日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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ISSN-L : 0387-1207
総説
大腸腫瘍に対するUnderwater EMR(動画付き)
竹内 洋司 渋澤 恭子山口 泰子
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電子付録

2025 年 67 巻 3 号 p. 199-213

詳細
要旨

Underwater EMR(UEMR)は2012年にBinmoellerらによって初めて提唱された新しい内視鏡的粘膜切除法である.今回,検索した大腸腫瘍に対するUEMRに関する英文論文119編に基づくと,10mm未満の病変に対しては従来のEMRと遜色ない治療成績が示されており,10-20mm大の病変に対してはEMRより有用性が高いという報告も見られた.特に20mm以上の病変では,その傾向がより顕著である.ESDは一括切除割合で明らかに優れているが,症例の条件によってはESDの代替となりうる.内視鏡治療後の遺残再発病変に対しては,EMRよりも良好な治療成績を示し,ESDとも比較可能である.また,直腸神経内分泌腫瘍に対してもESDより簡便で期待できるが,結紮装置併用下内視鏡的粘膜下層切除術を上回る効果は不明である.

現状では,UEMRは完全に従来の治療法に置き換わるとは言い難いが,選択肢の一つとして考慮される治療法である.今後,その真価が問われることになるであろう.

Abstract

Underwater endoscopic mucosal resection (UEMR) was proposed by Binmoeller et al. in 2012, and has gradually become popular in Japan as increasing evidence has been reported. In this article, we extracted 119 English articles on UEMR for colorectal tumors from PubMed, categorized them according to lesion characteristics, and examined their efficacy and safety. The results showed that UEMR was comparable to conventional EMR (CEMR) for colorectal tumors < 10 mm and occasionally superior to CEMR for tumors 10-20 mm in size, with the trend being more pronounced for tumors > 20 mm. While ESD was superior in the en bloc resection rate for colorectal tumors > 20 mm, the difference in the recurrence rate was smaller, and UEMR was superior in procedure time and safety, making it an alternative to ESD for tumors 20-30 mm in diameter under certain conditions. UEMR also shows better outcomes than CEMR for recurrent lesions after endoscopic treatment and is comparable to ESD. Although simpler and more promising results have been reported for rectal neuroendocrine tumors with UEMR than with ESD, the effectiveness of UEMR over endoscopic submucosal resection with a ligation device is unknown and further evidence is needed.

The current evidence suggests that UEMR is not a complete replacement for conventional procedures, but it can be considered one option according to the endoscopistsʼ preference. As UEMR becomes more widespread, its true value will be shown.

Ⅰ 緒  言

大腸腫瘍に対する内視鏡的切除はShinyaらにより最初に1969年に実施され,1973年に報告された単純なスネアによる絞扼切除から始まったと言われている 1.その後,粘膜下局注後にスネアで絞扼する内視鏡的粘膜切除術(EMR)がDeyhleらによって提唱され 2,局注剤の種類などさまざまな改良 3を経て,大腸ポリープに対する基本的な治療手技として確立された.EMRは長年にわたり広く行われ,もはやそれ以上の発展はないものかのように考えられていた 4.しかし,通電なしで小ポリープを切除するコールドスネアポリペクトミー(Cold Snare Polypectomy:CSP)は,それまでの通電によるポリープ切除という常識を大きく覆し,その有効性 5と安全性 6が確認されたことから急速に普及し,小ポリープに対する治療において“Cold Revolution”と呼ばれるほどの大きな変革をもたらした 7.Underwater EMR(UEMR)もまた,送気下で行われていた従来の内視鏡切除の常識を大きく覆す治療法であり,大腸のみならず,胃 8,十二指腸 9,さらには小腸 10でも徐々に普及しつつある.本稿は,大腸腫瘍に対するUEMRに関わるこれまでの論文を系統的に抽出しその治療成績をまとめることで,UEMRの適切な普及に寄与することを目的とする.

