日本消化器内視鏡学会雑誌
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ISSN-L : 0387-1207
総説
胃食道逆流症の新しい内視鏡診断と治療
井上 晴洋 田邉 万葉西川 洋平
著者情報
キーワード: GERD, NERD, Phase concept, ARMS, ARMA, ARM-PV
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2025 年 67 巻 1 号 p. 7-18

詳細
要旨

胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)診断について,胃・食道の逆流防止機構(anti-reflux barrier:ARB)は,壁外と壁内に分けて考えることができる.壁外ARBとして横隔膜食道裂孔と食道横隔靭帯がある.壁内ARBとして,Phase Ⅰ 胃側(Collar sling muscle fibers,Clasp muscle fibers),Phase Ⅱ 食道側LES,Phase Ⅲ 食道側(upper esophageal sphincter(UES),Peristalsis)がある.これらは,内視鏡的内圧測定統合システム(endoscopic pressure study integrated system:EPSIS)とhigh resolution manometry(HRM)を組み合わせることにより,GERDの病態生理を推測することができる.GERD治療については,GERDの70%は非びらん性胃食道逆流症(non-erosive gastroesophageal reflux disease:NERD)であり,NERDの大半はヘルニアがない.そのような病変は,内視鏡的逆流防止術(endoscopic anti-reflux therapy:EARTh)の良い適応となる.逆流防止噴門粘膜切除(anti-reflux mucosal resection:ARMS)から始まり,逆流防止粘膜焼灼術(anti-reflux mucosal ablation:ARMA),逆流防止粘膜形成術(anti-reflux mucoplasty:ARM-P),逆流防止粘膜形成術(anti-reflux mucoplasty with valve formation:ARM-PV)でValve形成を伴うものまである.ARMS/ARMAについては,3本のSystematic reviewにて,安全で有効な治療法であることのエビデンスが報告されている.今後は,理想を追求したARM-PVと,手技の簡便性が魅力のARMAの2本立てで,手技が展開されていくと考えている.

Abstract

For the diagnosis of gastroesophageal reflux disease (GERD), the anti-reflux barrier (ARB) of the stomach and esophagus can be considered extramural or intramural. The extramural ARB includes the diaphragmatic hiatus and the esophageal diaphragmatic ligament. The intramural ARB comprises Phase I on the gastric side (collar sling muscle fibers and clasp muscle fibers), Phase Ⅱ on the esophageal side (LES), and Phase Ⅲ on the esophageal side (upper esophageal sphincter (UES) and peristalsis). This can be inferred by combining endoscopic pressure study integrated system (EPSIS) and high resolution manometry (HRM) to elucidate the pathophysiology of GERD. Regarding GERD, 70% of GERD cases are non-erosive gastroesophageal reflux disease (NERD), and most do not have a hernia. These conditions are good candidates for endoscopic anti-reflux surgery. The treatments range from anti-reflux mucosal resection (ARMS) to anti-reflux mucosal ablation (ARMA), anti-reflux mucoplasty, and anti-reflux mucoplasty with valve formation (ARM-PV). Evidence of the safety and efficacy of ARMS/ARMA has been reported in three systematic reviews. In the future, treatments are expected to develop along two main lines: the ideal pursuit of ARM-PV and the appealing technical simplicity of ARMA.

Ⅰ 新しいGERDの内視鏡診断:“EPSIS”と“The phase concept”

1.背景

GERD(Gastroesophageal reflux disease胃食道逆流症)の内視鏡診断基準として,食道びらんの程度を記載するLA分類 1がある.食道粘膜にびらんを伴うGERDは(びらん性)逆流性食道炎であり,びらんを伴わないGERDはNERD(Non-erosive reflux disease非びらん性胃食道逆流症)であり,GERDの70%を占める 2.またNERDは食道裂孔ヘルニアを伴わないことが多い 3.一方,食道裂孔ヘルニアの分類(滑脱型,傍食道型,混合型) 4は成書にあり,内視鏡による噴門粘膜唇の形態分類としてHill分類がある 5.Hill分類は病態をよく反映するといわれている 6.そしてBarrettの記載方法として,CM criteria 7がある.

