日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
十二指腸乳頭部腫瘍の内視鏡的マネジメント
岩崎 栄典 川﨑 慎太郎金井 隆典
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2024 年 66 巻 3 号 p. 243-258

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要旨

十二指腸乳頭部腫瘍は内視鏡スクリーニングが広く行われるようになったことから無症状で発見されることが増えている.以前は黄疸をきたした進行癌の状態で発見されることが多く開腹手術による膵頭十二指腸切除が第一選択であった.最近は十二指腸乳頭部腫瘍に対して内視鏡的乳頭切除術が積極的に行われるようになった.また,十二指腸乳頭部腫瘍の診断には十二指腸乳頭部近傍の微細な腫瘍浸潤を評価するために超音波内視鏡の有用性が報告されている.日本消化器内視鏡学会および欧州内視鏡学会から内視鏡的乳頭切除のガイドラインが出版され,現在のエビデンスをもとにした診断と治療方法について標準的方針が提示された.本稿ではさらに最近の新たなエビデンスと論文をレビューしたい.

Abstract

The detection rate of ampullary adenomas has increased because of the widespread use of endoscopic screening. Conventionally, laparotomic pancreaticoduodenectomy has been recommended for advanced ampullary adenocarcinoma. However, the management of early asymptomatic ampullary tumors has changed from open surgery to endoscopic resection because of the developed endoscopic techniques and devices. Endoscopic papillectomy is a widespread therapeutic modality for ampullary tumors despite its high-risk endoscopic technique. Japan Gastroenterological Endoscopy Society and European Society of Gastrointestinal Endoscopy published new guidelines, presenting current best practices of endoscopic papillectomy, despite insufficient evidence. This article reviews more recent emerging evidences and offers tips that can help in actual clinical practice.

Ⅰ 緒  言

十二指腸乳頭部腫瘍の診断においてはCT,MRI検査に加えて,消化管から乳頭部,膵頭部,胆管膵管を明瞭に描出可能な超音波内視鏡(EUS)が有用である.また,治療については乳頭部腫瘍の多くの症例で内視鏡を用いた治療,つまり内視鏡的乳頭切除術(endoscopic papillectomy:EP),緩和目的の胆管・膵管ドレナージなどが治療ストラテジーの中心を占めるようになってきた.最近は,腫瘍局所制御目的のラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)の報告も増えている.内視鏡的粘膜切除手技に加えて内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)関連処置を要するため胆膵内視鏡医が治療を担当することが多い.そのようななかで2021年に日本消化器内視鏡学会(Japan Gastroenterological Endoscopy Society:JGES)より「内視鏡的乳頭切除診療ガイドライン」(以下JGESGL) 1が公開され,さらに欧州消化器内視鏡学会(European Society of Gastrointestinal Endoscopy:ESGE)でもガイドラインが発行された(以下ESGEGL) 2.今回は十二指腸乳頭部腫瘍に対する診断・治療における内視鏡の役割と最近のエビデンスを報告する.

Ⅱ 十二指腸乳頭部腫瘍の解剖・疫学

Ⅰ)十二指腸乳頭部腫瘍の解剖

胆道がん取扱い規約では十二指腸乳頭部とはOddi括約筋に囲まれた部分とするが,その目安は胆管が十二指腸壁(十二指腸固有筋層)に貫入してから十二指腸乳頭開口部までと定義されている 3.乳頭部(A)には大十二指腸乳頭(Ad),共通管部(Ac),乳頭部胆管(Ab)そして乳頭部膵管(Ap)が含まれる.十二指腸乳頭部癌のTNM分類のT因子については,胆道癌取扱い規約第7版では国際対がん連合(Union for International Cancer Control:UICC)のTNM分類第8版にあわせて変更され,T1aはT1a(M):粘膜層あるいはT1a(OD):Oddi括約筋までの浸潤となり,T1b:Oddi括約筋を超えて浸潤および/または十二指腸粘膜下層内に浸潤,T2:十二指腸固有筋層への浸潤とされている.

Ⅱ)十二指腸乳頭部腫瘍の疫学

十二指腸乳頭部腫瘍の有病率は0.04-0.1%程度と稀な疾患であるが,内視鏡検診などで発見されることが増えてきている 4),5.また,十二指腸乳頭部腫瘍の組織のほとんどは腺腫,腺癌であるが,血管腫,平滑筋腫,消化管間質系腫瘍,神経内分泌腫瘍の他に,gangliocytic paraganglioma,悪性リンパ腫,線維腫などが発生しうる.

