日本消化器内視鏡学会雑誌
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資料
高リスク表面型大腸腫瘍の検出に対する国際オンライン教育介入の有用性(CATCHプロジェクト):ランダム化試験(動画付き)
岩館 峰雄 平田 大善Carlos Paolo D. FranciscoJonard Tan CoJeong-Sik ByeonNeeraj JoshiRupa BanerjeeDuc Trong QuachThan Than AyeHan-Mo ChiuLouis H. S. LauSiew C. NgTiing Leong AngSupakij KhomvilaiXiao-Bo LiShiaw-Hooi Ho佐野 亙服部 三太藤田 幹夫村上 義孝島谷 昌明児玉 裕三佐野 寧-CATCHプロジェクトチーム-
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電子付録

2023 年 65 巻 7 号 p. 1266-1279

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要旨

【背景・目的】側方発育型腫瘍非顆粒型(laterally spreading tumor non-granular type;LST-NG),陥凹型腫瘍,10mmを超えるlarge sessile serrated lesion(large SSL)の3病変は,高リスク表面型腫瘍であり,大腸内視鏡検査後に発生する大腸癌(Post-colonoscopy colorectal cancer)への進展に大きく関与している.しかし,この高リスク表面型腫瘍を検出するための効率的で組織的な教育プログラムは未だ確立されていない.本研究の目的は,4つの検出契機(1 襞変形:fold deformation,2 集簇する便/粘液付着:intensive stool/mucus attachment,3 血管視認性低下:no vessel visibility,4 限局性発赤領域:demarcated reddish area 各英語の頭文字をとって「FIND」と覚える)のオンライン教育介入が,高リスク表面型腫瘍の検出率を向上させるかどうかを調べることである.

【方法】本研究は,アジア13カ国の内視鏡非熟練医を対象としたオンラインでの国際ランダム化比較試験である.内視鏡医は教育群と非教育群にランダムに割り付けられ,全員が同じ画像読影試験を2回(前期と後期)受験した.試験では60枚の大腸内視鏡画像(高リスク表面型腫瘍40枚,隆起型腫瘍5枚,病変なし15枚)を読影し,病変の有無を解答した.教育群のみ,前・後期試験の間に,自己学習教育プログラム(教育ビデオ視聴と練習問題の解答)を受講した.主要評価項目は,高リスク表面型腫瘍の検出率変化とした.

【結果】総計284名の内視鏡医がランダム化され,試験未解答者を除いた教育群139名,非教育群130名が最終解析対象となった.高リスク表面型腫瘍の検出率は,教育群で14.7%(前期試験:66.6%,後期試験:81.3%)と有意に上昇したが,非教育群では0.8%(前期試験:70.8%,後期試験:70.0%)と低下した.同様に教育群におけるLST-NG,陥凹型腫瘍,large SSLの検出率は,各々12.7%,12.0%,21.6%と有意に向上していた.

【結論】高リスク表面型大腸腫瘍の検出に関する短時間のオンライン自己学習は,アジアの内視鏡非熟練医に有用であった(UMIN000042348).

Abstract

Objectives: Three subcategories of high-risk flat and depressed lesions (FDLs), laterally spreading tumors non-granular type (LST-NG), depressed lesions, and large sessile serrated lesions (SSLs), are highly attributable to post-colonoscopy colorectal cancer (CRC). Efficient and organized educational programs on detecting high-risk FDLs are lacking. We aimed to explore whether a web-based educational intervention with training on FIND clues (fold deformation, intensive stool/mucus attachment, no vessel visibility, and demarcated reddish area) may improve the ability to detect high-risk FDLs.

Methods: This was an international web-based randomized control trial that enrolled non-expert endoscopists in 13 Asian countries. The participants were randomized into either education or non-education group. All participants took the pre-test and post-test to read 60 endoscopic images (40 high-risk FDLs, five polypoid, 15 no lesions) and answered whether there was a lesion. Only the education group received a self-education program (video and training questions and answers) between the tests. The primary outcome was a detection rate of high-risk FDLs.