しかし,内視鏡で分かることはこれだけであろうか?逆流防止の要であるLES(Lower esophageal sphincter下部食道括約筋)は,これまで内視鏡では観察できないとされてきた.われわれは,胃内で十分な送気を行うことにより,LESが反応性に収縮することから,内視鏡の胃内反転視野で視ることができることを報告してきた.これがSHS(scope-holding sign) 8である.そして,EPSIS(endoscopic pressure study integrated system内視鏡的内圧測定統合システム) 9として,胃内圧を数字化することにより,内視鏡画像,ゲップ音の記録ともあわせて,LESの機能評価のみならず一連の食道運動機能評価を客観性に評価できることを報告した.このときに内視鏡で見る噴門形態は胃内圧の変化に伴い経時的に刻々と変化するものであり,それを時相に分けてまとめたものが,The phase concept*である.以下にわれわれが臨床で実際に行っている新しい内視鏡診断を提示する.

*The phase conceptについては,現在,論文投稿中であり,現在のところpersonal communicationとして理解されたい.

2.壁内・逆流防止機構複合体(IM-ARB complex)

これまで知られている逆流防止機構(ARB complex)を,壁外と壁内とに分けて考えることにより,ARB complexを系統的に理解することができる(Table 1).まず消化管壁外のものについては,EM-ARB complex(Extra-mural anti-reflux barrier complex壁外・逆流防止複合体)として,食道横隔靭帯 10),11や横隔膜食道裂孔(横隔膜脚)の開大の有無 12がある.食道横隔靭帯を食道壁内から内視鏡的に観察することは困難であるが,横隔膜食道裂孔の開大は,胃を膨らませることにより,消化管壁の圧排所見として消化管内腔から間接的に観察することができる.これを食道裂孔ヘルニアのCO-SH criteriaとして報告した 8.一方,消化管壁内のものについては,IM-ARB complex(Intra-mural anti-reflux barrier complex壁内・逆流防止機構複合体)として,GEFV(Gastroesophageal flap valve),LES 8),13),14,Collar sling muscle fiber 15)~17,Clasp muscle fiberが報告 16),17されており,それらを包括的に捉えることができる.GEFV 5),15については,Mucosal flap valveの粘膜下での構成主体はこれまで粘膜筋板とされてきたが,実際はCollar sling muscleであることが治療内視鏡の過程から判明してきた(Figure 1).また噴門小彎に見られる縦ひだは,Clasp muscle fiberの緊張・収縮により形成される小彎粘膜のたるみである.これが以下に述べるPhase Ⅰにあたる.

Table 1 

Anti-reflux barrier complex(ARB complex).

The ARB complex is categorized into extramural and intramural complexes.

Figure 1 

治療内視鏡時に確認できる噴門の構造.

a:ARMS施行時の内視鏡所見.GEFVとCollar-sling muscle fiberの連続性から,GEFVの膨隆はCollar-sling muscle fiberの内側縁によって形成されていることが分かる.

b:噴門小彎でのESD施行時の内視鏡所見.Collar-sling muscleの脚の部分の開きは,Clasp muscle fiber(噴門部小彎の内輪筋)の収縮によりコントロールされていることが想定される.

c:噴門部の粘膜下腫瘍に対してPOETを施行したときの内視鏡像.粘膜下層内視鏡によって,GEFVの襟の部分(大灣線のflapの膨隆)も,Collar-sling muscleの内側縁によって形成されていることが分かる.

3.壁内逆流防止機構の動的評価:“The phase concept”

Ⅰ.The phase concept of IM-ARB

IM-ARB complexは,胃内圧の上昇に伴う噴門形態の時相変化である.

Phase Ⅰ(Gastric phase):胃内圧が低圧状態で観察される.内視鏡では「噴門唇GEFV」と「小彎に集中する縦ひだ」が観察される.健常者では食道の扁平上皮がはじめから観察されることはない.

