討する.

【方法】2012年から2020年の期間で,超音波内視鏡下胃空腸吻合術,腹腔鏡下胃空腸吻合術,ステント留置術が行われた症例を対象とし,後ろ向きに治療成績を比較検討した.治療成績は技術的成功率・臨床奏効率,術後30日以内の合併症率・死亡率,術前後のgastric outlet obstruction score(GOO score)などとした.

【結果】114例の患者(超音波内視鏡下胃空腸吻合術30例,腹腔鏡下胃空腸吻合術35例,ステント留置術49例)を対象とした.技術的成功率は各々93.3%,100%,100%(p=0.058),臨床奏効率は各々93.3%,80%,87.8%(p=0.058)であった.処置時間は有意に腹腔鏡下胃空腸吻合術が長かった.超音波内視鏡下胃空腸吻合術のグループでは有意に在院期間が短く(各々1.5日,7日,5日),閉塞再発率/要再処置率が低かった(各々3.3%/3.3%,17.1%/17.1%,36.7%/26.5%).1カ月後のGOO scoreは超音波内視鏡下胃空腸吻合術のグループで最も高値であった(各々3,3,2).

【結論】超音波内視鏡下胃空腸吻合術は腹腔鏡下胃空腸吻合術やステント留置術よりも臨床成績は良好であった.超音波内視鏡下胃空腸吻合術に熟練した内視鏡医がいる場合は,悪性胃排出路閉塞に対する治療法として本法はベストな選択肢になり得ると考えられた.

《解説》

膵癌や胃・十二指腸癌などによる切除不能悪性胃排出路閉塞に対する確立されたマネージメントには,内視鏡的ステント留置術や外科的胃空腸吻合術がある.一般的には長期予後が期待されるような症例に対しては外科的胃空腸吻合術が,全身状態不良で予後の限られた終末期患者に対しては内視鏡的ステント留置術が行われる.一方,最近では,外科的胃空腸吻合術より低侵襲で,かつ内視鏡的ステント留置術よりも再発が少ない手技として,超音波内視鏡下胃空腸吻合術が注目されるようになっている.Itoiら 2によって報告されているlumen apposing metal stent (LAMS)を用いたEUS-guided double balloon-occluded gastrojejunostomy bypass(EPASS)は,超音波内視鏡下胃空腸吻合術に関連する難易度やリスクを減ずる方法であり,本領域では大きく注目されている治療法である 3.本報告 1では,後方視的な比較検討でselection biasはあるものの,EPASSが腹腔鏡下胃空腸吻合術やステント留置術よりも臨床成績が良好であることが示され,EPASSが将来的に悪性胃排出路閉塞に対する標準的な緩和治療法の一つとなる可能性が展望された.しかし,現時点ではEPASSを含む超音波内視鏡下胃空腸吻合術は限られた施設からの報告のみであり,今後のさらなる症例の蓄積と,従来の確立された方法(内視鏡的ステント留置術や外科的胃空腸吻合術)との前向き比較研究が進むことが望まれよう.

文 献
 
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