Results: In total, 284 participants were randomized. After excluding non-responders, the final data analyses were based on 139 participants in the education group and 130 in the non-education group. The detection rate of high-risk FDLs in the education group significantly improved by 14.7% (66.6-81.3%) compared with -0.8% (70.8-70.0%) in the non-education group. Similarly, the detection rate of LST-NG, depressed lesions, and large SSLs significantly increased only in the education group by 12.7%, 12.0%, and 21.6%, respectively.

Conclusion: Short self-education focusing on detecting high-risk FDLs was effective for Asian non-expert endoscopists. (UMIN000042348).

Ⅰ 緒  言

大腸内視鏡検査は,前駆病変を検出し摘除することにより,大腸癌の発生率と死亡率を減少させることができる 1.大腸内視鏡検査で見落としやすい病変である表面型腫瘍は,周囲との変化に乏しく,進行の早いものがあるため初回内視鏡検査で指摘されず,次のサーベイランス内視鏡検査までの間に発生する検査後大腸癌(post-colonoscopy colorectal cancer;PCCRC)の原因となりうる 2),3.大腸腫瘍における表面型腫瘍の割合は,西洋(14.8-37.6%)と東洋(6.2-42.0%)でほぼ同じであることを考えると,表面型腫瘍の検出は日本だけの問題のみならず,世界でも解決すべき課題である 4)~10

表面型腫瘍の中でも,特に進行が早くPCCRC発生のリスクが高い3つの病変群について提示したい.最初の病変群は陥凹型腫瘍である.全肉眼型の中で最も腫瘍発育速度が速いと推測されており,10mm未満と小さな病変における粘膜下層浸潤の割合は,他の肉眼型では0-1.3%であるのに比べ,陥凹型腫瘍では8.4-43.6%と非常に高い 3),11)~13.2番目の病変群は,側方発育型腫瘍非顆粒型(laterally spreading tumor non-granular type;LST-NG)である.LST-NGは,大腸内視鏡検査で最も見逃されやすい病変であり,内視鏡熟練医が2回大腸内視鏡検査をしても見逃した表面型advanced neoplasia(10mm以上,villous成分,癌)の80%以上を占めると報告されている 14.またLST-NGと陥凹型腫瘍はPCCRCとして検出された早期大腸浸潤癌の71%を占めており,また大腸癌外科切除後の初回サーベイランス内視鏡検査における異時性早期大腸浸潤癌の67%を占めることも報告されている 15),16.最後の病変群は,鋸歯状病変sessile serrated lesion (SSL)であり,高低差の乏しい肉眼型で見逃されやすく,dysplasiaが併発すると急速に浸潤癌へ進展する 17)~19.実際SSL由来の大腸浸潤癌の約2/3は,右側大腸のPCCRCであったと報告されている 20.病変サイズが大きくなるほど,dysplasiaを合併する割合が高くなり,10mm以上の大きなSSL(larege SSL)になると,併発するdysplasiaの割合は13.6%まで上昇する 21.以上から,上記3つの高リスク表面型腫瘍(LST-NG,陥凹型腫瘍,large SSL)は,PCCRCの発生に大きく関与することが示唆される.

この現状での課題に対して,高リスク表面型腫瘍検出に関するトレーニングの開発が強く望まれており,また学習効果が示せれば,その意義が更に増すだろうとの結論に至った 22.現在のAI技術を用いたリアルタイムの自動検出であってもPCCRCの予防に重要なLSTやSSLの検出を向上させることはまだ難しいのが現状である 23.Kaminskiらは,指導者トレーニング(検査評価,ハンズオントレーニング,検査のフィードバック)が腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)と表面型腫瘍検出率を有意に向上させたと報告しているが,高リスク表面型腫瘍を検出するための効率的で組織的な教育プログラムは未だ確立されていない 24

