日本消化器内視鏡学会雑誌
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経験
クリニックにおける直視ラジアル型EUSの6年間の使用経験
川嶌 洋平 川口 義明
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2025 年 67 巻 4 号 p. 311-318

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要旨

膵癌の早期発見が困難な状況が続いており,それに有用とされているEUSも普及には至っていない.当院では開院時より直視ラジアル型EUSを導入し,クリニックにおける膵臓診療の裾野を広げる取り組みを行ってきた.1cm以下の早期膵癌の診断は叶わなかったが,多数の膵癌の診断に至った.また同時に行う通常観察でも0.47%の割合で胃癌診断に至っている.直視ラジアル型EUSは,膵臓精査と合わせて消化管も同時に精査が可能であり,クリニックにおいても施行可能な有用なmodalityと考えられたため,その使用実績を報告する.

Abstract

Early diagnosis of pancreatic cancer remains a significant challenge, and while EUS is recognized as a valuable tool for this purpose, it has not yet gained widespread adoption. Since the establishment of our clinic, we have incorporated direct forward viewing radial-type EUS to enhance the scope of pancreatic examinations, which has led to the identification of numerous pancreatic cancer cases. However, this technique was not successful in diagnosing early stage pancreatic cancer with lesions smaller than 1 cm. Additionally, gastric cancer was detected through routine observation in approximately 0.47% of cases. We believe that direct forward viewing radial-type EUS is an effective tool for clinics to simultaneously screen for both gastric and pancreatic cancers, and in this report, we share our 6-year experience with its use.

Ⅰ 背景と目的

超音波内視鏡検査(EUS)の優れた空間分解能は,他のモダリティよりも微小病変の評価に優れており,1cm以下の膵癌早期発見に有用であると言われている 1),2.しかし,EUSはスコープ径が太い,保険点数が低い,術者による検査の質に差があるといった理由から十分に普及しておらず,膵癌早期発見にEUSが十分使用されていないのが現状である.

直視ラジアル型EUSは,通常の内視鏡観察とEUSの両者を同時に行うことを可能としたスコープで,直視型のため穿孔といった偶発症も前方斜視鏡を主とする他のEUSスコープよりも起こしにくい安全なスコープである 3

昨今,地方自治体を中心に対策型胃癌検診は着実な成果を上げている.対策型胃癌検診の流れで膵癌検診を取り入れる方法としてこのスコープの可能性を考え,開院当初からクリニックに導入してきたので,その成績を報告する.

Ⅱ 対象と方法

本研究は,神奈川県医師会倫理審査特別委員会の承認を得て実施した(承認番号:2304).2017年7月1日から2023年3月31日までに当院で442名の患者に対して合計635件の超音波内視鏡検査を行い,それらの患者を対象とした後ろ向きの検討である.被験者は,腹痛,体重減少などの症状や腫瘍マーカー・膵酵素高値,超音波検査(US),コンピュータ断層撮影(CT)など画像検査で膵胆道疾患が疑われ超音波内視鏡検査が必要とされた患者であり,それと同時に上部消化管内視鏡検査を行った.また,人間ドックとして超音波内視鏡検査を希望された患者や膵囊胞などでフォローアップが必要なため複数回EUSを行った患者も含まれている.

すべての検査は,10年以上かつ1,000例以上のEUSの経験を有し,かつ日本消化器内視鏡学会が認定した専門医ならびに指導医の資格を持つ3名の医師により検査が行われた.検査時には,パルスオキシメーター,心電図モニター,血圧計を装着した後,基本的には末梢静脈路を確保した上でミダゾラム1〜3mgと塩酸ペチジン(35mg)0.5~1Aによる鎮静・鎮痛下で行った.必要に応じて経鼻酸素カニューレによる酸素投与も行った.観察手順は,まず始めに食道から胃内の通常光によるスクリーニング観察を行った後,胃内で膵体部から尾部の超音波内視鏡による観察を行った.その後,十二指腸球部から下行部の内視鏡通常観察を行った後,膵頭部や胆道系の超音波内視鏡による観察を行い検査終了とした.内視鏡観察で胃角部小彎の観察が困難な場合には仰臥位にするなど体位変換を行った.膵頭体移行部の見逃しを減らすために十二指腸ではpush法とpull法を併用して行い,膵尾部の観察が描出不良の場合には反転法を併用して観察を行った.検査終了後は,鎮痛剤・鎮静剤の拮抗剤を投与し30分~1時間程度経過観察を行った上で帰宅とした.