Ⅱ Underwater EMRとは

2012年にBinmoellerらにより最初に提唱された新しいコンセプトの内視鏡的粘膜切除法であり,病変を浸水させ,局注せずにスネアで病変を絞扼し,通電して切除する手技である(Figure 1電子動画 1 11.従来の治療法との大きな違いは,局注を省略する点と,水中で病変を絞扼する点である.なお,本邦の大腸ESD/EMRガイドライン(第2版)では,“EMRは,経内視鏡的に生理食塩水あるいはヒアルロン酸ナトリウム溶液などを腫瘍の粘膜下層に局注し,スネアで病変を絞扼し高周波装置を用いて通電・切除する方法である”,“最近欧米からunder water EMRという概念が報告され,本邦でも試みられている.浸水下で病変を浮遊させ局注せずにスネアリングする手技であるが,当ガイドラインの定義からは“局注”しないので厳密に言えばEMRには該当しない”と記載されている 12.局注の有無で手技の名称を変えることは万国共通の概念ではなく,また言葉の使い方は時代や状況によっても変わりうることであり,さらに正当なプロセスを経て論文化され提唱されている概念に対して異なる呼称を使うのは提唱者に対して不遜と思われるため,本稿では局注していなくても“Underwater EMR”という名称を用いる.なおBinmoeller自身は,ポリープのみを切除することを目的とした手技が“polypectomy”であり,粘膜下層も含めて粘膜を十分に切除することを目的とした手技が“mucosal resection”に相応しく,本手技はEMRと呼ぶべきである,と言及している.確かに“-ectomy”は切除術を意味する接尾語でポリープのみを切除する際にpolypectomyと呼び,粘膜を十分に切除するための局注という工夫をした手技にEMRという名前をつけたことは合理的である.問題は目的か手段のどちらを意識して命名するかであり,目的を考えて手技の名称を定義するならば,局注をせずとも浸水下で粘膜を十分に切除できる本手技をEMRに分類することは理にかなった解釈と言える.

Figure 1 

近傍に4mm程度の0-Is病変を伴うS状結腸20mm強の表在隆起性病変(0-Ⅱa)に対するUnderwater EMRの実際.

a:通常内視鏡像.やや発赤調を呈する表在隆起性病変で,まだらに褪色調の領域を認める.軽度のひだ集中像を伴う病変である.

b:インジゴカルミン散布色素内視鏡像.褪色調の領域に色素の貯留があり,陥凹面と認識できる.口側にひだの集中像を認める.

c:狭帯域光併用拡大内視鏡像.表面微細構造は一部不明瞭化しており,血管も途切れ途切れであり,JNET Type 2Bと判断した.

d:クリスタルバイオレット染色併用拡大内視鏡像.陥凹面に辺縁不整な腺管開口部が密に増生しており,VI軽度と判断した.

e:Underwater EMRの実際.癌が疑われ,一括切除が望ましいと判断された.ひだ集中像から線維化を伴う可能性も予測されたが,局注をしないUnderwater EMRであればスネアでの一括切除が可能と判断した.腸管内の気体を吸引後,生理食塩水を注入して病変を浸漬させ,スネアで絞扼した.

f:切除後の粘膜欠損部.近傍に見られたIsポリープが粘膜欠損のすぐそばに見られ,粘膜欠損部周辺の粘膜には遺残を疑う病変を認めない.

電子動画 1

従来,内視鏡処置は視野を確保するために大量の気体を腸管内に送気し,腸管粘膜を十分に伸展させた上で行われてきた.粘膜を伸展させると,表在型の病変は粘膜と同じ高さとなり,そのままではスネアでの絞扼が滑りやすく,一括切除が困難であった.局注は,粘膜を隆起させ,表在型の病変でもスネアでの絞扼を容易にするとともに,筋層と病変の間にスペースを設けることで,穿孔のリスクを低減すると考えられてきた.しかし,局注は必ずしも急峻な隆起を形成せず,平坦な隆起ではかえってスネアが滑りやすく,分割切除になることもあった.より良い膨隆を形成するため数々の局注剤が開発され 3),13),14,また,より硬いスネアが開発されてきたのは,急峻で持続的な膨隆を形成し,それをしっかり押さえて絞扼するためである.逆に言えば,EMRにおいて局注で良好な膨隆を形成することが常に容易であるわけではなく,局注の成否が手技の成功に影響を与えることを示している.また,局注を行うことで粘膜を強く押し付ける必要があり,かえって穿孔のリスクにつながる可能性もある.実際,従来のEMRにおいても穿孔のリスクは一定頻度で存在していた.さらに,局注により注入された液体の流れを制御することは難しく,局注針の向きや深度によって思わぬ方向に広がることもあり,いつでも理想的な膨隆を形成するのは難しい.局注は技術的にも難易度が高い手技である.

