2025 年 67 巻 1 号 p. 47-52
症例はパーキンソン病のため胃瘻管理中の77歳の男性で肝S5の感染性肝囊胞(IHC:infected hepatic cyst)を繰り返し発症し経皮的ドレナージを施行していた.今回,増大再燃したIHCにより発熱に加えて胃前庭部の圧排をきたし胃瘻からの逆流を認めた.IHC内部は粘稠性が高いことが疑われたため,従来の経皮的ドレナージではなくOne-Step処置可能な大口径のLAMS(Lumen apposing metal stent)が有用と考え,倫理委員会・未承認医療機器審議で認可されたLAMSを用いた経胃EUS下肝囊胞ドレナージを施行した.LAMS留置によりIHCからの化膿性内容物の胃内への排液を確認し,施行直後より発熱や胃瘻からの逆流は改善し偶発症も認めなかった.
A 77-year-old man undergoing percutaneous endoscopic gastrostomy (PEG) for Parkinsonʼs disease developed an infected hepatic cyst (IHC), and percutaneous drainage was performed repeatedly. In this case, the enlarged and recurrent IHC caused fever and reflux from the PEG owing to compression of the gastric antrum. Because the inside of IHC was suspected to be mucinous, we determined that lumen-apposing metal stent (LAMS), which is a one-step procedure and has a large diameter, is the most suitable stent for the IHC drainage instead of conventional percutaneous drainage.
After LAMS placement using endoscopic ultrasound, purulent contents from the IHC into the stomach were confirmed, symptoms improved, and no adverse events were observed.
感染性肝囊胞(IHC:infected hepatic cyst)における治療は抗生剤投与や経皮的ドレナージが一般的である.本症例は肝S5の15cmに増大再燃したIHCにより発熱の他に胃前庭部の壁外性圧排をきたしており,そのIHCの内容物は血腫や壊死物質を含み粘稠性が高いと判断した.従来の経皮的ドレナージでは治療効果不十分と判断し,一期的かつ短時間に施行可能である大口径ステントのLAMS(Lumen apposing metal stent)を用いた経胃超音波内視鏡検査(EUS)下肝囊胞ドレナージが有用と考えた.LAMSは重症膵炎後などの被包化壊死(WON:Walled-off necrosis)に適応があり,IHCに対するLAMS留置は保険適応外のため,当大学倫理委員会・未承認医療機器審議にIHCに対するLAMSの適応外使用を申請し認可を得た.今回,繰り返すIHCにLAMSを用いた経胃EUS下肝囊胞ドレナージが有用であったため報告する.
症例は77歳の男性で50歳台にパーキンソン病と診断され,経口摂取障害のため胃瘻からの経管栄養で在宅療養されていた.
202Ⅹ-2年より肝S5の発熱を伴う12cm大のIHCのため抗生剤投与が施行され,その治療効果が乏しい場合は経皮的ドレナージが追加され,計3回の経皮的ドレナージが施行されていた.抗生剤投与や追加の経皮的ドレナージにより一旦は改善するものの,年に複数回の入院歴があった.
今回,在宅療養中の202Ⅹ年Y月に39度台の発熱,腹部膨満感,嘔吐,胃瘻からの経管栄養剤逆流のため紹介となり,血液検査で炎症反応の高値も認めたため入院となった.入院時CTで肝S5のIHCは12cmから15cm大に増大し,その増大したIHCにより胃幽門部前壁が壁外性圧排されていることが従来の入院では認めなかった腹部膨満感,嘔吐,胃瘻からの逆流の原因と判断した(Figure 1-a,b).また,MRIで増大したIHCは層構造を形成しており(Figure 2),体外式腹部超音波検査でもIHC内部に高エコー所見を認めたため(Figure 3),IHC内容物は血腫や壊死物質などを含み粘稠性が高いと思われた.

a:以前から感染を繰り返していたS5のIHCは12cmから15cmに増大しており(矢頭),胃内には経管栄養剤と思われる液体貯留を認めた.矢印は胃瘻チューブ.
b:増大したIHC(矢頭)により胃前庭部の壁外性圧排を認めた(矢印).

MRI(T2強調)画像.CTで認めたIHCは他の肝囊胞と異なり低信号で層構造を形成し,その内容物はMRI信号から血腫や壊死物質などを含むと考えられた.