悪性腫瘍を疑った症例は,紹介先で内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA),もしくは手術による摘出検体から得られた病理学的診断を最終診断名としている.また,病理学的確定診断が得られない良性疾患に関しては超音波内視鏡所見や他モダリティ(CTやMRIなど)の画像所見から総合的に判断し最終診断名とした.

Ⅲ 超音波内視鏡

検査には,超音波観察装置SU-1ならびにラジアル走査超音波内視鏡EG-580UR[FUJIFILM Co., Tokyo, Japan]を使用した.Table 1に同類機器との比較を示した.EG-580URは汎用上部消化管内視鏡と同じ視野角・視野方向を有しており,他のEUSよりも食道や十二指腸などの観察に優れているが,先端スコープ外径は11.4mmと他のEUSと同様に太く,富士フイルム独自の画像強調検査であるBlue Laser Imaging やLinked Color Imagingは使用できない点がデメリットと言えるが,超音波内視鏡画像も含め解像度が高く,高精細な画像構築を可能としている(Figure 1).

Table 1 

スコープ比較.

Figure 1 

EG-580URと超音波内視鏡検査画像(通常観察と超音波観察).

膵体部癌の症例.高画質な画像により詳細な評価を可能としている.Bモードの他,Harmonic Imagingや超音波Elastgraphyを利用した評価も可能である.

Ⅳ 結  果

・患者背景(Table 2
Table 2 

患者背景と検査結果.

442症例中,男性217例(49.1%),女性225例(50.9%),平均年齢61.4±13.5歳であった.他院からの精査依頼の紹介患者が133例(30.1%),腹痛や体重減少などの有症状患者が281例(62.3%)含まれていた.

鎮静剤・鎮痛剤の使用率は93.7%であった.鎮静剤はミダゾラムを平均2.48mg(1-3),鎮痛剤は塩酸ペチジンを平均34.2mg(17.5-35)使用した.全検査時間の中央値は,8(4-24)分であった.

検査目的は,膵臓精査目的でEUSを施行した症例が383例と多く,その内訳は,検診などで指摘された膵囊胞精査目的が150例(33.9%)と最も多い.次いで症状や膵癌家族歴などによる膵臓精査目的138例(31.2%),膵充実性腫瘍精査目的29例(6.6%)の順に多かった.胃粘膜下腫瘍や十二指腸粘膜下腫瘍など胆膵疾患以外の目的でEUSを施行した症例も含まれていた.

・超音波内視鏡所見(Table 34

Table 3 

超音波内視鏡所見.

Table 4 

最終診断.

超音波内視鏡所見と最終診断の内訳をTable 3Table 4に示す.

超音波内視鏡所見では,膵囊胞が177例(40.0%),主膵管拡張59例(13.3%),膵点状高エコー50例(5.7%)の順に多かった.

最終診断としては,膵疾患では膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)が一番多く172例(38.9%),次いで早期慢性膵炎53例(12.0%),慢性膵炎50例(11.3%)の順で多かった.膵臓悪性腫瘍は膵癌が14例,膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine neoplasm:pNEN)が3例EUSによって指摘された.当初膵癌疑いとした3例はEUS-FNAまたは手術による組織学的検索によりpNENと診断された.10mm未満の早期膵癌の発見はなく,いずれの症例も手術あるいは化学療法が行われた.EUSでpNENの診断がなされた2例は手術,もう1例は診断後の経過が不明である.

Table 2より膵臓精査目的でEUSを施行した383例中,病院へ精査・加療目的で紹介した症例は17例であり,膵悪性腫瘍の拾い上げ率は,4.4%であった.

胆道疾患においては胆囊結石や胆囊腺筋腫症の症例が多く,胆道癌では胆囊癌が2例指摘され,いずれも外科手術が行われた.総胆管結石の指摘があった2例は,いずれも内視鏡的逆行性胆管膵管造影による結石除去術が行われた.

・上部消化管内視鏡所見(Table 5
Table 5 

上部消化管内視鏡所見.

EUSと並行して行った上部消化管内視鏡所見において胃癌が3例,十二指腸腺腫が1例指摘された.胃癌2例は外科手術,胃癌1例と十二指腸腺腫1例は内視鏡的切除が行われた.直視ラジアル型EUSによる胃癌検出率は0.47%(635検査中3例),十二指腸腺腫を含めた消化管腫瘍性病変の検出率は0.63%であった.