UEMRでは,その難易度が高い局注手技を省略することで,手技全体の難易度のハードルを下げ,水中で粘膜がたわむようになることでスネアによる絞扼を容易にしている.さらに,内腔に水があることで超音波内視鏡(EUS)の観察時のように筋層が輪状に保たれるため,局注をしないことで危惧される筋層の絞扼,穿孔のリスクを低減できると考えられている.さらに,粘膜は水中で浮遊するような状態となるため,筋層との距離が保たれ,穿孔のリスクを低減でき,浸水下での冷却効果によっても筋層への熱の波及が低減できると期待されている.

また,スネアによる切除法は100%一括切除を保証できないため分割切除になる恐れがあるが,EMRでは局注後の分割切除時にやはりスネアが滑るため追加切除が時に難しく,スネアの先端やホットバイオプシー鉗子などによる焼灼などで熱変性させ遺残再発を低減させる工夫が行われてきた.これに対して,UEMRは局注を行わないため,追加切除の際も粘膜が水中で浮遊したようにたわみスネアによる絞扼が容易で,分割切除の完成度が高い.さらに,内視鏡治療後の遺残再発病変や非顆粒型の側方発育型腫瘍などの粘膜下層に線維化を伴う病変の場合,局注をすると病変の中央部で膨隆せず,そのままスネアで絞扼するとドーナツ状の切除になることがあった.しかしUEMRでは局注を行わないため,そのまま瘢痕部も含めたスネアによる切除が可能であるというメリットもある.

Ⅲ 文献検索と論文選択

われわれは,PubMedを用いて大腸腫瘍に対するUEMRに関する文献の検索を行った.使用したキーワードをMost Recent(“Underwater”[All Fields] AND (“empir musicol rev”[Journal] OR “emr”[All Fields])) OR (“Underwater”[All Fields] AND (“endoscopic mucosal resection”[MeSH Terms] OR (“endoscopic”[All Fields] AND “mucosal”[All Fields] AND “resection”[All Fields]) OR “endoscopic mucosal resection”[All Fields]))とし,2024年6月17日時点で英語で執筆された論文を抽出した.1名の研究者(YT)が検索式から273編のタイトルを抽出し,2名の研究者(KSおよびYY)がタイトルから大腸腫瘍に対するUEMRに関する論文を選定した.意見が相違した論文に関しては1名の研究者(YT)が最終的に採否を判断した.検索の結果,91編が大腸以外の他臓器の疾患に関する論文,28編が内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)に関する論文,6編がEMR以外の止血術などに関する論文,12編がnarrative review論文,15編がEditorial/Comments,1編がプロトコール論文であり,計153編を除外した.採用された120編のうち,1編は論文へのアクセスが不能であったため除外され,2編のガイドライン論文,22編のmeta-analysis,8編のランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT),12編の前向き観察研究,17編の後ろ向き比較研究,8編の後ろ向き単群研究,1編のケースシリーズ,および49編の症例報告を含む119編が評価対象となった(Figure 2).

Figure 2 

文献検索のフローチャート.

RCT:randomized controlled trial.

対象病変を10mm未満,10-20mm,20mm以上の大腸腫瘍,内視鏡治療後の遺残再発病変,および直腸の神経内分泌腫瘍とし,サブグループ解析も含めて,該当する対象病変の治療成績(組織学的完全切除割合,一括切除割合,遺残再発割合,治療時間など),および有害事象について記載された論文をそれぞれ抽出した.

Ⅳ 10mm未満の大腸腫瘍に対するUnderwater EMR

Meta-analysis4件(Table 1 15)~18,RCT2件 19),20,前向き観察研究1件 21,後ろ向き研究1件 22で10mm以下の大腸腫瘍に対するUEMRの治療成績が検討されていた(Figure 2).

Table 1 

10mm未満の大腸腫瘍に対するUnderwater EMRのメタアナライシス.

