日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
画像強調を使用した経鼻内視鏡による上部消化管癌の拾い上げ診断
大澤 博之
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2025 年 67 巻 6 号 p. 1141-1154

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要旨

2000年代初頭から経鼻内視鏡による画像強調診断は行われており,最近の画質は革新的な進歩を遂げている.そのため標準型内視鏡と遜色のない鮮明な画像が得られ,経鼻内視鏡でも微細画像診断の知識が要求されるようになった.Narrow band imaging,Blue laser(light)imagingは食道癌のスクリーニングに頻用され,咽頭喉頭において広角での観察も可能である.経鼻内視鏡では胃内の死角が少なく正面視しやすいという長所もある.胃癌のスクリーニングでは初期にはFlexible spectral image color enhancementによる,最近ではLinked color imaging(LCI)による色調コントラスト診断が行われてきた.LCIでは組織の違いにより色調が異なるという,これまでの画像診断では得られなかった炎症性および腫瘍性病変の診断が可能となった.最近では高解像度Complementary metal oxide semiconductorセンサーを搭載し,ハイビジョン画質で近接2mmから遠景観察まで高精細な画像が得られる.Texture and brightness and color enhancementによる視認性の評価も行われている.このような白色光画像から画像強調診断への大きな進化期を迎え,経鼻内視鏡による早期上部消化管癌の拾い上げ診断は,今後人工知能による診断支援を伴ってさらに進歩していくと考えられる.

Abstract

Image-enhanced endoscopy using ultrathin endoscopes has been performed for upper gastrointestinal lesions since the early 2000s. Recent improvements in endoscopes, such as standard endoscopes, have led to the production of high-resolution images. Narrow-band and blue laser (light) imaging have been widely used to screen for esophageal cancers and aid in the diagnosis of laryngeal and pharyngeal cancers. For screening gastric cancers, flexible spectral image color enhancement provides images with high color contrast between the gastric cancer and surrounding mucosa without magnification. The advent of linked color imaging (LCI) has accelerated diagnoses with high color contrast. LCI produces different colors among the various histological features of the gastric mucosa and enables the diagnosis of inflammatory and neoplastic lesions, the characteristics of which cannot be obtained with other image-enhanced endoscopies. Recently, the texture and brightness and color enhancement has been evaluated for gastrointestinal lesions. The screening of upper gastroenterological lesions has shifted evolutionarily from white light images to enhanced images. Screening of early upper gastrointestinal cancers using ultrathin endoscopy will progress eventually with the assistance of artificial intelligence.

Ⅰ はじめに

上部消化管癌の内視鏡検査は,経口内視鏡を用いた白色光観察によって確立されてきた.2000年代初頭,極細径内視鏡(直径6mm以下)を経鼻ルートで用いた検査は痛みや嘔吐反射が少なく 1),2,鎮静なしでも耐えやすく費用も抑えられるという,いわゆるpainless endoscopyとして注目された 3),4.経鼻内視鏡は,高齢患者の血圧や脈拍など心肺機能への影響が少なく,クリニックや定期健康診断で頻用されている 5),6.しかし,以前から白色光観察では内視鏡径の細さが画質に影響を与えるため胃癌などの腫瘍性病変の診断精度が低下し 7)~10,光学品質の向上や色素内視鏡などの追加手技の導入が求められていた 7

画像強調内視鏡は第一世代のNarrow band imaging(NBI),Flexible spectral image color enhancement(FICE),i-scan,第二世代のBlue laser(light)imaging(BLI),Linked color imaging(LCI),最近ではTexture and brightness and color enhancement(TXI)など癌を発見しやすい技術が開発され,このような画像強調法を用いて検査を行うのが一般的となっている.富士フイルム社から発売された経鼻内視鏡(EG-840N)は,高解像度相補型金属酸化膜半導体(Complementary metal oxide semiconductor:CMOS)センサーを搭載し,Light emitting diode(LED)を光源としてハイビジョン画質で近接2mmから遠景観察まで高精細な画像を描出し,LCI,BLIも利用できる.オリンパス社からはCMOSセンサーによる低ノイズハイビジョンを装備したGIF-1200Nが発売され,さらにLED光源を用いるEVIS V1による種々のサポートが始まった.このような経鼻用内視鏡では標準型内視鏡と遜色のない鮮明な画像が得られている.これからは内視鏡医には経鼻内視鏡でも微細構造診断の知識が要求される.