Ⅲ)家族性大腸ポリポーシスとの関連

APC(adenomatous polyposis coli)等の遺伝子変異を示す常染色体優性遺伝性疾患である家族性大腸ポリポーシス(familial adenomatous polyposis:FAP)患者において十二指腸乳頭部腺腫・腺癌の合併が多く,その管理は重要である.デンマークのFAP患者565例のコホート研究において大腸癌(HR 4.61),膵癌(HR 6.45),十二指腸癌(HR 14.5)の危険因子が上昇することが示された 6.また,FAP症例において乳頭部腺腫はほぼ100%に発症し 7,大腸癌の次に致死的な合併症は乳頭部癌とされている 8),9.FAPに伴う乳頭部腫瘍に対するEP(202例)の後ろ向き多施設研究では,初回治療のR0切除は63.4%であり,孤発性83.2%に比較して有意に低い結果となったが,再治療を繰り返すことで同等の成績となった.有害事象に差はなく,再発率も同程度であったが,FAP患者では長期経過で再発をきたしやすいことが報告されている 10.また,6つの報告(99例)を対象としたシステマチックレビューでは,最終的なEPの成功率90.3%(CI 76.9-96.3%),一括切除率60.6%(CI 47.9-72.0%),再発率25.4%(CI 5.7-65.9%)であった 11.以上のように,FAP患者においても孤発性同様にEPは安全で効果的な治療法と考えられる.その一方で,FAPに伴う乳頭部腫瘍は若年時に処置することが多く,EP後膵炎発症リスクに配慮する必要がある.

Ⅲ 十二指腸乳頭部腫瘍の治療適応

Ⅰ)十二指腸乳頭部腺腫の治療適応

十二指腸乳頭部腺腫は前癌病変であり,悪性化のリスクを内包するため,一般的に多くの症例では根治的な腫瘍切除が推奨される.治癒切除を狙って治療介入する場合,外科的介入は高い完全切除率を示すものの,耐術能や術後合併症を考慮する必要がある.1983年にSuzukiらがEPを報告後,多くのケースシリーズや比較研究を経て手術の代替治療としてその有用性が確立されてきた.手術療法は内視鏡治療よりも,治療関連合併症の発生率が有意に高く(42% vs 18%) 12とくに膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy:PD)では感染症合併率が44%と高い 13.さらにプロペンシティスコアマッチングを用いて270例ずつで比較した報告ではPDとEPで比較すると合併症はPD群で有意に高かった(中等症以上58.9%vs 18.9%,死亡9例 vs 0例) 14.以上より現在は各ガイドラインにて十二指腸乳頭部腺腫に対する治療はEPが第一選択とされている 1),2

EPには切除範囲の限界があり,垂直方向で粘膜下層からOddi括約筋を水平方向に切除するため,筋層よりも深い腫瘍進展部は切除できない.また,側視鏡によってスネアで把持できない側方範囲は切除が困難である.いわゆる乳頭部側方発育腫瘍(laterally spreading tumor involving the papilla:LST-p)についてはESGEGLでは分割切除を推奨しているが,出血の合併症が多く再発率も高いことに注意喚起されている 2.一括切除を行うのであれば直視鏡を用いた内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)を選択あるいは併用する必要がある.以上より深部(管腔)進展と側方進展がEP適応の重要な因子となる.胆管膵管への深部進展については,ガイドラインにおいて「胆管膵管浸潤のない腺腫」をよい適応としている 1.胆管進展についてはEP治療後にラジオ波焼灼やAPCなどを用いて管腔内を追加焼灼する報告が増えているが,その有効性・安全性は定まっていない.ESGEGLでは2cm以上の胆管進展や憩室症例,直径4cm以上の腫瘍については手術介入を推奨している 2

Ⅱ)十二指腸頭部腺癌の治療適応

EPで切除可能な病変において術前生検で腺癌が検出された際の治療選択についてはいまだに議論がある.術前生検検査の正診率が低いため,切除検体での正確な病理診断を目的にEPを施行することも選択される.治療の選択としてはEP以外に,患者病状にあわせて無治療経過観察,経十二指腸乳頭切除(Trans-duodenal surgical ampullectomy:TSA),PD,切除不能乳頭部癌での胆管・膵管閉塞に対する緩和的な胆管膵管ドレナージ,化学療法などを考慮する.