4件のMeta-analysis(Table 1)の中では,LiらによるとUEMRは断端陰性切除割合のオッズ比がCSPに比べて1.9[95%信頼区間(CI)0.21-20.]と,有意な差は認められなかった 15.また,TziatziosらによるCSP,ホットスネアポリペクトミー(hot snare polypectomy:HSP),コールドスネ アEMR(cold snare-EMR:CS-EMR),EMR,アルゴンプラズマ凝固療法(Argon Plasma Coagulation:APC),UEMRを比較したネットワークアナリシスでは,一括切除割合においてUEMRは4番目と報告されている 16.さらに,TanらによるとUEMRはEMRに比べて断端陰性切除割合,一括切除割合で有意差がないものの,出血が少ない可能性が示唆され,処置時間は有意に短いと報告されている 17

10mm未満の大腸腫瘍を対象としたRCTでは,UEMRとEMRの断端陰性切除割合が83.1%と87.3%,一括切除割合が94.4%と91.5%であり,UEMRのEMRに対する非劣性が示されている 19.また,術中出血は1.4%,術後出血は2.8%であり両群間に差はなく,穿孔も認められていない.さらに,10mm未満の大腸腫瘍に対するCSP,HSP,UEMRの遡及的検討では,切除標本における粘膜筋板と粘膜下層を含む割合は,CSPで57%と29%,HSPで92%と83%,UEMRで100%と100%で,切除されている粘膜下層の距離はそれぞれ52μm,623μm,1,119μmであり,UEMRでは粘膜下層まで切除されていることが報告されている 22

すなわち,10mm未満の大腸腫瘍を対象とする場合,UEMRはEMRに比べて治療成績,安全性において遜色がなく,粘膜下層切除まで含めた切除が可能と考えられる.ただし,一般的にCSPの出血リスクはEMRに比べて低いため 23合併症の観点からUEMRがCSPに代わる治療にはならないが,CSPの適応外となる癌を疑う病変に対しては,局注針を使用する必要がないUEMRは,手軽さでEMRに代わりうる治療となりうる.浸水下でCSPを行う浸水下コールドスネアポリペクトミー(Underwater CSP:UCSP)についてはまだ限られた報告しかなく今後のエビデンスの蓄積が待たれるが,数多く発見される10mm未満のすべての病変に対して病変を浸水させる手間を凌駕するUCSPのメリットが示されない限り,CSPに代わる標準的な治療とはならないだろう.通常のCSPで病変を絞扼できない場合などの限定的な活用が期待される.

Ⅴ 10-20mm大の大腸腫瘍に対するUnderwater EMR

Meta-analysis 7件(Table 2 16),24)~29,RCT3件 30)~32,前向き観察研究3件 33)~35,後ろ向き観察研究6件 36)~41で10-20mmの大腸腫瘍に対するUEMRの治療成績が検討されていた(Figure 2).

Table 2 

10-20mmの大腸腫瘍に対するUnderwater EMRのメタアナライシス.

7件のMeta-analysis(Table 2)において,WangらによるとUEMRは一括切除割合,内視鏡的完全切除割合がEMRよりも優れている 28,さらにde Souzaらによると断端陰性切除割合や再発割合についてもUEMRの方が優れている 24,という報告がある.一方で,Tziatzios Gら,Rotermundら,LiらによるUEMRとEMRの比較では,治療成績に大きな違いがないとする報告も見られる 16),25)~27.傾向としては,de SouzaらやWangらによる近年の報告では,meta-analysisでUEMRの優越性を示す報告が増えており 24),28,具体的にはLiらやYuanらによると断端陰性切除割合で73-90%,一括切除割合で約83%である 27),29

