日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
外科的に切除した十二指腸neoplasm of uncertain malignant potentialと考えられた1例
渕野 真代 堀川 直樹林 伸一三輪 重治藤浪 斗蓮本 祐史大澤 幸治中谷 敦子伊藤 博行
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2025 年 67 巻 1 号 p. 34-39

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要旨

73歳男性.十二指腸球部に0-Ⅰ型様病変を認めた.生検で軽度核異型を伴う細胞からなる異型腺管の密在を認めneoplasm of uncertain malignant potential(NUMP)に相当すると考えられたが,腺癌も否定できず,EUSで粘膜下層浸潤が疑われた.膵体尾部に膵管内乳頭粘液性腫瘍も伴うため亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.NUMPは十二指腸胃型腫瘍のうち良悪性の区別が困難な境界病変と定義され,病理像では軽度異型上皮細胞が癒合または分枝状腺管パターンで増殖し,しばしば粘膜下層への進展を伴う.NUMPに関する報告は少なく,診断基準・治療方針の確立のため症例の蓄積が望まれる.

Abstract

Reports of duodenal neoplasms have recently increased, possibly because of advances in endoscopic equipment and widespread treatment of Helicobacter pylori eradication. Hida et al. classified gastric-type duodenal neoplasms into “adenomas,”“invasive carcinomas,”and“borderline lesions: neoplasm of uncertain malignant potential (NUMP).” NUMP is a tumor comprising slightly atypical epithelial cells growing in a fused or anastomosing glandular pattern, often with expansive submucosal extension, without severe nuclear atypia or lymphatic or vascular invasion. Here, we report a case of NUMP treated with pancreaticoduodenectomy.

A type 0-I lesion with a submucosal bulge was noted in the duodenal bulb of a 73-year-old man during an upper gastrointestinal endoscopy. A biopsy of the lesion suggested a NUMP. However, because EUS showed submucosal invasion of the duodenum with a concomitant intraductal papillary mucinous tumor of the pancreas, he underwent pancreaticoduodenectomy and was finally diagnosed with NUMP. The treatment of NUMP has not yet been established, and an accumulation of such cases is needed.

Ⅰ 緒  言

近年,十二指腸腫瘍は増加傾向にあると報告されている 1.Hidaらは胃型形質を示す十二指腸腫瘍に関して,腺腫,浸潤癌に加え,良悪性の区別が困難な境界病変をneoplasm of uncertain malignant potential(NUMP)と分類することを提唱している 2.NUMPの報告は少なく,臨床像はあまり知られていない.今回,われわれは十二指腸球部後壁のNUMPに分類されると考えられた腫瘍に対して外科的切除を施行した1例を経験したので報告する.

Ⅱ 症  例

症例:73歳,男性.

既往歴:64歳大腸腺腫切除.

内服薬:なし.

現病歴:2022年5月の検診における上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部後壁に隆起性病変を指摘され,生検で腺癌が疑われたため当科を受診した.

上部消化管内視鏡検査(Figure 1):十二指腸球部後壁に15mm大,発赤調の粘膜下隆起を伴う0-Ⅰ型様病変を認めた(Figure 1-a).頂部に陥凹があり,narrow band imaging(NBI)拡大内視鏡観察で陥凹部に一致して乳頭状の不整な表面構造を認めた(Figure 1-b).

Figure 1 

内視鏡画像.

a:通常光観察.十二指腸球部後壁に15mm大,粘膜下隆起を伴う0-Ⅰ型様病変を認める.

b:NBI拡大観察.頂部の陥凹部に乳頭状の不整な表面構造を認める.

超音波内視鏡検査(EUS)(Figure 2):十二指腸球部後壁に第2層を主座とした13.6×6.2mm大の等エコー腫瘤を認め,第3層の連続性は不明瞭であり,粘膜下層浸潤と判断した.また第3層には粒状の低エコー域を複数認め,Brunner腺の存在も疑われた.