内視鏡治療を選択するにあたり,消化管早期悪性腫瘍と同様に予後と密接な関係のあるリンパ節転移の評価が重要であり,術前の造影CT,MRI,EUSによる画像評価が必須である.深達度T1の十二指腸乳頭部癌術後の解析において,22%(35/163例)でリンパ節転移が証明されており,T1腫瘍については領域リンパ節郭清を伴うPDを推奨している 15.その一方で,粘膜内癌からT1aまでのリンパ節転移はほとんど報告がない.胆道癌診療ガイドライン改訂第2版ではOddi括約筋に達する癌(T1b癌)のリンパ節転移率が高く(9-42%),Oddi括約筋に浸潤するか否かの術前診断が困難であることから,腺腫内癌およびTisに対しては縮小手術も考慮されるが,乳頭部癌に対しては膵頭十二指腸切除術を推奨している 16

これらの因子を十分吟味した上で治療方針を決定する必要があるが,術前の生検病理の正診率が低いこと,EUSによるOddi括約筋浸潤の評価が困難であることなどから,実際の臨床現場ではEPの適応判断に迷う症例が多く存在する.明らかなEP治療適応外因子がある場合を除いて,患者の年齢や全身状態,併存疾患,診断の限界,処置の利益不利益を患者と十分にシェアし,場合によっては専門施設へのセカンドオピニオンの上で方針を決めることがすすめられる.

Ⅲ)十二指腸乳頭部粘膜下腫瘍の治療適応

十二指腸乳頭部近傍に発生することが多い粘膜下腫瘍である神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)については,膵・神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019では「十二指腸NETに対する内視鏡的切除術の有効性は確立していない.内視鏡的切除術としては内視鏡的粘膜切除術(EMR)が推奨される」としており,10mmを超えると高率にリンパ節転移をきたすことから,10mm未満の腫瘍に対してEMRを考慮するとされている 17),18.乳頭部NETの29例で良好な成績が報告されている 19.また,65例を対象とした多施設研究では腫瘍径10mm以上とEUSでT1を超える症例がR1切除の有意なリスク因子であった 20

Gangliocytic paragangliomaは胎生期の神経堤由来の傍神経節から発生し副腎外褐色細胞腫とも呼ばれる.手術検体を用いた263例のシステマチックレビューでリンパ節転移のリスクは腫瘍径と腫瘍浸潤の深さとしている 21.内視鏡切除は少数の症例報告のみであるため,治療適応は確立していない.生物学的には褐色細胞腫と同様の腫瘍であり切除時の血圧変動にとくに注意を払う必要がある 22

Ⅳ 内視鏡診断・深達度診断

Ⅰ)内視鏡観察での診断方法

乳頭部腫瘍の評価はまず,上部消化管内視鏡(直視鏡)検査を用い,十二指腸全体を評価し同時に存在する孤発性十二指腸腺腫の有無を確認する(Figure 1).ストレッチ後の乳頭部観察が難しい症例では,十二指腸球部からプッシュして十二指腸深部まで挿入して評価すると乳頭部と距離を保つことができて観察しやすい.専門外来受診後は治療用の十二指腸鏡(側視鏡)を用いて乳頭部腫瘍を正面から観察する.有茎性か側方発育腫瘍なのかは内視鏡治療方針決定に重要であるため,カテーテルなどを使って腫瘍を避けつつ腫瘍の基部全周を十分に評価する(Figure 2).表面構造として,典型的な腺腫は白色で構造異型は少ないが,腺癌では発赤を伴い易出血性,結節状の凹凸や潰瘍形成,非露出腫瘍部による口側隆起の緊満腫脹がみられる.その一方で,腺腫成分ではないいわゆる乳頭部炎症例は,発赤を伴い根膜面が粗造になることも多く,簡便な鑑別方法はない.十二指腸腫瘍の拡大内視鏡,Narrow band imaging(NBI)での評価などを含めて内視鏡診断の技術が進んでいる 23),24が,十二指腸乳頭部腫瘍についてはまだ統一された見解はなく,必ずしも容易でない.

