日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
良性胆管空腸吻合部狭窄に対する内視鏡治療
佐藤 達也 中井 陽介藤城 光弘
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2024 年 66 巻 1 号 p. 69-77

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要旨

従来,良性胆管空腸吻合部狭窄は経皮経肝胆道ドレナージや外科的再吻合で治療されてきた.近年のバルーン内視鏡および超音波内視鏡の登場により吻合部への内視鏡的アプローチが可能となり,バルーン拡張やステント留置による治療が行われるようになってきている.さらに,治療成績の向上を目指してFully-covered self-expandable metal stentの短期留置による治療も一部の施設から報告されている.本稿では良性胆管空腸吻合部狭窄に対する内視鏡治療について,既報のデータを参照しつつ実際の手技を紹介して解説する.

Abstract

Hepaticojejunostomy anastomotic stricture (HJAS) is a complicated clinical condition that has historically been treated with percutaneous transhepatic biliary drainage or surgical repair. The presence of long reconstructed gastrointestinal tract added to the complexity of the endoscopic treatment. However, recent advancements utilize less-invasive endoscopic approaches to HJAS; ERCP using a balloon-assisted endoscope and endoscopic ultrasonography-guided intervention. Balloon dilation combined with plastic stent placement has become the standard of care, whereas temporary placement of a fully-covered metal stent is reported to be a promising new modality. In this review, technical aspects of the endoscopic procedures for HJAS are discussed along with the literature review.

Ⅰ はじめに

胆管空腸吻合術は,胆管切除を伴う外科手術(膵頭十二指腸切除術[pancreaticoduodenectomy,PD],肝外胆管切除術など)における標準的な胆管再建法である.胆管空腸吻合術の後期偶発症として吻合部狭窄が3~13%に生じると報告されており 1)~3,胆管炎や肝障害の原因となることから治療を要する病態と考えられる.

胆管空腸吻合部狭窄の症例ではRoux-en-Y法やBillroth-Ⅱ法などの腸管再建術が併施されている.上部消化管用の直視鏡や十二指腸鏡では吻合部への到達が困難であることから,以前は経皮経肝胆道ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage,PTBD)や外科的再吻合などで治療が行われていたが,患者QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下や侵襲度の高さが問題であった.

近年,術後再建腸管症例の胆道疾患に対してバルーン内視鏡(シングルバルーン内視鏡,ダブルバルーン内視鏡)や超音波内視鏡を用いた治療が広く行われるようになり,主に本邦から良好な治療成績が報告されている 4)~7.胆管空腸吻合部狭窄に対しては主にバルーン内視鏡を用いた治療成績の報告が多く,現時点での標準的内視鏡治療と考えられる.本稿では既報のデータを参照しつつ,実際の内視鏡手技の詳細について紹介する.

Ⅱ 内視鏡治療前の準備

胆管空腸吻合部狭窄を疑う症例の治療にあたっては,十分な事前準備と治療計画を行う.

まず手術記録を取り寄せ,腸管再建法および胆管空腸吻合の情報を確認する.腸管再建法はRoux-en-Y法かBillroth-Ⅱ法か,Billroth-Ⅱ法であればBraun吻合はあるのかをチェックする.PD症例であれば胆管空腸吻合・膵管空腸吻合の詳細を確認する.近年の手術の多くはChild法(PD-ⅡB)で再建されているが,年代の古い手術では今永法(PD-ⅢA)などそれ以外の再建法が採用されていることもある.これらの情報は内視鏡挿入時に迷子にならないために必要であると共に,使用する内視鏡の選択にも重要である.

画像検査ではCT検査(禁忌がなければ造影CT検査)は必須であり,必ず冠状断の再構成画像を作成する.狭窄部位や肝内胆管泣き別れの有無をチェックし,また手術記録との相違がないかを確認する.可能であれば磁気共鳴胆管膵管撮影 (magnetic resonance cholangiopancreatography,MRCP)検査も行って胆管分岐などの情報を追加する.

加えて手術時の病理所見を確認する.特に原病が悪性腫瘍の場合や膵・胆管合流異常の場合では,吻合部での悪性胆道閉塞の可能性を念頭に置き,腫瘍マーカーや画像検査を見直すようにする.