RCTの結果も,研究によって統計学的な有意差の有無が分かれる.10-20mmの大腸腫瘍を対象としたRCTでは,UEMRが断端陰性切除割合(74% vs 51%)および一括切除割合(96% vs 76%)でEMRと比べて統計学的に有意に優れており,処置時間には差がなく,術後出血も2.7%に認めたものの2群間に差がないとされている 31一方,10-40mmの大腸腫瘍を対象としたCRTのサブグループ解析では,再発割合がUEMRで2.6%,EMRで7.7%とUEMRで低いものの,統計学的に有意ではない 30.さらに,6mm以上の大腸腫瘍を対象としたCRTのサブグループ解析でも,一括切除割合がUEMRで85%,EMRで74%で有意差はなかった 32.また治療時間については,UEMRがEMRよりも有意に短い(2.9 min vs 5.6 min,p<0.0001)とも報告されており 32,この点に関しては議論の余地がある.他の前向き観察研究では,一括切除割合が50-92% 33)~35,と幅があり,プロペンシティスコアマッチング(Propensity Score Matching:PSM)を用いた後ろ向き研究では,一括切除割合がUEMRで97%,EMRで96%,切除時間がUEMRで6.1分,EMRで7.1分であり,有意な差は見られていない 38.また,PSMを用いた後ろ向き研究 36や,RCT 31で得られた標本を用いて切除深度を測定したpost hoc analysis 37では,UEMRとEMRでは切除深度に差は見られない,とされている.さらに,UCSPは10-20mmの大腸腫瘍においても一括切除割合が97.3%[36/37]と非常に良好な成績が報告されている 40

すなわち,10-20mm大の大腸腫瘍に対するUEMRは,従来の標準的な治療法であるEMRと比較して,断端陰性切除割合,一括切除割合,再発割合において優れている可能性があるが,明らかにUEMRが優れるというコンセンサスにはまだ至っていない.ただし,どの報告も少なくともUEMRが劣る成績は示されていないため,少なくともEMRと同等の手技と考えられる.さらに,UEMRでは局注針が不要であるため,送水機能が内視鏡に装備されている環境であれば,コスト的なメリットもある.

Ⅵ 20mm以上の大腸腫瘍に対するUnderwater EMR

Meta-analysis 10件(Table 3 17),24),26)~28),42)~46,RCT3件 47)~49,前向き観察研究1件 50,後ろ向き研究5件 22),38),39),51),52で20mm以上の大腸腫瘍に対するUEMRの治療成績が検討されていた.

Table 3 

20mm以上の大腸腫瘍に対するUnderwater EMRのメタアナライシス.

10件のMeta-analysis(Table 3)では,EMRとの比較が多く,対象によって一括切除割合の違い(UEMR:32-67%,EMR:20-45%)や有意差の有無の違いはあるが,概ねUEMRの方がEMRに比べて向上している.遺残再発割合に関して検討されたmeta-analysisは少ないが,TanらやChoiらはUEMRにより有意に低減していると報告している 17),45.さらに,LiらやGargらによるとUEMRでも55-64%と分割切除になる割合が高いにもかかわらず,遺残再発割合は2.6-5.9%と低い 27),43.さらにTanら,Wangら,Yamashinaらは処置時間についても,UEMRでは有意に短縮していると報告しており 17),28),46,有害事象は概ねEMRと遜色ない.

RCTにおいても,EMRに対するUEMRの再発割合の低下が強調されており 30),47,一括切除割合,および断端陰性切除割合の向上が認められる.また,分割切除になった際の切除切片数が少ない点もUEMRの特徴と言える 30),47),48.術中出血は3.9-23.5%に見られるが,内視鏡的に止血可能であり,術後出血は0-4.7%,穿孔は0-2.7%であり,EMRとの間に有意な差はない.

ネットワークアナリシスでESDと比較した報告では,一括切除割合は当然劣るものの有意な差ではなく,手技時間は有意に短縮されており,有害事象には差は見られなかった 17.20-30mmの病変を対象とした11例ずつのパイロット的なRCTでは断端陰性切除割合でUEMRが36%(95%CI,11-69%)に対しESDが100%(95%CI,72-100%)とUEMRが有意に劣っていたが,一括切除割合に関しては,UEMRが82%(95%CI,48-97%),ESDが100%(95%CI,72-100%)と有意な差が見られず,治療時間はUEMRが8分(±6分),ESDの48分(±29分)に比べて有意に短かった.また,再発はUEMRの8例中1例(13%)のみで,有意な差は見られなかった 49.後ろ向き研究でも,UEMRの一括切除割合が61%[95%CI,49-72%]に対してESDで99%[95%CI,93-100%]であり,再発は両群とも0%[95%CI,0-4.0%],処置時間はUEMRで6.7分(95%CI,5.3-8.1分),ESDで64.8分(95%CI,57.4-72.2分),とUEMRが有意に短かった.