Figure 1 

乳頭部腫瘍 内視鏡白色光所見.

a,b:十二指腸乳頭炎・生検で軽度の炎症のみ.

c:乳頭部腺腫(中等度異形成).

d:腺腫内癌.

e:十二指腸癌(de novo腺癌).

f:進行乳頭部癌.

g:側方発育腫瘍LST-p.

h:粘膜下腫瘍gangliocytic paraganglioma.

Figure 2 

術前内視鏡観察方法.

a,b:カテーテルで腫瘍の基部を観察.

c:腫瘤中央から生検.

d,e:ラジアルEUSでの観察.胆管膵管浸潤を認めず(白矢頭,白矢印 膵管).

Ⅱ)内視鏡下生検検査

十二指腸乳頭部腫瘍の術前生検の正診率を向上させるための方法に関する質の高い報告はない.一般的には胆管膵管開口部近傍の悪性度が高いとされており同部での生検が望ましい 25.内視鏡所見による標的生検や適正な採取回数は定まっていないが,潰瘍形成,表層構造が乱れている部位を中心に生検を採取する.粘膜下腫瘍については内視鏡下生検の正診率は50%以下であり,EUS下穿刺吸引法(EUS-FNA)やボーリング生検,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)で腫瘍露出後の生検の有用性が報告されている.比較試験ではEUS-FNAの有用性が示されている 26

196例の手術後病理の評価では内視鏡生検の偽陰性率が43%と高いことが報告されており,複数部位,より深い部位で多くの生検を採取することが推奨されている 27.その一方で,乳頭部腺腫の生検による膵炎発症は少数例の報告にとどまるものの,十分注意が必要である 28)~30

Ⅲ)腫瘍の深達度診断

EPと手術の方針決定に重要であるのが深達度診断である.まずEPの適応を判断するために造影CT,MRIにより腫瘍の存在や周囲のリンパ節転移,胆管膵管拡張などの二次的変化を評価する 31.CTやMRIで明らかな胆管膵管拡張をきたしている症例は一般的には乳頭部癌や管腔浸潤をきたしていることが予想される.EUSは消化管に近接した臓器を最も高解像度に描出できることから深達度診断,リンパ節転移評価に重要な役割を担っている.とくに胆管・膵管進展についての診断能は,それぞれ86~90%・77~92%と高い精度を示している 32)~34

具体的な観察方法は,ラジアル型EUSをもちいる場合,まず十二指腸球部から膵頭部・乳頭部の縦断像を描出し,低エコーの筋層を視認しながらOddi括約筋を通過する部位まで追従する.続いてストレッチした状態で十二指腸下行脚より膵頭部・乳頭部の縦断像・横断像を描出し,乳頭部腫瘍,Oddi括約筋,十二指腸筋層,胆管・膵管を同定する.脱気水や内視鏡用ゲルを十二指腸内に注入し乳頭部を圧排しないよう観察すると明瞭に描出が可能である 35.筋層を意識して腫瘍の膵実質浸潤や胆管・膵管内に低エコーに描出される腫瘍進展がないかを注意深く観察する(Figure 23).コンベックス型EUSも同様に球部および下行脚から乳頭部を十分観察する.この際,乳頭部近傍胆管内にひだ状の所見(papillary fold)がみられることがありEUS時に腫瘍胆管進展と過剰診断になるケースがあり注意が必要である.管腔内の微小な病変の評価には,より解像度が高い管腔内超音波検査(Intraductal ultrasonography:IDUS)の有用性が報告されており,T1b以浅とT2以深の診断に用いる.またT2やT3の判定はIDUSに比較するとEUSのほうが理論的に優れている 36.しかしながら腫瘍自体のエコーレベルは一定せず,粘膜下層,筋層などの周囲組織とコントラストがつきにくく,明らかな浸潤性腫瘍以外は浸潤の正確な判断が困難となることが多い.そのため病期T1のEUS診断能は感度77%(95%CI 69-83),特異度78%(95%CI 72-84)と若干低い成績となっている 37

Figure 3 

管腔浸潤症例のEUS診断.

a:ラジアルEUS横断像:乳頭からやや口側,膵管内に腫瘤の浸潤.

b:術後病理所見:膵管内に腫瘤浸潤を認める.

