2025 年 67 巻 5 号 p. 1048-1059
胃神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)は一般的に低悪性度の経過をたどり予後がよい腫瘍である一方,胃神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma:NEC)は,発生頻度が胃癌全体の0.2~0.6%と稀だが,急速な発育性質をもち,脈管侵襲陽性率・転移率の高い,高悪性度腫瘍である.そのため,進行した状態で発見されることが多く,確立された治療方法もないため予後不良の疾患である.また,胃NECは,先行する分化型腺癌の深部で発生するため,術前生検病理組織学的診断の正診率が低く,確定診断に時間を要することもある.このように,胃においてNETとNECは全く異なる性質の腫瘍であり,悪性度が非常に高い胃NECは胃NETまたは一般型胃癌とも厳密に区別しなければならない.しかし,これまで胃NET,胃NECの特定の病理組織学的診断に至る特徴的な内視鏡像についての報告は少ないのが現状である.本稿では代表的な内視鏡所見を提示しながら,胃NET,胃NECの内視鏡診断の要点について概説する.
Gastric neuroendocrine tumor (G-NET) is a tumor with low malignancy and good prognosis. Gastric neuroendocrine carcinoma (G-NEC), a rare subtype of gastric cancer (0.2-0.6% of all gastric cancers), is characterized by rapid growth, frequent lymphovascular invasion, and a high metastasis rate, with aggressive biological behavior. Most G-NEC cases are diagnosed at advanced stages with lymph node or distant metastases, and the prognosis of G-NEC is worse than that of common-type gastric adenocarcinomas. Thus, G-NETs and G-NECs have completely different characteristics and should be differentiated endoscopically. In white-light endoscopy, G-NET presented as elevated lesions, with “reddish color,” “dilated vessels,” “SMT-like marginal elevation,” and “central depression.” G-NEC showed as depressed or ulcerative lesions, with “SMT-like marginal elevation,” “adherent white coat,” and “ulceration with a distinct border.” On magnifying narrow-band imaging, “absent microsurface (MS) pattern plus irregular microvascular (MV) pattern” in the central depression and “absent MS pattern plus disrupted irregular MV” were characteristic findings of G-NET and G-NEC, respectively. These endoscopic features should be considered to increase the index of suspicion and correctly diagnose G-NETs and G-NECs through the pathological examination of biopsy specimens.
胃neuroendocrine neoplasm(NEN)は神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)と神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma:NEC)に大別される.両者は上部消化管内視鏡に携わる内視鏡医にとっても稀な疾患ではあるが,検診や内視鏡受診機会の増加,内視鏡診断技術の進歩とともに,年々,増加しており,特に胃NETは自己免疫性胃炎に合併することが多く,本邦の多施設共同研究では自己免疫性胃炎245例中28例(11.4%)に認められたと報告されており,今後日常で遭遇する機会が増えうる疾患である.
胃NENの内視鏡所見を理解するには,組織発生の異なる胃NETと胃NECを区別して考えることが重要である.まず,胃NETは胃底腺粘膜深部のenterochromaffin cellが腫瘍化した,細胞異型度が低い腫瘍である.一方,胃NECは分化型腺癌が先行的に発生し,粘膜深部や粘膜下層の内部に生じた高異型度の腫瘍性内分泌細胞が急速に発育・進展し大勢を占める機序が推定されており,早期より転移を来す予後不良の高悪性度癌である.そのため,一般型胃癌だけでなく,低分化腺癌よりも予後不良といわれている 1)~3).このように基本的に胃NETと胃NECは異なる腫瘍であることを理解した上でそれぞれの特徴的な内視鏡所見を把握すれば,より正確な内視鏡診断につながると考えられる.本稿では,当院で経験した症例も交えて,胃NETと胃NECに分けて内視鏡所見の要点について概説する.
胃NENは比較的稀な腫瘍とされるが,一般型胃癌が減っていく中で,近年では日本のみならず世界的にも胃NENの患者数の増加が報告されており,注目を集めている 4)~6).本邦での2016年の集計では,胃NENは人口10万人当り0.48人の発生数で,消化管NENの中では直腸の次に多く,その発生率は年齢と共に上昇すると報告されている 5).また直腸や十二指腸のNENは,低異型度のNET G1や限局した病変で発見されることが多いのに対して,胃NENは,高異型度のNECや転移がある状態で発見されることが多く 5),早期発見の重要性が示唆される.一方,本邦におけるNETの全国調査結果によると,消化管NETは2010年時点で2005年よりも増加しており,中でも胃NETを含めた前腸NETは2番目に多く,2010年時点での前腸NETの人口10万人当りの有病患者数と推定年間新規発症患者数はそれぞれ1.67人と1.20人となっている 7).胃NETが増加している理由の1つとして,内視鏡技術の進歩や検診などの内視鏡受検機会の増加が推定されているため,今後さらに胃NETの発見が増える可能性が考えられる.