すなわち,20mm以上の大腸腫瘍に対してUEMRは,従来のEMRに比べて一括切除割合の向上や分割切除時の切片数の少なさが示されており,より大きな病変を切除できる特徴が反映されている.ひいては遺残再発割合を低く抑えることができ,EMRに対して優越性を示せる対象である.一方,ESDが広く普及している日本では比較対象はESDであり,一括切除割合や断端陰性割合ではESDに劣る.しかし,20-30mm大の病変に対するこれらの差は臨床的な意義に乏しい可能性があり,遺残再発割合の差も縮まる.また,UEMRの有害事象の低さや処置時間の短さなどの利点を考慮すると,必ずしも一括切除にこだわらなくて良い条件(明らかに浸潤癌の可能性が低い病変など)や,内視鏡治療に伴うリスクを低減したい条件(高齢や併存疾患,ESDが極端に難しい部位など)によってはESDにとって代わりうる治療法と言える.

Ⅶ 内視鏡治療後の遺残再発病変に対するUnderwater EMR

後ろ向き研究2件 53),54で内視鏡治療後の遺残再発病変に対するUEMRの治療成績が検討され,また4件の症例報告が公表されていた 55)~58

最初に報告された単施設後ろ向き横断研究では,断端陰性切除割合がUEMRで47%,EMRで16%,一括切除割合がUEMRで39%,EMRで10%と,有意にUEMRの成績が向上していた.特に,内視鏡的完全切除割合がUEMRで89%,EMRで32%と高く,アルゴンプラズマ凝固療法など追加の焼灼術を要する割合がUEMRで11%,EMRで66%,再発割合はUEMRで10%,EMRで39%であった 53.またPSMを用いてESDと比較した後ろ向き研究では,一括切除割合はUEMRが73%,ESDが100%,断端陰性切除割合もUEMRが41%,ESDが81%であり,有意にESDが良好な成績であったが,切除時間はESDの70分に対してUEMRは4分と短く,さらにESDで10%の穿孔が見られたのに対してUEMRでは有害事象が認められず,両群ともに再発を認めなかった 54

すなわち,UEMRは従来のEMRでは十分な治療ができなかった遺残再発病変に対して,有意に良好な治療成績を示している.従来EMRで切除できないため選択されていたESDに比較すると,若干治療成績は劣るものの,UEMRは容易に短時間で切除できることが示されている.20-30mm大の大腸腫瘍と同様に,病変や症例の条件によっては,ESDに代わりうる治療法と言える.実際,大腸の憩室出血に対して実施された内視鏡的結紮術(Endoscopic band ligation:EBL)後の瘢痕部病変 55や大腸切除後の吻合部病変 56,さらにはEMRによる穿孔後の瘢痕部病変 57を切除したという症例,全層切除により切除された症例 58が報告されている.また同様に線維化を伴う瘢痕病変に関しては,潰瘍性大腸炎症例 59),60や点墨後の病変に対するUEMRによる切除例 61も報告されている.

Ⅷ 直腸神経内分泌腫瘍に対するUnderwater EMR

後ろ向き研究4件 62)~65で10mm未満の直腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)に対するUEMRの治療成績が検討されていた.

最初に報告された単群の後ろ向き研究では,UEMRによる一括切除割合が100%,断端陰性切除割合が86%であり,結紮装置併用下内視鏡的粘膜下層切除術(endoscopic submucosal resection with a ligation device:ESMR-L)やESDの既報と比較しても大きく遜色のない結果と考えられた 66)~68.またESMRLと直接比較した後ろ向き単施設研究では,一括切除,断端陰性切除割合はともに100%であり,手技時間が中央値(IQR)でUEMRが6分(5-8分),ESMRLが12分(9- 14分)と,有意に短く(p=0.002),コストもUEMRでUS$180を低減できると報告されている 65

さらにESDと比較した後ろ向き研究でも,一括切除は両者とも100%,断端陰性切除は両者とも96%であり,手技時間,入院期間,費用,術後の腹部症状はUEMRで有意に軽減でき,術後出血,穿孔,再発割合はほぼ同じと報告されている 63.他にもESDと比較して同様の傾向が見られた上,Cap-EMR,precut EMRの断端陰性切除割合と比べても治療成績は良好で,手技時間は短いと報告されている 64

