日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
免疫チェックポイント阻害薬と硬化性胆管炎
栗田 裕介関野 雄典窪田 賢輔
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2023 年 65 巻 6 号 p. 1102-1109

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要旨

免疫チェックポイント阻害薬が広く臨床の場で使用されるようになるに伴い消化器領域でも免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events:irAE)が報告されている.irAE肝障害のうち胆管炎は免疫チェックポイント阻害薬の治療反応例で多いとされ,その頻度は,4.5%程度と稀ではあるが,しばしば診断に難渋する.超音波検査では胆管壁肥厚を認め,胆管造影上は明らかな閉塞や狭窄所見は伴わず,胆道鏡では特徴的なびらん,潰瘍性変化を有するとされる.免疫チェックポイント阻害薬使用経験例における胆道系有意の肝障害はirAE硬化性胆管炎を常に鑑別におき,各種画像検査による確実な診断を行う必要がある.またirAE硬化性胆管炎の治療はステロイドであるが,治療抵抗性を示すことが多く,難治性であることを留意する必要がある.

Abstract

Immune checkpoint inhibitors are widely used in clinical practice, and immune-related adverse events (irAE) have been reported. An irAE liver injury, cholangitis, has been reported to occur frequently in patients who respond to treatment with immune checkpoint inhibitors. Sclerosing cholangitis is rare, occurring in only 4.5% of patients with liver injury who respond to immune checkpoint inhibitor therapy, and often difficult to diagnose. Ultrasonography shows thickness of the bile duct wall, cholangiography shows no obvious obstruction or stenosis, and cholangioscopy shows erosions and ulcerative changes on the surface of the bile duct. In patients who use immune checkpoint-inhibitors, damage of the biliary system should always be considered as irAE sclerosing cholangitis, and a definitive diagnosis should be made using various imaging studies. Although irAE sclerosing cholangitis is treated using steroids, it is often refractory to treatment and intractable.

Ⅰ はじめに

近年,免疫チェックポイント阻害薬は,広く使用されるようになってきた.しかしながら従来の抗がん剤では認められなかった免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events:irAE)を発症することがあり,その診断と対策は重要となる.消化器疾患では,腸炎,肝障害,膵炎などはかねてより報告されているが,硬化性胆管炎の報告もされるようになってきた.本稿では免疫チェックポイント阻害薬に関連した硬化性胆管炎について解説をする.

Ⅱ 免疫チェックポイント阻害薬による硬化性胆管炎

分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害薬の開発により,がんにおける薬物療法は大きく発展してきた.免疫チェックポイント阻害薬は多くの癌で標準治療として使用されるようになり,その使用される頻度は増加傾向にある.その一方で免疫チェックポイント阻害薬の有害事象は免疫に関連した有害事象となるため,従来の細胞障害性抗がん剤,分子標的薬とは大きく異なり,特有の対処方法が要求される.免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連の肝障害としては肝実質の障害による肝機能障害のほか,胆管障害が中心となる胆管炎も報告されている.irAE硬化性胆管炎は難治性であることが多いとされる.

Ⅲ 疫  学

非小細胞型肺癌に対するニボルマブの第Ⅲ相臨床試験におけるirAEの発症率は32.0~64.8%という報告がある.その中でも肝障害は1.5~7.7%に認められ,消化管,内分泌,内分泌関連のirAEに比較すると頻度は低いとされる.irAE硬化性胆管炎の発症頻度はさらに少ない頻度と報告されており,0~4.5%とされる 1),2.特にニボルマブにおいては,irAEの発症は,ニボルマブの奏効,PD-L1発現の間に関連性がある可能性が示唆されている 3.irAE硬化性胆管炎も,他のirAEと同様にニボルマブに良好な反応性を示す患者に多く発症するとされる 4.なお,これまでに50例程度の症例の報告がなされている.

irAEの発症時期は,免疫チェックポイント阻害薬導入後には時期を問わず発生する可能性があるとされるが,多くの症例において数週から数カ月以内に発症するとされる 1),2),5.皮膚関連irAEは治療後2~3週間以内と早く発症し,irAE肝障害は6~7週間以内に発症するとされるが 5,irAE硬化性胆管炎については,これまでのレビューによる報告では,胆管炎はニボルマブ治療開始2~24サイクル後(中央値5サイクル),つまり10週後(4~48週後)を目安に発症するとされる 4.irAE硬化性胆管炎も,他のirAEとおおよそ同様な時期に発生する可能性があることが示唆される.

