2023 年 65 巻 3 号 p. 312
【背景】炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease;IBD)患者では,CS後に診断された大腸癌(Postcolonoscopy Colorectal Cancers;PCCRC)は大腸癌の最大50%を占めると報告されている.本研究の目的は,PCCRCを発症したIBD患者の特徴および生存率を調査することである.
【方法】1995年から2015年に大腸癌と診断されたIBD患者(潰瘍性大腸炎[Ulcerative colitis;UC],クローン病[Crohnʼs disease;CD])を同定した.CS後6~36カ月の間に診断されたものをPCCRCと定義し,6カ月以内に診断されたものをdetected CRC(dCRC)とした.PCCRCとdCRCの特徴を比較し,PCCRC/dCRCの診断から死亡,転居,試験終了まで患者を追跡調査した.
【結果】CSを受けたUC 23,738例のうち,352例が大腸癌であり,そのうち103例(29%)はPCCRCであった.PCCRCはdCRCと比較して,遠隔転移を有する癌(33% vs. 20%),ミスマッチ修復欠損を示す癌(79% vs. 56%),近位結腸癌(54% vs. 40%)が多かった.UCでの大腸癌(PCCRC対dCRC)関連死の1年および5年調整ハザード比は,1.29(95%CI 0.77-2.18)および1.24(95%CI 0.86-1.79)であった.
【結論】UC関連PCCRCはその特徴から,癌への進展に関し,異なる性質を持つことが示唆された.しかし,PCCRCの予後はdCRCと同程度であった.
通常の大腸癌でのPCCRCは8.6%程度とされているが 2),本検討でIBD関連のPCCRCは,UC 29%,CD 20%であった.UCでは,サブ解析も詳細にされており,PCCRCの特徴が示されたが,予後に関してはdCRCと差はなかった.一方でCDは症例数が少なくはあるが,大腸癌(PCCRC対dCRC)関連死の1年および5年調整ハザード比は,3.02(1.29-7.09)および2.37(1.34-4.18)と,PCCRCの予後はdCRCより悪かった.
Noguchiらが日本でのIBD関連癌の特徴や予後について報告しているが 3),CD関連癌の5年生存率を,同じ病期のUC関連癌と比較すると有意に低く(stage 2,76% vs. 89%,stage 3,18% vs. 68%,stage 4,0% vs. 13%),UCでは内視鏡検査の間隔の短さが,早期での癌の診断率と相関していたが,CDではそうではなかった.
UCのサーベイランスに関しては,散発性腫瘍よりも検出が難しいことを前提に,改良・改訂されてきており,今後もqualityを上げていく必要がある.CD関連癌はUC関連癌とも違う性質を持つ,さらに難しい癌であることを改めて感じるところである.