Ⅴ EPの標準手技

Ⅰ)腫瘍切除の手技

様々な治療法や工夫が報告され,徐々に標準的な手順が定まってきている.腫瘍切除そのものの手技としては,腫瘍と周囲粘膜Oddi括約筋を含めてスネアリングを行い,高周波装置で通電切除し検体を回収する(Figure 4-a~e).側視内視鏡を用いて粘膜およびOddi括約筋を含めて切除する必要があるため,通常の消化管ポリペクトミーとは異なる工夫が必要となる.スネアリングについては多くの施設では,若干内視鏡を引いてダウン・左アングルとして,シースから2mmほどスネアを出した状態で口側隆起の上端からやや右側頭側に先端をあてて,助手がスネアを広げる動作に合わせて内視鏡をプッシュ右アングルとしながら腫瘍周囲粘膜へスネアを押し当て,小帯付近まできたところで,側方の腫瘍が十分スネアで把持できていることを確認しながら,スネアリングを行い絞扼する.口側隆起,Odd括約筋まで切除できるように強めに押し当て,絞扼し腫瘍が鬱血したことを確認したところで高周波装置で切除を行う.肛側からスネアリングする手法もあるが,切除時に腫瘍や周囲粘膜を把持できているか評価しにくい.腫瘍はOddi括約筋,十二指腸筋層に連続しているため周囲の粘膜下局注では腫瘍は挙上されないため逆に処置が困難となるため 1,側方発育型腫瘍への計画的分割切除時以外では,局注は避ける.腫瘍切除に用いる高周波スネアについては,施行医により好みが分かれるが,われわれの施設では不要な凝固や熱損傷を避けるために細めのスネアを好んで利用している.

Figure 4 

EP処置.

a:スネアの先端を2mmほど出して,口側隆起右上にあてがいスネアを展開.

b:スネアを広げながら内視鏡を右アングル,深部へ進めスネアで腫瘤周囲の粘膜を把持する.

c:腫瘍をスネアリングして絞扼する.

d:高周波装置で一回で切除する.

e:ネットで腫瘍を回収する.

f:潰瘍底の胆管膵管へアプローチする.

g:胆管をEST小切開.

h,i:膵管へ膵管ステントを留置する.

j:潰瘍底をクリップで縫縮する.

Ⅱ)高周波装置の設定

高周波装置は様々な種類や設定があり,意見がわかれているのが実情である 38.われわれは高周波手術装置ICC200(エルベ社,ドイツ)での混合波(エンドカット)と切開波(オートカット)を用いた腫瘍切除方法に関するRCTを行ったが,出血,膵炎ともに差はなかったものの,切除検体の組織挫滅は明らかにエンドカットで多い結果であった 39.凝固成分が組織挫滅をきたすことで術後出血や熱損傷による膵炎リスクがおこりうるため,焼灼・切開のin vitroでの実験評価 40をもとに,高周波手術装置VIO3(エルベ社,ドイツ)を用いてEffect(凝固深度)1,Duration(切開時間)4,Interval(止血時間)1の設定で腫瘍切除を行っている.

Ⅲ)新たな腫瘍切除方法の応用

大腸ポリープや十二指腸表層性腫瘍に用いられるunderwater EMRのEPへの応用の症例報告がされている 41)~44.Underwaterで施行すると水平方向に十分なマージンがとれるため,周囲粘膜再発に対する治療としても有用と考えられ 45,また,小腸内視鏡での症例報告もされている 46.本来は穿孔リスクが低い処置であるが,LST-pに対する処置で十二指腸穿孔の報告もある 44.その一方でOddi括約筋を十分切除できない可能性も指摘されており,今後の課題と考える.また,一部の専門施設ではLST-pを対象としたESDの応用も進んでいる 47

Ⅳ)切除後検体の回収

切除後の検体による病理組織診断は治療方針決定に重要であるものの,ときに蠕動により検体が小腸へ流れて回収困難となるリスクがある.鎮痙剤を適宜用い,切除後は患者を完全腹臥位として,速やかに回収ネットやスネア,5脚鉗子,把持鉗子などを用いて回収する.回収に難渋した場合や,活動性出血などで迅速な処置が必要な際は検体を胃内へ移動させると検体喪失を防ぐことが可能である.深部小腸へ流れた場合にはわれわれの施設では,小腸内視鏡に入替えて回収を行うようにしている.