今回私達は,高リスク表面型腫瘍を白色光下で検出するための4つの重要な検出契機所見である「FIND」(1 襞変形:fold deformation,2 集簇する便/粘液付着:intensive stool/mucus attachment,3 血管視認性低下:no vessel visibility,4 限局性発赤領域:demarcated reddish area 各英語の頭文字をとって「FIND」と覚える)を提唱した(Figure 1).表面型腫瘍全体を認識することよりも,その手がかりとなる検出契機所見を見つける方が,より簡単で実践的であると考えられる.FIND所見の理論背景は,1)襞変形:LST-NGは襞上に存在することが多く,襞の曲線を変形させる.2)集簇する便/粘液付着:SSLは表面に粘液を多量に分泌し,その粘液が残便を表面に集簇させる 25.3)血管視認性低下:表面型腫瘍が隠すため,その部位にある背景粘膜の血管透見の視認性が低下する.4)限局性発赤領域:LST-NGと陥凹型腫瘍の色調は通常淡い発赤調であり,SSLは褪色調である.発赤領域は,病変全体が赤いパターンと辺縁のみが赤い(O-ring サイン)パターンに大別される 26

Figure 1 

FIND所見(各所見の英語の頭文字をとってFIND).

a:襞変形Fold deformation(白矢印).襞上のLST-NGが襞を陥凹変形させている.

b:インジゴカルミン散布で,35mm大のLST-NGが明瞭に描出される.

c:集簇する便/粘液付着Intensive stool/mucus attachment.残便が一カ所に集簇している.

d:粘液と便を洗浄後にインジゴカルミンを散布すると10mm大のSSLが認識される.

e:血管視認性低下No vessel visibility(白矢印).表面型腫瘍が背景粘膜の血管透見を妨げている.

f:インジゴカルミン散布で30mm大のLST-NGの境界が明瞭となる.

g:限局性発赤領域Demarcated reddish area.小さな辺縁発赤(O-ringサイン)が視認される.

h:インジゴカルミン散布で5mm大の陥凹型腫瘍が明瞭に描出される.

本ランダム化比較試験の目的は,アジア13カ国の内視鏡非熟練医に対してFIND所見の自己学習が高リスク表面型腫瘍の検出率を向上させるかを調査することである.

Ⅱ 対象・方法

研究方法

本研究は,アジア13カ国の内視鏡非熟練医を対象としたオンラインでのランダム化平行群間国際比較試験である.

この研究は1)参加内視鏡医募集とランダム化,2)前期試験,3)教育,4)後期試験の4相から構成される.内視鏡医は教育群か非教育群かに割り付けられ,オンラインでの画像読影試験を2回(前期・後期試験)受験した.教育群のみが,前期と後期試験の間にFIND所見に関する短時間の自己学習教育プログラムを受講した.前・後期試験間の高リスク表面型腫瘍の検出率変化を両群で比較した.

本研究は医療法人薫風会佐野病院の倫理審査委員会で承認され(202010-2),大学病院医療情報ネットワーク臨床試験登録システムに登録された(UMIN000042348).

参加内視鏡医の選択

2020年11月から2021年2月まで日本,中国,香港,インド,マレーシア,ミャンマー,ネパール,フィリピン,韓国,シンガポール,台湾,タイ,ベトナムのアジア13カ国の内視鏡医を募集した.各国に一人ずつ現地のコーディネーターを決め,参加内視鏡医の募集や試験未解答者・教育プログラム未受講者への催促など研究サポートを依頼した.参加基準は,1)内視鏡経験年数10年未満,2)オンラインで英語の画像読影試験を受験可能で,サンプル動画が視聴できる者,3)本研究のインフォームドコンセントに同意・サインした者,であり,除外基準は 1)前期試験や後期試験を完了しなかった者,2)教育群で教育プログラムを完遂していない者とした.

内視鏡医は教育群と非教育群に1対1に割り付けられ,ランダム化はコンピューターで行い最小化法(因子:国と経験年数)を用いた.

試験画像の選択方法

試験に用いる内視鏡画像は,佐野病院に2006年から2020年にまでに保存された高解像度の白色光静止画像から60枚を選択した.試験画像として,LST-NG 20枚(病変径範囲10-55mm),陥凹型病変10枚(3-13mm),large SSL 10枚(10-25mm),隆起性病変5枚(3-10mm),病変のない画像15枚が,各々ランダムに選択された.表面型腫瘍の中でも臨床での疾患頻度を考慮しLST-NGを多く選択した 3),27),28.画像外枠に黒矢印を置き,画像を仮想的に3分割(上・中・下)し,読影者が病変の主となる位置を把握できるようにした(Figure 2).選択画像は6人の内視鏡専門医により評価され,病変の存在とその主となる位置(上・中・下)または病変がないことを確認し,そのコンセンサスを問題の正解とした.