Figure 2 

超音波内視鏡像.第2層を主座とした13.6×6.2mm大の等エコー腫瘤を認め(矢頭),第3層の連続性は不明瞭であった.第3層には粒状の低エコー域を複数認めた.

生検標本病理組織像(Figure 3):胃腺窩上皮に類似し核が腫大した細胞からなる異型腺管が密在していた.免疫染色では表層でMUC5AC陽性(Figure 3-c),深部でMUC6陽性(Figure 3-d)であり,pepsinogenⅠも陽性であったことから胃底腺型細胞への分化が考えられた.異型は認めるものの癌とは断定できず,Hidaら 2が提唱するneoplasm of uncertain malignant potential(NUMP)に分類されると考えられた.

Figure 3 

生検標本病理組織像.

a:HE染色弱拡大.

b:HE染色強拡大.軽度の核異型を伴う細胞からなる異型腺管の密在を認める.

c:MUC5AC染色.表層で陽性.

d:MUC6染色.深部で陽性.胃底腺型細胞への分化が考えられた.

造影CT検査:十二指腸腫瘤はCT検査では同定困難であった.膵体部に16mm,尾部に25mmの多房性囊胞があり,主膵管は5mmと軽度拡張していた.

MRI:造影CTと同様,膵体部,尾部に囊胞性病変を認め,軽度の主膵管拡張を伴っていた.

臨床経過:十二指腸球部後壁の粘膜下層進展を伴うNUMPに相当する腫瘍と考えられた.ただし,鑑別診断として粘膜下層浸潤を伴う腺癌も否定できず,内視鏡的切除は困難と判断した.また膵体部,膵尾部に膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)を認め,主膵管の拡張を伴っておりworrisome features(WF)を1つ満たしていた.IPMNに関して今後悪性化のリスクも考えられたため,十二指腸病変とIPMNに対する治療として中央区域温存膵切除術の方針とした.しかし,術中所見で脾動静脈が膵尾部実質に埋没していたため,膵尾部のIPMN摘出は断念し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術に変更した.残存する膵尾部IPMNのサーベイランスを目的として,再建法は膵胃吻合とした.手術時間は560分,出血量は580mlであった.

手術標本病理組織像(Figure 4):十二指腸球部に15×12×7mmの腫瘤性病変を認めた.病理組織所見ではやや核腫大した円柱上皮が管状~乳頭状に増殖しており,粘膜下層に及んでいた.明確な間質浸潤や脈管侵襲ははっきりせず,Brunner腺への上皮内進展と考えられ,免疫染色の結果と合わせてNUMPに相当すると判断した.膵臓では主膵管および分枝膵管に上皮の乳頭状増殖や拡張がみられ,大部分がlow-grade dysplasiaであったが,一部にhigh-grade dysplasiaが混在していた.十二指腸腫瘍は切除断端陰性で,膵IPMNは切除断端にlow-grade dysplasiaの進展が疑われた.

Figure 4 

手術標本病理組織像.

a:HE染色弱拡大.やや核腫大した円柱上皮が管状~乳頭状に増殖しており,粘膜下層まで及んでいる.

b:HE染色強拡大.Brunner腺への上皮内進展を認める.

術後経過:術後合併症はなく経過良好であり,術後第21病日に退院した.術後9カ月の時点でNUMP転移再発やIPMN悪性化を疑う所見はなく,引き続き定期的に画像検査・内視鏡検査で経過観察を行う方針としている.

Ⅲ 考  察

近年,十二指腸腫瘍は増加傾向にあると報告されている.この要因としてHelicobacter pyloriH. pylori)除菌治療の普及による十二指腸の胃酸暴露の増加,内視鏡機器の進歩などが推察されている 1),3)~5

十二指腸腫瘍は,組織学的に腸型,胃型,胃腸混合型,Brunner腺腫に分類される 6),7.胃型は3.6-22%と腸型に比べ少なく,乳頭口側に発生することが多いとされ,胃型腺腫は腸型腺腫と比較して癌合併率は高率であると考えられている 8)~10.そのため,生検で胃型腫瘍が疑われた場合には積極的な治療が望ましい.