すなわち,10mm未満の直腸NETに対してUEMRはESMRLと比較して遜色のない治療成績が期待でき,デバイス装着などに関わる治療時間の短縮やコストの低減が可能である.またESDと比較しても同様に,遜色のない治療成績が期待でき,治療時間の短縮,コスト低減,有害事象の軽減が見込まれる.しかし,いずれの研究も症例数の少ない後ろ向き研究であり,ESMR-Lのバンドによる結紮が断端陰性の確保において理論的に優れていること,また,希少疾患である直腸NETにおいて数分程度の手技時間短縮や2-3万円程度のコスト軽減のメリットが大きくない点を考慮すると,あえて新たな治療法を開発する臨床的な意義には疑問が残る.小さな直腸NETに対する治療は,近々終了予定のESDとESMR-Lを比較するBANDIT trialの結果によって標準治療が決定すると思われる 69

Ⅸ さまざまな病変に対するUnderwater EMR

UEMRの特徴である“局注をしない点”および“浸水下で操作する点”を利用し,特殊な状況におけるUEMRの有用性を示す前向き研究や症例報告が公表されている.

虫垂開口部を巻き込む27病変を対象とした前向き研究では,20mm未満の13症例で全例,20mm以上の14症例中10例で一括切除が可能であった 70.経過観察された21例中,10%で遺残が認められたが,追加内視鏡切除で対応可能であった.有害事象としてはポリペクトミー後症候群が7%で見られたのみであった.虫垂内に入り込んでいる部分を局注なしで浸水することで,内腔側に浮遊するように突出させ,スネアでの絞扼を容易にすると考えられる.さらに,虫垂内にまで伸展していた病変もUEMRで切除できた症例も報告されている 71),72.同様に,憩室内に入り込んだ病変もUEMRで切除できた症例が報告されている 73),74

肛門管に存在する扁平上皮内腫瘍に対するUEMRは,後ろ向き研究において外科切除に比べて手技の回数は多く,13%で完全な内視鏡的消失に至らなかった.しかし,完全に切除された12例の外科手術例のうち10例で新たに肛門上皮性腫瘍が認められており,低侵襲な内視鏡治療の優位性が示されている 75.肛門管の粘膜内癌に対してUEMRを実施した症例報告 76のほか,尖圭コンジローマ 77),78や歯状線上の病変 79,HIV感染例に発生した肛門管腫瘍のUEMRによる切除例も報告されている 80.肛門管は通常の送気では拡張しにくく,視野が確保しにくい狭い部位である.局注をすると膨隆によってさらに視野が確保しにくくなり,また,局注針で出血もしやすい.そのため,肛門管は水圧により最低限の視野を確保し,局注せずスネアで絞扼するUEMRの利点を活かせる部位と考えられる.同様に,括約筋が緩んで便失禁となり管腔が広がらない直腸の病変に対しても,UEMRで切除が可能であった症例も報告されている 81

小腸も管腔が狭く,局注をすれば視野が遮られるため,UEMRの有用性を示せる部位である.回腸末端を対象とした4例の症例が報告され 82)~85,Peutz-Jeghers syndromeの小腸ポリープに対するUEMRの症例も報告されている 86.小腸病変や回腸末端病変はまれであり,これら症例報告の意義は大きい.また,周囲を憩室に囲まれた病変も,十分なスペースが取れないためUEMRでの切除が適していたという症例報告も同様にUEMRの利点を示している 87.さらに,回盲弁上の病変は局注のメリットが少なく,ESDも脂肪が伴うため難しい部位であり,UEMRの利点がうまく活かせる部位として症例が報告されている 88),89

UEMRは一般的な上皮性腫瘍に限らず,大腸の血管腫 90や胃癌の大腸転移の診断 91,大腸鋸歯状病変に対する酢酸散布後観察に引き続いたUEMR 92),93,など,特殊な疾患に対しても多くの症例報告がされている.

Ⅹ さまざまな工夫を取り入れたUnderwater EMR

2012年にBinmoellerらがUEMRを報告して以来,従来のEMRとは大きく異なる手法をよりスムーズに導入し,治療成績を向上させるため,さまざまな工夫が次々と報告されている.

浸水操作時に水が溜まりにくい場合,もしくは,洗腸状態が不良な場合の浸水状態の視野確保のため,従来の水もしくは生理食塩水に代わってゲルを注入するGEL-immersion EMRが提唱されている 94.ゲル自体や注入するためのバイオシールドイリゲーターが必要であり,送水機能で容易に水が貯められるUEMRの簡便性を損なう可能性があるため,その効果についてはさらなる検討が必要である.ただし,水が溜めにくい状況や洗腸状態が不良な際に試みる救済的手段として有効である可能性がある.また,UEMRの浸水下での絞扼しやすさを保ちつつ,穿孔時の腸管内液の流出による腹膜炎のリスクを低減するために,浸水下での絞扼後に送気(CO2)して通電切除するmodified UEMRも提案されている 95.逆に,気体(CO2)下で絞扼して浸水して切除する方法も報告されている 96

スネアリングする際に深部断端を確保するために局注してUEMRを行う工夫 97や,EUSを行い粘膜下層浸潤の程度を評価した上でUEMRを行う提案 98,断端陰性切除を確実にするために周囲切開をした上でのUEMR 99),100,先端刺入法(Tip-in EMR)を併用したTip-in UEMR 101,絞扼動作を繰り返すことでより大きな標本を切除するPP-CUE technique 102),103,クリップを併用することでより切除断端を確保するUEMR 104),105,糸付きクリップを併用したUEMR 106,先端フード内に吸引して切除するCap assisted UEMR 107),108など,UEMRの有効性をさらに向上させる試みも多数報告されている.

また,UEMRの原法をさらに活用するコツとして,蠕動を活用した絞扼 109や,外付けデバイスを併用するアイデア 110),111なども報告されている.さらに,有茎性病変に対しても効果的であった症例 112も報告されており,日常診療に役立つ情報である.

Ⅺ 最後に

UEMRは従来のEMRと有害事象の発症割合に大きな違いがなく,より広範囲の粘膜切除が可能であり,従来のEMRと同等,もしくは病変によっては治療成績が向上する可能性がある.また,ESDと比較すると根治性は劣るものの,条件次第では実診療で使いやすい新たな治療法であると言える.どの手技にも習熟曲線が必ずあり,長年行われてきた従来の方法に比べ,新規の手技がより優れていると評価されるまでには一定の時間がかかる.習熟曲線のどの時点で評価するかによっても評価が異なるのは当然である.現時点では,EMRのすべてがUEMRに置き換わるとまでは言及する根拠には乏しいが,術者が得意な方法を選択する選択肢の一つに挙げるだけのエビデンスはすでに存在する.EMRで十分な経験を持つ術者でも,局注を省略することで技術的なハードルを下げた本手技は,有用な選択肢に挙げられるメリットを有する.また,経験の少ない術者にとってはEMRよりも短い習熟期間で治療成績が向上する可能性も秘めている.今後の普及に伴い,真価が問われることになるであろう.

謝 辞

総説を執筆するにあたり,内視鏡画像の収集を大阪国際がんセンター 消化管内科 谷泰弘先生にご協力いただきました.また,結果の解釈や推敲において,群馬大学消化器・肝臓内科の都丸翔太先生,佐藤圭吾先生,糸井祐貴先生,橋本悠先生,田中寛人先生,保坂浩子先生,栗林志行先生,浦岡俊夫先生のご助言をいただきました.ここに深く感謝いたします.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:竹内洋司(ツムラ,杏林製薬,ボストン・サイエンティフィック・ジャパン,ヴィアトリス製薬,大塚製薬,オリンパス,ゼリア新薬工業,第一三共,EAファーマ,大塚製薬工場,富士製薬工業,武田薬品工業,アストラゼネカ,八光,富士フイルム,アンブ)

補足資料

電子動画 1 近傍に4mm程度の0-Is病変を伴うS状結腸20mm強の表在隆起性病変(0-Ⅱa)に対するUnderwater EMRの実際.

通常観察及び画像強調観察で癌の可能性も考えられたが20mm程度の大きさでありUnderwater EMR(UEMR)での一括切除が可能と判断し,UEMRを選択した.

腸管内の空気を吸引した後,生理食塩水を注入して病変を浸漬させ,局注なしにスネアで絞扼した後,通電して切除した.近傍に存在したIsポリープが粘膜欠損近くに認められたが,遺残を疑う所見はなく,内視鏡的に完全切除できたと判断した.

文 献
 
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