Figure 2 

試験用内視鏡画像内の大腸病変の特徴.

教育プログラム

オンラインでの教育プログラムは,教育ビデオの視聴と自己学習用練習問題が含まれており,前期試験と後期試験の間の2021年5月に行われた.まず教育群の全内視鏡医は15分の教育ビデオを視聴し,高リスク表面型腫瘍の臨床的重要性とFIND所見を使用した検出方法について学習する機会が与えられた(電子動画 1)(電子付録).次にFIND所見と高リスク表面型腫瘍の認識能力を向上させるため20問のQ&A方式の練習問題を解答しながら,臨床での運用方法について詳細な解説が与えられた(Figure S1)(電子付録).この練習問題に使用された内視鏡画像は,前期・後期試験で使用されていない画像を用いた.

前期試験と後期試験

すべての参加内視鏡医は,2021年3月に前期試験,2カ月期間をあけて同年6月に後期試験をオンラインで受験するように説明された.

前期試験では,内視鏡医は60枚の静止画像を読影し,ポリープなし・ポリープあり(上)・ポリープあり(中)・ポリープあり(下)の4つの選択肢から1つを選択した(Figure S2)(電子付録).偶然に正解を選ぶ可能性を減らすために,病変があると判断した場合,その病変が主として存在する部位も含めた解答選択肢とした.臨床では観察時間が限られていることを考慮し各画像の読影時間を5秒間と設定した.

後期試験では,前期試験と同じ静止画像60枚を再度同様に読影した.教育群のみ,ポリープありと判断した場合,FIND所見の有用性(複数選択)も合わせて解答した.

測定変数

試験画像1枚に対して正解すると1点与えられ,正診率を病変検出率として計算した.前期試験の前に,内視鏡医の性別,年齢,国,臨床経験年数,大腸内視鏡生涯件数のデータを集積した.また各国の内視鏡医総数をコーディネーターから聴取し,人口当たりの内視鏡医数を計算した.

主評価項目と副次評価項目

主要評価項目は,両群における前・後期試験間の高リスク表面型腫瘍の検出率変化とした.また副次評価項目は,1)高リスク表面型腫瘍検出率を10%以上上昇させる要因,2)教育群後期試験で,各表面型腫瘍検出時にFIND所見が有用だったと判断した頻度とした.

サンプルサイズ計算

八尾らによる胃癌検出のオンライン教育に関する先行研究では,非介入群に比べてeラーニング群で,スコアが約10%上昇(51.1から62.2)した 29.非教育群でも,テスト画像を記憶して自己学習した場合に成績が向上する可能性も考慮し,本研究では教育群でスコアが10(70から80),非教育群で5(70から75)上昇すると想定し,サンプルサイズ計算を実施した.両側t検定を用いることとし(検出力80%,αエラー:5%),内視鏡医数の多い国と少ない国との比較も考慮すると,最終的に各群128人(全体で256名の内視鏡医)が必要と算出され,各国20人の内視鏡医の参加を目標とした.

統計解析

個人のスコアの変化を介入前後で計算し,介入群とコントロール群における平均スコアの差をt検定により比較した.また重回帰分析を実施し,スコアが上昇する人の特徴を探索した.研究に使用した変数は性別,年齢,経験年数,国,前期試験の得点,教育である.解析については重回帰分析では調整平均差を,ロジスティック回帰分析では調整オッズ比を指標として検討した.ロジスティック回帰は,高スコア(スコアの変化3以上)と低スコア(スコアの変化3未満)の二群に分け,それらをアウトカムとしてモデルに含めた.すべての統計解析はStatistical Analysis System(release 9.40;SAS,Cary,NC,USA)を用いて行われた.またすべての統計的検定は両側で行い,有意水準は5%に設定した.

