日本消化器内視鏡学会雑誌
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資料
十二指腸腫瘍検出のための上部消化管内視鏡検査における7枚撮像十二指腸観察手順に関する前向き観察研究(動画付き)
小塚 和博小原 英幹 松井 崇矩藤澤 明彦龍田 美和小林 三善安田 貢中谷 夏帆多田 尚矢千代 大翔小林 伸也谷内田 達夫西山 典子藤原 新太郎近藤 彰宏岡野 圭一辻 晃仁正木 勉
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電子付録

2025 年 67 巻 2 号 p. 170-179

詳細
要旨

【目的】上部消化管内視鏡検査における十二指腸の観察方法は確立されていない.そのため,われわれが新たに考案した十二指腸観察手順の実装性と腫瘍検出能を検討した.

【方法】本研究は2施設での前向き観察研究である.われわれの考案した7枚撮像十二指腸観察手順(Seven Pictures Rule:7PR)は十二指腸球部前・後壁,上十二指腸角とその対側,下行部乳頭側とその対側,水平部の合計7部位で各一枚撮像する方法である.主要評価項目は7PRの完遂率とし,副次評価項目は腫瘍検出率,部位毎の腫瘍検出率,観察時間,スコープ径毎の7PR完遂率とした.

【結果】対象は1,549名.7PRの完遂率は81.1%であった.腫瘍検出率は,要治療腫瘍全体では0.84%,腺腫では0.71%,癌は0.06%であった.要治療腫瘍の検出は下行部の乳頭対側(69.2%)で最も多く,水平部(0%)ではみられなかった.十二指腸の平均観察時間は53.1秒であった.通常径内視鏡と超細径内視鏡間の7PR完遂率の比較では,84.4%(1,077/1,276) vs. 65.6%(179/273)であった(P<0.01).

【結論】7PRは受容性のある十二指腸観察法であり,標準観察手技になりうる.

【試験登録】大学病院医療ネットワーク臨床試験登録(UMIN登録番号000035344).

Abstract

Objectives: No protocol for esophagogastroduodenoscopic examination of the duodenum has been established. We examined the feasibility and ability to detect neoplasms of a novel duodenal examination protocol.

Methods: This was a two-facility, prospective, observational study. Our protocol, the Seven Pictures Rule (7PR), requires pictures of the following seven locations: anterior and posterior to the bulb, area of and contralateral to the superior duodenal angle, area of and contralateral to the ampulla, and the transverse duodenum. The primary outcome was rate of completion of 7PR. Secondary outcomes were overall rates of detecting neoplasms, rates of detecting neoplasms for each location, examination time, and completion rates for standard or ultrathin endoscopes.

Results: There were 1,549 participants. The 7PR completion rate was 81.1% and the detection rates of overall neoplasms, adenomas, and carcinomas were 0.84%, 0.71%, and 0.06%, respectively. The area in which most neoplasms was detected was contralateral to the ampulla (69.2%), and the fewest the transverse duodenum (0%). Mean duration of duodenal examination was 53.1 s. Completion rates for standard vs. ultrathin were 84.4% (1,077/1,276) vs. 65.6% (179/273) (P < 0.01), respectively.

Conclusions: Seven Pictures Rule is acceptable for duodenal examination and a potential quality indicator.

Trial registration: University Hospital Medical Network Clinical Trials Registry (UMIN Registration No. 000035344).

