【背景・目的】近年の内視鏡機器や診断技術の進歩にもかかわらず,潰瘍性大腸炎の炎症性粘膜の複雑な背景と病変の形態的多様性のため,潰瘍性大腸炎関連腫瘍(Ulcerative Colitis associated neoplasia:UCAN)の早期発見は依然として困難とされている.今回,われわれはわれわれの持つUCANのコホートを用いて,平坦型dysplasiaに特徴的な粘膜模様を明らかにすることを目的とした.
【方法】色素散布内視鏡にて詳細に観察された平坦型dysplasiaを有する61症例63病変を対象とした.平坦型dysplasiaの色素散布内視鏡像の特徴を明らかにするために色素散布内視鏡像をdysplasticな粘膜模様とnon-dysplasticな粘膜模様に大別し解析した.
【結果】dysplasticな粘膜模様は,円形から類円形に近い構造を呈する小円形パターン(small round pattern)と,網目状の構造が入り組んだ網目状パターン(mesh pattern)の2種類に分類された.non-dysplasticな粘膜模様は,さざ波状(ripple-like type)と脳回状(gyrus-like type)の2つのタイプに分類された.35病変(55.6%)がsmall round patternを呈しており,51病変(80.9%)が何らかのmesh patternを呈していた.small round patternを有する病変の約70%とmesh patternを有する病変の49%がHigh Grade Dysplasiaまたは癌と診断され,small round patternを有する病変の約30%とmesh patternを有する病変の51%がLow Grade dysplasiaと診断された.
【結論】色素散布内視鏡観察にてsmall round patternやmesh patternといった特徴的な粘膜変化パターンが認められた場合は,UCANの可能性を考慮する必要がある.
Objectives: Despite recent advances in endoscopic equipment and diagnostic techniques, early detection of ulcerative colitis-associated neoplasia (UCAN) remains difficult because of the complex background of the inflamed mucosa of ulcerative colitis and the morphologic diversity of the lesions. We aimed to describe the main diagnostic patterns for UCAN in our cohort, including lateral extension surrounding flat lesions.
Methods: Sixty-three lesions in 61 patients with flat-type dysplasia that were imaged with dye chromoendoscopy (DCE) were included in this analysis. These DCE images were analyzed to clarify the dye-chromoendoscopic imaging characteristics of flat dysplasia, and the lesions were broadly classified into dysplastic and nondysplastic mucosal patterns.
Results: Dysplastic mucosal patterns were classified into two types: small round patterns with round to roundish structures, and mesh patterns with intricate mesh-like structures. Lesions with a nondysplastic mucosal pattern were divided into two major types: a ripple-like type and a gyrus-like type. Of note, 35 lesions (55.6%) had a small round pattern, and 51 lesions (80.9%) had some type of mesh pattern. About 70% of lesions with small round patterns and 49% of lesions with mesh patterns were diagnosed as high-grade dysplasia or carcinoma, while about 30% of lesions with small round patterns and 51% of lesions with mesh patterns were diagnosed as low-grade dysplasia.
Conclusion: When a characteristic mucosal pattern, such as a small round or mesh pattern, is found by DCE, the possibility of UCAN should be considered.
潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)は再燃と寛解を繰り返す原因不明の慢性,持続性の炎症性腸疾患であり,一般的には直腸の軽度の炎症から始まり大腸の広範な炎症へと進行する 1).炎症の持続はUC associated neoplasia(UCAN)の発症および将来的な大腸全摘術の必要性を高めることになり,実際,長期にわたるUC罹患に伴うUCANの累積発症率は報告により差は認めるが発症30年で約7.5~18.4%にも達することが報告されている 2)~4).さらに,Hataら 5)の報告でもサーベイランス大腸内視鏡検査を定期的に行っている患者では,未施行の患者よりも全生存期間が良好であったことが報告されており,このことからもUC患者の管理においては内視鏡による炎症活動性評価は当然のことながら,UCANの早期発見が非常に重要であることがわかる.しかし,内視鏡機器や診断技術の進歩にも関わらず,UCの炎症を起こした粘膜の複雑な背景と病変の形態学的多様性のためUCANの早期発見は未だ困難とされている.Surveillance for Colorectal Endoscopic Neoplasia Detection and Management in Inflammatory Bowel Disease Patients: International Consensus(SCENIC) consensus statementではUCANは有茎性隆起型,無茎性隆起型,表面隆起型,平坦型,陥凹型の5種類に分類しており 6),これらの基準を元に検証した過去の報告では,高度異型性(High grade dysplasia:HGD)の64%が隆起型病変であったのに対し30%は平坦型病変であったとしている 7).隆起型の病変に関しては白色光観察(White Light Imaging:WLI)でも検出は可能と考えられるが,平坦型に分類される病変の中にはいわゆるinvisible lesionとされるWLIのみでは検出困難なものも含まれており,これらを含めた平坦型病変をどのようにして検出していくかがUCANの早期診断の課題と考えられる.
