日本消化器内視鏡学会雑誌
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65 巻, 3 号
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総説
  • 松田 浩二, 中井 陽介, 藤城 光弘
    2023 年 65 巻 3 号 p. 203-213
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    元来,周術期管理は,手術室を中心とした,多職種が介入するチーム医療で形成されている.一方,内視鏡診療は,技術・機器の進歩により,その複雑化と長時間化に対応するため,多職種を交えたチーム医療が求められてきている.本稿では,周術期管理の歴史,世界保健機関からの提言,消化器内視鏡検査・周術期管理の標準化ハンドブックの要旨,周術期管理の標準化がもたらす効果,それを支援するツールについて述べた.さらには,消化器内視鏡検査・周術期管理に関する目標を提言するとともに,麻酔科医から見た消化器内視鏡診療における周術期管理の将来像についても言及した.

  • 古川 和宏, 中村 正直, 川嶋 啓揮
    2023 年 65 巻 3 号 p. 214-228
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    粘膜下腫瘍(subepithelial tumor;SET)は日常臨床でしばしば遭遇する疾患の一つである.EUSは腫瘍径や局在層,内部エコーレベル,内部エコーパターン,辺縁の形状などの観察が可能であり,SETの診断にとって不可欠な検査の一つだが,間葉系腫瘍をEUS所見のみで診断することは困難である.確定診断のためには組織診や免疫染色が必要なものの,delleを伴う病変を除くと正常粘膜で覆われているため,内視鏡下生検では腫瘍組織を得ることはできない.そのため,ボーリング生検や超音波内視鏡下穿刺吸引法/生検法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration;EUS-FNA/endoscopic ultrasound-guided fine needle biopsy;EUS-FNB),粘膜切開生検(mucosal incision-assisted biopsy;MIAB)など,様々な組織採取法が行われている.本稿では,これまでの臨床研究の成績を中心に,胃SETに対するEUS-FNA/BとMIABについて概説する.

症例
  • 岸 加奈子, 足立 経一, 坂本 詩恵, 三代 知子, 結城 崇史, 串山 義則, 三浦 弘資, 石村 典久, 石原 俊治
    2023 年 65 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    症例は45歳女性.15年前にHelicobacter pyloriH. pylori)除菌歴がある.定期健診のEGDにて幽門前庭部に経年的に増大する軽度発赤調0-Ⅱa+Ⅱc病変を認め,生検にて印環細胞癌と診断された.生検組織では印環細胞癌は粘膜固有層内に密に増殖しており,中心のびらん部だけでなく,びらん周囲の隆起部と思われる正常上皮に覆われた領域の粘膜固有層内にも癌が存在していた.ESD前の観察では病変部は平坦陥凹化していたものの,生検前の病変は粘膜固有層内の癌の増殖により隆起型として発生した可能性が考えられた.ESD後の病理組織では4×3mm大の粘膜内癌と診断された.H. pylori未感染例や除菌後例にはこのような形態の印環細胞癌が発生しうることにも留意した内視鏡観察が必要である.

  • 合原 彩, 井関 隼也, 中村 昌司, 藤森 正樹, 伊藤 公子, 高橋 俊介, 安原 裕美子, 北村 信次
    2023 年 65 巻 3 号 p. 236-243
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    症例は63歳男性.発熱・咽頭痛を主訴に受診し,新型コロナウイルス感染症の診断で入院となり,第3病日に人工呼吸管理を開始した.第25病日に水様下痢が出現し,連日3L以上の下痢が続いた.第55病日に大腸内視鏡検査を施行しCytomegalovirus腸炎と診断,ガンシクロビルによる治療を開始し下痢は一時的に改善するも再増悪あり,第98病日に小腸ダブルバルーン内視鏡を施行したところ,空腸はびまん性に絨毛構造が消失していた.大量胸腹水貯留のため循環呼吸維持が困難となり,第111病日永眠された.病理解剖では小腸全体に粘膜上皮が剝脱した所見がみられた.新型コロナウイルス感染症では重篤な下痢を合併する症例があり,その病態解明は今後の課題である.