Ⅰ はじめに

上部消化管内視鏡検査(EGD)は上部消化管癌の早期発見のために広く普及している検査法である 1.EGDによる胃癌のスクリーニングは,死亡率を30%減少させる効果がある 2),3.これは,胃の内視鏡検査手技と定型トレーニングプログラムが世界的に確立したことが一因である 4.また,食道腫瘍の早期発見には,画像強調狭帯域光観察による境界明瞭な褐色域(Brownish area)の検出が標準的なスクリーニング法となっている 5.その一方で,十二指腸腫瘍の検出法は未だ確立されていない.十二指腸病変には,主にブルンネル腺過形成,リンパ管腫,異所性胃粘膜などの良性病変と,腺腫,腺癌,神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor:NET),悪性リンパ腫などの腫瘍性病変が含まれる.十二指腸は後腹膜臓器であるため,外科的治療は非常に複雑である.特に十二指腸乳頭周囲の腫瘍では,侵襲度の高い膵頭十二指腸切除となる場合がある.3,107名を対象とした最新の後方視的な大規模多施設共同研究によると,内視鏡的切除後の遅発性偶発症発生率はコールドポリペクトミーで0.5%,浸水下内視鏡的粘膜切除術(Underwater EMR)で2.2%,内視鏡的粘膜切除術(EMR)で2.8%,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)で7.3%と報告されている 6.その遅発性偶発症のリスク因子としてサイズの大きい病変径やESD手技が挙げられている.したがって,腫瘍径が小さい段階での早期発見は,内視鏡治療後の偶発症リスクの低減につながる.EGDにおける十二指腸腫瘍検出のためのスクリーニング内視鏡手技に関する報告は少ない.最近の報告では,111,962例のEGDにおいて十二指腸乳頭が撮像されていたものは49.0%程度とされる 7.実際には,十二指腸における各部位を観察し,十分な撮像を行うか否かは,内視鏡医の判断に委ねられている.既報では十二指腸腫瘍の検出率は,3,925例のEGDにおいて腺腫が0.15%,がんが0.05%,NETが0.03%であったと報告されている 8.しかしながら,前向きに検証されたデータはこれまでにない.

そこで,スクリーニング目的のEGDにおける十二指腸腫瘍の検出率を向上させることを目指して,われわれは十二指腸の7部位を各1枚ずつ撮像するSeven Pictures Rule(7PR)という網羅的十二指腸検査手順を考案した.本研究では,7PRの実装性と腫瘍検出能を明らかにすることを目的とした.

Ⅱ 対象・方法

研究デザイン

本研究は,2019年4月から2021年8月の期間においてスクリーニング目的にEGDを施行された患者を対象とした2施設での前向き観察研究である.登録基準は,年齢20歳以上かつスクリーニング目的のEGDを受けた症例とした.除外基準は,期間内のEGD重複例,上部消化管悪性腫瘍もしくは十二指腸腫瘍の既往歴を有する症例,上部消化管切除既往症例,精神疾患もしくは精神症状を有する症例とした.本研究は,香川大学医学部附属病院臨床倫理委員会(登録番号:H30-204,承認日:2019年3月28日)の承認を受け,ヘルシンキ宣言に従って実施した.本研究は大学病院医療ネットワーク臨床試験登録(UMIN登録番号:000035344)に登録された.診療への影響を低減するための円滑なインフォームドコンセント,ならびにすべての研究参加者へアクセスしやすい診療情報を提供するためにオプトアウト方式を採用した.抽出されたすべてのデータは,香川大学の中央データベースに集計された.

7PRの手順(Figure 1
Figure 1 

7PRにおいて撮像する7部位.

a:球部前壁.

b:球部後壁.

c:SDA対側.

d:下行部乳頭側.

e:下行部乳頭対側.

f:水平部.

g:SDA.

EGDにおける食道,胃,十二指腸の観察順序は,内視鏡施行医が決定した.内視鏡機種は通常径(Standard:S)スコープまたは超細径(Ultrathin: U)スコープが使用され,オリンパス社(日本,東京)または富士フイルム社(日本,東京)から市販されているものとした.一方で,内視鏡スコープや光源装置は施設間で異なるため,研究開始前にこれらの一律化はできなかった.内視鏡の種類は患者の希望に応じて,内視鏡施行医が選択した.SスコープはGIF-H260/H290,拡大機能付GIF-H260Z/290Z(オリンパス社,東京),EG-L600ZW7(富士フイルム社,東京).UスコープはGIF-XP260N/290N(オリンパス社),EG-L580NW7(富士フイルム社)が使用された.光源装置はEVIS LUCERA ELITE(オリンパス社)とLASEREO 4450(富士フイルム社)が用いられた.内視鏡径別のスコープ選択は患者の希望によって決定した.Uスコープの挿入経路(経口もしくは経鼻)も患者選択とした.すべての症例で,静脈内鎮静剤は使用せず,覚醒下にEGDが施行された.

