日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
胃の消化管間質腫瘍に対する内視鏡的全層切除の適応と今後の展望
上堂 文也 七條 智聖
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2023 年 65 巻 7 号 p. 1195-1204

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要旨

胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)は胃壁を構成するさまざまな組織から生じるが,そのうち65-80%を占める消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)は潜在的に悪性の性質を持ち,治療を要する.GISTの治療は外科切除が標準であるが,近年は経口内視鏡を用いた内視鏡的全層切除術(endoscopic full-thickness resection:EFTR)の報告が増えている.GISTに対するEFTRの利点は内腔発育型の病変において,体壁の切開なしに胃壁と壁外組織の損傷を最小化することで臓器機能を温存できることである.GISTはリンパ節転移や浸潤性発育がないため局所切除の良い適応で,過去の多くの文献からは小さなGISTに対するEFTRの腫瘍学的・技術的な実施可能性は高いものと考えられる.以上のことから,2020年9月より11-30mmの筋原性の内腔発育型胃SMTで,潰瘍形成がなく,組織学的にGIST,または臨床的にGISTを疑う悪性所見(増大傾向,辺縁不正,実質不均一)があるものには内視鏡的胃局所切除術を先進医療Aとして施行することが可能となった.今後,前向き研究による転帰の検証が期待される.

Abstract

Gastric submucosal tumors (SMTs) can arise from various tissues of the gastric wall. Of these tumors, gastrointestinal stromal tumors (GISTs) account for 65-80%, which have a malignant nature and require treatment. The advantage of using endoscopic full-thickness resection (EFTR) for intraluminal growth-type GISTs is the ability to preserve organ function by minimizing damage to the gastric wall and extraluminal tissue without corporal incision. The oncological and technical feasibility of EFTR for small GISTs is considered to be high. Accordingly, in September, 2020, endoscopic local resection was approved as the advanced medical care for gastric SMTs that fulfil the following indication criteria: size 11-30 mm, connection to the muscularis propria in EUS, intraluminal growth type, no ulceration, and histologically evident or clinically suspicious (growing tendency, irregular margin, or parenchymal heterogeneity) GISTs. Further prospective studies are warranted to verify the outcomes.

Ⅰ 胃粘膜下腫瘍とは?

胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)は,粘膜下に存在する腫瘍によって正常粘膜が隆起して見える病変の総称である.粘膜よりも下層の胃壁を構成するさまざまな組織から生じうるが,線維組織,平滑筋組織,脂肪組織などの間葉系細胞への分化を伴うものを消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal mesenchymal tumor:GIMT)と呼称される.GIMTはその分化の方向から,平滑筋型,神経型,両者への分化を示す混合型と,どちらへも分化を示さない消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)に大別され,胃ではGISTが65-80%を占めている 1

Ⅱ GISTとは?

1980年代まで消化管のGIMTは多くがgastrointestinal sarcoma,gastrointestinal leiomyoma,leiomyosarcomaなどといった筋原性腫瘍に分類されていた 2.しかし,その後の免疫組織染色や電子顕微鏡的検討などからは多くの消化管のGIMTは神経・平滑筋いずれもの特性を示さないことが明らかとなり,その起源について大きな興味が持たれていた 3.1998年,Hirotaらはこのような神経・筋いずれの特性も示さないGISTが高率にKITとCD34タンパクを発現していることを示し,正常組織の筋層間において神経と筋を介在して信号を伝達するカハールの介在細胞が同様に両タンパクを発現していることから,GISTが同細胞への分化を示す腫瘍であることを明らかにした 4.すなわちGISTはカハールの介在細胞が,その増殖に関与するKITタンパク(c-kit受容体型チロシンキナーゼ)をコードしているc-kit遺伝子の機能獲得変異により腫瘍化・増殖して生じる腫瘍である.GISTの臓器別発生頻度では,胃が60-70%と最も多い.

Ⅲ なぜGISTは切除が必要か?