  • 今川 貴之, 村松 丈児, 飴田 咲貴, 伊藤 亮, 佐賀 潤也, 柴田 敬典, 野田 さや香, 上小倉 佑機, 西川 祐司, 村松 博士
    2023 年 65 巻 3 号 p. 244-250
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    症例は72歳男性.腰部脊柱管狭窄症の術前CTで後縦隔,仙骨前面に脂肪成分豊富な腫瘍を認めた.脂肪肉腫を含めた悪性軟部腫瘍を疑い,仙骨前面腫瘍に対し経直腸超音波内視鏡下穿刺生検術(Endoscopic ultrasound-guided fine-needle biopsy:EUS-FNB)を施行した.処置後合併症を認めず,病理所見より骨髄脂肪腫と診断し,経過観察とした.軟部腫瘍に対する生検術は適切な治療方針を選択するために必須であるが,軟部腫瘍に対する経直腸EUS-FNBは出血や感染症の合併症,needle tract seeding含めた播種などのリスクを有している.仙骨前面骨髄脂肪腫を合併症なく経直腸EUS-FNBで診断した報告は稀であり,報告する.

  • 川口 俊弘, 大田 諭, 板野 晋也, 斉東 京祿, 梶原 彰, 相野 一, 前川 隆一郎, 鳥村 拓司
    2023 年 65 巻 3 号 p. 251-256
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    症例は79歳女性.2年前に受けた大腸内視鏡の経過観察目的で紹介受診した.受診6日後に大腸内視鏡を施行し,偶然下行結腸にpress-through package(PTP)を認め,回収ネットを用いて摘出し得た.検索し得た限りでは,PTPを大腸内で発見し内視鏡的に摘出し得た症例は本症例が5例目であった.PTP誤飲は主に上部消化管内視鏡で発見・摘出され,幽門を超え大腸内で認めるPTPに関しては穿孔例や自然排泄例の頻度が不明で内視鏡的除去法は確立していない.今回,われわれは大腸内視鏡で偶然PTPを認め,摘出し得た稀な1例を経験したので報告する.

  • 佐々木 一憲, 齊藤 修治, 宮島 綾子, 植田 吉宣, 江間 玲, 平山 亮一, 大塚 亮
    2023 年 65 巻 3 号 p. 257-262
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    78歳女性.発熱を主訴に来院した.発熱の原因は肝膿瘍であり,抗生剤治療で速やかに改善したが,原因の検索は不十分であった.その6カ月後に発熱で再度来院,CT検査で肝膿瘍の再燃を認め,抗生剤と膿瘍ドレナージを施行した.肝膿瘍の再燃をきたした要因として,6カ月前より認めるS状結腸内の異物が原因である可能性を考えた.CSを施行,S状結腸内に刺入した異物を認め,除去したところ爪楊枝であった.異物除去後は腹部所見に注視して慎重に食事を開始し,異物除去後1カ月で軽快退院となった.退院後6カ月で肝膿瘍の再燃を認めていない.肝膿瘍の原因として腸管内異物も鑑別に挙げ,異物除去を積極的に行うことが肝要である.異物除去は外科的処置が必要になることもあるが,本症例は内視鏡的に摘出可能であった.

手技の解説
  • 大宮 直木, 岡 志郎, 田中 信治
    2023 年 65 巻 3 号 p. 263-270
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    カプセル内視鏡は本邦では小腸用および大腸用カプセル内視鏡が保険承認され,また小腸用カプセル内視鏡の通過性判定目的の崩壊型ダミーカプセルであるパテンシーカプセルも保険承認されている.カプセル内視鏡の最大の利点は嚥下するのみで苦痛なく消化管内腔が観察できることであるが,小腸カプセル内視鏡,パテンシーカプセルの大きさは11×26mm(CapsoCam Plusは11×31mm),大腸カプセル内視鏡の大きさは11×31mmのため,小児や嚥下障害・意識障害のある成人ではカプセル内視鏡の挿入補助が必要となる.また,食道・胃に長時間停滞する場合も小腸以深の観察が不十分となりうるため十二指腸への誘導が必要となる.診療報酬の面では,15歳未満の患者に対し内視鏡的挿入補助具を用いてカプセル内視鏡を行った場合に内視鏡的留置術加算として260点の保険点数が令和4年4月に新設された.本稿ではカプセル内視鏡の挿入補助の器具,手技,および国内多施設共同調査AdvanCE-J studyの成績について解説する.

