日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
金属ステント留置後に広範囲の被包化壊死を来し,経皮的ドレナージ後に経皮内視鏡的ネクロセクトミーが奏効した膵癌の1例
木下 英幸中路 聡 斉東 京祿平田 信人白鳥 俊康吉村 茂修川滿 菜津貴南雲 大暢仲地 健一郎真口 宏介
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2023 年 65 巻 2 号 p. 139-146

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要旨

症例は64歳女性.多発肝転移を有する切除不能膵頭部癌の診断にて化学療法を施行中であったが,胆管内への自己拡張型金属ステント留置後に尾側膵管からの膵液瘻を遅発発症した.経乳頭的アプローチは困難であったため,超音波内視鏡下膵管ドレナージ術を施行し,膵管拡張は消失した.しかし,腸腰筋から大腿内転筋群へと被包化壊死(walled-off necrosis:WON)が拡大し感染を合併した.このため,経皮的ドレナージに加え極細径内視鏡を用いて経皮内視鏡的ネクロセクトミー(percutaneous endoscopic necrosectomy:PEN)を施行し,加療に成功した.広範囲のWONに対する経皮的ドレナージとPENは外科的ドレナージの代替治療になり得ると考えられた.

Abstract

A 64-year-old woman who received chemotherapy for unresectable pancreatic head cancer with multiple liver metastases developed a pancreatic fistula after uncovered self-expandable metallic stent (SEMS) insertion for management of distal malignant biliary obstruction. Owing to SEMS placement, we could not perform successful endoscopic transpapillary pancreatic duct drainage. Endoscopic ultrasound-guided pancreatic duct drainage facilitated adequate dilation of the main pancreatic duct. However, walled-off necrosis (WON) spread to the iliopsoas and tailorʼs muscles with concomitant infection. Therefore, we performed percutaneous endoscopic necrosectomy (PEN) using a small-diameter endoscope in addition to percutaneous drainage to treat the WON. This case report highlights the usefulness of percutaneous drainage and PEN as alternative combination treatment for surgical drainage in cases of extensive WON.

Ⅰ 緒  言

従来,被包化壊死(walled-off necrosis:WON)に対しては外科的ドレナージ術が行われてきたが,近年ではより低侵襲な代替治療として超音波内視鏡下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的治療が積極的に行われるようになってきている.しかし,WONが後腹膜腔から骨盤腔を越えて広く進展した場合には経消化管アプローチは困難となる.今回,膵頭部癌の胆道ドレナージとして自己拡張型金属ステント(uncovered self-expandable metallic stent:uncovered SEMS)留置後に遅発性に発症した膵液瘻と後腹膜腔から大腿部まで広範に拡大したWONに対し,超音波内視鏡下膵管ドレナージ術(endoscopic ultrasound-guided pancreatic duct drainage:EUS-PD)後に施行した経皮的ドレナージと経皮内視鏡的ネクロセクトミー(percutaneous endoscopic necrosectomy:PEN)が奏効した症例を経験したので報告する.

Ⅱ 症  例

患者:64歳,女性.

主訴:腹痛.

既往歴:心房中隔欠損症(30歳台),胆石発作(40歳台).

生活歴:飲酒なし,喫煙なし.

現病歴:多発肝転移を有する切除不能膵頭部癌の診断にて,前医で胆管狭窄に対し胆管plastic stent(PS)を留置後,化学療法を開始した.その後,PS閉塞により胆管炎を発症したためuncovered SEMSに交換し,化学療法を継続していた.uncovered SEMS留置1カ月後に腹痛が出現し,急性膵炎の診断にて入院となった.保存的加療で改善を認めず,経乳頭的膵管ドレナージ困難なため当院に紹介転院となった.

入院時現症:身長155.4cm,体重54.0kg,体温38.8℃,血圧128/79mmHg,脈拍103/分,腹部:平坦・軟,上腹部正中および左下腹部に圧痛を認めた.左costovertebral angleに叩打痛を認めた.

入院時検査所見:WBC 20,800/mm,CRP 14.82 mg/dl,アミラーゼ 1,265U/L,リパーゼ 1,592U/Lと炎症反応と膵酵素の上昇を認めた.

前医の腹部造影CT検査:膵頭部に長径25mmの造影効果の乏しい腫瘤を認め,胆管内にSEMSが留置されている.主膵管は膵頭部で閉塞し,尾側主膵管は拡張している.膵尾部周囲から左腎周囲に脂肪織濃度上昇と液体貯留を認め,左腸腰筋への炎症の波及が認められる.