Ⅵ EP後偶発症予防のための追加処置

Ⅰ)EP後偶発症の予防

通常の消化管EMR,ESDと異なる点はEP後の潰瘍底に,胆管膵管が直接開口していることにある.胆汁・膵液が混合することにより体内で最も活性化した強力な消化液が絶え間なく潰瘍底に曝露することで出血や穿孔をきたす.また,切除時の凝固作用による熱損傷で膵管閉塞や実質障害をきたし急性膵炎をきたす.そのため偶発症予防として,胆管・膵管・切除部潰瘍の3カ所への適切な予防策が必要である.つまり胆管・膵管孔の確保,胆汁膵液の潰瘍底への曝露予防,潰瘍底の縫縮である.ESGEGLでは予防方法を列挙しているが,各症例ごとに術者が判断して予防策を行うべきと推奨している 2

Ⅱ)胆管処置

胆管処置の目的は術後早期の熱損傷による開口部の浮腫性狭窄,後期合併症として発生する胆管開口部狭窄の予防である.胆管処置については多くの意見があり,胆管開口部のEST,胆管ステント留置,内視鏡的経鼻胆管ドレナージ留置が選択されるが,エビデンスはなく術者の好みとなっている(Figure 4-f,g).専門医によるコンセンサス研究では出血が続く場合のみ胆管ステント留置が76%の一致率を示した 31.著者施設では以前はEST処置のみとしていたが,小型の腫瘍の場合ESTの切開長がとれず,また出血が多い経験もあり,最近はESTせずに7Frのプラスチックステントを1−2週間ほど留置することとしている.

Ⅲ)膵管処置

膵管処置については膵炎予防と膵管孔狭窄予防のためにステント留置を行うことが推奨されており,専門家間でのコンセンサスも100% 31,ガイドラインでもステント留置を推奨している(Figure 4-h,i 1.また,術前に膵管走行をCTやMRIなどで確認し,膵管ドレナージ方法を術前に検討する.また,内視鏡観察時に副乳頭を観察し,インジゴカルミンなどを散布して副膵管経由の膵液流出を確認することで術後膵液ドレナージの要否を確認すべきという意見はあるものの,エビデンスはない.膵管ステントについては乳頭部を切除している関係からOddi括約筋による固定が不充分で,ステントの迷入や脱落が起こりやすい.そのため,われわれは長めの膵管ステント留置の有用性を報告した 48.筆者は迷入予防として手前がピッグテール型をしているステント(FIT-Stent,ガデリウス社,日本)を留置しているが,膵管ステントの形状(直線型,軽度の屈曲型,S字型)含めて,どのステントに優位性があるかのエビデンスはない.また,十二指腸乳頭部へのESD症例で有用性を報告した経鼻膵管ドレナージチューブ(逆アルファショートタイプ,ガデリウスメディカル)留置も選択可能である(Figure 5 47.膵管形状は症例により異なり,高度の屈曲を伴う逆Z型膵管,ansa pancreatica,不完全型膵管癒合不全では膵管ステントが深部まで挿入できない場合がある.膵管屈曲の強い症例については,膵管内に短い留置となっても安定したドレナージができるように,先端長が非常に短い経鼻ドレナージチューブ(逆アルファベリーショートタイプ,ガデリウスメディカル)を用いている.

Figure 5 

経鼻膵管ドレナージ留置法.

a:EP後に膵管ワイヤを留置後にワイヤに沿わせるようにクリップを展開して創部にあてがう.

b:潰瘍底を縫縮する.

c:5Frの経鼻膵管ドレナージを留置する.

d:透視で膵管ドレナージの先端を確認する.

経鼻ドレナージを行う際は,比較的長期の留置となる可能性もあるため癒着のリスクを考えてフラップのないものを利用している.

また,EP後膵炎予防の非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)についてはERCP処置のなかでは膵炎高危険度処置であることからガイドラインでも投与が推奨されており 2,また専門家間でも82%でコンセンサスが得られている 31

Ⅳ)潰瘍部処置

潰瘍部の処置については術中出血,術後出血,穿孔予防の効果的な治療・予防方法としてクリップを用いた創部の縫縮が試みられている(Figure 4-j).以前は側視鏡を用いるとシャフトが屈曲することでクリップ操作性が悪くなり,適切な部位へのクリップ縫縮は困難であった.最近は側視鏡,鉗子起上装置でシャフトを強く屈曲した状態でも開閉や回転可能な止血クリップが複数販売されており操作性が改善している.潰瘍底のクリップ縫縮については,前向き研究 49やランダム化比較試験 50が行われ,明らかに出血合併症が低下することが報告されている.以前有用性が報告されていたアルゴンプラズマレーザー焼灼による出血予防については,多施設前向き研究で有用性が否定されており,予防的焼灼は推奨されていない 51