7PRとは,十二指腸7部位(1部位当たり1枚)を任意の順番で撮像する十二指腸の網羅的観察手順である.7部位とは球部前壁,球部後壁,上十二指腸角(Superior duodenal angle:SDA),SDA対側,下行部乳頭側,下行部乳頭対側,水平部である(Figure 1電子動画 1).撮像の成功基準は,下行部乳頭側では口側隆起または主乳頭の撮像,水平部では少なくとも3襞以上の全周観察像とした.水平部はスコープのストレッチ操作を行い観察した.EGD用スコープでは水平部深部への挿入には限界があり,患者の不快感を増長させるリスクがある.本研究開始前の検証では,スコープのストレッチ操作を行うことにより,ほとんどの症例において水平部の少なくとも3襞以上を含む管腔全周を観察できることが確認された.したがって,EGDの限界と患者の受容性を考慮し,本研究では水平部では少なくとも3襞以上を含む全周の管腔観察という成功の定義を採用した.腫瘍が疑われる病変は生検し,病理組織学的検査に提出した.7PR手技中では,白色光で7枚の画像を撮影し,病変部の追加撮像は行わなかった.内視鏡医の判断によって腫瘍観察時にNarrow Band Imaging(NBI)などの画像強調観察が追加された.すべての症例は,7PR手順に関するレクチャーを受け,2,000件以上のEGD検査歴のある内視鏡医5名(H.K.,K.K.,T.M.,A.F.,M.T.)によって実施された.

電子動画 1

評価項目

主要評価項目は7PRの完遂率とした.完遂の定義は,決められた7部位を任意の順で撮像できた場合とした.副次評価項目は,治療対象腫瘍(腺腫,癌,その他)の全体および部位毎の検出率,十二指腸観察時間および総観察時間,SおよびUスコープの各完遂率,および手技関連偶発症とした.総観察時間は,スコープを口腔内に挿入してから抜去するまでの時間とした.十二指腸観察時間は,1枚目から7枚目の撮像までの時間とした.

統計解析

正規分布データは平均値±標準偏差(SD)で示した.すべての転帰の割合を算出し,SスコープとUスコープの7PR完遂率を両側フィッシャー正確検定で比較した.P<0.05を統計学的有意とした.統計解析はすべてJMP version 9.0(SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いた.

Ⅲ 結  果

患者の特徴

患者の詳細をTable 1にまとめた.対象は1,549名が登録され,平均年齢は55.1歳(SD 12.2)であった.男性の割合は68.8%(n=1,034)であった.SおよびUスコープの割合は82.3%(n=1,276)および17.6%(n=273)であった.

Table 1 

登録患者の特徴.

評価項目

結果をTable 2Table 3にまとめた.7PRの完遂率は81.1%であった.全治療対象腫瘍,腺腫,癌,その他(n=1,濾胞性悪性リンパ腫)の検出率は,それぞれ0.84,0.71,0.06,0.06%であった.濾胞性悪性リンパ腫は,下行部乳頭対側に位置し,乳頭側には進展していなかった.治療対象腫瘍の検出率は,下行部乳頭対側が最も高く(69.2%),球部後壁,SDA,水平部が最も低かった(0%).治療対象腫瘍13例の局在部位をFigure 2に,これらの内視鏡像をFigure 3に示す.全病変検出率は21.1%(327/1,549)であった.この327例の内訳は,炎症89例,異所性胃粘膜病変53例,潰瘍瘢痕44例,ブルンネル腺過形成41例,粘膜下腫瘍(脂肪腫,囊胞,リンパ管腫など)25例,憩室18例,黄色腫12例,腺腫11例,潰瘍3例,癌1例,悪性リンパ腫1例,その他29例であった.病変局在部位の割合は,球部前壁が最も高く(38.8%),SDAが最も低かった(4.59%).平均十二指腸観察時間は53.1秒(平均総観察時間346秒)であった(生検施行213例を除く).7PRの完遂率はSスコープ84.4%(1,077/1,276例)に対してUスコープ65.6%(179/273例)であった(P<0.01).7PR成功率が最も低かったのはUスコープの水平部(24.1%)であった.SスコープとUスコープで検出された全病変および腫瘍の検出率には大きな差異を認めなかった[全病変では21.4%(273/1,276)対19.8%(54/273),腫瘍では0.940%(12/1,276)対0.366%(1/273)].SスコープとUスコープの結果をTable 2に示す.7PR手技関連合併症は認められなかった.意図しない観察法では検出されず,7PRにて発見された腫瘍の典型例を電子動画 2に示す.

Table 2 

7枚撮像(7PR)の結果と,標準径スコープと超細径スコープの比較結果.

Table 3 

検出病変.