本稿では経鼻内視鏡による画像強調診断の歴史および現状について述べる.なお,混乱を避けるため極細径内視鏡を経鼻内視鏡と記載し,従来からの経口用内視鏡を標準型内視鏡として区別している.

Ⅱ 内視鏡画像技術の進歩:拡大内視鏡と画像強調内視鏡

1.拡大内視鏡

上部消化管内視鏡における拡大観察は画像強調よりも歴史が古く,最初は扁平上皮の微小血管パターンである乳頭内毛細血管ループが組織の異型性の指標として用いられた.NBIの開発により乳頭内毛細血管ループが鮮明に観察できるようになり,特に食道癌の深達度との相関が明らかになった.NBI拡大内視鏡診断では食道扁平上皮癌の診断が劇的に変わり,他の上部消化管腫瘍にもその応用が広がった.

2.画像強調内視鏡

2000年代以降,さまざまな画像強調診断技術が開発された.それぞれの技術は臓器の構造や粘膜の特性に応じて使い分ける必要があった.

(1)NBI

オリンパス社によって開発されたNBIは,消化管癌の診断に革命をもたらした.415nmと540 nmの波長を使った狭帯域光により,微小血管が背景粘膜上で暗褐色に浮かび上がり,経鼻内視鏡は食道の観察に適していた.初期のNBIは光量不足により広い胃腔の観察には適さなかったが,最新のEVIS X1ではLED光源を使用して観察性能が向上している.

(2)FICE

富士フイルム社が開発したFICEは明るい画像と高い色調コントラストを提供し,病変と周囲粘膜の境界が識別しやすく,明るさが十分であるため経鼻内視鏡でも胃粘膜の観察が可能であった.

(3)i-scan

PENTAX社が開発した技術は,内視鏡で得られた画像に対して特定のフィルターを適用し,微細な粘膜構造や血管パターンを強調した.

(4)BLI

2012年に登場したBLIは,レーザー光を使用し,微細構造と血管像の可視化に優れ,BLI-brightモードでは明るさが強化され,胃のような大きな管腔でも使用できた.BLIは緑と青の成分で構成されている.近年はLED光源を使用してほぼ同じ画像が得られている.

(5)LCI

BLI-brightモードから派生し赤色成分を追加されたLCIは,胃全体の観察を可能にした.腸上皮化生を紫色,腫瘍性病変を橙色から赤色で表示する色調では高いコントラストが得られた.

(6)TXI

TXIには2つのmodeがあり,デジタル処理によってmode1では構造,色調,明るさを強調し,mode2では構造,明るさを強調し病変の可視化を改善する.

Ⅲ 画像強調診断による胃疾患のスクリーニング

1.スクリーニング診断の歴史

白色光画像(white light imaging:WLI)でのみ観察されているために見逃される胃癌症例が報告されている 11.内視鏡治療の進歩はめざましく,なるべく小さな段階で発見することが重要である.非拡大観察による画像強調診断が確立すれば多くの患者がその恩恵を受けられる.2000年代になってFICEは早期胃癌の拾い上げ診断として有用であった.その当時,唯一の遠景観察による色調コントラスト診断が可能であり,現在のLCI診断と同じように癌と周囲粘膜の色差も大きく視認性に優れ,多くの重複早期胃癌が発見されていた.隆起型 12,陥凹型 13,平坦型 14のいずれの形態でも色調コントラストが高く,経鼻内視鏡でもその有用性が報告されている 15)~17.たとえば470nm,500nm,550nmを用いた波長では,発赤した早期胃癌は黄色の粘膜に囲まれていた 14.ただ,その当時の画像強調診断では拡大観察の重要性が叫ばれ,非拡大観察の経鼻内視鏡による拾い上げ診断の重要性はなかなか理解されない状況であった.現在,普及しているLCIではその色調パターンが主にオレンジ色と紫色あるいはオレンジ色の濃淡差に変わっただけで色調コントラストが大きいという点ではFICEと同じである.