Ⅲ バルーン内視鏡の種類と選択

術後再建腸管症例に対する内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)において,当院では主にショートタイプのダブルバルーン内視鏡(EI-580BT,富士フイルム)を使用している(Figure 1).スコープ有効長155cm,鉗子口径3.2mmであり多くのERCPデバイスが使用可能である.ダブルバルーン内視鏡はスコープ先端バルーンがあることでオーバーチューブの追従やストレッチ操作において優位性があると考えているが,シングルバルーン内視鏡を用いたERCPでも良好な成績が報告されており,バルーン内視鏡の種類は術者の好みや施設の状況に応じて選択してよいと思われる.バルーン内視鏡の挿入手技については既報 8を参照していただき,本稿では割愛する.

Figure 1 

ショートタイプダブルバルーン内視鏡(EI-580BT,富士フイルム).

スコープ有効長155cm,鉗子口径3.2mmであり大部分のERCPデバイスが使用可能である.

再建法別の内視鏡選択については,Roux-en-Y法ではバルーン内視鏡を用いた方が成功率が高いことが報告されているが 9),10,Billroth-Ⅱ法では大腸内視鏡(CF-H260AI,オリンパスなど)も選択肢となる.

Ⅳ バルーン内視鏡を用いた治療~吻合部同定からバルーン拡張まで

バルーン内視鏡が吻合部に到達したらオーバーチューブを追従し,その後のERCP手技に備えて安定したポジションを確保する.

吻合部を十分に観察し,吻合部狭窄の有無を内視鏡的に診断する(Figure 2).完全狭窄の場合は吻合部を同定するのが難しいが,陥凹や瘢痕のある部位を中心に,透視像とも対比しながら丁寧に観察する.遺残した縫合糸がメルクマールになることもある.内視鏡像から悪性狭窄の可能性が否定できない場合には生検を行い病理検査に提出する.生検後の出血で吻合部が同定しづらくなる可能性があるため,胆管カニュレーションおよびガイドワイヤー留置後に生検を行うのが望ましい.

Figure 2 

胆管空腸吻合部狭窄.

a:胆管空腸吻合部はピンホール状に狭窄し,吻合部周囲は瘢痕様となっている.

b:胆管空腸吻合部は易出血性の腫瘍性病変により狭窄している.悪性胆道閉塞を疑う所見であり,生検で腺癌の確定診断となった.

ERCPカテーテルとガイドワイヤーを用いて吻合部から胆管カニュレーションを行う.内視鏡が吻合部を正面視できる場合はストレート型のカテーテルを使用するが,画面の接線方向に吻合部が位置する場合には,先端の灣曲・回転が可能なSphincterotome(TRUEtome,Boston Scientific Japan;MTW Papillotome,MTW Endoscopie)を利用する.バルーン内視鏡は鉗子チャネル口径の制限があるためガイドワイヤーは0.025インチのものを基本とし,先端アングル型で選択性の高いものを選ぶ.

胆管カニュレーションに成功したら胆汁を吸引して培養検査に提出し,胆管造影を行って狭窄長や胆管泣き別れの有無を確認する.吻合部狭窄には胆管結石を伴っていることも多く,結石の有無も合わせてチェックする.

狭窄治療の最初のステップはバルーン拡張である(Figure 3).狭窄直上の肝内胆管径を超えないサイズのバルーンを選択し,穿孔に注意しながらゆっくり拡張を行う.狭窄が非常に高度な場合はまず4mm径のバルーンで拡張(pre-dilation)したのちに口径の大きなバルーンで追加拡張を行う方が安全である.拡張圧は8気圧までとし原則1分間の拡張としているが,患者の疼痛が強い場合には圧力を下げて早めに拡張を終了する.0.025インチガイドワイヤー対応のRENバルーン(カネカメディックス)は先端がtaperされていて狭窄突破力が非常に高く,ERCPカテーテルが通過しない狭窄でも突破可能なことが多い.バルーン表面にスリップ防止加工を施してあるZARAバルーン(センチュリーメディカル)は最大拡張圧12気圧まで対応しており,高度狭窄例に有用である.