Phase Ⅱ(LES phase)は,中等度の胃内圧で観察される,LESの反応性収縮であるSHSが観察される.

Phase Ⅲ(Recovery phase)は,胃内圧の上昇に伴い観察される所見で,LESの弛緩によりゲップがでたあとで,食道蠕動が誘発される.Peristalsis phaseともいえる.

噴門形態は胃内圧の上昇に伴い動的に変化する.この変化を捉えたものがThe phase conceptである.The phase conceptは,IM-ARBを理解したうえで,胃内での送気に伴って,実際におこる噴門部の形態変化を,Phase毎に分けたものである(Figure 2).

Figure 2 

Dynamic change of IM-ARB complex.

壁内逆流防止複合体の動的変化.

胃内で内視鏡を反転して,噴門を見上げた視野において,送気をつづけながら噴門を観察した場合のイラスト.

Phase Ⅰ:Gastric phase.胃粘膜ひだ(MFVと縦ひだ)による胃の構造による逆流防止機構:送気量がゼロから開始.Mucosal flap valveと小彎の縦ひだが観察される.食道粘膜は観察されない.送気量の増加に伴い,小彎の縦ひだはストレッチされ,GEFVの脚は開いていく.あわせてMucosal flap valveも徐々に平定化する.また食道粘膜(扁平上皮)は観察されない.

Phase Ⅱ:Esophageal phase. LESによる逆流防止機構:胃内の反転視野で,SCJを超えて,食道粘膜が観察され,健常者ではSHS(LESの反応性収縮)が観察される.

Phase Ⅲ:Esophageal recovery phase. LESの強制弛緩がおこったあとの回復のPhaseによる逆流防止機構.胃内圧の上昇に伴い,胃内圧がLESの収縮力を超えると,LESの弛緩がおこる.胃内のガスは食道内腔に移動する.その後,UESの弛緩によりゲップとなる.健常者においては,ひきつづいて食道上部からの蠕動波が下りてきて,ふたたびSHSを観察することができる.

Phase Ⅰは,低い胃内圧で観察される.GEFV(Collar-sling muscle fiberにより形成)とClasp muscle fiberの緊張・収縮により形成される小彎粘膜の縦ひだよりなる(Figure 3-a).したがってPhase Ⅰでは,食道の扁平上皮は観察されない.

Figure 3 

The phase conceptと内視鏡像の動的変化.

a:Phase Ⅰ:胃の筋層構造によるAnti-reflux effect.食道の扁平上皮が見えるまで.

Pink:Gastric longitudinal folds,Yellow:Gastric clasp muscle,Green:Collar sling muscle underneath mucosal flap valve(GEFV).

b:Phase Ⅱ:下部食道括約筋(LES)によるAnti-reflux effect.食道扁平上皮が見えてからSHS+が維持されている間.胃内圧の上昇に伴いClasp muscle fiberは伸展され,結果としてMucosal flap valve(collar sling muscle)はその脚の開きがPhase Ⅰに比べて広がっている.

NBI image.Green:Collar sling muscle underneath mucosal flap valve,Yellow:Clasp muscle fiber,Blue:LES contraction.

c:Phase Ⅲ:Upper sphincterや食道体部の蠕動収縮によるAnti-reflux effect.LESが弛緩したのちに,recoveryとしての食道体部の蠕動が入るまでの間.

Green:Mucosal flap valve(GEFV)(Collar sling muscle),Blue:LES(Lower esophageal sphincter).

次にPhase Ⅱは,中程度の胃内圧で観察される.GEFVや縦ひだは伸展され始め,食道扁平上皮が観察されるようになる.象徴的なのは,LESの反応性収縮であり,SHS(Scope holding sign)として視ることができる(Figure 3-b).Phase Ⅱでは,胃内圧の上昇に伴い,LESの反応性収縮が上昇した胃内圧に抗しきれなくなり,ついにSHSが解除される(LESが弛緩する).このときの胃内圧最高値がIGPmax(最大胃内圧)である.食道扁平上皮が見え始め,IGPmaxに到達し,SHS解除される直前までがPhase Ⅱ(LES相)である.