Figure 2 

検出された13例の治療対象腫瘍の局在部位.

Figure 3 

治療対象腫瘍(青矢印).

a~c:すべて腺腫.

a:SDA対側2例(赤枠).

b:下行部乳頭側1例(緑枠).

c:下行部乳頭対側8例(黄枠).

d,e:すべての悪性腫瘍.

d:球部前壁の癌(青枠).

e:下行部乳頭対側の濾胞性リンパ腫(オレンジ枠).

電子動画 2

Ⅳ 議  論

今回の研究は,われわれが考案した網羅的十二指腸検査手順(7PR)の実装性と腫瘍検出能を検討した初めての前向き研究である.この研究により4つの重要な知見が得られた.第1に,81.1%の高い7PRの完遂率により,7PRは受容性のある観察法であることが示された.第2に,7PRは既報よりも高い腺腫検出率を示したことにより,その高いポテンシャルを示した.第3に,この研究は下行部乳頭対側が要治療腫瘍の好発部位であることを示した最初の前向き研究である.第4に,Uスコープでは水平部観察に制限があることが示された.

現在,検診EGDの意義が大きく変わりつつある.ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloriHP)感染率の低い欧米諸国における胃癌発生率が示すように,HP除菌治療によりその感染率の高いアジア諸国における胃癌発生率が減少しつつある 9.これらの現況を鑑みると,今後,EGDは十二指腸腫瘍の発見にさらなる重要な役割を担う可能性が高い.さらに,標準化した内視鏡観察手順を臨床導入することで,内視鏡医の手技のばらつきを最小限に抑え,均てん化を可能とする.そこで標準的な検査手順がない現況から,われわれは腫瘍の早期発見を目的として十二指腸を網羅的に観察する7PRの開発に至った.

全体の7PR完遂率は81.1%であったことからその受容度は示された.7PRの不成功率が高い部位は,下行部乳頭側(9.4%)と水平部(9.0%)であった.下行部乳頭側の撮像成功基準は,口側隆起または主乳頭の画像取得としたため,乳頭がスコープに対して接線方向に位置していることが不成功要因として考えられた.水平部では,スコープの長さの限界やストレッチの困難さが不成功の一因と考えられた.SスコープとUスコープを比較した結果では,Uスコープは7PRの完遂に限界がみられた(84.4%vs.65.6%).特にUスコープによる水平部の観察が困難な(24.1%)理由として,おそらくUスコープの軟性度が要因と考えられる.しかしながら,水平部における腫瘍検出率が低いことを考慮すると,Uスコープはスクリーニング用EGDとして許容範囲内と考える.

十二指腸腫瘍の検出率は,3,925例の後ろ向き研究によると腺腫0.15%,癌0.05%,NET0.03%と報告されている 8.近年の多施設前向きコホート研究におけるサブ解析においても,腺腫0.3%(9/2,896),癌0.07%(2/2,896)と,同様の検出率が示された 10.日本の全国がん登録から抽出された主乳頭部の悪性腫瘍を除く3,005名の患者を対象とした全国調査では,十二指腸癌の発生率は0.0023%(1,000,000人年当たり23.7人)とされる 11.一方,本研究では,症例数は十分でないものの7PRの治療対象腫瘍検出率(腺腫:0.71%,癌:0.06%)は既報よりも高い可能性が示唆された.

治療対象腫瘍全体および腺腫は,下行部乳頭対側で最も多く検出され(腫瘍では69.2%,腺腫では72.7%),水平部で最も少なかった(0%).腺癌1例は球部前壁,悪性リンパ腫1例は下行部乳頭対側に認められた.PubMedの検索によると,十二指腸腺腫の好発部位は,前向きな研究ではまだ明らかにされていない.今回の結果は,この点に関して新しい知見であり,下行部乳頭対側の領域は注意深く観察する必要があることを示唆するものである.本研究では,それぞれの施設で各タイプのスコープが利用可能であったが,オリンパス社スコープが富士フイルム社スコープよりも多く使用され,すべての腫瘍がオリンパス社スコープで検出された.しかし,オリンパス社スコープと富士フイルム社スコープでは使用頻度に有意な差があり[オリンパス社91.3%(1,414/1,549)vs. 富士フイルム社8.72%(135/1,549)],スコープのメーカー機種と腫瘍検出率との関連性は不明であった.