Figure 3 

胆管空腸吻合部狭窄に対するバルーン拡張.

a:先端がtaperされたバルーンカテーテル(REN,カネカメディックス)で狭窄を突破し,上流胆管径に合わせた6mmバルーンで吻合部を拡張した.

b:バルーン拡張後に吻合部狭窄は改善し,良好な開存が確認できた.

バルーン拡張は簡便な治療法だが,その後の狭窄再発率が高いことが報告されている.Tomodaらの報告では,バルーン拡張で狭窄改善した症例のうち1年で38%,3年で54%が再発するとされている 11.当院のデータでもバルーン拡張治療の1年後再発率は36%であり 12,半数近くの症例でなんらかの再治療を要することになる.繰り返しの内視鏡治療が困難な症例などを別にして,原則としてバルーン拡張にステント留置を組み合わせた治療法が長期的に良好な成績を得られると考えている.

Ⅴ バルーン内視鏡を用いた治療~プラスチックステント

吻合部のバルーン拡張に引き続いてプラスチックステント(plastic stent,PS)留置を行う(Figure 4).通常解剖の良性胆管狭窄治療と同様に,なるべく大口径のステントを複数本留置することを目標とするが 13,バルーン内視鏡の場合は8.5Fr以上のステントは使用できないことが多い.そのため7FrのPSを2本ないし3本留置することが治療のゴールとなる.ステント留置期間は原則3カ月間とし,定期交換を行いながらstent freeを目指す.当院では約1年間の治療後にステント抜去を試みるようにしている.

Figure 4 

胆管空腸吻合部狭窄に対するプラスチックステント留置.

a:左右胆管に1本ずつプラスチックステントを留置した.

b:プラスチックステント2本留置後の内視鏡像.

鉗子チャネル口径の制限から0.025インチガイドワイヤーを2本留置した状態でのステント留置は困難なことが多く,1本ずつガイドワイヤー留置・ステント留置の手順を繰り返す.どうしてもダブルガイドワイヤーにしたい場合には0.025インチと0.018インチのガイドワイヤーを1本ずつ留置し,0.025インチガイドワイヤーを使ってステントを挿入する.

ステントは基本的にストレートタイプのものを選択し,通常のERCPで使用するステントの大部分が使用できる.ステントと内筒が一体型になっているものが引き戻し可能で使いやすい(Through&Pass,ガデリウスメディカル;QuickPlace V,オリンパス;Flexima,Boston Scientific Japan;REGULUS,日本ライフライン).ただし,デリバリー長が短いもの(Flexima)ではフラップカバーを事前に外しておくなどの工夫が必要である.胆管側枝のドレナージを確実に行いたい場合には側孔が付加されたステントを選択する(HarmoRay,ハナコメディカル).狭窄が越えられない場合や屈曲が高度な場合などで7Frステントの留置が難しいときは,6Frステント(HarmoRay,0.025インチ対応)や5Frの膵管ステント(Geenen, Cook Medical Japan)を代用して留置することもある.

ステント長は5~9cmの間から選択することが多い.ステントのinward migrationを避けるために,肝内胆管のある程度奥まで先端が入るように長めのステントを選択するとよい.ステントの留置は難易度が高い胆管枝から行い,1本目のステントリリース後にステント脇から再度カニュレーションして2本目,3本目を留置する.

ステント交換の際には内視鏡画面で狭窄改善の有無を確認する.十分な開口が得られている場合は続いて胆管造影で造影剤流出が良好なこと,結石除去バルーンが吻合部をスムーズに通過することを確認して狭窄改善と判断する.

PS治療による狭窄改善率は50~90%程度と報告されている 12),14.またPS留置を一定期間行うことでバルーン拡張と比較して狭窄再発を低減することができ,既報では1年再発率が約10%程度と報告されている 11.すなわち,バルーン拡張とPS治療を組み合わせることで半数以上の症例でstent freeが期待できる.この治療法は比較的簡便に行うことができ,現時点での胆管空腸吻合部狭窄に対する標準治療と考えられる.