Phase Ⅱでの圧上昇に伴いSHS(LESの収縮)が解除されると,胃内のガスは食道に流出する.SHSの解除からが,Phase Ⅲの始まりである(Figure 3-c).またLESの弛緩に連続しておこるUESの弛緩により,ゲップ(Burping)がでてくる.この一連の流れにより,胃内圧は急速に下降する.Phase Ⅲはゲップがでたあとの逆流防止機構のRecovery phaseである.ゲップのあとに,さらなる逆流をブロックするように,食道体部において順方向の蠕動(Peristalsis)が起きる.蠕動波は,LESの再収縮を引き起こして,さらなる逆流をブロックする.この時点で胃食道逆流現象の一連のサイクルが完了する.

4.無症状者におけるThe phase conceptの成績

症例は30例.患者背景は男性20/女性10名,年齢中央値58歳(IQR46.5-68.75).

内視鏡の検査理由は人間ドック11例,スクリーニング19例であった.GERD症状は前例で認めず,無症状であった.ピロリ既感染は14例(47%)であった.全例で鎮静にプロポフォールを使用した.

Phase Ⅰ(Gastric phase)は胃内圧が低圧状態(Baseline pressureは,中央値6.75(IQR5.85-7.925),平均6.95mmHg(SD±1.61),Baselineから食道扁平上皮が見え始める前までの時間,平均17.5秒,SD±8.06秒)において観察される胃噴門の形態変化である.GEFVの末梢の開き角αは,Baseline pressure時では99.7度(SD±19.4)と小彎に寄っており,Phase Ⅰの終了時(Phase Ⅱの始まり)には113.2度(SD±19.6)に開いた.Baseline pressure時には,小彎粘膜の縦ひだは24例(80%)に見られた.

Phase Ⅱ(LES phase)は中等度の胃内圧中央値11.8(IQR 10.375-14.15),平均12.4mmHg(SD±2.95)のときに観察される所見.健常者ではLESの反応性収縮であるSHS(Scope holding sign)が観察される(26例,86.7%).また加圧に伴い,GEFVは徐々にストレッチされ,粘膜の盛り上がりの平低化,GEFVの脚の開大が認められた.GEFVのarmの開き角が,Phase Ⅰ終了時の113.2度(SD±19.6)からPhase Ⅱ終了時には122.5度(SD±23.0)へ開大した.

Phase Ⅲ(Esophageal Clearance phase)は胃内圧が,各症例のIGPmaxを超えて,ゲップがでたあとに見られるrecovery phaseの所見である.胃内圧の上昇に伴いSHSの開放(LESの弛緩)が見られ,胃内のガスが食道に逆流する.健常者では,この気体逆流に対して,それを胃側に押し戻すべく,Peristalsisが発生する.胃内での加圧がつづくと,食道内がガスで充満し,UESも開放されるとゲップとなる.ゲップのあとにもPeristalsisが出現する.Peristalsisの出現頻度は24例(80%)であった.またRecoveryまでの時間(Peristalsisが出現するまでの時間)は6.56秒(SD±3.88)であった.これらのPeristalsisの出現は,LESが解放されたあとの逆流防止機構のRecovery processと考えられる(Figure 23).

5.NERD患者におけるPhase concept

NERD患者では,Phase Ⅰ-Ⅲの全項目で異常を認める(逆流防止機能の低下および消失).それぞれPhaseにおける機能低下・消失のパターンにより,個々の病態を推察できる.今後,NERD患者の病態の解明,そしてこれらの解析がGERDにおける治療方針の決定に役立つことを目標に,症例を蓄積していきたい.