体外式腹部超音波検査.他の肝囊胞と異なりIHC内部に高エコー所見(矢頭)を認めたため,内容物は血腫や壊死物質などを含み粘稠性が高いと思われた.
今回の抗生剤投与以外の治療方針として,MRIや超音波画像よりIHC内容物は粘稠性が高いと考えられ,従来の7-9Frのチューブを用いた経皮的ドレナージでは炎症反応や胃幽門圧排の改善効果は乏しいと判断した.そのため,粘稠内容物を有するIHCの良好なドレナージ法として胆道用プラスチックステントや経鼻ドレナージ,胆道用金属ステント,LAMSのいずれかを用いた経胃EUS下肝囊胞ドレナージを考慮した.それらのうちで最も大口径でOne-Step手技のため短時間で留置可能なLAMSが最適なステントと判断した.しかしながら,WONに適応のあるLAMSを用いたIHCへの経胃EUS下肝囊胞ドレナージは未認可のため当大学倫理委員会・未承認医療機器審議に申請し認可を得た(承認番号2023-02).
実際の手技はWONへのLAMS治療と同様,まずは胃幽門部前壁から肝S5のIHCを描出し,その部位が胃瘻チューブと干渉しないこと,IHCとの間に介在脈管がないこと,胃壁とIHCとの距離が10mm以下であることを確認した.使用したLAMSは内腔が15mmで,LAMS留置直後より白色調の化膿性内容物が排出されることを確認した(電子動画 1).LAMSの逸脱予防目的に両端PigtailプラスチックステントをLAMS内に追加留置し手技終了とした.超音波内視鏡の挿入からIHCの描出,LAMS留置,超音波内視鏡抜去まで手技時間は計20分であった.
電子動画 1
LAMS留置翌日より,炎症反応や発熱は改善傾向で腹部膨満感や嘔吐は消失し胃瘻から経管栄養の注入も可能となった.LAMS留置5日後に炎症反応はさらに改善したため退院,在宅療養となった.
LAMS留置の約30日後のCTでIHCは長径8cmに縮小傾向でLAMSの逸脱も認めず(Figure 4),発熱などの症状再燃も認めなかった.さらに30日後(LAMS留置60日後)のCTでIHCはさらに縮小し(Figure 5),その縮小したIHC内部に壊死物質がないことを上部消化管内視鏡下に確認し,スネアを用いてLAMS抜去を愛護的に施行した(Figure 6-a,b).LAMS留置240日後(LAMS抜去180日後)のCTにてもIHCは縮小を維持し(Figure 7),LAMS留置から約1年後の現在も経過良好である.

LAMS留置約30日後のCT.IHCは長計8cmに縮小傾向(矢頭)であり,LAMSの逸脱は認めなかった.

LAMS留置約60日後のCT.IHCはさらに縮小(矢頭).

a:上部消化管内視鏡にてLAMS経由でIHC内部を観察.
b:IHC内部に壊死物質がないことを確認.