Hidaら 2は胃型腫瘍を「腺腫」,「浸潤癌」に加え「境界病変(NUMP)」に分類する方法を提唱している.NUMPは軽度の異型上皮細胞からなり,癒合もしくは分枝腺管パターンで増殖し,しばしばBrunner腺を置換するような形で粘膜下層に進展するが,高度の核異型や線維性間質反応,リンパ管・脈管侵襲を示さない特徴的な組織像を呈する 2.本症例でも軽度の核異型を示す細胞からなる腺管構造を呈しており粘膜下層への進展を認めたが,一方でリンパ管・脈管侵襲や線維性間質反応を認めなかったという点から,NUMPに相当すると判断した.

2017年から2022年までに医学中央雑誌で「十二指腸」「NUMP」をキーワードとして検索した結果,3つの文献が該当した(会議録を除く) 11)~13.いずれも同一施設からの報告であり,最新の清森ら 11の報告からNUMP3病変を抽出し,ここにHidaら 2によるNUMP6病変,および本症例を合わせた計10症例に関して表にまとめた(Table 1).年齢中央値は72歳(61-89歳),男性9例,女性1例と男性に多く,病変は球部6例(60.0%),下行部4例(40.0%)と球部に多くみられた.長径中央値9mm(4-15mm),粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)様隆起9例(90.0%)であった.治療法は内視鏡的粘膜切除術(EMR)5例,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)1例,手術4例であった.既報では深達度の記載があった6例中5例(83.3%)で粘膜下層への進展を認めたが,内視鏡治療を施行された症例もあり,いずれも経過観察中に再発を認めていなかった.

Table 1 

NUMP報告例.

NUMPは胃底腺型胃癌に類似した低悪性度腫瘍と考えられており,低侵襲な治療を行われることが多い.一方で現状ではNUMPの用語使用の是非や,高異型度腺腫あるいは癌との異同についてのコンセンサスが十分ではないため,その形成が今後の課題であり,診断や治療においては慎重に対応する必要がある 14.本症例は生検でNUMPに相当する腫瘍が疑われたが,腺癌も否定できず,EUSで粘膜下層への浸潤と診断したことから内視鏡的切除は困難と考え,同時にIPMNも認めたことから亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行った.NUMPが低悪性度腫瘍であることを考慮するとやや過大侵襲であった可能性も否めないが,IPMNが主膵管拡張を伴っており今後悪性化のリスクを鑑み同時切除を企図した.切除標本の病理所見でhigh grade dysplasiaを含んでいたことを考えると,結果として本症例では妥当な術式であったと考えている.IPMNの術後経過観察方法について,膵胃吻合部からの内視鏡・造影検査,膵液細胞診,擦過細胞診が有用であるとの報告もあり 15,既報では膵胃吻合部より乳頭状病変が出現し術後再発と診断された症例も認める 16.本症例でも膵尾部IPMNは残存しているため,今後上記検査を含め慎重に経過観察を行う方針としている.

NUMPはしばしばBrunner腺の上皮置換性に粘膜下層へ進展すると言われており,治療に際しては深達度の評価が重要である.一方で既報では粘膜下層に進展している場合でも内視鏡治療を施行され,その後短期間のフォローではあるが再発していない症例も報告されている.NUMP単独で粘膜下層進展が疑われた場合に,内視鏡治療を行うか,または十二指腸部分切除等の外科的治療を行うのか治療方法の選択に迷うことが予想される.今後長期予後を含めた症例の蓄積により,NUMPの診断基準,および治療法の確立が望まれる.

Ⅳ 結  語

外科的に切除した十二指腸neoplasm of uncertain malignant potential(NUMP)と考えられた1例を経験した.NUMPは低悪性度腫瘍である一方で粘膜下層進展しやすく,治療法の十分な検討が必要である.診断基準・治療方針の確立のためにも,今後症例の蓄積が望まれる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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