6.The phase conceptにより解決された2つの命題

① アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術(Peroral endoscopic myotomy:POEM) 18において,Incomplete myotomyを防ぐにはLESの切開のみならず,胃側2cmにおよぶ筋層切開が必要である 19.一方,外科手術の教科書においても,長年の外科医の経験に基づくのだろうが,Collar-sling muscle fiberを1cm切開するようになっている 20

もしもアカラシアの病態が食道体部の運動機能障害とLESの嚥下時弛緩不全だとすれば,LESは下部食道に位置するので,食道の筋層切開で十分であり,食道胃接合部(Esophago-gastric junction:EGJ)を超えた胃側の筋層切開は不要なはずである.これをどのように説明するかは,筋層切開が始まって以来,とくにPOEMが始まって以来の未解決の課題であった.POEM時の胃側2cmまでの筋層切開がPhase Ⅰの開放を行っていると考えることで,一連のことを無理なく説明できる.追って報告するが,Phase Ⅰ achalasiaは存在する.

② 次にNERDに対する内視鏡治療であるが,ARMS/ARMA(Anti-reflux mucosectomy/Anti-reflux mucosal ablation)に代表されるARMI 21を行うが,これらは胃側で行っている.NERDの病態がLESの機能不全(Phase Ⅱ failure)がその主因だとすれば,何故,ARMIは有効なのだろうか?それは,NERD症例において,Phase Ⅰの補強を行い,Phase Ⅱ failureを補っているからと説明できる.

Ⅱ 新しいGERDの内視鏡治療:内視鏡的逆流防止術(EARTh:Endoscopic anti-reflux therapy)

1.背景

GERDの治療の基本は,薬物療法および生活習慣の改善であることはいうまでもない.薬物療法が無効であった症例において,これまでは外科手術(腹腔鏡下Nissen手術あるいはToupet手術)が実施されてきた経緯がある.その中で,とくに明らかな(3cm以上)食道裂孔ヘルニアを伴う場合は外科手術の良い適応となることはいうまでもない.その一方で,明らかなヘルニアのない(3cm未満)のGERD(とくにNERD)においても,薬物療法に抵抗する症例は多数存在する.その中で,機能性胸やけ(Functional heartburn)を除外したGERD(Reflux hypersensitivityを含む)において,内視鏡治療が適応されると考えている.われわれは,以下に述べるARMSとして報告したが,Ota Kらが同時期にESD-Gとして報告し,良好な成績を残している 22),23.両者の明確な違いは治療を行う部位の相違である.

2.内視鏡的逆流防止術(EARTh:Endoscopic anti-reflux therapy)の実際

われわれが開発し行ってきた手技の一覧(Table 2)とその使い分けの実際を供覧したい.なお,「内視鏡的逆流防止術(Endoscopic antireflux therapy)EARTh」 24はわれわれの行っている各種の治療法(ARMS/ARMA/ARM-P/ARM-PV/POEF)(略字については,以下に正式を記載)の総称として用いている.POEF 25は,経口内視鏡で食道の粘膜下層トンネルから,腹腔内に入り,NOTES 26としてHeller Dor手術を行うものであり,それ以外の内視鏡治療とは一線を画すものである.

Table 2 

内視鏡的逆流防止術(EARTh:endoscopic anti-reflux therapy).

そこで,POEFを除くARMS/ARMA/ARM-P/ARM-PVは一連の治療手技として関連しており,状況に応じて組み合わせもありうることから,ARMI(Anti-reflux mucosal intervention 内視鏡的逆流防止粘膜治療) 21と称するのが良いと思われる.

1)ARMS(内視鏡的噴門粘膜切除術:Anti-reflux mucosectomy)

今をさかのぼること21年前の症例となるが,高度異型上皮HGD(high grade dysplasia)を伴うSSBE(Short segment Barrett esophagus)に対して下部食道粘膜全周切除および噴門粘膜全周切除を行った症例を経験した.本例は,HGDが根治的に切除されたことのみならず,GERD症状が見事に消失したことを大変に満足された.つまり,噴門粘膜の全周切除により,人工潰瘍の修復過程において瘢痕収縮がおこり,その結果として噴門形成(開大した噴門が潰瘍瘢痕により締まること)がなされて逆流防止が成立することを報告した 27),28.この症例の逆流防止は10年後も維持されており,切除されたバレット粘膜部分は扁平上皮で再生していた.この結果に基づき,薬剤抵抗性GERD症例に対して,逆流防止効果を目的として噴門粘膜切除を行ったのが,ARMS(anti-reflux mucosectomy)である 29.倫理委員会の承認のもと,これまで109例に施行して,3,5年後においてもその効果が維持されていることを報告した.ARMSを受けた症例では,約50%の症例がPPIを離脱し,残り約50%の症例でPPIを服用されている,それは治療前には効かなかったPPIが効くようになったという意味合いである 30.粘膜切除の方法は,ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)でもEMR(内視鏡的粘膜切除術)でもどちらでも構わない(Figure 4).