本研究では,十二指腸の平均観察時間は53.1秒(平均総観察時間346秒)であった.最近の研究では,EGDの平均観察時間が7分以上であることが,高リスクの胃病変を検出するための指標とされてきた 12.欧州のガイドラインでも,初回の診断目的のEGDおよび腸上皮化生のフォローアップには少なくとも7分以上の観察が推奨されている 13.日本の内視鏡医に対するアンケート調査では,EGD検査時間は一般的に8分未満であった 4.EGDによるスクリーニングを受けた111,962人を対象とした大規模な後ろ向き研究では,平均検査時間において3分以上が3分未満よりも上部消化管腫瘍検出率が有意に高かった 14.しかしながら,十二指腸観察時間に関する報告は認めなかったため,われわれの平均53.1秒を他の研究データと比較することはできなかった.十二指腸観察時間はSスコープと比較してUスコープ使用時の方が観察時間全体に占める割合が高かった.胃癌の有病率が比較的高いことを考慮すると,十二指腸観察により多くの時間を費やすことはベネフィットが低い可能性がある.さらに,長い十二指腸観察時間やスコープのストレッチ操作は,患者の満足度の低下につながる可能性がある.とはいえ,本研究により初めて十二指腸観察におけるSスコープとUスコープの特徴と限界について明らかにしえた.さらに,われわれの新しい網羅的観察手順である7PRは,十二指腸の治療対象腫瘍の好発部位を前向きに明らかにした.本研究では症例数は限定的であったものの,腫瘍が検出されなかった部位では観察の重要性が低い可能性が示唆された.したがって,これらのデータは,手技時間・患者満足度・腫瘍好発部位・スコープの特徴を考慮した新たな十二指腸観察の確立に寄与しうると考えられる.これらの貴重な知見を基に,今後は撮像枚数を最小限に抑え,Uスコープであっても許容される手順を検討していく必要がある.

本研究には2つの主な新規性が含まれる.欧州のガイドラインでは,EGD中に十二指腸球部と下行部を観察することを推奨している 13.一方,十二指腸腫瘍を検出するために必要な詳細な観察手順や撮像枚数に関するエビデンスは得られていない.また,十二指腸各部位毎の腫瘍発生頻度に関する詳細な前向き研究は見当たらない.本研究の新規性の1つは,十二指腸腫瘍の見落としを防ぐために,7PRに基づいた網羅的観察手順を考案したことである.もう1つの新規性は,7PRを用いた網羅的観察により十二指腸腫瘍の発生部位に関する前向きデータが得られたことである.

本研究にはいくつかの制限があった.第1に,この研究の主な目的は7PRの実現性を調査することであったため,参加者の数が少なかった.第2に,本研究に関わった検査医が経験豊富であったことを考慮すると,7PRの非熟練医に実施可能であるかどうかは,さらなる検討を要する.第3に,7PRの被検者受容度は評価されていない.第4に,これは探索的研究であったため,サンプルサイズの検出力計算は行われていない.第5に,十二指腸腫瘍の早期発見と治療は,治療関連偶発症のリスク低下に寄与する可能性があるものの,腺腫または早期癌の自然史は依然として不明である.したがって,小さな十二指腸腫瘍を発見し治療することが患者死亡率に影響を及ぼすかどうかは,依然として議論の余地がある.第6に,前向き研究であるため,検査が意図して十二指腸を詳細に観察した可能性があり,十二指腸腫瘍の高い検出率に影響した可能性がある.しかし,7PRのような標準的観察手順が確立されれば,十二指腸腫瘍の有病率に関する真のデータが明らかになることが期待される.第7に,本研究の対象者はスクリーニング目的で登録されたため,家族性大腸腺腫症やPeutz-Jehgersのような腫瘍高リスク患者が含まれていないと想定した.幸いなことに,研究参加者の中にこれらの高リスク疾患を有する者はいなかった.

結論として,7PRは受容性のある十二指腸観察手順であり,腫瘍検出を改善するための質的指標となりうる.より大規模な研究が望まれる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

補足資料

電子動画 1 7PR完遂動画.

電子動画 2 意図しない観察では検出できず,7PR手順で検出しえた腫瘍の提示動画.

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2024)36, 154-61に掲載された「Novel endoscopic duodenal observation protocol based on Seven Pictures Rule for detecting duodenal neoplasms during esophagogastroduodenoscopy: Prospective observational study」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
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