Ⅶ EPのアウトカム

Ⅰ)EPの治療成績,遺残再発

EPの治療成績と遺残再発率をTable 1 52)~58に提示した.完全切除の定義が各研究により異なるものの,内視鏡的乳頭部腫瘍切除の成績としてJGESGLでは47-93%としている.最近のシステマチックレビューでは1,589例で成功率87.1%(95% CI 83.0-90.3%;I2統計量=70%)であった 52.切除成功率に関するメタ解析ではEP2,324症例で76.6%(95% CI 71.8-81.4%),TSA 292例で96.4%(95% CI 93.6-99.2%)であった 59.治療後の再発についてはEP後で13%(95%CI 10.2-15.6%),TSA後で9.4%(95% CI 4.8-14%)であった.韓国の多施設研究では5つの施設から合計106例のEP処置の成績で76.4%が治癒切除,16.1%で早期再発,10.4%が晩期再発をきたした.切除断端が陽性,あるいは不確定,分割切除が再発の危険因子であった 53.遺残再発率は高いものの,複数回の処置を行うことで腺腫であれば最終的に多くの症例で根治切除可能と考えられる.

Table 1 

EPの治療成績.

Ⅱ)偶発症とその対応

EPに伴う偶発症はPDやTSAよりは少ないものの,システマチックレビュー(29論文1,751例)では偶発症は25%,EP後膵炎12%,術後出血11%,治療関連死亡は0−2%であった 52.他の消化管内視鏡治療に比較すると明らかに発生率・重症度は高く,様々な予防処置が開発された現在においても膵炎・出血合併については注意が必要である(Table 2 39),53),55),57),58),60

Table 2 

EPの偶発症発生率.

出血時の対処としては,上部消化管出血と同様の止血処置を応用するが側視内視鏡での処置の場合はデバイスの選択に注意が必要である(Figure 6).ERCP関連止血処置としては,胆管開口部近傍からの出血で胆管ワイヤを留置した上で結石除去用バルーンで開口部を圧迫する方法や,フルカバーメタリックステントによる圧迫止血が有効である.最近はフィブリングル 61,止血ペプチド 62),63,止血ゲル 64などの新規マテリアルの有用性が報告されているが今後の検討が必要である.

Figure 6 

出血時の対処.

a:EP後の潰瘍底より湧出性の出血を認める(白矢頭).

b:大腸用コアグラスパー(オリンパス)で凝固止血.

c:潰瘍底からの静脈性出血にアルゴンプラズマガスレーザーで凝固止血.

d:乳頭切除大量の出血があり,洗浄を繰り返すも出血点不明.

e:ワイヤを留置して胆管にフルカバー金属ステントを留置して止血に成功した.

EP後膵炎を発症した際にはERCP後膵炎・急性膵炎ガイドライン 65に準じて重症度判定を繰り返しながら十分な補液と全身管理で対応する.膵管ステント先端の分枝膵管への迷入や出血によるステント閉塞などのドレナージ不良による膵炎の可能性も否定できないため,必要に応じて膵管ステントの除去や止血術の追加を検討する 48

Ⅷ 今後の課題(難治症例へのマネジメント)

Ⅰ)側方発育腫瘍へのマネジメント

ESGEGLでは十二指腸乳頭よりも丈の低い表層進展が10mm以上側方へ広がるものをLST-pとして定義し,内視鏡的分割切除を推奨している(Figure 7).しかし,側方に大きく進展した症例や,全周性のLST-pの治療方針は定まっていない.側視内視鏡での処置は十二指腸内側に限られており,外側まで広がった場合には直視鏡あるいは併用での切除が必要となる.LST-pに対する分割切除については複数の報告があるが,44例での報告で完全切除95.5%,術後出血25.0%,穿孔なしという良好な成績 66に続いて,複数の報告で有用性が報告されている(Table 3 54),55),66),67.また,水平方向の周囲切開後にスネア切除するハイブリッド法を用いたケースシリーズが報告されている 68.多くの報告で分割切除を要するLST-pは再発率が高いこと,十二指腸表層性腫瘍では腫瘍径増大により腺癌の合併率が高くなることから,不十分な分割切除による癌再発と病理学的診断が不正確となるリスクがある.また,われわれの施設では腺癌成分を内包する可能性のある巨大なLST-pについて,十二指腸ESD技術を用いた乳頭部Oddi括約筋を含めて一括切除(endoscopic submucosal dissection including papilla:ESDIP)を行い,胆管膵管の経鼻ドレナージを用いることで安全性を担保する方法を報告してきた 47.しかしながら十二指腸乳頭部を含めたESDは非常に高い技術と全身管理を要するため,十二指腸ESD治療に特化している専門施設への紹介が望ましいと考える.