(2)用語の説明とWHO分類以前,消化管の神経内分泌腫瘍には“カルチノイド”という名称が使われてきた.しかし,2010年 8)および2019年 9)のWHO分類より分化度と細胞増殖活性を加味し,高分化のNETと低分化のNECに大きく分類されている.NETならば,核分裂像とKi-67指数によってNET G1(low-grade),G2(intermediate-grade),G3(high-grade)と3つのグレードに分類し,NECならば,細胞・組織形態から大細胞型,小細胞型に亜分類されている.一方で,腺癌とNECが混在する腫瘍について,2010年WHO分類 8)では神経内分泌成分が70%以上のものをNEC,30~70%のものをMANEC(mixed adeno-neuroendocrine carcinoma),30%未満のものを腺癌と呼称していたが,外・内分泌成分が必ずしも癌でない腫瘍があるため,2019年WHO分類 9)では概念的分類としてMiNEN(mixed neuroendocrine-nonneuroendocrine neoplasm)という総称が用いられている.Table 1に最新のWHO分類における神経内分泌腫瘍の分類を提示する.なお,「胃癌取扱い規約 第15版」 10)では,神経内分泌成分の多寡を定義には用いず,内分泌細胞胞巣形成を示すものを内分泌細胞癌と称し特殊癌の1つとして示されており,腺癌との比率についてはそれほど重要視されていない.本稿では,WHO分類に準じて診断された胃NET,胃NECを対象にした内視鏡所見について解説する.

神経内分泌腫瘍WHO分類(2019年).
胃NETは,女性に多く,また,多発例が多く,好発部位はU/M領域とされている 11),12).一方で,Type 1 胃NETについての本邦の多施設共同研究 13)の報告では,欧米からの報告と比較して,①男性のほうが女性より多い,②自己免疫性疾患の合併が少ない,③貧血の合併が少ない,④ガストリンはやや高値,といった点が相違点として挙げられた.Type 1 胃NETの多くは,自己免疫性胃炎に合併するので女性に多く,また,近年は自己免疫性胃炎が多腺性自己免疫性疾患群(autoimmune polyendocrine syndrome)の1つに位置付けられ,甲状腺疾患をはじめとする自己免疫性疾患が合併しやすいとされる 14).本邦の多施設共同研究ではそのような特徴に乏しかったが,その原因には自己免疫性胃炎以外の自己免疫性疾患への意識が低いため検査がされていない可能性が考えられる.さらに自己免疫性胃炎以外の背景疾患が存在している可能性もあり,その最大のものはHelicobacter pylori(H. pylori)感染と考えられている 15).胃NETの病理組織学的所見は,小型で類円形の核と好酸性微細顆粒状の細胞質をもつ腫瘍細胞が,充実性,索状,ロゼット状など多彩な上皮様配列で増殖し,毛細血管に富む微細な間質を伴うのを特徴とし,クロモグラニンAやシナプトフィジンによる免疫染色が陽性となる 10).
(2)胃NETの臨床分類と発生機序Rindiら 16)~18)は,胃NETをその病因の違いにより,Type 1:萎縮性胃炎(自己免疫性胃炎およびH. pylori胃炎)に合併する胃NET,Type 2:多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)1型/Zollinger-Ellison症候群に合併する胃NET,Type 3:散発性胃NET,の3種類に分類し予後を含む臨床像との関連性を報告した.このような特徴は他の消化管NENとは大きく違う点である.Type 1,Type 2は高ガストリン血症による腫瘍増大作用が発育に関与し,小型・多発性で,予後がよいのに対し,Type 3は高ガストリン血症がなく,単発で大きく,予後が悪い.また,3つのタイプの中ではType 1 胃NETが最も頻度が高いとされる(Table 2).以下にそれぞれの発生機序について説明する.

胃NETの臨床分類.