GISTは潜在的に増大する性質を持ち,時に転移することがある悪性腫瘍(肉腫)で,まったく良性の経過をたどるGISTは存在しない 5.また,上皮性腫瘍は形態の整・不整や組織像から良悪性(腺腫と癌)を鑑別し,将来の転帰を予測することが可能であるが,GISTは多くがよく似た球形の肉眼形態と紡錘形細胞からなる組織像を示すため,その形態から将来の良悪性の転帰を予測することが(特に小さい場合は)困難である 6.そのため,2cm以上のSMTは生検を行うことを基本とし,組織学的にGISTと診断された病変は基本的に切除の適応である 5)~8.またSMTの組織診断には超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA) 9や粘膜切開生検 10,ボーリング生検 11などが行われるが,その診断能は50-100%と幅があり,時に組織採取〜診断が困難であるため,臨床的にGISTを疑う所見(悪性所見:潰瘍形成,増大傾向,辺縁不整,実質不均一)がある病変も切除の適応となる.一方,2cm未満の病変についてもGISTと組織診断されれば日本 6・欧州 8のガイドラインでは切除の適応,米国のガイドラインでは組織でGISTかつEUSで高リスク所見があれば切除の適応とされている 7.胃SMTを精査・切除する主目的はGISTを診断し治療することである.

Ⅳ GISTの内視鏡的全層切除の利点

現在,GIST切除の標準法は外科手術による組織学的断端陰性(R0)切除である.外科手術の方法として大きな病変には腫瘍破裂や被膜損傷を避けるために開腹手術が好まれるが 8,腫瘍損傷なく切除が可能な病変には腹腔鏡切除が選択される.腹腔鏡による壁外からのGISTの切除は壁外発育型の腫瘍には良いが,内腔発育型の腫瘍では病変を胃壁で外側から包むようにして切除するため,病変周囲の胃壁の切除範囲が大きくなってしまうという欠点がある(Figure 1左).Hikiらは,これらを改善するために内腔から消化器内視鏡により病変周囲の胃壁の切除範囲を決定し,同部を腹腔鏡で切除・縫縮する腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopic endoscopic cooperative surgery:LECS)を開発した 12),13.LECSによって胃壁の欠損を縮小できるが,病変が小彎や後壁にあった場合は血管や迷走神経枝などの神経を含む小網の切離が必要となる(Figure 1中).一方で腹腔鏡を用いずに経口内視鏡のみで胃SMTを含む胃壁を全層性に切除し,そのまま経口内視鏡で閉創する内視鏡的全層切除術(endoscopic full-thickness resection:EFTR)が,近年海外,特に中国を中心に多数報告されている 14)~17.本法では内腔発育型GISTの切除において胃壁の欠損と壁外組織の損傷を最小化できる(Figure 1右).GISTは胃癌などの上皮性腫瘍と異なり,浸潤性発育をせず,通常はリンパ節転移しないため,局所手術の良い適応である.同法では胃壁・壁外組織の損傷が最小,かつ体壁切開のない真の低侵襲手術が可能となる.特に病変が噴門近傍にあった場合は,腹腔鏡を用いた手術では噴門部を露出するために壁外組織の切離範囲が広くなったり,時には局所切除が困難なために噴門側胃切除が必要となったりする場合がある.同部位の内腔発育型腫瘍をEFTRで局所切除できると,臓器温存の観点からも患者にとっては大きなメリットと考えられる.

Figure 1 

内腔発育型GISTに対する腹腔鏡切除,腹腔鏡・内視鏡合同手術,内視鏡的全層切除の違い.

またWasedaらは胃SMTに対するLECS治療例において術前後の逆流性食道炎と逆流症状の変化から胃排泄能を評価し,胃排泄能障害が生じた2例は胃小彎側に存在する腫瘍径の大きな病変の切除例であったことから,小網内の血管や胃運動をつかさどる迷走神経枝の切除が術後に胃の排泄能障害を生じる可能性を示唆している.同部の腫瘍のEFTRによる内腔からの切除は,胃運動機能温存の観点からも優れている可能性がある.

Ⅴ GISTに対するEFTRの実施可能性(腫瘍学的観点から)

胃GISTに対するEFTRの腫瘍学的な実施可能性については,①GISTの転移・再発リスクと②局所切除の完全性を考慮する必要がある.

内視鏡切除は病変近傍での処置が多くなるため,被膜を含めた腫瘍損傷の危険性が外科手術に比べて高い可能性がある.その際に高リスク病変が多いと,転移や再発のリスクを促進してしまうことが危惧される.Miettinenらによると,2cm以下の胃GISTでは細胞増殖活性にかかわらず,再発リスクはないとされている(Table 1 18.また大きさが>2cmから≤5cmでも,核分裂像数が5以下/50高倍率視野の病変では再発リスクはとても低い(1.9%)とされている.Yanagimotoらが行った多施設共同研究で集積された胃GIST外科切除549例について再評価を行ったところ 19,3cm以下の胃GISTの中に高リスク病変が含まれる割合は11%(21/198),3cm未満では6.3%(9/ 142)であった(著者から提供).以上に加えて,EFTRでは潰瘍のある病変が除外されることも考えると,EFTRによる切除・経口的回収が可能な3cm以下の胃GISTに高リスク病変が含まれる頻度は低いものと考えられる.

