日本消化器内視鏡学会雑誌
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66 巻, 3 号
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総説
  • 加藤 元嗣, 津田 桃子
    2024 年 66 巻 3 号 p. 229-242
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    日本消化器内視鏡学会(Japan Gastroenterological Endoscopy Society:JGES)の抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインを世界の内視鏡関連学会で作成されたガイドラインと比較して,その特徴と解決すべき課題について考えた.JGESのガイドラインでは血栓症発症リスクの軽減に重点が置かれていて,特にDOACの休薬期間と再開時期の取り扱いに特徴があった.いまだにエビデンスが明らかでない点も多く検討が必要である.今後の解決しなければならない課題として,コールドポリペクトミーの位置づけ,P2Y12拮抗薬の継続下での内視鏡治療の可否,DOAC休薬の代替治療を含めたヘパリン置換の位置づけ,ワルファリン休薬に対するDOACの一時的置換などがある.

  • 岩崎 栄典, 川﨑 慎太郎, 金井 隆典
    2024 年 66 巻 3 号 p. 243-258
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    十二指腸乳頭部腫瘍は内視鏡スクリーニングが広く行われるようになったことから無症状で発見されることが増えている.以前は黄疸をきたした進行癌の状態で発見されることが多く開腹手術による膵頭十二指腸切除が第一選択であった.最近は十二指腸乳頭部腫瘍に対して内視鏡的乳頭切除術が積極的に行われるようになった.また,十二指腸乳頭部腫瘍の診断には十二指腸乳頭部近傍の微細な腫瘍浸潤を評価するために超音波内視鏡の有用性が報告されている.日本消化器内視鏡学会および欧州内視鏡学会から内視鏡的乳頭切除のガイドラインが出版され,現在のエビデンスをもとにした診断と治療方法について標準的方針が提示された.本稿ではさらに最近の新たなエビデンスと論文をレビューしたい.

症例
  • 岡田 泰行, 岡本 耕一, 谷 直也, 和田 浩典, 川口 智之, 野田 和克, 宮本 佳彦, 春藤 譲治, 上原 久典, 高山 哲治
    2024 年 66 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    1型糖尿病を有する66歳女性.EGDで胃体中部小彎に約5mm大の神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)G1を認めた.また,胃体部粘膜の著明な萎縮を有し,抗胃壁細胞抗体と抗内因子抗体がともに陽性で,かつ血中ガストリンが著明高値であることから,自己免疫性胃炎(autoimmune gastritis:AIG)と診断した.さらに,慢性甲状腺炎と1型糖尿病の合併を認め,多腺性自己免疫症候群の3型と診断した.胃NET G1に対してESDを施行した.AIGでは,NETのほか,胃癌の合併も高頻度に生じるとされている.1型糖尿病の患者では,AIGの併存を念頭にEGDを行うことが重要である.

  • 岩室 雅也, 田中 健大, 平田 翔一郎, 河野 吉泰, 川野 誠司, 河原 祥朗, 大塚 基之
    2024 年 66 巻 3 号 p. 266-272
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    免疫チェックポイント阻害薬投与後の免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)として胃病変を呈した5症例(男性1例,女性4例)を経験したので報告する.原疾患は全例が悪性黒色腫であった.内視鏡検査では粗造粘膜,白色浸出物,発赤,易出血性をそれぞれ4例に認めたほか,浮腫が1例,小潰瘍が1例でみられ,拡大観察を行った4例では腺管構造が消失していた.CT検査では胃前庭部の壁肥厚を1例に認めたが,他の4例では上部消化管に異常所見はみられなかった.治療として全例でプレドニゾロンを用い,自覚症状の改善が得られ,うち3例では内視鏡所見の改善も確認した.上記の内視鏡所見に着目し,irAE胃炎と診断し治療にあたることが重要と考えられた.

  • 佐藤 諭, 珍田 大輔, 立田 哲也, 樋口 博之, 菊池 英純, 櫻庭 裕丈, 三上 達也, 吉澤 忠司, 鬼島 宏, 福田 眞作
    2024 年 66 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    83歳男性.EGDで十二指腸潰瘍術後残胃に30mmの隆起病変を認め,生検はadenocarcinoma,tub2/por1でESDの方針となった.1カ月後のESD施行時には病変は頂部が陥凹する形態に変化し,術後病理組織検査で胎児消化管類似癌(adenocarcinoma with enteroblastic differentiation:ACED)と診断された.非治癒切除だったが手術を希望されず,7カ月後,ESD施行部位に局所再発し,2年後に原病死した.ACEDは術前診断が困難だが,切除後の病理組織で淡明な腫瘍細胞を認めた場合は想起すべきである.