Figure 4 

内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS)の経過.

a:治療前は,噴門が漏斗状に開いている.

b:粘膜切除術後.亜全周の粘膜切除が胃の噴門で行われている.

c:人口潰瘍が瘢痕治癒することで,噴門は締まっている.1カ月後.

ポイントは胃噴門において亜全周の粘膜切除を行うことにある.半周以下では効果に乏しいし,全周に行うと狭窄症状がでやすい.胃内で反転した視野で,人工潰瘍部分と食道粘膜の間に1cm弱の介在粘膜を残すことがポイントである.効果は5年経過観察例でも持続していた 31

2)ARMA(内視鏡的噴門粘膜焼灼術:Anti-reflux mucosal ablation)

臨床を重ねるうちに,粘膜焼灼によっても,粘膜切除と同様の効果がえられることが判明した 32.粘膜焼灼を行うと翌日には同部にUl-Ⅱの潰瘍が形成される.この人工潰瘍は潰瘍瘢痕として治癒し,結果として噴門粘膜唇の再形成がおこる.粘膜焼灼の方法として,Triagnle-tip knife J(Olympus)の場合はSpray凝固(ERBE 300D,Spray凝固 50W,effect 2,またERBE VIO3ではSpray凝固 4.2)を使用する.APCの場合は,高出力80-100Wに設定する.ARMAにおいても治療翌日には焼灼部分に人工潰瘍が形成され,その治癒経過はARMSとARMAでは,ほぼ同一である.一方,手技の難易度を考慮した場合,ARMAによる粘膜焼灼のほうが,ARMSによる粘膜切除より簡便である.その結果として,ARMSは自然にARMAに移行した.ARMA導入後は,大多数の症例がARMAを受けている(Figure 5 33

Figure 5 

内視鏡的逆流防止粘膜焼灼術(ARMA)の経過.

a:治療前は噴門は大きく開いている.1cmほどの滑脱も伴う.

b:亜全周の焼灼術を行う.

c:1カ月後は,潰瘍瘢痕が形成され,噴門は締まっている.

3)ARMS/ARMAの有効性と安全性,そして残された課題

これまでに3つのsystematic reviewとmeta-analysisの報告が,米国,欧州,アジアから報告されている 21),24),34.すべての報告において,安全性と有効性が確認された.しかしながら,ARMS/ARMAに残された課題が2点ほどあると考えている.1つは,潰瘍の修復の際の収縮率に個人差がある点である.すこしでも収縮してくれれば,ARMAを反復することにより,噴門形成は理論的に完了するが,中には全く収縮せずにそのまま再上皮化される症例が少数(2%)ながら存在した.もう1点は,後出血症例が約6%に見られる点である.ARMS/ARMAともに治療直後から約3週間の期間はOpen ulcerが存在する.その間にとくに,当日から2週間までに潰瘍からの出血がおこることがある.われわれの経験した後出血の症例は,いずれも抗血栓薬の継続が必要であった患者であった.すべて緊急内視鏡により止血が完了しているものの,吐下血という事態は避けなければならない.