Type 1は胃底腺に対する自己抗体(抗胃壁細胞抗体,抗内因子抗体)により胃底腺が破壊される自己免疫性胃炎を背景とする.胃底腺領域の壁細胞が破壊された結果,酸分泌が著しく低下し,フィードバック機序により幽門腺領域のG細胞からガストリンが過剰に分泌される.そのガストリンの刺激により胃底腺領域で酸分泌調整を行っているECL細胞(enterochromaffin-like cell)が過形成性変化を来し,さらに内分泌細胞胞巣(endocrine cell nest:ECN)が形成され,これが腫瘍化してNETが発生すると考えられている 19).そのためType 1のNETは胃底腺領域に多発し,腫瘍径は小さなものが多い.本邦で頻度が高いH. pylori感染による慢性萎縮性胃炎では,自己免疫性胃炎と異なり幽門腺領域の萎縮も伴っており,幽門腺領域から分泌されるガストリンの上昇は軽度にとどまる.そのためNETは発生しにくいと考えられ,Type 1は自己免疫性胃炎に伴うものと定義されていた.しかし最近では,H. pylori胃炎でも同様の機序でNETが発生したという報告が散見されている 15),20).その他,胃壁細胞機能不全により胃体部の萎縮はないが高ガストリン血症を伴う胃NETの報告もあり,機序的にはType 1に含まれるものと考えられる 21),22).
Type 2はMEN Ⅰ型およびZollinger-Ellison症候群に合併するもので,ガストリン産生腫瘍により,血清ガストリンの著明な上昇を来し,Type 1と同様の機序で胃内にNETが発生する.
一方,Type 3はガストリンが関与せずに孤発性に腫瘍が発生し,通常は単発で比較的大きなものが多い.胃底腺領域だけでなく,幽門腺領域にも発生する.
(3)胃NETの内視鏡診断胃NETの典型例は表面が平滑な粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)様の隆起性病変であり,色調は正常~やや黄色調で,表面に拡張した血管を伴う(Figure 1-a).また,大きくなるにつれて,頂部に陥凹やびらんを認めるようになると報告 23)~25)されているが,実臨床では,発赤調で,小さな病変でも中心陥凹やびらんなどの上皮性変化を伴った病変が多く見られる(Figure 1-d~f).Rindiらの臨床分類に基づいて内視鏡所見を比較検討した報告 26),27)があり,Type 1 胃NETでは発赤隆起したものが多い傾向があった.また,自己免疫性胃炎に発生した胃NETの報告 28),29)では,窩間部の開大した発赤隆起性病変が,別のType 1 胃NETの報告 30)~33)からは,発赤調,中心陥凹,びらんなどが内視鏡所見として挙げられている.このように,胃NETは直腸NET 34)と異なり,典型的な黄色調~正色調なSMT様隆起を呈することはそれほど多くはなく,何らかの上皮性変化を伴っていることが多い.その原因として胃NETの大半はType 1で,大部分が自己免疫性胃炎による高度に萎縮した胃底腺粘膜に発生するため,粘膜固有腺底部での腫瘍の増生が表層上皮に影響しやすいのではないかと推察される.すなわち,胃NETの内視鏡像は腫瘍の粘膜内での増生の程度や腫瘍上の腺窩上皮の厚みの違いなどによって,多彩な所見を呈する可能性がある.一方でType 3 胃NETのように背景胃粘膜に萎縮がないものは,腫瘍上の粘膜上皮に萎縮がなく厚く保たれているため,典型的なSMT様隆起性病変を呈しやすいのではないかと考えられる(Figure 1-a~c).

胃NET.
a:胃体上部後壁に10mmの粘膜下腫瘍様隆起を認め,拡張蛇行した血管を伴っている.
b:第2深層~3層浅層に主座をおく境界明瞭で内部エコー均一な低エコー腫瘤として描出.
c:腫瘍上の粘膜上皮は厚く残存している.
d:発赤した中心陥凹を伴った5mmの隆起性病変.
e:発赤した中心陥凹を伴った4mmの隆起性病変.
f:発赤した中心陥凹にびらんを伴った8mmの隆起性病変.