  • 山田 健太朗, 山村 健史, 中村 正直, 前田 啓子, 澤田 つな騎, 石川 恵里, 梶川 豪, 長谷川 一成, 横井 太紀雄, 川嶋 啓 ...
    2024 年 66 巻 3 号 p. 279-285
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    症例は46歳,女性.他院でのCSで直腸腫瘤を認めたため精査目的に紹介となった.当院で施行したCSでは直腸に10mm大の粘膜下腫瘍様隆起を認め,EUSで第3層を主座とする輪郭明瞭な10mm大の低エコー腫瘍として描出された.ボーリング生検を施行するも確定診断には至らなかったこと,EUSで粘膜下層までに局在する腫瘍と考えられたことから,診断的治療目的にESDを施行した.病理組織学的検査で深在性囊胞性大腸炎の診断を得た.

経験
  • 山川 司, 吉井 新二, 三宅 高和, 山野 泰穂, 仲瀬 裕志
    2024 年 66 巻 3 号 p. 286-292
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    早期消化管癌に対する内視鏡治療後の粘膜欠損部に対して,後藤らにより内視鏡用軟性持針器と逆戻り防止弁付き縫合糸を用いた内視鏡的手縫い縫合法(endoscopic hand-suturing;EHS)が開発された.当科にて内視鏡用軟性持針器を用いてEHSを施行した5症例(胃3症例,大腸2症例)を検証した.EHSは全例で完遂でき縫合時間も既報と遜色ない結果であった.導入初期には胃症例で創部離開を1例認めたものの,全例で治療後の合併症は認めなかった.各病変の縫縮に要した時間は切除時間と同程度であったが,経験症例数が増えるに従って1針あたりの縫合時間は短縮傾向であった.EHSは様々な臨床応用が期待されるが,新規導入にあたってはトレーニングモデルを活用し十分な準備が必要である.

手技の解説
  • 岩田 英里, 杉本 光繁, 河合 隆
    2024 年 66 巻 3 号 p. 293-301
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    対策型胃がん検診の現場では,胃X線検診から胃内視鏡検診で行う自治体が急速に増加している.胃内視鏡検診を行う際には,被検者への苦痛が少なく,かつ精度の高い検査を行う必要があるため,多くの施設で細径内視鏡が選択されている.細径内視鏡は経口内視鏡と比較して画質に劣ることで精度の高さが懸念されていたが,2020年に発売となったOLYMPUS GIF-1200Nや2022年に発売となった富士フイルムメディカル EG-840Nは,経口内視鏡と同等の画質が得られる第3世代の高画質細径内視鏡であり,今後の胃がん検診を行う上で期待されるスコープと考えられている.本稿ではこれらの高解像度経鼻細径内視鏡を用いた胃がん内視鏡検診の現状や注意点,観察のコツを解説する.

  • 藤田 曜, 谷坂 優樹, 良沢 昭銘
    2024 年 66 巻 3 号 p. 302-311
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    電子付録

    胆道狭窄は日常診療で高頻度に遭遇する病態であり,時に良悪性の鑑別が困難である.ERCPは胆道狭窄の診断におけるGold standardとなっているが,その感度は十分とは言えない.そのような状況の打開が期待されているのが,共焦点レーザー内視鏡(confocal laser endomicroscopy;CLE)である.CLEは粘膜の一定深度の細胞を水平断で,生体標本の病理診断と同等レベルでリアルタイムに観察し,いわゆる“virtual biopsy”を可能にし得る新たなモダリティーである.当院では,病変に直接プローブを押し当てて観察するprobe-based CLE(pCLE)を経口胆道鏡(Peroral cholangioscopy;POCS)ガイド下に使用することで,胆道狭窄の診断能向上を試みている.本稿では,胆道狭窄に対するPOCS直視下pCLEの有用性,実際の手技について概説する.

資料
  • 北野 雅之, 吉田 真誠, 蘆田 玲子, 喜多 絵美里, 潟沼 朗生, 糸井 隆夫, 三方 林太郎, 西川 健一郎, 松林 宏行, 高山 敬 ...
    2024 年 66 巻 3 号 p. 312-326
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    【背景・目的】超音波内視鏡下組織採取法(EUS-guided tissue acquisition:EUS-TA)は,膵腫瘍の診断において重要な役割を担っている.本研究では,膵腫瘍のEUS-TA後の穿刺経路腫瘍細胞播種(Needle tract seeding:NTS)の現状を本邦の全国調査から明らかにすることを目的とした.

