2024 年 66 巻 8 号 p. 1570-1580
食道運動障害の代表的な疾患のひとつは,アカラシアである.アカラシアは,下部食道括約部の弛緩不全と食道体部の蠕動障害を認める原因不明の食道運動機能障害である.水分や食物のつかえ感,食道内容の嘔吐,胸痛,体重減少などの症状により,患者の生活の質は著しく低下する.症状よりアカラシアが疑われる時には,上部消化管内視鏡検査,食道造影検査,胸腹部CT検査を行い,食道内圧検査で確定診断となる.アカラシアの多くは,病悩期間が長くなると,食道の拡張・屈曲や1次蠕動運動の消失が起こり,食道内容物のうっ滞に伴う慢性食道炎の状態となる.このような変化は不可逆的であり,中には食道癌を併発する症例も存在するため,アカラシアと診断がついた場合には,早期の段階で,効果が高く,恒久性のある治療を行うことが望ましい.アカラシアに対する治療法として,内視鏡的バルーン拡張術,外科手術(腹腔鏡下Heller-Dor手術),経口内視鏡的筋層切開術(Peroral endoscopic myotomy:POEM)がある.現在は,POEMが中心的な役割を果たしている.国内では2023年12月までに約6,500例の症例が無事に行われた.本稿では,食道運動障害の診断とその治療法について解説する.