2.LCI,BLIの特徴と使用法

LCIおよびBLIの登場は,胃癌などの消化管癌の拾い上げ診断にとっては画期的であった.LCIでは明るさ補助機能もあり遠景でも明るく胃のような大きな管腔の観察においても白色光観察と同じ感覚で取り組むことができる.経鼻内視鏡でもこのような診断法は可能であり,より効果的に活用するためにはそれぞれの特徴を理解する必要がある.LCIの発光強度では短波長割合が高く,短波長は粘膜浅層で反射するため粘膜表面の観察にはLCIが白色光画像よりも有利である.近景観察における表面構造や血管の微細画像はLCIでも観察されるが,短波長成分比が最も多いBLIの方が鮮明に描出される.要約すると胃粘膜では

1)遠景観察での拾い上げ診断には明るいLCI観察

2)近景観察での微細画像診断にはLCIだけでなくBLI観察も有用

LCIは光の三原色 青,緑,赤から,BLIは青,緑から構成されているため観察される粘膜色調が異なる.胃粘膜のLCIではオレンジ色,赤,紫,白の色調が基本であり,BLIでは茶色,緑,白が基本である.

3.ヘリコバクターピロリ感染,胃粘膜萎縮および腸上皮化生の診断

LCIでは胃の炎症性粘膜の色調に特徴がある.白色光画像では背景粘膜と癌の色調は類似していることが多いが,LCIでは異なる色調として観察され,この色調の違いが胃病変の診断に大きく寄与する.ヘリコバクターピロリ感染診断では経鼻内視鏡でも体部粘膜の色調が韓紅色であれば陽性,杏色であれば陰性であり,その精度,感度および特異度はいずれも高い(Table 1 18),19.さらにLCIは胃粘膜萎縮境界やびまん性発赤の診断にも優れている 19.NBIを用いたGIF-1200Nによる胃粘膜萎縮境界診断ではその色調コントラストが高く,ΔL(明るさ)の上昇が寄与している 20.経鼻内視鏡を用いたTXIでもその色調コントラストは白色光画像よりも優れている 21

Table 1 

胃粘膜のLCIの色調.

灰白色に見える斑状の腸上皮化生の診断は,わずかな形態の違いがあっても早期胃癌との鑑別は難しい.画像強調法は腸上皮化生の診断に有用である.LCIでは腸上皮化生は紫色に観察され(Figure 1 11),22,経鼻内視鏡でもその色調変化は同じであり 19),23,スクリーニングでも有用である.早期胃癌はオレンジ色を呈することが多く,腸上皮化生との鑑別も可能である(Table 1).BLIでは腸上皮化生は緑色に観察され 24,NBIでも類似の色調を呈する 25.経鼻内視鏡を用いたTXIでも色調コントラストは白色光画像よりも優れている 21

Figure 1 

早期胃癌0-Ⅱc(幽門前庭部,EG-840N).

a:白色光像.後壁に粘液が付着している.

b:LCI像.腸上皮化生と考えられる紫色粘膜に囲まれたオレンジ色の早期胃癌が認められる(Orange and purple pattern).早期胃癌のオレンジ色は周囲のオレンジ色よりも濃い.

c:BLI像.薄い緑色粘膜に囲まれた茶色の癌が認められる.

4.LCIによる早期胃癌診断

消化管癌では形態診断よりも明瞭な色調診断の方が早期発見に有利である.WLIでは見えない胃癌がLCIでは見えてくる.LCIの登場により消化管癌の診断学は大きく飛躍した.これまで診断困難な平坦型早期胃癌(0-Ⅱb)も容易に発見される 22.0-Ⅱaあるいは0-Ⅱcと同じように0-Ⅱbでも癌と周囲粘膜の色調コントラスが極めて高く,視認性に優れている 4.LCIは腺癌の診断に大きな武器となりうることから多くの施設で取り入れられるようになった.

経鼻内視鏡を用いた早期胃癌の色調パターンは以下のように経口内視鏡と同じである(Figure 1).