近年,UC罹患範囲内に発生する腫瘍性病変に対して,内視鏡治療を施行する報告が散見されるようになっている.このため,以前にも増して病変の領域性に関する診断基準確立の必要性は高まってきた 8)~11).UC罹患範囲内に発生する腫瘍は炎症粘膜を背景にして発生していることから散発性腫瘍(sporadic neoplasm:SN)であったとしても通常とは異なる形態をとることも珍しくない.このため,ときとしてWLIではSNとUCANの鑑別が困難な場合がある.このような場合の鑑別手段の一つとして,主病変の周囲に平坦型dysplasiaが拡がっているか否かを診断することが挙げられるのであるが,やはり現時点でそれを明確に診断する方法は確立されていない.平坦な病変の存在を認識できずに内視鏡的切除を行えば,断端陽性となる可能性が高く,適切な治療にはつながらない.SCENIC consensus statementでは色素散布内視鏡観察(Dye Chromoendoscopy:DCE)が平坦型dysplasiaを含めたUCAN検出に有効であるとして全結腸のDCEを推奨しているのだが 6),DCEにおけるUCANの内視鏡的特徴を明確に示した報告は未だない.
そこで,今回われわれはUCANの診断率向上および病変範囲診断の向上を目的に検討を行った.当院で診断されたUCAN症例の中から平坦型dysplasiaを有する病変を抽出し,DCEによる観察を行った画像を解析することで,平坦型dysplasiaの色素散布内視鏡像の特徴を明らかにした.
本試験は単一施設による後方視的観察コホート研究である.2001年1月から2022年1月に慶應義塾大学病院で大腸内視鏡検査を施行されたUC患者のうち,UC罹患範囲内に腫瘍性病変を認めた158症例211病変を今回の研究対象として抽出した.
【研究手順】患者の統計学的データおよび疾患特性(性別,発症年齢およびUCAN診断時の年齢,罹病期間,病型,UCAN診断時のMayo Endoscopic Subscore(MES)など)をカルテから収集した.すべての手技は大腸ビデオ内視鏡(PCF-H290ZI,PCF-H 290I,CF-H290I,CF-H260AI,またはCF-H260 AZI,オリンパスメディカルシステムズ,東京,日本)を用いて実施された.通常の白色光観察にて病変が疑われた際に0.1%濃度のインジゴカルミン色素散布を行い詳細観察が実施された.また0.1 %溶液では観察が不十分と考えられた際には0.2%溶液のものが使用された.UCANの詳細な内視鏡画像は,内視鏡検査報告システム(Solemio ENDOⓇ,オリンパス,東京,日本)を用いて収集した.すべての大腸内視鏡検査は,5名の日本消化器内視鏡学会認定専門によって行われ,この5名の内視鏡医は少なくとも2,000例以上のUC患者に対する内視鏡経験を有している.
【内視鏡および病理組織学的評価】今回の研究では生検検査,内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)もしくは手術が施行された結果,UCANと診断された病変に含まれている平坦型dysplasiaのインジゴカルミン散布色素内視鏡画像を解析対象とした.尚,詳細な内視鏡観察および色素内視鏡画像の解析は4名のIBD専門内視鏡医によって行われ平坦型dysplasiaに含まれる数種類の粘膜変化を同定・観察した.約20%の病変は,内視鏡的にUCが中等度から重度の活動性(MES 2または3)と判定されたときに生検で診断されたが,色素散布内視鏡による粘膜変化の評価は,すべての症例で病変の背景粘膜に炎症がなく寛解した状態(MES 0または1)で行われた.尚,平坦型dysplasiaとは,平坦隆起型病変ではなく,パリ分類のクラス0-Ⅱbに該当する完全に平坦な病変を指しており,その中にはinvisible dysplasiaも含んでいる.
病理組織標本は過去の報告と同様,当院の経験豊富な病理医2名以上によって診断された 7).UCANの病理診断には,通常のヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin Eosin:HE)染色とp53免疫組織化学染色を用いた.腺底部のp53過剰発現または完全欠損が平坦粘膜面に拡がっていることの確認によりUCANと診断した.また,SNとの鑑別としてKi-67の発現パターンも考慮した.SNにおいてはKi-67陽性細胞が分布する増殖帯は粘膜表層~中層に存在し,癌ではそれが腺管深層に向かって延長するtop-down patternを呈するがUCANでは増殖帯が腺管中層以深を中心に認められるbottom-up patternを呈することで鑑別とした.p53の完全欠損を示す異形成に関しては,異形成病変と非異形成病変を比較してp53染色を評価した.非異形成病変は通常,野生型の染色パターン,つまり典型的に不均一で弱い染色パターンを示すのに対し,異形成病変はp53に対して完全欠損を示し,これがp53完全欠損型の異形成を診断する手がかりとなる.この評価システムに基づくと,p53完全欠損異形成症例の診断に関して矛盾はなかった.しかし,2人の病理医の間で異形成の程度(低悪性度対高悪性度)に関して若干の矛盾があったため,われわれはすべてのp53完全欠損異形成標本を注意深く一緒に観察し,核異型と構造異型,細胞分化を考慮して異形成の程度を議論し決定した.尚,日本では,核および構造異型のある腫瘍性病変は浸潤の有無にかかわらず粘膜内癌として診断されるが,これらの病変は本研究ではHGDとして分類した.SNとUCANの鑑別が困難な症例は今回対象から除外した.また,本研究で評価した全検体のうち生検検体については,病理医が有効かつ評価可能な検体であると判断した症例のみを評価対象とした.
【統計解析】結果は,連続変数については中央値および四分位範囲で,カテゴリ変数については数値で解析を行った.すべての統計分析は,JMPソフトウェア バージョン 11.1.1(SAS Institute,米国ノースカロライナ州ケアリー)を使用して実行された.
【倫理規定】本研究はヘルシンキ宣言に従って実施され,本研究は慶應義塾大学医学部の倫理委員会によって承認されている(承認ID 20150100).
研究に含まれた患者のフローチャートをFigure 1に示す.最終的に,高解像度大腸内視鏡(PCF-H290ZI,PCF-H290I,CF-H290I,またはCF-H260AZI)を使用した詳細なDCEにより観察された平坦型dysplasiaの患者61症例63病変が本解析に含まれた.患者の特徴はTable 1に示す.対象患者の病変罹患範囲は全大腸炎型が75.4%,左半結腸型が24.6%であった.UCAN診断時の背景粘膜のMESはMES0が27例(44.3%),MES1が24例(39.3%),MES2が8例(13.1%),MES3が2例(3.3%)であった.

対象患者のフローチャート.

患者背景.
平坦型dysplasiaの代表的な画像をFigure 2に示す.病変の内視鏡的評価はすべてWLIにて病変背景粘膜の内視鏡活動性がMES0 or 1の状態で行われたものを対象とした(Figure 2-a).インジゴカルミン散布画像(Figure 2-b)と近接観察もしくは弱拡大観察画像(Figure 2-c)を抽出した評価を行った.

平坦型dysplasiaの代表的色素散布内視鏡像.
a:白色光画像.
b:色素散布内視鏡像.
c:近接もしくは弱拡大色素散布内視鏡像.
全63病変のインジゴカルミン散布後の近接観察もしくは弱拡大観察画像を元に作成した平坦型dysplasia,および非腫瘍部の内視鏡的粘膜パターン分類をFigure 3に示す.最初にDysplastic mucosal patternとnon-dysplastic mucosal patten に大別した.Dysplastic mucosal patternは円形~類円形の粘膜模様を呈するsmall round pattern,入り組んだ網目様の粘膜模様を呈するmesh patternに分類した.さらに,small round patternは模様が密に観察されるdense typeと疎に観察されるsparse typeに細分化した.Mesh patternは網目構造が細かいfine mesh typeと網目構造が荒いenlarged mesh typeに細分化した.non-dysplastic mucosal pattenに関してはRipple-like type(比較的均一なさざ波様変化)とGyrus-like type(比較的均一な脳回様変化)とに大別した.

平坦型dysplasiaの典型的色素散布内視鏡粘膜パターン.
Dysplastic mucosal patternは円形~類円形の粘膜模様を呈するsmall round pattern,入り組んだ網目様の粘膜模様を呈するmesh patternに分類した.さらに,small round patternは模様が密に観察されるdense typeと疎に観察されるsparse typeに細分化した.Mesh patternは網目構造が細かいfine mesh typeと網目構造が荒いenlarged mesh typeに細分化した.non-dysplastic mucosal pattenに関してはRipple-like type(比較的均一なさざ波様変化)とGyrus-like type(比較的均一な脳回様変化)とに大別した.
評価対象とした63病変の内視鏡的所見の特徴をTable 2に示す.病変の80%以上(84.1%)はS状結腸から直腸にかけての遠位結腸に認められた.病変の約50%にWLIによる観察の際に発赤粘膜を認めており,その多くがFigure 3に示すsmall round patternを呈していた.注目すべき点として,解析対象の病変の55.6%にsmall round pattenの粘膜面を認め,80.9%に何らかのmesh patternの粘膜面を認めていたという結果であった.全63病変のうち,7病変(11.1%)の一部の領域にはFigure 4-aに示すようにnon-dysplastic patternの粘膜も混在して認めていた.しかし,本研究と同期間内にUC罹患範囲内のSN病変に対して内視鏡切除を施行した50例の病変周囲粘膜にはFigure 4-b,cに示すようにnon-dysplastic patternの粘膜しか認められず,small round patternやmesh patternのdysplastic mucosal patternは確認されなかった.

内視鏡所見の特徴.

潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UCAN)と散発性腫瘍(SN)の隆起性病変周囲の粘膜変化パターンの違い.
a:周囲に平坦型dysplasiaを伴う表面隆起性UCANの内視鏡画像.色素散布内視鏡では,起性病変の肛門側にはmesh pattern(下図,白点線の四角で囲まれた部分)が,口側にはnon-dysplastic pattern(下図,白点線の円で囲まれた部分)が認められる.病変の口側には,small round pattern(右図,白点線の四角で囲まれた部分)が認められる.
b,c:表面隆起型SNの内視鏡画像.対照的に,SNの境界は明瞭で,SNの周囲粘膜にはnon-dysplastic patternのみが認められる.
Table 3に示すように,small round patternを呈する病変の約70%はHGDまたは癌と診断されたのに対し,mesh patternを呈する病変の約50%はlow grade dysplasia(LGD)と診断された.病理組織学的評価では,small round patternを呈する粘膜は,比較的分岐の少ない直線的な腺管を示し,深部に行くほど腺管密度が高くなる傾向であった.mesh patternを示す病変では,粘膜変化の病理学的外観を反映して,複雑に分岐し変形が強い腺管が多数観察されたという結果であった(Figure 5).

色素散布内視鏡分類による病理組織学的診断.

平坦型dysplasiaの代表的な病理組織像.
Small round pattern(上)とmesh pattern(下)を伴うUCANのヘマトキシリン/エオジン(H&E)染色(左パネル)とp53免疫組織化学(右パネル).病理組織学的評価により,small round patternの粘膜は比較的分岐の少ない直線的な腺管を示し,腺管密度は深部で高くなる傾向があることがわかる.mesh patternでは,複雑な分岐と強い変形を伴う多数の腺管が観察される(スケールバー,100μm).
本研究では,平坦型dysplasiaの詳細な色素散布内視鏡画像を検討し,DCEによる平坦型dysplasiaの粘膜変化のパターンを特定した.
従来,UCANの拾い上げにはrandom biopsyが有効であると考えられていたが,2015年に発表されたSCENIC consensus statementにおいてUCANの拾い上げにはDCEを行うことが推奨されると提言されたこともありtarget biopsyによる診断が注目されるようになった 6).さらにその後,Watanabeら 12)によって従来のrandom biopsyとDCEを併用したtarget biopsyで腫瘍検出率に差が認められなかったという結果が報告されたことから,UCAN検出のためにはDCE併用によるtarget biopsyを行うことが有用であると考えられるようになった.しかし,それにも関わらず,targetとなるべきDCEにおけるUCANの特徴的粘膜変化を明記した報告はこれまでになかった.このことからもDCEの重要性は過小評価されてしまい,ガイドラインに記載されていながらも実臨床においてはUC患者におけるサーベイランス内視鏡においてDCEは標準的観察法として普及していないのが現状であり,診断手法も十分には確立されていなかった 13),14).そのような中,今回のわれわれの報告ではWLIでは検出困難でinvisibleともされる平坦型dysplasiaの色素散布内視鏡像の特徴を明らかにした.UCANの検出にはpanchromoendoscopyが推奨されているが,臨床の現場では時間のかかる負担の大きいこの検査をすべての症例で実施することは困難である.今回の検討で,病変の80%以上が遠位結腸に認められたことから,少なくとも遠位結腸でDCE観察を使用するという実際的なアプローチにより,高リスク患者(長期罹病患者または大腸狭窄を有する患者など)におけるUCANの検出率が向上する可能性があることが示唆された.さらに,活動性炎症の存在は粘膜変化のパターンに影響を与えるため,本研究でのすべての粘膜変化は寛解期に評価された.実際,UCANと診断された生検の90%は寛解期であったことから,サーベイランスによる検出,およびDCEによる精査は寛解期に実施した場合の方が効果的である可能性があることが示唆された.
これまでにもUCANの特徴的な内視鏡所見に関する検討はいくつか報告されてきた.Shinagawaら 15)はMagnifying colonoscopyとstereomicroscopic imageを照らし合わせる検討によりpine-coneそしてvilli patternという拡大内視鏡所見がUCANの特徴的粘膜所見である可能性を報告した.Matsumotoら 16)やEastら 17)の報告ではNarrow Band Imaging(NBI)拡大観察に注目し,不整な表面構造やobvious capillary vesselsによって暗くなる変化がUCANの特徴的所見であるとしており,Nishiyamaら 18)は不規則な表面パターンがUCANと非腫瘍の鑑別に有効であると報告している.しかし,これらの報告はいずれも隆起型,もしくは表面隆起型のUCANを対象としていることや,炎症により修飾を受けた微小血管とpit構造を従来のSNに対するNBI所見とどのように区別するかという点など解決すべき問題点も多く残っている.隆起型のUCANの内視鏡的特徴を捉えることも重要であることに変わりはないが,検出率を向上させるためにはinvisible lesionをいかに検出するかということが非常に重要と考えたため,今回われわれが平坦型dysplasiaの粘膜変化に注目したのである.今回のわれわれの検討では全例インジゴカルミン散布という非常に簡易的な方法より確認される粘膜パターンを元に分類を作成していることからサーベイランス大腸内視鏡の際の平坦型dysplasia検出の一つの診断基準となりえると考えられる.
今回われわれが平坦型dysplasiaの粘膜パターンに注目したもう一つの理由として,近年行われるようになったUCANに対する内視鏡治療における断端陽性率の高さにある 19)~24).SCENIC consensus statemenにおいて,UC患者における腫瘍性病変に関しては境界が明瞭であれば内視鏡治療を検討してもよいと明記されて以降 6),UC患者に発生する腫瘍性病変に対し内視鏡治療を行った報告が散見されるようになってきている.これらの報告の多くはSNとUCANの鑑別が行われずに内視鏡治療が行われているのだが,その中でUCANに対するESD治療成績に注目すると,SNに対するESDと比較して断端陽性率が高いという報告が散見されていることがわかる.その原因としては,病変周囲の陰性生検などを行ったとしても病変周囲の平坦型dysplasiaを正確に診断できていないことが考えられる.UCANに対するESDにおいては,SNの場合と異なり,隆起性病変であったとしても常に周囲に平坦型dysplasiaが拡がっている可能性を念頭に置いたうえでの範囲診断が必要となる.今回のわれわれの検討結果は内視鏡切除の適応を検討する際に,主病変周囲の平坦型dysplasiaを検出する一助になることが期待される.
本研究にはいくつかのlimitationがある.第一に,本研究は単施設後ろ向き研究であり,panchromoendoscopyを行っていないため,一部のUCANが見逃されている可能性は否定できず,提案した以外の粘膜変化のパターンが存在する可能性がある.多施設での検証は必要であるが,本研究は平坦型dysplasiaの特徴的な粘膜変化のパターンを提唱した初めての研究である.第二に,症例数が少ないことであるが,平坦型UCANの内視鏡診断は難しく,本報告はこれまでで最大数の報告である.第三に,今回提唱した粘膜変化のパターン分類の感度と特異度は検討されていないということである.提唱された分類が一般化できるかどうかはまだ不明であるため,今後,前向き研究で提唱した粘膜変化パターンの感度と特異度を検証する必要がある.
結論として,今回われわれはDCEによる平坦型dysplasiaの特徴的な粘膜変化のパターンを提唱した.DCEでsmall round patternやmesh patternなどの特徴的な粘膜変化のパターンを認めた場合は,UCANの可能性を考慮する必要がある.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし
本論文はDigestive Endoscopy(2024)36, 446-54に掲載された「Characteristics of flat-type ulcerative colitis-associated neoplasia on chromoendoscopic imaging with indigo carmine dye spraying」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.