全体の上部消化管内視鏡所見としては,萎縮性胃炎149例(33.7%),バレット食道128例(29.0%),逆流性食道炎101例(22.9%)の順に多かった.

・有害事象

すべての患者において,内視鏡操作に伴う出血や消化管穿孔などの偶発症は認められなかった.また,鎮静剤・鎮痛剤使用に伴う血圧低下や呼吸抑制などの偶発症も認められなかった.

Ⅴ 症例1

83歳,男性.他院USで膵管拡張指摘.精査目的でEUSを施行した.通常観察で穹窿部後壁に0-Ⅱa病変を認め,生検の結果で低分化型腺癌が検出された(Figure 2).EUSでは悪性所見のないIPMNと診断.膵癌も認められなかった.胃癌治療目的で病院紹介とした.高齢でもあり内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)が先行されたが,粘膜下層浸潤が疑われたことから追加外科的切除が行われた.

Figure 2 

穹窿部後壁の0-Ⅱa病変.

Ⅵ 症例2

35歳,女性.検診で膵囊胞を指摘され受診,精査目的でEUSを施行した.EUSでは膵臓に囊胞病変は認められなかった.通常観察で十二指腸におけるスコープのストレッチ操作中に十二指腸水平部に20mm大の0-Ⅱa+Ⅱc病変が認められた(Figure 3).十二指腸腺腫が強く疑われ病院紹介しESDによって根治切除が得られた.

Figure 3 

十二指腸水平部の0-Ⅱa+Ⅱc病変.

Ⅶ 症例3

75歳,男性.糖尿病で他院治療中,血液検査でリパーゼ高値を指摘され当院紹介受診.EUSで膵体部に18mmの低エコー腫瘤(Figure 4)と尾側膵管拡張が指摘され病院へ紹介し,ERCPなどにより組織学的に膵癌の診断に至り,手術加療と術後化学療法が行われた(p StageⅡb).

Figure 4 

膵体部癌の症例.

Ⅷ 考  察

膵癌は最も予後不良な悪性腫瘍の一つとして知られ,2019年の部位別癌死亡数では,肺癌,大腸癌,胃癌に次いで第4位に位置し,増加傾向にある 4.日本膵臓学会のデータ 5では膵癌の5年生存率は13%,国立がん研究センターのデータ 4では膵癌の年相対生存率(2009~2011年診断例)は男性8.9%,女性8.1%であり,10%前後の生存率と極めて予後不良な現状である.

腫瘍径1cm以下の膵癌では5年生存率80.4%,11-20mmでは50.0%と低下,全体では13%というRetrospectiveな検討 5から,膵癌の場合は1cm以下で見つければ予後は改善し,早期発見と考えられている 2),6.膵癌の予後改善のためにはこの早期発見が最重要課題と言える.

EUSは他のモダリティと比較し空間分解能が非常に高く,膵臓を消化管ガスの影響を受けずに至近距離から詳細に評価できることから早期慢性膵炎の評価や1cm以下の微小膵癌の拾い上げに非常に有用と考えられている 3),7

EUSにはラジアル型とコンベックス型の2つの形式が存在する.ラジアル型は内視鏡軸と直行する面で360度の観察が可能である一方,コンベックス型は内視鏡軸と並行する面で180度の観察が可能である.膵臓を短軸像として描出するコンベックス型に対して,当院で採用したラジアル型は膵臓を長軸像として描出できることから,体外超音波像のイメージに類似しておりオリエンテーションが把握しやすいメリットがある.

また,当院で採用したラジアル型EUSの利点としては,超音波と同時に上部消化管の通常観察が容易である直視型という点にある.現在多くの施設で使用されているEUSのほとんどはEUS-FNAやInterventional EUSの施行が可能であるコンベックス型EUSである.この型は通常,前方斜視鏡であり,上部消化管をくまなく観察するには限界がある.当院では直視ラジアル型EUSを使用して胃癌3例,十二指腸腺腫1例をEUS施行時に発見することが可能であった.1例は十二指腸水平部病変,胃癌3例のうち1例は体中部大彎の小病変であり,前方斜視鏡では観察しにくい部位であった.このことから,多くの施設で使用されている前方斜視のEUSにおける胆膵疾患の精査を行う際には,0.47%の割合で胃癌が存在している可能性を念頭に,可能な範囲で通常観察を行うことが重要であると考えられる.