Ⅵ バルーン内視鏡を用いた治療~金属ステント

胆管空腸吻合部狭窄に対する治療成績をさらに向上するために,Fully-covered self-expandable metal stent(FCSEMS)を用いた内視鏡治療が一部の施設で行われている.良性胆管狭窄に対するFCSEMS治療は,慢性膵炎による胆管狭窄や脳死肝移植後胆管吻合部狭窄などの遠位胆管狭窄においてその有用性が報告されてきた 15),16.胆管空腸吻合部狭窄を含む肝門部良性胆管狭窄においては,狭窄が胆管分岐部に位置することや胆管屈曲が高度であることからFCSEMS治療の技術的難易度が高い.そのためすべての症例に適用できるわけではないが,既報では良好な治療成績が報告されている 17)~19.治療の標準化には今後のエビデンスの蓄積が待たれる.

当院では,良性胆管狭窄に対する胆管内留置を想定して開発されたFCSEMSであるNiti-S Kaffes stent(Taewoong Medical)やBONASTENT M-Intraductal(Standard SciTech)を使用して胆管空腸吻合部狭窄治療を行っている.ステントデリバリー径はKaffes stentが9Fr,BONASTENTが8Frで,鉗子口径3.2mmのバルーン内視鏡ではthrough the scopeで問題なく留置可能である.これらのステントは中央がくびれたダンベル型の形状をしており,このくびれ部分を狭窄に合わせて留置することでステント逸脱を予防する構造になっている.ステント遠位端には抜去用のナイロン糸(lasso)が付加されており,これを鉗子などで把持して牽引するとステント端がすぼまりながら抜去される.

FCSEMSを胆管空腸吻合部治療に用いる場合,注意すべきなのが対側胆管枝閉塞による区域性胆管炎である.総肝管が長く残っている症例を除くと,FCSEMSによる分枝閉塞は多くの症例で避けられない.この偶発症を避けるためには対側胆管枝にPSを留置する方法が有用であり,われわれはこれを“Rescue stent”と呼んでいる(Figure 5 17.左肝管にFCSEMSを留置する場合には右葉胆管にPSを,右肝管にFCSEMSを留置する場合には左葉胆管にPSを留置する.場合によっては右前区域枝にFCSEMS,右後区域枝と左葉胆管にRescue stentとして1本ずつPSを留置するというような複雑なステンティングが必要になる場合もある.そのため,FCSEMS留置を行う胆管枝は,なるべく吻合部近くから分枝が出ていないものを選ぶとよい.

Figure 5 

胆管空腸吻合部狭窄に対する金属ステント留置.

a:胆管造影で吻合部狭窄を確認した.

b:Fully-covered self-expandable metal stent(FCSEMS)による対側胆管枝の胆管炎を予防するために,まずプラスチックステント(Rescue stent)を留置した.

c:続いてFCSEMS(BONASTENT M-Intraductal,8mm 4cm)を左肝管に留置した.狭窄部がステント中央のマーカーに一致するように展開した.

d:FCSEMS留置後の内視鏡像.

e:3カ月間の留置の後にFCSEMSを抜去し,吻合部狭窄の改善を確認した.

実際の治療においては事前準備として胆管分岐形態を詳細に分析しておくことが重要である.内視鏡を挿入する前に,どの胆管にFCSEMSを留置し,どの胆管にRescue stentを入れる必要があるのかをシミュレーションしておく.通常,バルーン内視鏡のスコープ軸と一直線上にあるのは左肝管であることが多く,ステントデリバリーの挿入のしやすさから左肝管をFCSEMS留置の第一選択とすることが多い.この場合にはB2/B3分岐およびB4分岐が吻合部から離れていることを確認しておく.また,左肝管から右後区域枝が分岐する破格がないかもチェックする.