Table 1 

Miettinen/AFIP分類.

内視鏡による局所切除の完全性について,EFTRでは腫瘍辺縁を高解像度の電子内視鏡画像で近接・視認しながら切離するため,胃壁を含む周囲組織の切除を最小化できる反面,高周波電気メスの焼灼効果により組織学的断端評価が困難となることや,被膜が損傷される可能性のあることが問題となる.Zhuらは胃GIMT 777例(平均腫瘍径15.2mm,うちGIST 371例)のEFTRの治療成績を検討し,全例が内視鏡的完全切除(ER0)されたが,組織学的断端陰性(R0)切除は334例(43.0%)であったと報告している.GISTに限るとER0かつR0切除割合はさらに低く85例(22.9%)であった.ただし,ER0かつ組織学的断端陽性(R1)切除であったGIST286例のうち,平均観察期間34カ月間で局所再発を認めた症例は1例のみで,ER0かつR0切除であった85例中0例との間に統計学的有意差はなかった 20.そのことからは,鏡視下に被膜に沿って腫瘍を核出するEFTRでは,ER0例におけるR1切除が再発に及ぼす影響は非常に小さいことが示唆される.

GIST外科手術例の肉眼的断端陰性かつ組織学的断端陽性例の転帰について,前向きコホート研究と無作為比較試験対象例の追加解析(819例:うち464例が1年間のイマチニブ補助化学療法,観察期間中央値49カ月)では,腫瘍破裂のない肉眼的完全切除例ではR1切除例とR0切除例で3年無再発生存割合がそれぞれ79%と80%(ハザード比 0.84,p値0.57)と差がなかったと報告されている 21.また,GIST外科手術1,000例の生存率を検討した後ろ向きコホート研究(観察期間中央値4.6年)でも,転移のないGIST(n=660)についてR2切除は有意に転帰が不良であったが(n=16,p<0.001),R1切除(n=47)とR0切除(n=597)の間には全生存率で差がなかったとされている 22.以上のことから,GIST診療ガイドライン2014年改訂第3版ではⅣbのエビデンスレベル(分析疫学的研究:症例対照研究,横断研究レベル)として「retrospective studyでは組織学的断端陽性とその間に全生存率で差はなく,追加手術を積極的に考慮すべき根拠はない」とされている.また,欧米のガイドラインでも「医原的な被膜損傷や組織学的な断端陽性は腫瘍破裂とは見なさず」,肉眼的完全切除例において組織学的断端陽性が判明しても「腫瘍損傷がない場合と転帰は同様のため」「ルーチンでの追加手術は推奨されない」と記載がある 7),8

多くの長期経過の検討が後ろ向き研究であり,その解釈には注意を要するが,3cm以下のGISTのEFTRにおいて内視鏡的に完全切除が担保されていた場合,腫瘍学的な根治性は高いことが示唆され,多数例の前向き研究によって長期経過を今後検証する価値が十分にあると考えられる.

Ⅵ GISTに対するEFTRの実施可能性(技術的観点から)

われわれのGISTに対するEFTRの導入初期経験(n=8)では,大きさ10-35mmの内腔発育型病変について50-166分で処置が行われ,全例が内視鏡的に一括切除がされ,R0切除が3例(38%)で他はRX切除であった 23.Abeらの胃SMT 33例(平均腫瘍径23mm,内腔発育型100%)の内視鏡切除(内視鏡的粘膜下層剝離術:ESD 4例,内視鏡的筋層剝離術 endoscopic muscularis dissection:EMD 15例,EFTR 14例)の成績では,初期に胃壁欠損の閉鎖が困難で腹腔鏡閉鎖を要した3例以外は内視鏡のみでの処置完遂が可能で,全例でER0とR0切除がえられたとされている 24.有害事象は創閉鎖を行わなかったEMDの2例で後出血を認めた以外,重篤なものはなかった.Antoninoらのシステマティックレビューでは,1998年1月から2019年11月に報告された750例の胃SMTに対するEFTRについて,内視鏡的完全切除率は98.8%で,手術移行率が0.8%,重篤な有害事象が1.6%(腹膜炎1%,遅発穿孔0.1%,後出血0.5%)であったとされている 25

ほぼすべての報告が後ろ向き観察研究であることから,選択バイアスに留意する必要があるが,適切な適応の元にはEFTRの内視鏡的完全切除率は高く,有害事象の発生割合も極めて低いことから,技術的な実施可能性は高いことが示唆される.R0切除率がやや低いことは問題であるが,この原因には切除時の医原的損傷や上皮性腫瘍に比べて組織学的断端評価が困難なことなども考えられ,今後これらの点の改善が期待される.