Ⅳ 診  断

肝障害はどの免疫チェックポイント阻害薬でも生じることがある.治療中のみならず治療終了後にも生じる.そのため免疫チェックポイント阻害薬の使用経験がある患者における肝胆道系酵素の上昇は常にirAEを鑑別に挙げる必要がある.

鑑別として挙げるべき疾患としては,肝実質性の要因としてウイルス性肝炎(HBV,HCV),自己免疫性肝炎,原発性胆汁性胆管炎,薬物性肝障害,脂肪肝,アルコール性肝障害,胆道系の要因として,胆石,総胆管結石,原発性硬化性胆管炎,悪性胆道狭窄がある(Table 1 6),7.そのため,まず画像所見にて器質的異常を確認し,肝実質性の要因を確認,除外したうえで,胆道系の鑑別疾患の画像診断を試みることが重要である.KawakamiらはirAE硬化性胆管炎の6つの特徴を挙げており(Table 2 8,その特徴と鑑別疾患を念頭に鑑別していく.

Table 1 

硬化性胆管炎の鑑別診断.

Table 2 

irAE硬化性胆管炎の特徴.

irAE硬化性胆管炎における各画像所見について自験例を交えて解説をする.CTでは胆管壁,胆囊壁に肥厚を認める(Figure 1).一般的に狭窄や閉塞は来さない 9.MRCPでは総胆管は特記所見を認めないが,肝内胆管にわずかな狭小化所見を認める(Figure 2).超音波内視鏡検査(EUS)は胆管,胆囊を含めた胆道に全周性の均一な壁肥厚を認める(Figure 3).内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)は胆管壁に凹凸を伴う壁不整を認める(Figure 4).肝内胆管を中心に多発狭窄および枯れ枝上の胆管像を認めるケースもあるとされる 10.また胆道鏡では胆管内全周性に上皮の脱落や広範囲に全周性~局所的なびらん,潰瘍性病変を認めるとされ,irAE硬化性胆管炎に特徴的な所見であり 9)~11,診断に有用な可能性がある.黒色班と黄色プラークを有する潰瘍性病変も報告されている 9

Figure 1 

CT:胆囊壁と胆管壁に肥厚を認める.

Figure 2 

MRCP:肝外胆管に特記すべき所見を認めないが,肝内胆管は枯れ枝状に狭小化を認める.

Figure 3 

EUS:胆囊壁と胆管壁の広範囲全周性に比較的均一な壁肥厚を認める.

Figure 4 

ERCP:遠位胆管に凹凸構造をなす壁不整を認める.

胆管狭窄を来す各疾患の特徴と鑑別点をTable 3にまとめる.まず胆管癌の除外が必須となるが,鑑別診断における重要なポイントとしては,irAE硬化性胆管炎は胆管癌と異なり,明らかな閉塞機転がないことや胆管壁肥厚が比較的均一で胆道広範囲に連続性がある点が重要である.胆管癌も広範囲に腫瘍細胞が進展するケースがあるが,他の硬化性胆管炎とは異なり非病変部には壁肥厚所見がないことがポイントである.また比較的均一な胆道壁肥厚としては画像上IgG4関連硬化性胆管炎や好酸球性胆管炎との鑑別が問題になることが多いと想定されるが,IgG4関連硬化性胆管炎は狭窄に強い圧排を来す傾向があるが粘膜構造は保たれる,irAE硬化性胆管炎は狭窄が軽度で閉塞がない点が鑑別ポイントとして挙げられる.超音波内視鏡は以上の画像所見を低侵襲で観察できることから,ERCPに先んじて行うべき必須検査と考える(Figure 5).また臨床所見として免疫チェックポイント阻害薬の使用経験や,IgG4関連疾患における他の合併疾患,アレルギー疾患の合併のほか,IgG4,抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体,抗平滑筋抗体など各種マーカーを含めた血液検査所見など他の臨床所見も重要な鑑別点となる.

Table 3 

胆管狭窄疾患の特徴と鑑別点.

Figure 5 

EUSにおける胆管狭窄における各疾患の特徴.

a:IrAE硬化性胆管炎.比較的均一な壁肥厚が連続する.また明確な閉塞機転は認められない.

b:胆管癌.不整な壁肥厚と胆管内腔を潰すように高度な狭窄を来す.広範囲進展も来すことはあるが,他の硬化性胆管炎のように非病変部は壁肥厚を来さない.

c:IgG4関連硬化性胆管炎.均一で連続性のある壁肥厚を来し,狭窄部は圧排性の高度狭窄を来す.

d:好酸球性胆管炎.連続性で均一な壁肥厚と強い狭窄を来す.

e:原発性硬化性胆管炎.連続性であるが,突出様所見や輪状狭窄を認め,一般に不規則である.