入院後経過:第3病日に主乳頭より膵管ドレナージを試みたが,uncovered SEMS留置後で膵管開口部の同定が不能であった.また,ステント抜去も不能であったため,副乳頭のプレカットを施行した.切開時の膵管挿管は不成功であったが,翌日の血中アミラーゼ値の改善がみられたため経過観察の方針とした.しかし,尾側膵管の拡張は増悪し,膵周囲から左腎周囲腔・左腸腰筋へと液体貯留が拡大したため(Figure 1),第9病日にEUS-PDを施行した.直視型コンベックス(TGF−UC260J,オリンパス社,東京)を用いて上十二指腸角から19G針(EZ Shot 3 plusTM,オリンパス社,東京)で主膵管を穿刺し,造影を行ったところ,尾側膵管から造影剤の漏出を認めた(Figure 2-a).穿刺部を拡張し,PS(ZeotubeTM,ゼオンメディカル社,東京)を留置し処置を終了した(Figure 2-b).加療後,尾側膵管の拡張は消失し,血清アミラーゼは正常化した.しかし,発熱および炎症反応の改善はみられず,左腸腰筋から左大腿内転筋へとWONの拡大を認めたため(Figure 3),感染性WONと診断した.外科的ドレナージの適応と考えられ,一度は手術の同意を得たが,その後代替治療を希望されたため,経皮的ドレナージとPENを施行することとなった.第18病日にエコーガイド下に左鼠蹊部から左腸骨筋を穿刺し,10 Frドレナージカテーテル(PTCDバルーン付きカテーテルTM,住友ベークライト社,東京)を留置し,第21病日に16 Frにサイズアップした.さらに第29病日に左大腿内側から左大腿内転筋を穿刺し,10 Frドレナージカテーテルを留置し,第38病日に14 Frにサイズアップした.カテーテルから生理食塩水潅流を試みたが,十分な効果は得られず,WONの残存が確認された(Figure 4).このため,第44病日より極細径内視鏡(GIF-XP260N,オリンパス社)を用いてPENを開始し,主にバスケットカテーテル(MTWディスポーザブル砕石用バスケットカテーテルTM,アビス社,兵庫)を用いて壊死組織の除去を計3回行った(Figure 5).炎症反応の改善,およびWONの消失を確認し(Figure 6),第55病日に軽快退院となった(Figure 7).

Figure 1 

EUS-PD施行前のCT画像.

尾側膵管の拡張は増悪し,膵周囲および左腎周囲腔,左腸腰筋へと液体貯留が拡大していた(矢印).

Figure 2 

EUS-PD.

a:上十二指腸角から膵頭部主膵管を穿刺し,膵管造影を施行.尾側膵管から膵液瘻がみられた(矢印).

b:膵管内に逆行性にプラスチックステントを留置.ステント先端は膵液瘻部の頭側となった(矢頭).

Figure 3 

EUS-PD施行後のCT画像.

EUS-PDにより膵管拡張は消失したが,膵周囲から左腎周囲腔を経て左腸腰筋(矢印),左大腿内転筋(矢頭)へとWONが広がっていた.

Figure 4 

経皮的ドレナージカテーテル留置後のCT画像.

腸腰筋ドレナージカテーテル(矢頭),大腿ドレナージカテーテル(矢印)留置後もWONが残存していた.

Figure 5 

経皮的ネクロセクトミー施行時.

a(透視像),b(内視鏡像):経皮ドレナージの瘻孔から極細径内視鏡を挿入し,バスケットカテーテルを用いて壊死物質を除去した.

Figure 6 

ネクロセクトミー終了後のCT画像.WONの消失を確認した.

Figure 7 

治療経過.

EUS-PD:超音波内視鏡ガイド下膵管ドレナージ術(endoscopic ultrasound-guided pancreatic drainage).

PEN:経皮内視鏡的ネクロセクトミー(percutaneous endoscopic necrosectomy).

Ⅲ 考  察

一般的に,膵液瘻の原因としては膵切除・外傷・内視鏡検査による偶発症・急性膵炎等が挙げられている.本例では,uncovered SEMS留置1カ月後に膵液瘻を発症しており,留置したuncovered SEMSにより乳頭部近傍で過形成性変化を来した結果,膵液の流出障害が助長された可能性の他,膵癌に伴う主膵管閉塞に起因した急性膵炎に膵液瘻を合併した 1)~5可能性が考えられる.いずれにしろ,閉塞性膵炎により膵管破綻が生じ,上流側の膵管内圧が上昇しているために破綻部が修復されず,膵液が持続的に漏出していた状態と考えられた.

膵液瘻に対する治療には,経乳頭的な膵管ドレナージ術と形成された囊胞やWONに対する穿刺ドレナージ術がある.本例では,当院転院時は,膵周囲に漏出した膵液は被包化されていなかったため膵管ドレナージ術を施行する方針とした.はじめに経乳頭的ドレナージを試みたが,SEMS留置後であり膵管挿管が不能であったため,代替法としてEUS-PDを行う方針とした.膵管ドレナージを施行する際には,瘻孔部をまたぐようにドレナージチューブを留置するbridge therapyが瘻孔の閉鎖につながりやすいと報告されている 6.EUS-PDは,経胃的に体尾部主膵管を穿刺し,ステント留置することが一般的であるが,本例では瘻孔部が尾側膵管に存在している可能性を考慮し,経十二指腸的に穿刺した.また,瘻孔部が尾側末梢に存在していたため,瘻孔部をまたぐbridge therapyは困難であり,膵管内圧の減少を目指してステント先端を瘻孔部近傍の頭側に留置した.ステント留置部位については,膵体尾部切除術後の膵液瘻に対する断端近傍からの経乳頭的膵管ドレナージ術の有用性が報告されており 7,瘻孔部をまたがなくとも,膵管内圧を低下させることは膵液瘻の治療に有効であると考えられる.本例においても,異常高値が持続していた血清アミラーゼ値はEUS-PD施行後速やかに正常化し,画像上も主膵管拡張が改善したことから膵管の減圧は達成されたと判断した.一方,内瘻術である内視鏡的膵管ステント留置術(endoscopic pancreatic stenting: EPS)は早期閉塞や感染の危険性があるため 8,内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(endoscopic nasopancreatic drainage:ENPD)による外瘻術の方が望ましいとされているが,本例は経消化管的アプローチであり,逸脱の危険性を考慮しENPDではなくEPSを選択した.ただし,このことによりWONに感染を併発させた可能性は否定できない.