Ⅶ GISTの内視鏡的全層切除の適応

最新の欧州のガイドライン 8では2cm未満のGISTのうち技術的に切除可能な病変に対して,経験豊富な高次専門機関で内視鏡切除することは従来の外科切除に変わる方法として許容される,と記載されている.

本邦では2020年9月,胃SMTに対する内視鏡的胃局所切除術が先進医療Aとして承認を受け,要件を満たす施設での施行が可能となった(Table 2).対象は11-30mmの,EUSで筋層に連続する内腔発育型の胃SMTで,潰瘍形成がなく,組織学的にGIST,または臨床的にGISTを疑う悪性所見(増大傾向,辺縁不正,実質不均一)のある病変である.また,その適応は消化器外科・内科が参加するキャンサーボードで確認されている必要がある.実施責任医師は消化器内視鏡専門医の資格に加えて,当該技術3例以上と上部消化管ESD 300例以上の経験を持っている必要がある.実施医療機関の要件は消化器内科と消化器外科があり,各科それぞれ2名以上の常勤医と麻酔科常勤医1名以上の勤務する施設で,24時間の検査体制と緊急手術の実施が可能なことである.また,消化器外科医師のうち1名は日本内視鏡外科学会技術認定(胃)を受けており,腹腔鏡下胃切除術 50例以上,胃LECS 10例以上の経験を持つことが要件となっている.大きさ10mm以下の病変が適応から外されたのは,その大きさのSMTはGISTの術前診断が困難で,かつ胃全摘術後の組織評価では35%の症例に5mm以下のmicro GISTが存在することが知られていることから 26,あまりに小さな病変を適応とすると臨床的意義の低い小病変の過剰な治療が増えることを危惧したためと考えられる.

Table 2 

内視鏡的胃局所切除術の実施要件(まとめ).

Ⅷ 手技の実際

現在,当科で行っているEFTRの方法は以下の通りである.処置は全身麻酔下で,連絡時には外科医が腹腔鏡手術への変更が可能な体制で行っている.介助者は2名で,処置の直接の介助と気腹時の腹腔穿刺や処置具の選択などを担当する.内視鏡は主に2チャンネルのマルチベンディング内視鏡(EVIS GIF-2TQ260M,オリンパス・メディカル)を用い,体部小彎など通常内視鏡でのアクセスが良い場合や前庭部病変などワーキングスペースに制限のある場合は通常の処置用内視鏡(EVIS GIF-Q260JまたはGIF-H290T,オリンパス・メディカル)を選択している.GIF-2TQ260Mは,通常内視鏡で近接困難な噴門部や穹窿部病変の画面遠位側にアクセスする場合や,留置スネアを使った巾着縫合の際に有用である.先端アタッチメントを使用し,デバイスは先端系高周波ナイフ(Flush knife BT-S,DK2620J -B20S,富士フイルム・メディカル)とITナイフ2(KD-611L,オリンパス・メディカル)を併用している.

病変を視認後(Figure 2-a,b),内腔発育型ではマーキングなしに病変の基部に少量の生理食塩水を局注し,粘膜切開を行う.多量の粘膜下局注は腫瘍の辺縁や筋層付着部の同定を困難とするために避け,その後も局注針による粘膜下注入はなしに,デバイスやスコープからの追加注入程度で切開・剝離処置を行っている.最初に病変の口側の粘膜切開〜トリミングを行い,その後反転して全周性に粘膜切開〜トリミングを行う(Figure 2-c).糸付きクリップなどのトラクションデバイスを腫瘍表面の粘膜または粘膜下層にかけて(Figure 2-d)口側に牽引し,腫瘍表面を視認しながら腫瘍基部の粘膜下組織を可及的に剝離し(Figure 2-e),筋層付着部を全周に露出させる.この過程はその後の腫瘍辺縁に沿った筋層切開を容易とし,筋層切開後の処置時間を短縮するために非常に重要である.肛門側から筋層切開を行い(Figure 2-f),口側に向かって筋層切開の追加(Figure 2-g)と適宜腹膜側組織の剝離を行う.漿膜下には太い動脈が存在することがあり,損傷すると止血に難渋するため,組織を浅めに切除してESD同様に血管を同定し,予防的凝固を心がける.腫瘍周囲の粘膜下層や腹膜側組織の剝離は,経験的に腫瘍近傍で腫瘍表面を視認しながら行った方が被膜損傷を防げる印象がある.腫瘍切除後(Figure 2-h)は病変の回収前に筋層欠損を閉鎖する.回収が困難となり処置中に腫瘍細胞が腹腔内に漏洩するのを防ぐためである.