4)ARM-P(内視鏡的逆流防止粘膜形成術:Anti-reflux mucosal plasty)への展開

前項目に記載した残された課題を克服するために,粘膜切除を行ったあとに組織欠損部を一気に縫縮したいと考えた.つまり治療後にOpen ulcerを残さないという考え方である.そのために小彎の約1/3周の粘膜切除術(約3×3cm)を行い,一気に粘膜閉鎖を行う 35.組織欠損部の既存のクリップによる単独での閉鎖は手技的に困難なことが多く,Loop-assisted clip closure法(細径ループによるクリップ閉鎖法)loop 9 36,Line-assisted clip closure法(糸付きクリップによる連続縫合法,loop 10,loop 11)による組織欠損閉鎖を行っている 37),38.このときに粘膜下に死腔ができないように,粘膜といっしょに粘膜下層を十分に把持することが重要である.最近登場したMantis clipは,単独でのクリップ閉鎖が行える可能性があり,最近の4例に施行しているが,いまのところ良好な成績である.今後の経過を慎重に観察したい.ARM-Pは,これまで35例に施行しているが,手技の完遂は100%,また治療成績は良好であり,術後出血や,バルーン拡張が必要となるような一過性の狭窄を経験していない.一過性の狭窄を経験しなくなった理由は,手技の終了時に噴門形成が完了しており,ARMS/ARMAのときのような潰瘍の収縮率の個体差の影響がないからだと考えている.

5)ARM-PV

Lu JらによりARMVとして新しい手法が報告された 39.ARMSにおいて,粘膜を切除して除去するのではなく,余剰となった粘膜をEGJに手繰り寄せ,雛壁(Valve)を作ろうとする方法である.確かに,余剰の粘膜を切除することが目的ではなく,縫縮することが目的であり,さらに加えて雛壁形成(Valvuloplasty)ができれば望ましい.ただし中国からの報告(ARMV)では,噴門の収縮をARMSの広範囲な人工潰瘍の自然治癒にゆだねていた.そこでARMSの弱点(潰瘍の自然治癒に時間がかかること,潰瘍の収縮率に個体差があること)を補う意味からも,われわれが既に行っていたARM-Pの手技(治療時に直接縫縮する)と組み合わせて,粘膜の授動を行ったあとに,潰瘍部分を一気に閉鎖するARM-PV 40を開始した.

6)それぞれの手法の使い分けと位置づけ

当初行っていたARMSの単独施行は,その後はARMAに置き換わりつつある.ARMAのほうが手技的に簡便で,かつ治療効果はARMSと同様であるからである.さらにARMAは反復施行が可能である.実際に治療時間においても,ARMAはARMSのおよそ半分である.一方,見出し3)に記載したARMS/ARMAに残された課題を解決したという意味では,ARM-P,さらに今後は,余剰粘膜でValveを作るARM-PVが今後は主流になっていくと思われる.ARM-PとARM-PVの治癒後の内視鏡像を比べると,ARM-PVのほうが理想的のように見える(Figure 6).

Figure 6 

内視鏡的逆流防止粘膜形成術(ARM-P)の経過.

a:治療前は噴門唇の形状は保たれているが,噴門そのものは若干,開き気味である.

b:小彎の粘膜切除のあと,形成された人工潰瘍部分を,糸付きクリップ法を用いて,直接閉鎖する.

c:1カ月後にはきれいな瘢痕が形成されており,噴門は締まっている.

ARM-PVの魅力の1つは治療時に噴門形成が完了しているために,治療効果は翌日から現れる(Figure 7).ただし,ARM-PVはARMAに比べると手技の難易度が上がり,またクリップを複数個使用するのでコストもかかってくる.一方で,ARMAは,格別に安価であり,かつ繰り返して施行することができることから,初回治療後の追加治療症例などにおいて,効果的な治療法として不可欠であると考えている.つまり,自力本願(初回治療時に粘膜形成を完了する)のARM-PVを行うか,他力本願(自然治癒にゆだねる)のARMAを行うかのどちらかであろう.現在のわれわれの方針は,まずARM-PVを行い,不十分であれば,ARMAを追加することになる.また初回治療時に,噴門形態などの理由でARM-PVがやりにくい状況にあれば,ARMAを行うこととなる.