Ⅲ 結  果

研究に参加した内視鏡医

参加基準を満たし同意書にサインした13カ国284人の内視鏡医が参加した.284人の中で,149人が教育群,135人が非教育群に割り付けられた.試験や教育プラグラムを受けなかった人を除いた,139人の教育群(追跡率93.3%)と130人の非教育群(追跡率96.3%)が最終解析対象となった(Figure 3).教育群と非教育群の背景因子には有意差は認めなかった(Table 1).教育群における教育プログラムの受講時間は平均40分で,内訳は教育ビデオの視聴15分と練習問題解答が25分であった.

Figure 3 

研究フローチャート.

Table 1 

参加内視鏡医の背景.

評価項目

両群における前・後期試験間の高リスク表面型腫瘍の検出率変化

Table 2に示すように,高リスク表面型腫瘍の検出率は,教育群で14.7%と有意に上昇(66.6%から81.3%)したのに対して非教育群では0.8%低下(70.8%から70.0%)した.同様にLST-NG,陥凹型病変,large SSLの検出率は教育群だけ有意な上昇を認め,上昇率は各々12.7%,12.0%,21.6%であった.逆に隆起性病変の検出率は,教育群のみ1.9%(98.4%から96.5%)と有意な低下を認めた.病変がない症例の検出率(正診率)は,教育群で11.1%(84.4%から73.3%)と有意に低下したのに対して,非教育群では3.7%(79.8%から83.5%)と有意な上昇を認めた.

Table 2 

両群における前・後期試験間の検出率変化と教育効果.

高リスク表面型腫瘍検出率を10%以上上昇させる要因

Table 3に高リスク表面型腫瘍の検出率を10%以上上昇させる要因を検討した多重ロジスティック回帰分析の結果を示す.検討した要因は,性別,年齢,大腸内視鏡経験年数,国,高リスク表面型腫瘍の前期試験成績,教育である.参加13カ国は人口当たりの内視鏡医数で2群(内視鏡医の多い国/少ない国)に分けられた.多変量解析の結果,教育群と前期試験の低成績が有意な因子であることが判明した.

Table 3 

高リスク表面型腫瘍検出率を10%以上上昇させる要因.

高リスク表面型腫瘍検出に対するFIND所見の有用性頻度

教育群の後期試験において,高リスク表面型腫瘍の検出時にFIND所見が有用と判断した頻度についてTable 4に示す.LST-NGの検出に有用であった所見は,頻度順で襞変形(69.4%)そして血管視認性低下(53.2%)であった.Large SSLの検出では,血管視認性低下(69.7%)と集簇する便/粘液付着(37.6%),また陥凹型腫瘍の検出では,限局性発赤領域(49.7%)と血管視認性低下(45.0%)の順に有用であった.FIND所見の偽陽性率(病変なし症例での頻度)は,襞変形8.6%,集簇する便/粘液付着1.6%,血管視認性低下16.1%,限局性発赤領域7.9%であった.

Table 4 

高リスク表面型腫瘍検出に対するFIND所見の有用性頻度(教育群の後期試験).

Ⅳ 考  察

本研究は,FIND所見の教育介入により高リスク表面型腫瘍の検出率を効率的に改善させることを示した初めての国際共同ランダム化比較試験である.この研究には大きく2つの強みがあり,まず対象病変を高リスク表面型腫瘍に設定したことが挙げられる.高リスク表面型腫瘍は,小さい病変で悪性化のリスクが少ない病変よりも,その検出に臨床的意義が高いと考えられる.次に,FIND所見の教育プログラムを40分と短い時間で構築したことが挙げられる.FIND所見は,白色光下での所見であるため最先端の技術も不要であり,短時間のオンライン教育で習得できる.