以下にType 1 胃NETの増大に伴う内視鏡像の変化を,自験例と過去の報告における大きさごとの所見の違いから考察した.Type 1 胃NETはやや平坦なSMT様隆起として胃体部に発生し,大きくなると半球状を呈する(Figure 2-a).腫瘍が粘膜表層に近づくにつれ,発赤調変化や窩間部の開大が認められ,groove typeの表面構造を呈するようになる(Figure 2-b) 35).さらに,腫瘍が表層上皮に近づくにつれ中心陥凹やびらんを認めるようになる(Figure 2-c,3-a).これらは表面に腫瘍の露出はないものの上皮直下の粘膜内に腫瘍があることを示唆する所見と考えられる 33),36),37).

Type 1 胃NET.
a:胃体中部大彎に4mmの正色調な粘膜下腫瘍様隆起を認める.
b:胃体上部大彎に5mmの窩間部の開大した発赤隆起性隆起を認める.
c:胃体上部に発赤した中心陥凹とびらんを伴った7mmの隆起性病変を認める.
d:bの手術切除検体病理像(HE染色).腫瘍は粘膜筋板内を,押し広げるようにして膨張性に増生している.
e:bの手術切除検体病理像(シナプトフィジン染色).腫瘍はシナプトフィジンに陽性で,腫瘍上の表層上皮は平坦化しているが残存していた.
f:cの手術切除検体病理像(HE染色).腫瘍は表層に露出しておらず,平坦な上皮に覆われている.

Type 1 胃NET.
a:胃体中部に7mmの,発赤中心陥凹を伴った隆起性病変を認める.
b:NBI拡大観察では,微小表面構造は消失し,微小血管構造は細く密なループ形成した血管が不規則な分岐をして分布している.
c:内視鏡切除検体病理像(HE染色).腫瘍は主に粘膜内で増殖しており,腫瘍の圧排により表層上皮は平坦・菲薄化している.そのため,腫瘍上に非腫瘍である正常腺管はほとんど残存していない.
Narrow band imaging(NBI)拡大観察では,SMT様隆起性病変は周囲粘膜と同様の所見を腫瘍表面に認めるのみであるが,発赤した中心陥凹部では微小表面構造は消失し,微小血管構造は細く密なループを形成した血管が不規則に分布している(Figure 3-b) 31)~33),35),38),39).福永ら 32)は血管の免疫染色により腫瘍最表層に密に分布する拡張血管を同定し,それらは既存の非腫瘍血管が腫瘍により表層側に圧排されて形成されたと推論している.すなわち胃NETの陥凹内に見られる不整な微小血管は,粘膜内の腫瘍による下方からの圧排によって拡張・蛇行した上皮下毛細血管網(subepithelial capillary network:SECN)を,菲薄化した上皮を通して観察していると考えられる.また,陥凹部の表面を覆う上皮は平坦・菲薄化しているため非腫瘍腺管はほとんど残存しておらず(Figure 2-f,3-c),また胃NET自体が病理組織学的に充実胞巣状,索状,リボン状といった構造を呈し,腺管構造をつくらないため,陥凹部では表面構造が消失して見えるのではないかと考察される.
超音波内視鏡(EUS)所見は,初期の小さなものでは,第2,3層内の均一な低エコー腫瘤として描出され,境界は明瞭である(Figure 1-b).表在型病変ではGIST(gastrointestinal stromal tumor)で観察されるような第4層との連続性は認めない.
(4)胃NETの術前生検の正診率前述したように,胃NETはSMT様の形態を示すが,粘膜深層由来の上皮性腫瘍で粘膜内にも病変を伴うことが多く,病理組織像も特徴的であるため内視鏡下生検による腫瘍の診断能は高い 30),35).しかしKi‒67 指数は腫瘍の中でばらつきがあるため,病変の一部のみを採取した生検検体では,病変全体の増殖活性の十分な評価は困難であることに注意が必要である.
胃NECは稀な疾患で,その頻度は全胃癌の0.2~0.6%とされている 40),41).胃NECは男性に多く,悪性度が高く増殖能が高いため,腫瘍径が大きい進行した状態で発見されることが多いとされており,単発例が多い 11),42).日比ら 42)は発見時の76%が進行癌であったと報告している.自験例もすべて単発で,胃NETと比べて腫瘍径は有意に大きく67%(10/15例)が進行癌で見つかっており,残りの早期癌はすべて粘膜下層浸潤癌であった 43).胃NECの好発部位は,通常型腺癌と同様にL領域とする報告 40)とM領域とする報告 44)があり一定していない.胃NECの病理学的特徴としては,内分泌細胞への分化が明らかな高異型度の腫瘍細胞が,充実性,索状,ロゼット状などの構造をとる癌で,充実型低分化腺癌と同様に癌巣内の間質量は乏しく,癌の発育先端部と周囲組織との境界は明瞭で,簇出型の浸潤像を呈することはほとんどない 10),45).また,胃NECの構成細胞は内分泌細胞への成熟した分化傾向を示す一方で,脱分化状態として極めて高い細胞増殖能をもつ点も特徴である46).