吻合部到達からバルーン拡張まではPS治療と同様の流れである.胆管造影で事前のステント留置計画と矛盾がないかを確認し,FCSEMSの径と長さを決定する.ステント径は胆管径を大きく超えないように選択し,8mm径または10mm径を使用することが多い.ステント長は4cm前後の短めのものを選択してなるべく分枝をふさがないようにする.まずRescue stentとしてのPSから留置を行う.屈曲が高度で留置の難易度が高そうな胆管から順にPSを留置し,1本ずつステントリリース・ステント脇からのカニュレーションの手順を繰り返す.Rescue stentを留置し終えたら,最後にFCSEMSの留置を行う.デリバリーが狭窄部を突破しづらいときはバルーン拡張を追加する.不透過マーカーを参考に,ステント中央部が狭窄に一致するように調整しながらステントを展開する.ステントが展開されたら続いてlassoをリリースする.ステントから少し距離をとり,スコープの鉗子チャネル内でlassoをリリースしてからデリバリーを抜去し,水でフラッシュしてlassoを押し出すことでおおむね問題なく留置が完了する(Figure 5).

ステント留置期間は3カ月間以内とするのが安全と考えられる.Covered membraneの破損による胆管内埋没によってステント抜去困難となるのを避けるためである.一方で留置期間を長くするほど狭窄改善や再発抑制などの治療成績を向上する可能性があり,至適なステント留置期間については今後の検討が必要である.

ステント抜去の際にはlassoを鉗子で把持してステントを牽引し,through the scopeで抜去する.ただしステント内に胆泥が充満している場合は鉗子チャネル内に引き込めないので,一旦胆管内から出して吻合部近傍の空腸に置いておき,スコープ抜去時に一緒に抜去する.ステントを抜去したら内視鏡画面で狭窄改善の有無を確認し,続いて胆管造影で造影剤流出が良好なこと,結石除去バルーンが吻合部をスムーズに通過することを確認して狭窄改善と判断する(Figure 5).

Ⅶ 超音波内視鏡を用いた治療

胆管空腸吻合部狭窄に対する新たな内視鏡治療として,超音波内視鏡(EUS)を用いた治療がある 7.超音波内視鏡ガイド下肝胃吻合術(EUS-guided hepaticogastrostomy,EUS-HGS)によって胃から左葉肝内胆管に瘻孔を作成し,順行性に吻合部狭窄を突破する.バルーン拡張に引き続いてPSを留置し,ステント交換のタイミングでバルーン拡張とPSの追加を行い,狭窄改善を目指す(Figure 6).順行性にFCSEMSを留置する方法も報告されているが 20,まだ確立された方法とは言い難い.

Figure 6 

胆管空腸吻合部狭窄に対する超音波内視鏡を用いた治療.

a:超音波内視鏡ガイド下肝胃吻合術(EUS-guided hepaticogastrostomy,EUS-HGS)を行い,胆管造影で吻合部狭窄を確認した.

b:順行性に吻合部狭窄を突破し,バルーン拡張を行った.

c:狭窄部に対してプラスチックステントを留置した.

EUSを用いた治療の利点は,バルーン内視鏡の挿入に要する時間・労力を省略できることである.欠点としては,胆汁性腹膜炎などの特有の偶発症があること,初回治療ではPS2本以上の留置が難しいこと,狭窄改善を内視鏡的に確認できない(胆道鏡が必要)ことが挙げられる.特に吻合部の内視鏡的な確認ができないことは悪性狭窄の除外という点からもデメリットであり,現時点ではバルーン内視鏡を用いた治療が胆管空腸吻合部狭窄に対する第一選択と考えられる.

Ⅷ おわりに

本稿では胆管空腸吻合部狭窄に対する内視鏡治療について,主にバルーン内視鏡を用いた治療法を解説した.従来のバルーン拡張,PS治療に加えて,FCSEMSを用いた治療による治療成績の向上が期待されている.また,超音波内視鏡を用いた治療も今後の有望な選択肢となりうる方法である.適応や治療選択,限界について前向き比較試験による今後の検証が待たれる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:中井陽介(オリンパス株式会社,ボストン・サイエンティフィック・ジャパン,ガデリウス・メディカル株式会社,富士フイルム株式会社,HOYA株式会社),藤城光弘(オリンパス株式会社,富士フイルム株式会社)

文 献
 
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