本研究の結果を振り返ると,主要評価項目は両群における前・後期試験間の高リスク表面型腫瘍の検出率変化であったが,教育群では,LST-NG,陥凹型腫瘍,large SSL,そしてすべての高リスク表面型腫瘍の検出率が有意に向上した.高リスク表面型腫瘍検出率を10%以上上昇させる要因(Table 3)の多変量解析で教育群が有意な因子であったことは,教育の有用性を更に指示する結果である.病変サイズの影響に関して,かなり大きなサイズの表面型腫瘍でも見逃されていたことは注目に値する.50mm以上と大きなLST-NGの2症例でさえも,前期試験で見逃した内視鏡医は17%,39%と多く存在した(Figure 4).教育群では,教育による負の効果も見られた.隆起型腫瘍の検出率は教育後にむしろ有意に減少していたが,後期試験でも検出率は96.5%と高値を維持していた.教育群では病変なし症例での検出率が有意に低下し偽陽性率が高くなるため,検査時間が長くなる可能性がある.炎症,送気不足による腸管拡張不良,前処置不良などはFIND所見を呈するため,教育後にFIND所見を過剰診断した内視鏡医がいたと推測される.しかし画像強調内視鏡などの他のモダリティーを用いれば,真の病変でないことは容易に判明するので,不要な治療を避けることは可能であろう.非教育群では,後期試験で病変なし症例での検出率が有意に向上していた.これは,教育介入せずに前期試験と同じ問題を解答したため,注意力欠如により簡単に病変なしを選んでいた可能性がある.実際に非教育群が試験解答にかかった平均時間は前期試験23分だったのに対し後期試験では18分であった.

Figure 4 

試験で見逃された大きなLST-NGの2症例.

a:39%(105/269)の内視鏡医が見逃した襞上にある50mm大のLST-NG症例.

b:インジゴカルミン散布で襞上のLST-NGが明瞭に描出される.病理は粘膜内癌であった.

c:17%(45/269)の内視鏡医が見逃した55mm大のLST-NG症例.

d:インジゴカルミン散布で病変境界が明瞭となる.病理は,SM深部浸潤癌(T1b)であった.

表面型腫瘍の検出を向上させる他の技術として,画像強調内視鏡観察が有用とする研究が報告されているが,検出された表面型腫瘍は小さく悪性度の低いものが大半である 30)~35.AIの技術発展が急速な現代において,LSTやSSLは動画教材の中においては高い検出能をもっているが,リアルタイムの大腸内視鏡検査中の検出は未だ難しい 23),36.たとえAIが大腸内視鏡検査中に表面型腫瘍を検出できるようになったとしても,人間が真の病変であることを認識できなければ,偽陽性として見逃しうるため,人間の目による検出と認識は必須である 37.今後はAIと人間の相互協力が不可欠であり,適切に組み合わせることで最高のパフォーマンスを生み出すことが期待される.

本研究の限界は,まず本研究が生体外の研究で,肉眼型特にLST-NGの診断基準の不一致を避けるために標準的な画像を用いていることである.実臨床で生体内におけるFIND所見の有用性を検討する研究が必要である.次に本研究の対象が小さな表面陥凹型腫瘍と10mm以上の大きな表面隆起型腫瘍を対象としていることである.理論的には小さな表面隆起型腫瘍にもFIND所見は有用と考えられるが,本研究結果からは明らかにされていない.3番目は,研究参加者がアジアの内視鏡医に限定されていることである.表面型腫瘍の頻度は西洋と東洋で差がないことを考慮すると,本研究の教育プログラムは西洋の内視鏡医にも適応できると考えられる.最後に前期試験のスコアが非教育群に比べ教育群で低かったことが,教育群の高リスク表面型腫瘍の検出率向上に影響を与えた可能性がある.

結論として,高リスク表面型腫瘍を検出するための短時間の自己学習教育は,アジアの非熟練内視鏡医にとって有用であった.FIND所見の習得は,PCCRCの減少に将来役立つかもしれない.

謝 辞

データ管理を担当した小間井祥代氏,また新型コロナ禍にもかかわらず,CATCHプロジェクトに参加したすべての先生方に深謝いたします.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:Han-Mo Chiu:digestive endoscopyの編集委員,他の著者に本研究に関連するCOIなし.本研究はAsian Endoscopy Research Forum(AERF)research grant(2020/21)からの研究資金提供を受けています.

補足資料

電子動画 1 FIND所見学習用教育ビデオ(15分).

Figure S1 a-c:自己学習練習問題(症例 1).

Figure S2 試験問題(60問).

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2022)34, 1166-75に掲載された「Efficacy of international web-based educational intervention in the detection of high-risk flat and depressed colorectal lesions higher (CATCH project) with a video: Randomized trial」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
© 2023 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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