(2)胃NECの発生機序胃NECは,多くが分化型腺癌からの脱分化により発生するという説が有力視されている 47).そのため初期には分化型腺癌の肉眼像を示すが,増殖能の極めて高いNECが粘膜下層を主座として増殖するにつれてSMT様の所見を呈し,さらに増量すると中心部がびらんや潰瘍を形成し,SMT様辺縁隆起を伴った限局潰瘍型進行癌の肉眼形態を呈するようになると考えられる 46),47).日比ら 42)はNECの73%が腺癌を合併し,その86%で腺癌からNECへの組織移行像が確認されたと報告している.また,自験例でも73%(11/15例)に腺癌成分を伴っており,その過程を示す所見が認められた.また,純粋にNEC成分のみから成る腫瘍についても,NECの増殖に伴い腺癌部分が脱落しNECに置き換わり,最終的に腺癌成分がNEC成分に駆逐された可能性が高いと推察されている.
(3)胃NECの内視鏡診断文献的に肉眼型は,表在癌では0-Ⅱc型や0-Ⅱa+Ⅱc型の陥凹性病変が多く(Figure 4-a) 40),44),48),進行癌では2型が最も多く(Figure 5-a),次いで3型,また壊死や出血を伴いやすいと報告されている 25),40),49).また,早期よりSMT様の辺縁隆起をもつことが特徴的である 35).

胃NEC(早期癌).
a:胃前庭部小彎前壁に8mmの不整形の陥凹性病変を認め,粘膜下腫瘍様辺縁隆起を伴っている.陥凹部は部分的に固着する白苔に覆われている.
b:NBI拡大観察では,陥凹内に,蛇行が乏しくnetworkを形成しない,それぞれが孤立した不整な微小血管を認める.腺窩辺縁上皮は視認されない.
c:内視鏡切除検体病理像(HE染色).病変は充実胞巣状の腫瘍で,表層に露出している.大部分が粘膜内病変であったが,一部,SM 300μmまでの浸潤を認め,リンパ管侵襲が陽性であった.

胃NEC(進行癌).
a:噴門直下前壁に粘膜下腫瘍様の周堤隆起をもつ潰瘍性病変を認める.潰瘍部には固着する白苔を認め,潰瘍辺縁は周囲の正常粘膜と明瞭な境界を形成していた.
b:手術切除検体病理像(HE染色).大型で細胞質の豊富な細胞が充実性胞巣を形成し,腫瘍は漿膜まで浸潤している.静脈侵襲を認めた.
当院で2005年から2022年に内視鏡切除または外科切除を行った胃NEC15病変を対象に,胃NECに特徴的な内視鏡所見を検討したので,その内容を以下に紹介する 43).15例全例が陥凹型病変,または潰瘍を伴っていた.肉眼型は,表在型は8例,進行型7例であったが,表在型8例のうち3例は組織学的には進行癌であり,表在型の肉眼型でも進行癌のことが稀ではない(Figure 6-a).このうち2例は,術前は早期癌と診断しており,内視鏡的粘膜下層剝離術を施行したが,その後の追加外科切除で腫瘍細胞が静脈侵襲を介して固有筋層~漿膜下組織にかけて遺残しており,進行癌と判明した.白色光観察での特徴として,前述した“SMT様辺縁隆起(87%,13/15例)”に加え,“固着する白苔(67%,10/15例)”“境界明瞭な潰瘍(67%,13/15例)”の所見が多く見られ,間質成分に乏しい髄様の腫瘍が活発な増殖によって壊死を起こす 40)ことでこのような所見が生じるのではないかと推察される.NBI拡大像では,表在型病変の陥凹内や潰瘍性病変の潰瘍辺縁部の粘膜に見られる,表面構造がないまばらな不整血管の所見“absent microsurface(MS)pattern+disrupted irregular microvascular(MV)pattern”(Figure 4-b,6-b)が,NEC成分が表層に露出している部位と組織学的に対応しており,胃NECに特徴的な拡大NBI所見と考えられた.田中ら 48)は粘膜層にNECがある部分は,表面構造が不明瞭化して血管密度が疎となり未分化型癌類似の所見を呈していたこと,Takahashiら 50)はNEC成分がabsent MS pattern+scattered small microvesselsに対応していたことを報告しており,これらの拡大NBI所見は自験例の“absent MS pattern+disrupted irregular MV pattern”に相当すると考えられる.胃NECがNBI拡大観察で腺窩辺縁上皮が視認されずabsent MSとなるのは,腫瘍が腺管構造でなく主に充実性の癌胞巣を形成するためと考えられる.また胃NECのdisrupted irregular MV patternは,networkを形成せずそれぞれが孤立している点で分化型腺癌と異なり,また蛇行が少なくまばらな血管の分布・配列は未分化型線癌のcorkscrew patternとも異なる点が特徴的である.NECの充実性の癌胞巣を区画する薄い間質を走行する血管がこのように見えているのではないかと推察される 43).よってNBI拡大観察でMV patternとMS patternを評価することで,NECの病理組織像の推測はある程度可能で,さらに上記の“固着する白苔”によりそれらが全く評価できないことも胃NECの間接的診断所見と考えられる 35).

