日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
瘻孔拡張後に十二指腸内視鏡を用いて経胃瘻的ERCPを施行した1例
本田 秀穂 佐藤 雄高伏見 絵里奈仲谷 朋久後藤 康彦香川 浩一村上 和成
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2025 年 67 巻 5 号 p. 1076-1082

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要旨

症例は28歳,男性.筋萎縮性側索硬化症で気管切開後,胃瘻造設状態(24Fr)であった.画像上は総胆管結石を指摘できなかったが,胆管炎を繰り返すためERCPの方針とした.十二指腸内視鏡は経口から挿入困難であったため,胆囊結石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.その後も胆管炎を繰り返すため,胃瘻から細径内視鏡を挿入し5Fr胆管ステントを留置した.定期的にステント交換を行っていたが,胆管ステントの迷入による胆管炎を発症した.胃瘻の拡張後に十二指腸内視鏡を挿入し胆管ステントの抜去,内視鏡的乳頭括約筋切開術,結石除去を施行した.合併症はなく,胆管炎の再発も認めなかった.

Abstract

The patient was a 28-year-old man who underwent 24Fr gastrostomy and tracheostomy for amyotrophic lateral sclerosis and was hospitalized for acute cholangitis. Although CT and magnetic resonance cholangiopancreatography showed no bile duct stones, recurrent episodes persisted. Insertion of the therapeutic duodenoscope into the esophagus was unsuccessful. To address the recurrent cholangitis after laparoscopic cholecystectomy for cholecystolithiasis, a 5Fr biliary stent was placed via gastrostomy using an ultrathin endoscope. Despite regular stent replacement, acute cholangitis due to migrated biliary stent recurred. We planned stomal dilation, which successfully allowed the insertion of the duodenoscope. After stent removal, sphincterotomy and removal of tiny bile stones were performed without any complications. The patient showed no recurrence after treatment.

Ⅰ 緒  言

胃瘻造設患者に対して内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行う際に,開口の協力が得られない場面や,咽頭や食道の通過障害で経口から内視鏡挿入が困難な場面に時折遭遇する.今回われわれは,経口ERCPが困難な患者に対して,胃瘻の拡張後に十二指腸内視鏡を用いて合併症なく経胃瘻的ERCPを施行した症例を経験したので報告する.

Ⅱ 症  例

患者:28歳,男性.

主訴:発熱.

既往歴:10歳頃に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断され,気管切開後,胃瘻造設後(24Fr).慢性心不全(左室駆出率 24%).2型糖尿病.

現病歴:2021年7月に急性胆管炎で入院となった.腹部超音波検査にて胆囊結石を認めた.CT,磁気共鳴胆管膵管撮影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP)で総胆管結石は指摘できずに保存的加療を行った.2022年1月に急性胆管炎,膵炎を発症した.ERCPの方針としたが,十二指腸内視鏡(JF-260V,Olympus)は食道入口部を通過しなかった.外径8.9mmの前方視鏡を経口で挿入し,十二指腸下行脚にガイドワイヤーを留置しモノレール式に十二指腸内視鏡の挿入を試みたが,食道入口部の通過は困難であった.また,前方視鏡では胆管挿管ができずERCPは断念した.保存的治療を行ったが胆管炎を繰り返すため,3月に胆囊結石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術中の胆管造影で明らかな結石は指摘できず,総胆管切開術は施行しなかった.術後も胆管炎を発症し,微小結石による胆管炎や乳頭括約筋機能不全を疑った.肝内胆管の拡張はなく,胆道ドレナージ目的に経胃瘻的ERCPを行った.鎮静剤は使用せず,仰臥位で外径5.4mmの細経内視鏡(GIF-XP290N,Olympus)を経胃瘻的に挿入した.十二指腸下行脚で反転させ.ERCPカテーテル(StarTipV PR-V235Q,Olympus)で胆管挿管し5Fr胆管ステント(PS-5F4WP,GADELIUS)を留置した.11月に外径8.9mmの前方視鏡で経胃瘻的ERCPを試みたが胆管挿管は困難で,前回と同様の方法で5Fr胆管ステントを入れ替えた.2023年5月にもステントの入れ替えを行ったが,7月に胆管炎を発症し入院となった.

入院時現症:意思疎通は困難.体温 35.1℃,血圧 103/64mmHg,脈拍88回/分整,眼球結膜に明らかな黄染を認めない.腹部は軟で圧痛の評価は困難であった.

入院時血液検査所見:WBC 6,600/μl,CRP 17.5mg/dlと炎症反応があり,T-Bil 1.8mg/dlとビリルビンの上昇を認めた.AST 84U/l,ALT 104U/l,ALP 234U/l,γ-GTP 157U/lと普段と比較し肝胆道系酵素の上昇を認めた.Albは2.8g/dlと低値であった.

入院後経過:軽症 1の急性胆管炎と診断した.腹部超音波検査で胆道気腫はなく,肝内胆管の拡張を認めなかった.絶食・中心静脈栄養・抗生剤投与にて胆管炎は軽快した.胆管炎の原因としてステント閉塞を疑った.内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を行うことで,ステント留置が不要になる可能性があり,家族にインフォームド・コンセントを行い,胃瘻を拡張し十二指腸内視鏡を用いてESTを行う方針とした.第4病日に胃瘻拡張術を施行した.瘻孔長は1.5cm程度で,消化管用バルーンダイレーター(EZDilate,Olympus)を瘻孔部に挿入し5.5気圧13mmまで拡張したがノッチは完全に消失せず(Figure 1),十二指腸内視鏡は挿入できなかった.第6病日に胃瘻造設キット(カンガルーセルジンガーPEGキット胃壁固定具付 Step1 造設準備キット,CardinalHealth)で瘻孔拡張を行った.鎮静剤や咽頭麻酔は使用せず仰臥位で行った.鼻腔から細経内視鏡(GIF-1200N,Olympus)を挿入し,内視鏡観察下に胃瘻からガイドワイヤーを挿入した.ユニコーン型ダイレーター(Figure 2)を慎重に挿入し,12mmの目盛よりも根元の方まで抵抗なく拡張した(Figure 3).ダイレーターとガイドワイヤーを抜去し,先端外径12.6mmの十二指腸内視鏡(JF-260V,Olympus)を瘻孔から愛護的に挿入した(Figure 4).細径内視鏡を鼻腔から抜去し,胃瘻から挿入した十二指腸内視鏡を内視鏡システムと接続した(Figure 5).その後十二指腸下行脚まで挿入しVater乳頭を正面視すると,ステントは視認できず胆管内に迷入していた.ERCPカテーテル(MTW,ABIS),ガイドワイヤー(0.025inch VisiGlide2,Olympus)を使用して胆管挿管を行った(Figure 6).胆管結石除去用バルーンカテーテル(エクストラクションバルーンカテーテルプラス,XEMEX)で迷入したステントを胆管外へ引き出し,把持鉗子で抜去した.胆管造影では明らかな陰影欠損は指摘できなかったが,予定通り乳頭括約筋切開用カテーテル(CleverCut3V,Olympus)でESTを施行した(Figure 7).バルーンカテーテルで微小結石を排石し処置を終了した.胆管炎や膵炎の原因は微小結石と診断した.処置後,瘻孔に明らかな異常は認めず(Figure 8),24Frの胃瘻(GB胃瘻バルーンチューブ,Fuji Systems)を留置した.ERCPに伴う合併症はなく,翌日から経腸栄養を再開した.栄養剤の逆流はなく経過し第14病日に紹介元へ転院した.その後は胆管炎の再発はなく経過している.

Figure 1 

内視鏡的バルーン拡張術の透視画像.拡張後もノッチ(矢印)は消失しなかった.

Figure 2 

ユニコーン型ダイレーターの全体像.目盛の最大値は12mm(矢印 左側),さらに根元の拡張径は約13.4mm(矢印 右側).

Figure 3 

上部消化管内視鏡検査.ユニコーン型ダイレーターで瘻孔を拡張した.

Figure 4 

上部消化管内視鏡検査.十二指腸内視鏡が瘻孔を通過し胃内に挿入された.

Figure 5 

胃内に挿入した際の内視鏡画像.挿入した内視鏡と胃の前庭部が視認できる.

Figure 6 

ERCPの透視画像.迷入したステント(矢印)および胆管深部に挿入したガイドワイヤーを認める.

Figure 7 

経胃瘻的ERCP.乳頭を正面視しESTを施行した.

Figure 8 

拡張後の胃瘻画像.出血や瘻孔の穿孔は認めない.

Ⅲ 考  察

胃瘻は嚥下障害を伴う脳梗塞や認知症,ALSなどの神経筋疾患や,咽頭や食道の通過障害などで経口摂取が困難な場合に経腸栄養を行う目的で造設される 2

胃瘻造設患者では,神経筋疾患による輪状咽頭筋の弛緩不全や喉頭筋群の萎縮などによって,食道入口部が狭窄していることがある 3.食道入口部は消化管壁穿孔の好発部位で,喉頭筋群の萎縮は穿孔の危険因子であるため 4,十二指腸内視鏡での盲目的な挿入時には注意が必要である.挿入時に強い抵抗を認めた際には,粗暴な操作は行わず経胃瘻的ERCPや経皮経肝胆道ドレナージ(Percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)を選択肢にいれることも必要である.

PTBDはERCP困難例の代替法であり,技術的・臨床的成功率はERCPに劣らない 5.経皮的な胆道ドレナージのほか,胆管ステント留置や抜去も可能である 6.基本的に胆管拡張のある症例に限られ,腹水貯留は禁忌とされている.ERCPと比較し膵炎の頻度は低いが,出血や外瘻チューブの逸脱,癌の播種,外瘻によるクオリティ・オブ・ライフ(QOL)低下などのリスクがある 5

経胃瘻的ERCPは1975年にSchapiraら 7が初めて報告し,胆管非拡張例でも施行でき,瘻孔閉鎖がない限り繰り返し処置が可能である.2023年までの期間で医学中央雑誌にてキーワード「胃瘻 ERCP」,PubMedにて「gastrostomy ERCP」で孫引きを含む検索を施行した(会議録は除く).外科的胃瘻造設直後に手術室で連続してERCPを行う腹腔鏡補助下経胃瘻的ERCPは除外し,自験例を含め32症例の報告がみられた(Table 1 7)~22.十二指腸内視鏡の使用は25例あり,拡張径の記載のない1例を除き全例で11.5mm以上まで拡張していた 7),9)~11),13),15),16),18),22.自験例を含めた2例でバルーン拡張が無効であった 13.細径内視鏡は拡張が不要だが,鉗子口径が小さく使える処置具が少ないという欠点がある.2.4mmの鉗子口を有する細径内視鏡が登場し,細径内視鏡でのESTが可能となったが 21,反転操作でのESTは容易ではなく,当院のようにEST可能な細径内視鏡が常備されていない施設もある.胃瘻を拡張し十二指腸内視鏡を挿入することで通常ERCPと同様の手技が可能となる.遠藤ら 16は内視鏡反転時の屈曲部分と先端までの直線距離に注目し,十二指腸内視鏡は前方視鏡と比較しその距離が短く経口ERCPと同様にゆとりある治療が可能となると報告している.経口ERCPは盲目的な挿入となる食道入口部で難渋することがあるが,瘻孔からの挿入は内視鏡観察下に施行でき,十二指腸内視鏡は胃内でたわみにくく十二指腸への挿入も比較的容易である.Roux-en-Y胃バイパス術後患者1,283人を対象としたメタ解析によると,十二指腸内視鏡を用いた経胃瘻的ERCPの技術的成功率は95.3%,臨床的成功率は93.8%であり,ERCP後膵炎が6.8%と 23,手技の成功率やERCPに伴う合併症は通常のERCPと比較し遜色ない結果であった.経胃瘻的ERCPは鎮静や咽頭麻酔を必要とせず,仰臥位での検査で懸念される誤嚥のリスクは軽減され 16),20,寝たきり患者や高齢者に対しても許容されると考える.

Table 1 

経胃瘻的ERCPの報告例.

ユニコーン型ダイレーターはバルーン拡張が無効な瘻孔にも有効であった.硬性ダイレーターはバルーンダイレーターと比較し,短軸方向だけでなく長軸方向にも拡張力が伝わりやすく硬い狭窄に対しても有効である 24.目盛は12mmまでであるが,根元の方まで挿入すると実際には13.4mm(周径42mm)相当(Figure 2)まで拡張が可能で,十二指腸内視鏡の挿入に適した瘻孔拡張が簡便な方法で施行できる.胃壁固定具と同封されていることも利点である.拡張やその後のERCPによって瘻孔部の穿孔などが合併症として報告されており 15,胃壁固定は穿刺時の出血や他臓器穿刺などの合併症があるものの,腹膜炎などの重篤な合併症を予防するために施行することが望ましい.自験例は安全にERCPを施行できたが,胃壁固定を考慮するべきであった.経胃瘻的ERCPは通常のERCPと同様に処置を完結しやすく,胆管ステントの定期交換と比較し患者負担や医療費の面でも利点があると思われる.瘻孔拡張術の方法や合併症に関しては今後も症例の蓄積および検討が必要である.

Ⅳ 結  語

経口でのERCPが困難な胃瘻造設患者に対して,瘻孔拡張後の十二指腸内視鏡を用いた経胃瘻的ERCPは有用であると考え報告した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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