    【方法】2010年4月から2018年3月までに実施した原発性膵腫瘍に対するEUS-TA後に外科的切除を受けた患者を調査対象とした.NTSの発生率を求め,浸潤性膵管癌(Pancreatic ductal adenocarcinoma:PDAC)およびその他の腫瘍の患者,PDACの経胃・経十二指腸EUS-TAを受けた患者の間で比較した.さらに,NTS患者の詳細な特徴や予後も評価した.

    【結果】合計12,109人の患者が,EUS-TA後に原発性膵腫瘍の外科的切除を受けた.NTSの全発生率は0.330%であり,その発生率は他の腫瘍を有する患者よりもPDACを有する患者で有意に高かった(0.409% vs. 0.071%,P=0.004).NTSは,経胃EUS-TAを受けた患者の0.857%で観察されたが,経十二指腸EUS-TAを受けた患者の中では観察されなかった.PDACのNTSを認めた患者のうち,EUS-TAからNTSの発生までの期間の中央値および患者の生存期間の中央値は,それぞれ19.3カ月および44.7カ月であり,NTSの97.4%が胃壁に発生し,65.8%が切除された.患者生存期間は,NTS切除を行った患者では,NTS切除を行わなかった患者よりも有意に長かった(P=0.037).

    【結論】NTSは,経十二指腸EUS-TA後では発生せず,経胃EUS-TA後にのみ出現した.慎重な経過観察により,局所的なNTS病変を胃切除術で治療する機会が得られる.

  • 古田 隆久, 入澤 篤志, 青木 利佳, 池田 宜央, 大塚 隆生, 潟沼 朗生, 菅野 敦, 鷹取 元, 水上 一弘, 山田 玲子, 稲葉 ...
    2024 年 66 巻 3 号 p. 327-354
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    2019年から2021年の3年間で,各施設が任意に定めた1週間における消化器内視鏡検査および治療での偶発症の前向き調査と,過去3年間の重篤な偶発症後ろ向きの調査を行った.1週間の前向き調査では1,197施設から回答があり,合計246,627件が施行され,偶発症の総数は668件(0.271%)で,8件(0.0003%)の死亡例を認めた.前処置での偶発症は177件(0.072%),観察のみの消化器内視鏡検査では165件(0.076%),消化器内視鏡治療では325件(1.145%),腹腔鏡では1件(1.266%)と,全領域の消化器内視鏡検査および治療において偶発症が起こっていた.また,前処置と消化器内視鏡治療でそれぞれ4名の死亡があり,死亡例の平均年齢は治癒軽快例に比して高かった.そして,後ろ向き調査においても重篤な偶発症を来した症例の多くは高齢者であった.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 千野 晶子
    2024 年 66 巻 3 号 p. 361
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/21
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    【背景と目的】大腸内視鏡による前がん病変摘除後の大腸癌(CRC,colorectal cancer)リスク低減において,長期的な発症率についてのエビデンスは確立されていない.本研究は,Japan Polyp Study(JPS)の長期追跡情報をもとに解析を行った.

    【方法】JPSは,本邦11施設における前向きコホート研究であり,参加者は2回の大腸内視鏡検査後に定期内視鏡検査にて追跡された.主要評価項目は,無作為によるCRC発症率である.CRCの観察/期待値(O/E比)は,大阪府のがん登録データを用いて算出した.副次的評価項目として,Advanced neoplasia(AN)の発症率および病変の特徴を解析した.

    【結果】合計1,895人の参加者が解析された.大腸内視鏡検査間隔の平均値および中央値はそれぞれ,2.8年(範囲:1~15年)と,6.1年(範囲:0.8~11.9年;11,559.5人年)であった.追跡中に4症例(すべて男性)においてCRCの発症を認めた.CRCのO/E比は0.14で86%のリスク低減を示唆し,男性と女性においてはそれぞれ0.18,0であった.さらに,71症例(6.1/1,000人年),77病変のANが認められ,うち31病変(40.3%)が非顆粒型の側方発育型腫瘍(LST-NG)であった.表面隆起(<10mm)と陥凹,LSTを含む表面隆起型腫瘍(NP-CRNs)は,全ANのうち59.7%を占めた.さらに,CRC4病変中2病変がT1でNP-CRNに関連していた.

    【結論】NP-CPNを含む前がん病変を内視鏡的に摘除することは,CRC発症率の減少に寄与する.ANの摘除後の追跡中に発見された多発病変の半数以上がNP-CPNであった.The Japan Polyp Study:University Hospital Medical Information Network Clinical Trial Registry:University Hospital Medical Information Network Clinical Trial Registry, C000000058;cohort study:UMIN000040731

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