囊胞およびWONの穿刺ドレナージ術については,本例のように増大傾向にあり,感染を伴った場合には絶対適応と考えられている 9.従来,壊死組織を多く含むWONに対しては外科的ネクロセクトミーが行われてきた.しかし,その高い偶発症発生率や死亡率などから,より低侵襲な内視鏡的ネクロセクトミーが盛んに行われるようになってきている.Bakkerらは内視鏡と外科的ネクロセクトミーを施行した群の比較試験の結果,術後の炎症の指標となるIL-6の値が内視鏡群において有意に低く,主要合併症と死亡率についても内視鏡群では20%であり,外科手術群の80%に比較し有意に低率であったと報告している 10.また,近年では偶発症の発症を低減させるため,内視鏡的ドレナージを先行させ,十分な改善効果がみられない場合には追加で内視鏡的ネクロセクトミーを行うstep-up approachが推奨されている 11)~14.内視鏡的ネクロセクトミーはその穿刺経路から経消化管ネクロセクトミーと経皮ネクロセクトミーに大別される.クオリティ・オブ・ライフ(QOL)などの観点から内瘻化が可能な経消化管ルートが選択されることが多いが,骨盤腔まで至る広範囲のWONの症例などでは困難な場合もある.そのような症例においては,経皮的アプローチも考慮される 12.本例のWONは左腎周囲腔から腸腰筋内を介し大腿内転筋群内にまで拡大していたことが特徴であるが,漏出した膵液が腸骨筋に沿って下行し大腿部まで至ることは稀であり 15)~17,腸骨筋内にWONを形成することも稀である 18.既報では,外科的ドレナージ術や複数本の経皮ドレナージチューブを留置することで加療されていたが,死亡例も含まれていた.本例では,経皮ドレナージを施行し,ドレナージチューブからの洗浄も加えたが,改善がみられなかったため,PENを施行し加療に成功した.

「percutaneous」「endoscopy」「necrosectomy」「pancreatic」をキーワードとして,2000年から2019年の期間でPubMedによる文献検索を行ったところ,上部消化管内視鏡を用いて複数例にPENを施行した報告は4報であった(Table 1 19)~22.症例数はそれぞれ10~15例であり,本例と同様に,経皮ドレナージにより感染のコントロールがつかない場合にPENの適応と判断されていた.いずれの報告においてもPENの成功率は90%以上,死亡率は10%以下であった.死亡例は1例であり,2度のPENの後に外科手術が施されたが,敗血症により死亡していた 19

Table 1 

PEN施行報告例.

一般にPENを施行する際は,はじめに10 Fr程度の瘻孔を形成し,段階的に拡張する.汎用上部消化管内視鏡を挿入するためには,30 Fr程度までの瘻孔拡張が必要であり,拡張に時間を要するため入院期間は長くなる.本例に対しては瘻孔拡張に費やす時間を短縮する目的で極細径内視鏡を使用した.しかしながら,鉗子口径が2.0mm(最新機種では2.2mm)であり,壊死組織の除去においては把持鉗子や三脚などのデバイスは使用できず,1.8mm径のバスケットカテーテルが唯一使用可能であった.そのため,本例では1回の処置に90〜150分を要しており,他の報告に比べ1回の処置時間が長くかかっていた.結果として瘻孔径を拡張し,汎用上部消化管内視鏡を挿入した方がデバイスの選択肢が広がるため,より短時間でWONの消失が得られた可能性も考えられた.また,Goenkaらははじめから32 Frの瘻孔形成を行うことにより,入院期間の短縮に成功したと報告している 22.PENについては報告数も未だ少ない状況にあり,今後の症例の蓄積と専用の処置具の開発などが必要と考える.

Ⅳ 結  語

Uncovered SEMS留置後の膵液瘻に対し,EUS-PDによる膵管ドレナージを施行し膵管内圧の減少は得られたが,感染性WONが広範囲に拡大したため,経皮的ドレナージとPENを施行し奏効した膵癌例を経験した.尚,本論文の一部は第97回消化器内視鏡学会総会(2019年5月,東京)にて発表した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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