  • 岡部 義信, 島松 裕, 佐々木 優
    2023 年 65 巻 3 号 p. 271-278
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    近年のERCPは診断のみならず治療手技へ大きく発展しているが,手技を成功させるためにガイドワイヤーの使用が欠かせない.ガイドワイヤーの用途は,目的部位へ到達するための先導的役割(seeking),目的部位へ各処置具を誘導する役割(leading),X線透視下で胆膵管走行の目安とする役割(landmark),があり手技の効率化と目的達成率の向上および偶発症の軽減に寄与している.最近は,治療手技の増加や複雑性を背景に,多種多様なガイドワイヤーが市販されているが,各ガイドワイヤーの形状や処置具との相性,操作性,偶発症対策を知っておく必要がある.本稿では,ERCP関連手技におけるガイドワイヤー操作の基本とコツ,さらにはトラブルシューティングについて症例提示を踏まえて解説する.

資料
  • 間部 克裕, 井上 和彦, 鎌田 智有, 加藤 勝章, 加藤 元嗣, 春間 賢
    2023 年 65 巻 3 号 p. 279-287
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    2014年に改訂された胃がん検診ガイドラインにおいて対策型胃がん検診に内視鏡検査を用いることが認められた.これにより内視鏡検査とヘリコバクター・ピロリ除菌療法がさらに普及し,胃癌がより早期に発見され,胃癌死亡率がさらに減少することが期待されている.しかし,高齢化の進展や胃がん検診受診率の低さから,胃癌は依然として日本における癌死亡原因の第1位である.内視鏡による胃がん検診の時代が始まったとはいえ,内視鏡医不足,地域差があるなどの課題がある.本稿では,日本における胃がん検診の歴史と,日本と韓国における胃がん内視鏡検診について,胃がんリスク層別化による検診改善の取り組み,内視鏡スクリーニング認定制度の実施など,検診の充実を目指した日本消化器内視鏡学会の取り組みを紹介する.

  • 山本 頼正, 草野 央, 中村 理恵子, 小野 尚子, 角嶋 直美, 片倉 響子, 木下 真樹子, 品川 和子, 田邊 万葉, 中山 佳子, ...
    2023 年 65 巻 3 号 p. 288-302
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    電子付録

    日本消化器内視鏡学会の会員における女性医師の割合は年々増加している.女性内視鏡医が出産,育児等を行いながらキャリア形成を行うには様々な支援が必要である.今回どのような支援が必要かを明らかにするために,女性内視鏡医に対するアンケート調査を行った.全女性会員の28%にあたる1,494名から回答が得られ,その解析を行った.

    キャリア形成の障害としては,「出産・育児」,「自分の体調,体力」が多く回答された.キャリア支援へ望むことは,「主治医制ではなくチーム制の導入」,「緊急時の代替要員の確保」,「病児保育の充実」が多く回答された.学会が行うべき取り組みとしては,教育講演会や学会のWeb開催や,キャリアサポート研修施設の増加とその情報提供の必要性が回答された.今後,質の高い内視鏡診療を提供するために女性医師のキャリア支援は必須の課題であり,男女共同参画事業として学会全体で取り組むことが必要である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 平岡 佐規子
    2023 年 65 巻 3 号 p. 312
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/20
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    【背景】炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease;IBD)患者では,CS後に診断された大腸癌(Postcolonoscopy Colorectal Cancers;PCCRC)は大腸癌の最大50%を占めると報告されている.本研究の目的は,PCCRCを発症したIBD患者の特徴および生存率を調査することである.

    【方法】1995年から2015年に大腸癌と診断されたIBD患者(潰瘍性大腸炎[Ulcerative colitis;UC],クローン病[Crohnʼs disease;CD])を同定した.CS後6~36カ月の間に診断されたものをPCCRCと定義し,6カ月以内に診断されたものをdetected CRC(dCRC)とした.PCCRCとdCRCの特徴を比較し,PCCRC/dCRCの診断から死亡,転居,試験終了まで患者を追跡調査した.

    【結果】CSを受けたUC 23,738例のうち,352例が大腸癌であり,そのうち103例(29%)はPCCRCであった.PCCRCはdCRCと比較して,遠隔転移を有する癌(33% vs. 20%),ミスマッチ修復欠損を示す癌(79% vs. 56%),近位結腸癌(54% vs. 40%)が多かった.UCでの大腸癌(PCCRC対dCRC)関連死の1年および5年調整ハザード比は,1.29(95%CI 0.77-2.18)および1.24(95%CI 0.86-1.79)であった.

    【結論】UC関連PCCRCはその特徴から,癌への進展に関し,異なる性質を持つことが示唆された.しかし,PCCRCの予後はdCRCと同程度であった.

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