Ⅴ 病  理

irAE硬化性胆管炎における胆管生検では,胆管周囲に炎症性変化を認める(Figure 6).これまでの報告でも上皮細胞が脱落し間質に慢性炎症細胞浸潤を伴いCD8+細胞が有意とされる 10.一方,肝生検においても胆管および胆道周囲に炎症性変化を有し,CD8+細胞が同様に有意となる.そのため胆管生検にて診断不能であったり,ERCPが困難な場合には肝生検は診断に有用な可能性がある 11.各種画像診断と胆管生検において,irAE硬化性胆管炎の診断が困難な際は肝生検も検討すべきと考えられる.

Figure 6 

胆管病理:(HE染色)炎症細胞浸潤を認める.悪性所見は認めない.

Ⅵ 治療と予後

irAE硬化性胆管炎固有の治療法はガイドラインにおいても明記されていない.そのためirAE硬化性胆管炎は,irAE肝障害における治療アルゴリズムに沿って治療を行う.Grade別の治療,対応法について以下に述べる.

1)Grade1

肝胆道系酵素の上昇がみられた場合,免疫チェックポイント阻害薬の継続は可能であるが,1週1~2回の血液検査によるフォローを行い,経過観察を行う.

2)Grade2

肝胆道系酵素の上昇を認めた場合には,免疫チェックポイント阻害薬を休薬し,血液検査によるモニタリングを3日ごとにフォローアップする.さらに肝胆道系酵素の上昇が5~7日を超えて持続ないし悪化する場合は副腎皮質ステロイドの投与を検討する(プレドニゾロン0.5~1mg/kg/日).

3)Grade3以上

免疫チェックポイント阻害薬の投与を中止し,専門医への紹介を行う.1~2mg/kg/日の静注プレドニゾロンまたはその当価量の副腎皮質ステロイドを静注する.副腎皮質ステロイドの投与においてもコントロールできない場合,ミコフェノール酸モフェチル(1,000mg/1日2回)の併用,ほか他の免疫抑制剤の使用を検討する.しかし肝機能障害における免疫抑制剤の有効性は依然として確立していない.

irAEにおける肝機能障害に比較し,irAE硬化性胆管炎はステロイド抵抗性疾患とされる.胆管障害を来す胆汁うっ滞型の肝障害はステロイド治療の反応性は不良と複数の報告がある 8),12.過去のレビューによる報告においてもステロイドの奏効率は11.5%(3/26例)であり 11,irAE関連硬化性胆管炎はステロイドの反応性が不良とされる.ステロイド反応不良の症例においては免疫抑制剤の導入が必要になることを認識するべきと考えられる.また比較的長期にわたり,ステロイドないし免疫抑制剤が必要になることから,HBVやCMVなどの再活性化を考慮する必要がある 13.ニューモシスチス肺炎の発症 10も報告されており,これら感染症は致命的になる可能性もあるため免疫抑制に伴う感染症のリスクも念頭に置く必要がある.

ステロイド治療開始後に画像所見上どのように経過するかに関しては報告がない.自験例にて肝胆道系酵素は改善を認めたが,画像上胆管壁肥厚が残存する症例を経験した(Figure 78).ステロイド治療に一定の反応性を示しても,EUS所見上は胆管壁の肥厚像は遷延して残存しており,血液検査と画像所見では経過に解離するケースが存在する可能性がある.

Figure 7 

ステロイド加療前後のEUS画像の変化.

PSL開始前に胆囊壁と胆管壁の後半に全周性の比較的均一な壁肥厚を認める.PSL開始101日目においても胆道壁の全周性の均一な壁肥厚が残存していた.

PSL開始前血液検査所見:AST 257U/l,ALT 305U/l,ALP 577U/l,γGTP 1,353U/l.

PSL開始101日目血液検査所見:AST 35U/l,ALT 40U/l,ALP 186U/l,γGTP 688U/l.

Figure 8 

ステロイド加療前後の造影CT画像の変化.

PSL開始後もやや改善しているが,軽度の胆囊壁肥厚が残存している.

Ⅶ おわりに

硬化性胆管炎を来す疾患は多岐にわたるが,免疫チェックポイント阻害薬の使用歴のある患者における胆管炎の鑑別診断には,irAE硬化性胆管炎を必ず挙げる必要がある.irAE硬化性胆管炎は特徴的な所見を呈することからまずは各種画像検査と胆管生検を行い確実に診断することが重要である.しかしながらirAE硬化性胆管炎は難治性であることが多く,原疾患もあいまって予後不良なことは留意して診療にあたるべきである.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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