Figure 7 

LST-pへの計画的分割切除.

a:尾側へ広がるLST-p.組織は腺腫であった.

b:分割切除をプランした.

c:腫瘍周囲粘膜下にインジゴカルミンを加えた生理食塩水を注入.

d:腫瘍尾側を小帯まで切除.

e:続けて口側隆起から乳頭部を切除.

f:切除後の潰瘍.

g:膵管ステントを留置後,クリップで可能な範囲を縫縮した.

h:術後3年経過したがとくに遺残再発なし.

Table 3 

側方発育腫瘍の治療.

Ⅱ)胆管・膵管への管腔浸潤を伴う腫瘍への対処

多くの症例で複数回の内視鏡治療で臨床的に完全切除することが可能であるが,管腔浸潤と側方発育症例は不成功に終わるリスクが高い 56),69)~71.乳頭部腫瘍に対する内視鏡的なカテーテルタイプのRFAに関しては,4つのケースシリーズの報告がされており,臨床的成功率は67-92%と有望な結果が出てきている 72)~75.Ming-Xingらは手術不能な乳頭部癌に対するRFAを報告しているが,焼灼処置群で生存率が改善し長期生存症例も報告されている 76.今後のエビデンスの蓄積が必要である.

Ⅲ)遺残再発症例に対するマネジメント

孤発性乳頭部腺腫のEP(1,468例),TSA(285例)で比較したメタ分析によると,再発率は5年後でそれぞれ15.7%,17.6%であり,1年毎に再発率を比較しても差はなかった 77.また,最近のメタ分析ではEP後の再発率が13%,TSA後の再発率は9.4%である 59が,最も多い研究では32%で再発しており 52,遺残あるいは再発リスクが高いことを治療前から患者と情報を共有する必要がある.

また,再発時の治療として内視鏡的な追加切除,TSA,PDが選択されるものの,管理方法は標準化されておらずエビデンスも乏しいため,Table 4に著者の私見を記載した.遺残再発の治療として大規模な多施設研究からは103人の局所再発腫瘍の管理に関する報告 78があり,再発は腺癌で多く,対処としてPDが66%(腺癌79.4%),TSAが13.6%(腺癌21.4%),EPが20.4%(腺癌4.8%)であった.低悪性度,高度異形成までの再発に対しては,内視鏡による追加スネア切除やアルゴンプラズマレーザーやRFAを用いた焼灼療法が適しており切除率,生存率は手術と同等と考えられている.上皮内癌・早期癌にはTSA,より進行した腫瘍には根治的にPDを選択する.定期フォローについてはJGESGLでは最低2年を推奨されているが,再発率の高さをかんがみて当院では5年の経過観察としている 77

Table 4 

遺残再発腫瘍に対する治療選択とその利点欠点.

Ⅸ おわりに

乳頭部腫瘍の診断,治療に関する知見を最近のエビデンスを中心にまとめた.EPについてはハイボリュームセンターを中心に経験が蓄積されているが,内視鏡的粘膜切除以外に胆膵内視鏡の技術が必要であり,さらに治療関連偶発症の予防と対処が必要である.ガイドラインの公開とともに,国内多施設で協力してEP症例の集積と解析を進めており,このエビデンスをもとにして本邦での早期の保険収載を期待している.十二指腸乳頭部癌に対する適応拡大,胆管膵管への浸潤や側方へ広範囲に広がる浸潤症例への内視鏡を用いた安全かつ有効な局所的根治治療の臨床応用を期待したい.

謝 辞

原稿作成にあたり病理診断の観点よりご指導いただきました病理学教室眞杉洋平先生に感謝いたします.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:岩崎栄典(ガデリウス・メディカル株式会社)

文 献
 
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