Figure 7 

内視鏡的逆流防止粘膜形成術(ARM-PV).

a:治療前.噴門の開大を認める.CO-2,SH-1.

b:噴門粘膜の授動.反転視野で,噴門小彎粘膜の授動を行う.噴門粘膜唇の内側で行う.

c:授動した噴門粘膜の固定.Sureclipを用いての粘膜の固定.

d:ARM-PVの完成.Mantis clipを用いて,粘膜欠損部の縫縮を行う.

e:2カ月後の前方視.Uvula状の粘膜Valve形成を認める.

  f:2カ月後の反転視野.噴門開大の改善を認める.

Ⅲ GERDの内視鏡診断と治療:今後の展開

1)EPSISとThe phase concept

GERD診断のGold standardは24hr pH impedance studyであることは論をまたない.しかしながら,24時間にわたり経鼻カテーテルを留置する方法は,患者の受け入れは決して良好ではない.初回は受けてくれるが,2回目以降は好まれない.一方,カプセルを留置するBraboは高価格である.それに比べて,EPSISは通常の内視鏡検査中に生検チャンネルを介して胃内圧を測定するだけなので,安価かつ容易である.

このEPSISの経験から,胃食道の逆流防止機構を内視鏡像の動的変化と組み合わせたものが“The phase concept”である.これらは,GERDの病態生理の総合的な理解に貢献すると考えている.EPSISやPhase conceptは,既に確立されている検査方法(HRMや24時間pH)と対峙するものではなく,さらなる情報提供を行うものである.これらは機能内視鏡(Functional endoscopy)という新しい領域を形成していくと期待される.

2)内視鏡的逆流防止術のこれまでの歴史とEARThの位置づけ

これまで長年にわたり数々の内視鏡的逆流防止術が報告されてきた.主として,下部食道で行われるものとして,Enterix,ESD-Gなどがある.また主として胃噴門で行われるものとして,Esophix,GERD―X,Mediusなどがある.それぞれ特徴があるが,さまざまの理由(異物反応,高いコスト,長期効果への懸念)があって,なかなか標準化にいたっていないのが現状であろう.

1つには,逆流防止術効果の永続性の問題であるが,ARMS,ARMA,ARM-Pでは,外分泌能のある粘膜を切除して「粘膜下層あるいは筋層表面を露出させた」ことにこれまでにない特徴があると考えている.ARMS/ARMAは潰瘍の治癒過程における瘢痕収縮を応用したものであり,またARM-Pは,粘膜下層―粘膜下層を寄せたことで,通常の腸管吻合と同様に,ひとたび生着してしまえば,緩みにくいため,永続性が高いと考えている.

一方,POEF 25は,外科手術でいえば,Dor手術(anterior partial fundoplication)を経口内視鏡を用いたNOTE 26として行おうというものであり,アカラシアのPOEM後など,食道体部の蠕動が消失している症例に限って行っている.最もMildな逆流防止術であり,特殊な場合に限られると考えている.

EARThに対して,とくに外科医からは,理論的に不十分な治療法であるという意見をいただく.理由は,外科手術の場合,噴門のWrap(趨壁形成術)に加えて,横隔膜食道裂孔の縫縮(Crural closure)を行っているからである.

それに対する回答として,以下のように考えている.GERD症例に対する第一選択の治療法は薬物療法(酸分泌抑制剤)であるが,たとえヘルニアが治療されていなくても,それで症状が緩解する方が多数おられる.要は,GERDは機能性疾患であり(悪性疾患ではなく),症状が改善すれば,食道裂孔ヘルニア本体を治癒せしめる必然性はないと考えている.言葉をかえると,薬剤抵抗性GERDに対して,まずはEARThを行い,それで効果がなければ,外科手術に進めば良いと考えている.

Ⅳ まとめ

GERDの診断と治療は,長年の臨床と研究の蓄積のうえで,現在のプラットフォームが形成されているが,今,それぞれが大きく変化しようとしている.Evidenceに基づき,症例を積み重ねることが重要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:井上晴洋(オリンパス(株),ボストン・サイエンティフィック ジャパン(株),武田薬品工業(株),(株)トップ),西川洋平(オリンパス(株)),田邊万葉(オリンパス(株))

文 献
 
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