【目的】大腸内視鏡検査の抜去時間は腺腫検出割合(adenoma detection rate:ADR)と関連している.しかし,ADRと大腸挿入時間との関係は十分に明らかにされていない.個人の大腸内視鏡挿入・抜去時間の平均値を含めた,ADRに関与する内視鏡医関連因子を評価することを本研究の目的とした.
【方法】本観察研究では,病理データを含む日常診療の大腸内視鏡データベースを検討に用いた.ADRに関連する内視鏡医関連因子のオッズ比を,一般化線形混合モデルを用いて検討した.
【結果】研究期間中に実施された186,293件の大腸内視鏡検査のうち,4病院の189人の内視鏡医による47,705件の大腸内視鏡検査についてADRを解析した.全体のADRは38.3%(95%信頼区間[CI]:37.8~38.7)であった.平均盲腸挿入時間が5分未満の内視鏡医と比較して,平均盲腸挿入時間が5~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比は,それぞれ0.84(95%CI:0.71,0.99),0.68(95%CI:0.52,0.90),0.45(95%CI:0.25,0.78)であった.平均抜去時間が6分未満の内視鏡医と比較して,平均抜去時間が6~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比は,それぞれ1.38(95%CI:1.03,1.85),1.48(95%CI:1.09,2.02),1.68(95%CI:1.04,2.61)であった.内視鏡医の専門,性別,総検査数によるADRの有意差はみられなかった.
【結論】個人の平均大腸内視鏡挿入時間はADRと関連しており,抜去時間と同様に大腸内視鏡検査の質の指標と考えられる(UMIN000040690).