LAMS留置240日後(LAMS抜去180日後)のCT.IHCは縮小を維持.
肝囊胞の多くは無症状であるが,周辺臓器の圧排などによる有症状時や囊胞感染をきたした場合は治療対象となり,IHCにおける治療は抗生剤投与や経皮的ドレナージが一般的であるが,再燃することも少なくない 1)~3).また,経皮的ドレナージは外瘻術となるため事故(自己)抜去のリスクを伴い,留置チューブの多くは7-12Frである.本症例における過去3回の経皮的ドレナージは7-9Frを使用し一旦は改善したが,今回はIHCが胃前庭部を圧排するまで増大再燃し,IHC内容物はMRIや体外式超音波検査で血腫や壊死物質などを含み粘稠性であると判断し,従来の経皮的ドレナージでは効果不十分になることが危惧された.IHCはS5に占拠し胃前庭部前壁を圧排し胃瘻チューブからの逆流も認めていたため,IHCは胃壁と広範囲に接し超音波内視鏡で良好に描出されることが想像された.そのため,IHCに対する経胃EUS下肝囊胞ドレナージは可能と思われ,留置するステントとして胆道用プラスチックステント,経鼻ドレナージチューブ,胆道用金属ステント,LAMSが考慮された.経鼻ドレナージはIHC内部の洗浄や造影可能な利点があるものの,6Frであるため経皮ドレナージ以上の効果は低く,胆道用プラスチックステントの複数本留置や金属ステント留置は口径10mm程度のドレナージルートが期待できるが,超音波内視鏡下のIHC穿刺後のガイドワイヤー留置や経路拡張など手技が煩雑で施行時間も要すると考えられた.LAMSは最も大口径で穿刺から留置までがOne-Step手技のため短時間で施行可能で処置中のIHC内容物の腹腔内漏出も最小限に抑えられることから最適なステントと判断した.しかしながら,WONに適応のあるLAMSをIHCに使用する経胃EUS下肝囊胞ドレナージは未認可のため当大学倫理委員会・未承認医療機器審議に申請し認可を得た.
実際の手技は内腔15mmのHOT AxiosTM(Boston Scientific Corporation,Natick,MA)を使用し,WON同様に病変を描出し,通電穿刺からLAMS留置までがOne-Stepで施行可能であり,その手技時間は超音波内視鏡挿入後の観察も含め20分以内と短時間に施行可能であった.LAMS留置後のIHC縮小に伴い胃壁とIHCとの距離が生じ,LAMS逸脱が危惧されたため逸脱予防に両端Pigtailの7FrプラスチックステントをLAMS内に追加留置したが,経過観察CTにてLAMSの逸脱は認めなかった.また,LAMS留置によってもIHCが改善しない場合はIHC内腔に内視鏡を挿入し鉗子を用いた壊死物質除去も考慮していた.30日後のCTでIHCは縮小するも内容物は残存していたため,LAMS抜去は行わず留置期間をさらに30日間延長した.60日後のCTでIHC内腔はほぼ消失し内視鏡にても腔内の壊死物質は認めなかったためLAMSを抜去した.
HOT AxiosTMを用いた膵囊胞や胆囊疾患に対するEUS下ドレナージの有用性は2011年に糸井らにより報告され 4),2018年に急性膵炎に伴うWONなどの局所合併症治療の膵臓用瘻孔形成補綴材としてHOT AxiosTMが本邦で認可され,その有用性が多く報告されている 5)~7).また,2023年にはWONに対するLAMSの有用性がsystematic reviewやmeta-analysisにて報告された 8).
一方,肝疾患に対するEUS下ドレナージの有用性は2005年に肝膿瘍に対する報告があり 9),以降は同様な肝膿瘍に対し胆道用プラスチックステントや金属ステントを使用した報告が散見される 10)~13).IHCに対するEUS下ドレナージの有用性はHamaらによる胆道用金属ステントを使用した報告 14)やTakanoらによる胆道用7Frのプラスチックステントと6Frの経鼻ドレナージチューブを併用留置した報告がある 15).
LAMSを用いた肝疾患に対するEUS下ドレナージの報告は2013年にAlcaideらが初めてLAMS留置が有用であった肝膿瘍の1例を報告し 16),Molinarioらも同様に肝膿瘍に対するLAMSの有用性を報告している 17).本症例のようなIHCに対するLAMSの有用性は2023年にDʼErricoらが symptomatic hepatic cystに対してLAMS留置を13例に行い,12例で成功し有用であったと報告している 18).
本症例は経皮的ドレナージで一旦は改善するものの繰り返すIHCであり,その内容物はMRIや体外式超音波検査で粘稠性が高いことが疑われた.LAMSは胆道金属ステントより大口径であり,さらに穿刺通電後は一期的に留置可能なため手技中の腹腔内へのIHC内容物の漏出も最小限と思われた.また,LAMSは大口径のためドレナージ効果不十分な場合に内視鏡下の壊死物質除去を予定していたが,60日後にはIHCは消失しLAMS抜去可能であった.
しかし,LAMSは膵臓用瘻孔形成補綴材として保険収載されているため,本症例のような肝疾患へのLAMS使用は倫理委員会などでの適応外使用の認可が必要である.また,本人や家族に十分な説明のもと同意を取得しEUS下ドレナージを施行した.
繰り返す感染性肝囊胞に対してLumen apposing metal stentを用いた経胃EUS下肝囊胞ドレナージは短時間に施行可能で偶発症も認めず,長期経過も良好で有用な治療法であった.