Figure 2 

胃GISTに対するEFTR.

通常内視鏡(a)とEUS(b)画像.粘膜切開(c).糸付きクリップの装着(d).腫瘍基部の粘膜下層剝離〜筋層付着部の露出(e).肛門側(f)から口側(g)への筋層切開.腫瘍切除後の胃壁欠損(h).巾着縫合による縫縮(i,j,k).切除標本(l).

筋層欠損の閉鎖法は各施設でさまざまであるが,われわれは留置スネアとクリップを用いた巾着縫合で行っている.2チャンネル内視鏡を用いて,できるだけ順方向で処置を行う.留置スネアを筋層欠損辺縁の粘膜に4-6個のクリップ(SureClip ROCC-D26-165-C,Micro-Tech社)で固定し,粘膜を縫縮する.クリップは粘膜辺縁にかけると閉鎖時に腹腔側に倒れ込むため,片側の歯は辺縁から少し離れた粘膜にかけ(Figure 2-i),閉鎖時にはシースを複数のクリップの真ん中に入れて(Figure 2-j),クリップが倒れ込むのを予防しながら閉鎖する(Figure 2-k).一回の縫縮で閉鎖が不完全な場合は,追加の巾着縫合またはクリップ単独で追加縫縮を行う.気腹時にはマックバーニー点の左対側に太め(14Gや16G)の静脈留置針を刺入し,3方活栓を介して生理食塩水少量を入れた注射器を固定して脱気している(Figure 3).筋層欠損の閉鎖後に腫瘍を,回収バッグ(エンドキャリー・ラージタイプ,八光メディカル)などに入れて経口的に回収し(Figure 2-l),最後に経鼻胃管を挿入し,処置を終了する.

Figure 3 

気腹に対する腹腔穿刺による脱気.

術当日を含めて3日間の絶食とし,術後3日目に流動食から開始している.翌日は限局性の圧痛と炎症所見の上昇を認めることが多いが,術後2日目に改善傾向となり,その場合に少量の飲水を許可している.術後6日目に退院としている.

2016年4月から2022年11月に胃SMT 36例37病変(部位U:M:L=22:11:4,平均腫瘍径20mm,最小8mm-最大40mm)のEFTRを行ったが,平均切除時間は68分(最短20分-最長180分),平均縫縮時間は31分(最短0分-最長105分)であった.31病変(84%)で完全筋層欠損となり,8例(22%)で気腹に対して腹腔穿刺を要した.31病変(84%)は巾着縫合で,他はover-the-scope clip(OTSC)(3例),クリップのみ(2例)で創閉鎖した.内視鏡的一括完全切除割合は97%,壁外発育型病変の1例で切除標本に病変がなく外科介入で追加切除した.病理診断はGIST(n=27),Leiomyoma(n=4),その他(n=5)で,切除断端はR0:R1:RX=29:2:6病変であった.術後出血は0例で,遅発穿孔を1例認めネオベール充填で治療した.食事開始日と退院日の中央値(範囲)はそれぞれ3(2-6)PODと6(4-10)PODであった(Table 3).

Table 3 

EFTRの短期治療成績.

Ⅸ 今後の展望

先進医療は2年毎に保険収載のための評価が行われ,保険収載が検討される.現在,胃SMTの内視鏡切除の有効性と安全性をみる多施設前向き観察研究(UMIN000041795)が行われており,その成績が待たれる.

日本の内視鏡医はESDの技術に習熟しているため,病変の切除に困難は少ないと予想される 27.筋層欠損の縫縮・縫合は手技上の問題のひとつであるが,われわれが現在行っている巾着縫合以外にも,把持鉗子による牽引とクリップ 20,糸付き開閉可能クリップによるReopenable clip-over-the-line method 28,Over-the-scope Clip(Ovesco Endoscopy GmbH, Tüebingen, Germany) 29,双開閉式クリップ(Micro-Tech社) 30などのクリップを用いる方法や,OverStitch(Apollo Endosurgery, TX, USA) 31,ゼオスーチャー M(ゼオンメディカル) 32,X-Tack(Apollo Endosurgery, TX, USA) 33,SutuArt(オリンパス・メディカル) 34などの内視鏡的縫合器による閉鎖法など,新しい方法やデバイスが近年続出しており,技術的実施可能性はさらに高まるものと考えられる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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