胃NEC(進行癌).
a:胃体上部小彎に25mmの陥凹性病変を認める.陥凹部の大部分は固着する白苔に覆われている.
b:NBI拡大観察では,陥凹辺縁の白苔付着がない部分(aの黄枠部)では,表面構造がなく,まばらな蛇行が乏しい不整血管を認める.
c:手術切除検体病理像(HE染色).腫瘍はN/C比の高い小型の異型細胞が胞巣~索状に増殖し,固有筋層深部まで及んでいる.高度のリンパ管侵襲を認めた.
胃NECは術前の正診率が低く(11-27%) 51),52),免疫組織化学染色を比較的よく行う当院においても胃NETと比較して低い結果であった(73% vs 95%) 35).これは,①NECに特徴的な小細胞型のN/C比の高い腫瘍細胞が充実性,索状,シート状に配列するといった組織像がとらえられずに一般型の充実型低分化腺癌(por1)と診断される,②腺管形成成分の混在により一般型腺癌と診断される,または,③NEC成分が非腫瘍粘膜や固着する白苔に覆われているためサンプリングエラーが生じうる,ことが理由と考えられている 43).そのため内視鏡所見でNECを疑う場合は,陥凹内の壊死の少ない部分,すなわち陥凹(潰瘍)辺縁部の白苔のない部位,特に前述した特徴的なNBI拡大所見を示す部位から生検し,病理検査依頼用紙にNECを疑う旨を記載することが肝要である.高野 53)はpor1と診断された症例の35%に免疫組織化学染色を実施してNECが認められたと報告し,免疫組織化学染色の必要性を述べている.NECとpor1は癌細胞が充実性胞巣を形成し,癌巣内間質量が乏しい点で類似しているため 45),術前生検での診断が困難と考えられる.自験例 43)でも胃NEC15例中で免疫組織化学染色が行われていた11例(73%)はすべてが術前にNECと診断可能であったが,そのうち4例はHE染色でpor1と診断されていたのが追加の免疫組織化学染色でNECと診断できていた.以上のことから,充実型低分化腺癌様の成分が認められた場合に積極的に免疫組織化学染色を行うためにも,胃NECの内視鏡的特徴を理解し,「胃NECを疑う」という臨床所見を依頼用紙に記載しておくことは重要と考える.
胃NETと胃NECはそれぞれに特徴的な発生部位と発育様式,そして組織像を反映する内視鏡所見を示すため,白色光観察だけでなく,NBI拡大観察のMS patternとMV patternにより診断がある程度可能である.特に胃NECは術前生検の正診率が低いが,白色光所見で胃NECを疑う場合には,NBI拡大観察を併用して適切な部位から生検組織を採取し,積極的に免疫組織化学染色を行うことで治療前の正診率を向上しうると考えられる.一方,胃NETは腫瘍の進展様式や背景の萎縮性胃粘膜により,SMT様隆起または陥凹のある発赤隆起といった異なる内視鏡所見を示すことがある.胃NETに特徴的な内視鏡所見を理解し,臨床所見を見逃がすことなく,同時に背景粘膜の観察から自己免疫性胃炎の所見の有無を評価することが,胃NETの内視鏡診断の向上につながると考えられる.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし