Underwater EMR(UEMR)は2012年にBinmoellerらによって初めて提唱された新しい内視鏡的粘膜切除法である.今回,検索した大腸腫瘍に対するUEMRに関する英文論文119編に基づくと,10mm未満の病変に対しては従来のEMRと遜色ない治療成績が示されており,10-20mm大の病変に対してはEMRより有用性が高いという報告も見られた.特に20mm以上の病変では,その傾向がより顕著である.ESDは一括切除割合で明らかに優れているが,症例の条件によってはESDの代替となりうる.内視鏡治療後の遺残再発病変に対しては,EMRよりも良好な治療成績を示し,ESDとも比較可能である.また,直腸神経内分泌腫瘍に対してもESDより簡便で期待できるが,結紮装置併用下内視鏡的粘膜下層切除術を上回る効果は不明である.
現状では,UEMRは完全に従来の治療法に置き換わるとは言い難いが,選択肢の一つとして考慮される治療法である.今後,その真価が問われることになるであろう.
症例は71歳,男性.16年前に早期胃癌をESDで治癒切除し,Helicobacter pylori(以下H. pylori)除菌も行われた.定期検査のEGDで胃体下部のESD後瘢痕のやや口側に発赤陥凹病変を認め,分化型粘膜内癌と術前診断しESDを施行したところ,病理組織学的に高分化型粘膜内癌に加え,直下の粘膜下層に異所性胃腺が存在した.異所性胃腺は異型の乏しい部位が多く,全体が腫瘍とはみなし難いが,一部にfocal cancer(tub1)を生じていた.免疫組織学的には粘膜内癌が腸型の粘液形質を,異所性胃腺は癌部を含め胃型粘液形質を有し,2つの癌は別個に発生した可能性が考えられた.粘膜内癌と粘膜下異所性胃腺由来癌がESD切除標本に併存した報告はなく,供覧すべき症例と考えられたので報告する.
症例は79歳男性.吐血,出血性ショックにて受診.緊急内視鏡で噴門部後壁と体上部小彎にA1stage潰瘍と露出血管を認め,止血鉗子で電気凝固止血術を行った.止血後に造影CT検査を行ったところ,門脈ガス血症と胃粘膜の浮腫を認めた.保存的加療で,門脈ガスは消失し,腸管にも壊死等を認めなかった.門脈ガス血症は様々な消化管疾患の徴候とされ,腸管壊死が原因の場合は予後不良とされる.本症例は深い胃潰瘍に対する電気凝固止血術中に,空気送気による胃内圧の上昇のため露出血管から空気が門脈に侵入し生じたと考えられた.稀に胃潰瘍止血術中に門脈ガス血症を生じうるため,肺や脳血管の空気塞栓リスクを回避するためCO2送気での止血術が推奨される.
症例は69歳男性.胃体上部癌に対し腹腔鏡下胃全摘術・Roux-en-Y再建が施行され退院したが,第27病日に吐下血を認め再入院となった.EGD・CSを行ったが出血源の同定は困難であった.再入院後10日目に再度大量の吐下血を認めたためY脚吻合部を経由し十二指腸断端まで観察を行ったところ,同部位に潰瘍を認め出血源と診断した.CTおよび血管造影検査では仮性動脈瘤形成は認めなかった.内視鏡下にポリグリコール酸シートおよびフィブリン糊による潰瘍底の被覆を再入院後23日目および30日目に施行したところ徐々に潰瘍の縮小が観察され,再入院後40日目に退院した.
症例は76歳,女性.CS挿入困難のため,シングルバルーンオーバーチューブを使用しESDを試みたが,S状結腸までしか挿入できず,ダブルバルーン内視鏡(double-balloon endoscope:DBE)を用いて上行結腸,横行結腸の3病変に対してESDを施行した.残存する肝彎曲部に30mm大の隆起性病変はDBEではスコープ操作性が極めて不良で,視野確保が困難でありESDを断念した.パワースパイラル内視鏡(power spiral endoscope:PSE)を用いてESDを施行したところ,スコープ硬度の影響か,DBEと比較し,S状結腸の過伸展が抑制され,スコープ先端もステッキとならず病変部にアプローチ可能であった.処置中のスコープ操作性が改善し,偶発症なく病変を一括切除可能であった.最終病理診断はwell differentiated tubular adenocarcinoma(tub1) in adenoma,pTis,Ly0,V0,HM0,VM0であった.
ESDは早期胃癌に対する標準治療であり,技術的に成熟してきている.しかし,頻度は低いものの穿孔は主要な有害事象であり,致命的になり得る.マルチベンディングスコープは第2灣曲部のアップダウンアングルの調節により,剝離部位に近接できるだけでなく,ナイフと筋層を平行な角度に保つことで,粘膜下層剝離の安全性および剝離速度の向上に寄与する.2チャンネルスコープでもあり,切開と剝離の際の左右の鉗子チャンネルの使い分けや,吸引力を落とさずに処置を行える利点がある.本稿では,マルチベンディングスコープを用いた胃ESDの手技について解説する.
【目的】大腸内視鏡検査の抜去時間は腺腫検出割合(adenoma detection rate:ADR)と関連している.しかし,ADRと大腸挿入時間との関係は十分に明らかにされていない.個人の大腸内視鏡挿入・抜去時間の平均値を含めた,ADRに関与する内視鏡医関連因子を評価することを本研究の目的とした.
【方法】本観察研究では,病理データを含む日常診療の大腸内視鏡データベースを検討に用いた.ADRに関連する内視鏡医関連因子のオッズ比を,一般化線形混合モデルを用いて検討した.
【結果】研究期間中に実施された186,293件の大腸内視鏡検査のうち,4病院の189人の内視鏡医による47,705件の大腸内視鏡検査についてADRを解析した.全体のADRは38.3%(95%信頼区間[CI]:37.8~38.7)であった.平均盲腸挿入時間が5分未満の内視鏡医と比較して,平均盲腸挿入時間が5~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比は,それぞれ0.84(95%CI:0.71,0.99),0.68(95%CI:0.52,0.90),0.45(95%CI:0.25,0.78)であった.平均抜去時間が6分未満の内視鏡医と比較して,平均抜去時間が6~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比は,それぞれ1.38(95%CI:1.03,1.85),1.48(95%CI:1.09,2.02),1.68(95%CI:1.04,2.61)であった.内視鏡医の専門,性別,総検査数によるADRの有意差はみられなかった.
【結論】個人の平均大腸内視鏡挿入時間はADRと関連しており,抜去時間と同様に大腸内視鏡検査の質の指標と考えられる(UMIN000040690).
【背景】T1大腸癌に対する追加手術(additional surgery;AS)前の内視鏡的切除(endoscopic resection;ER)が腫瘍学的な見地からその後の転帰に悪影響を及ぼすかどうかは未だ不明である.本研究は,傾向スコアマッチング分析を用いて,T1大腸癌に対してER後にASで治療された患者群とはじめから手術(primary surgery;PS)を受けた患者群の全生存率を含む長期転帰を比較することを目的とした.
【方法】2009年から2016年の間に日本の27施設でERまたは外科的切除のいずれかで治療されたT1大腸癌患者6,105人を対象に,ER後にASを受けた患者をAS群に,はじめから手術を受けた患者をPS群としそれぞれ抽出した.その後,傾向スコアマッチング解析を用いて死亡率と再発について検討した.
【結果】傾向スコアマッチング後,2,438人の患者のうち1,219人が各群に割り当てられた.AS群とPS群の5年全生存率はそれぞれ97.1%と96.0%(ハザード比0.72,95%信頼区間0.49~1.08)であり,AS群の非劣性を示した.また,AS群では32人(2.6%),PS群では24人(2.0%)が再発したが,2群間に有意差はなかった(オッズ比1.34,95%信頼区間0.76~2.40,P=0.344).
【結語】T1大腸癌に対するAS前のERは,5年全生存率を含む患者の長期的な転帰に悪影響を及ぼさないことが示唆された.