今回人間ドック目的17例,胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)18例,十二指腸SMT6例,その他7例の計48例を除いた394例(89.1%)の症例は,膵臓・胆道精査目的でEUSを行い,合わせて胃癌(消化管)検診を行ったものである.そのような患者背景で,胃癌が0.47%,十二指腸腺腫を含めた消化管腫瘍性病変が0.63%発見された.ハイボリュームセンターで行われるEUSは,膵臓・胆道精査目的で行われる場合がほとんどであると思われるが,この結果を踏まえると,可能な範囲で検査前後に消化管の観察を行うことが重要であると考えられた.しかしながら多くはコンベックス型EUSが用いられているため,食道や十二指腸の詳細な観察は困難であり,その点からは,直視ラジアル型EUSは,通常の内視鏡観察が容易に行えるので,有用なmodalityであると考えられた.

また上部消化管内視鏡所見としては,萎縮性胃炎が149例(33.7%)に認められており,萎縮性胃炎は胃癌の発生母地であることから,該当患者には1年後の上部内視鏡検査を推奨しており,胃癌の早期発見に寄与するものと考えている.

直視ラジアル型EUSの主な課題として,内視鏡の性能とEUSの保険点数が挙げられる.内視鏡の性能に関しては,まず超音波システムを搭載するためスコープ径が太くなり,内視鏡先端部径が11.4mmに達する.そのため,セデーションが必須となり,患者への負担が増加する.また,先端部が太く長いことにより,通常の内視鏡と比較してアップアングルの彎曲角度が劣るため,胃角部小彎などのアップアングル操作を要する部位の観察がやや困難となる.さらに,狭帯域光観察を可能とするBlue Laser Imaging(BLI)やLinked Color Imaging(LCI)が搭載されていないため,通常観察での病変の詳細な評価が難しい.保険点数に関しては,検査機器が非常に高価であるにもかかわらず,保険点数における超音波加算が300点と非常に低く設定されている.加えて,検査の際に使用する鎮痛剤(塩酸ペチジンとその拮抗剤)も保険適応外である.これらの要因により,EUSを導入している施設の多くが一部のハイボリュームセンターに限られているのが現状である.今後,スコープの細径化や保険点数の底上げといった課題が克服できれば,EUSはより広く普及する可能性がある.

現在尾道プロジェクト 8にならって,全国複数の地域において膵癌早期発見のため中核施設と連携施設が病診連携を図り,様々な取り組みが行われるようになった 9)~15.有症状や腫瘍マーカー・腹部超音波検査の異常(主膵管拡張,膵囊胞,膵腫瘍)を有した患者のみならず,膵癌危険群(膵癌家族歴や新規あるいは増悪した糖尿病患者など)を拾い上げ,中核病院でEUSや造影CT,MRIなどの精査や治療を行っていくことで一定の効果が得られているとの報告もなされている 9),10が,その効果には限界がある.

一方厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査」によると,国民の約7割が毎年健診やドックを受け,50~69歳の約半数が過去2年間に胃癌検診を受診していると報告しており 16,上部消化管内視鏡検査の普及率の高さが伺える.

今回,EUSに習熟した医師がクリニックレベルで胆膵疾患を対象に直視ラジアル型EUSを使用した膵臓と消化管の同時スクリーニングの有用性について検討した.残念ながら1cm以下の早期膵癌の診断は叶わなかったが,EUSを用いて膵臓悪性腫瘍17例(膵癌14例,NEN3例)の診断,胃癌3例・十二指腸腺腫1例といった治療を要する消化管腫瘍性病変の診断が可能であった.

Uchidaら 3は大学病院における直視ラジアル型EUSの使用成績を報告しているが,症例数は少数であり,本報告のような膵悪性腫瘍や消化管悪性腫瘍の報告もなく,成績の比較は困難であった.一方安全性に関しては相違ない結果と考えられ,EUSを施行する教育を受けた医師が行えば,高次機能病院で行うのと同じようにクリニックでも安全にEUS検査を行うことが可能であると考えられた.

クリニックで直視ラジアル型EUSを用いた診療を普及させることは現状では困難であるが,当院のようなクリニックが診療所と病院の間に存在することで,病診連携をスムーズにして,効率的な膵癌の拾い上げができるのではないかと考えており,直視ラジアル型EUSの細径化などさらなる進歩に期待したい.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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