1)オレンジ色の早期胃癌が紫色粘膜に囲まれている(Orange and purple pattern).

2)濃いオレンジ色の早期胃癌が薄いオレンジ色の粘膜に囲まれている(Dark and light orange pattern).

経鼻内視鏡による色調診断の有用性については論文でも詳細に記述されている.レーザー経鼻内視鏡の解像度は標準型内視鏡よりも劣っている.それにもかかわらず標準型内視鏡によるWLI観察と比較して,経鼻内視鏡によるLCI観察が早期胃癌の検出に優れているかどうかについて前向きケースコントロール研究として検討されている 23.早期胃癌または胃粘膜萎縮症例166例を対象として各症例において,標準型内視鏡(EG-L590WR)と経鼻内視鏡(EG-L580NW)を使用し,WLIおよびLCIの両モードで90秒間のスクリーニング動画が収録された.3人の内視鏡専門医が各動画を評価し,早期胃癌の検出感度および周囲粘膜との色差が評価された.早期胃癌の検出感度は,経鼻LCIが標準型WLIよりも高かった(Figure 2).経鼻および標準型内視鏡のLCIによる癌と周囲粘膜の色差はそれぞれWLIよりも有意に高く,経鼻LCIの色差および視認性スコアは標準型WLIよりも有意に高い結果を示した(Figure 2).これらの結果から考えられることは以下のとおりである.

Figure 2 

早期胃癌診断における経鼻内視鏡と標準型内視鏡の比較.

a:早期胃癌診断の感度と特異度. 経鼻内視鏡:EG-L580NW,標準型内視鏡:EG-L590WR,WLI:white light images,LCI:linked color images

b:癌と周囲粘膜の色差,経鼻LCIの方が経口WLIよりも高い. ns:not significant

1)低解像度の経鼻内視鏡を用いたLCIは,高解像度の標準型内視鏡を用いたWLIよりも胃癌診断に優れている.

2)早期胃癌診断には周囲粘膜との高い色調コントラストが,高解像度画像よりも重要である.

さらに最近のLEDを用いたCMOS搭載の極細径内視鏡(EG-840N)による画質は格段に進歩している 5.LCIおよびBLIでは弱拡大観察並みの微細構造や微細血管を観察することが可能である(Figure 3).これは,経鼻内視鏡を施行する医師にも微細画像診断の知識が要求されることを意味している.低解像度の経鼻内視鏡という表現は将来的には消滅し,経鼻内視鏡による画像強調診断は今後もさらに発展していくと考えられる.また2022年より人工知能(Artificial intelligence:AI)を用いたLCIおよびBLI画像診断支援が可能となったことも朗報である.

Figure 3 

早期胃癌0-Ⅱc(体上部,EG-840N).

a:白色光像.陥凹性病変を認める.

b:LCI像.微細血管の異常を認め,fine net-work patternが観察される.

c:BLI像.微細血管の異常はさらに明瞭に観察される.

5.NBIおよびTXIを用いた経鼻内視鏡による早期胃癌診断

NBIを用いた経鼻内視鏡診断は白色光画像よりも優れている.2020年に発売されたGIF-1200Nを用いたハイビジョン画像では解像度が向上し,粘膜微細構造の観察が可能となった(Figure 4).陥凹型早期胃癌の表面構造のirregularityの観察ではGIF-XP290NおよびGIF-1200Nのいずれを用いてもNBIの感度は極めて高い 26.隆起型胃癌でも陥凹型胃癌でも周囲粘膜との色調や表面構造の違いが視認できる(Figure 56).今後さらに明るさが改善されれば中遠景観察によるスクリーニングでも有用となる可能性がある.

Figure 4 

胃噴門部癌(GIF-1200N).

a:白色光像.噴門部後壁にわずかに発赤した陥凹性病変を認める.

b:TXI遠景像,mode1.陥凹部は薄紫色に強調されている.

c:NBI像.薄い緑色粘膜に囲まれた茶色の癌が認められる.不規則な表面構造が観察される.

Figure 5 

早期胃癌0-Ⅱa(幽門前庭部,GIF-1200N).

a:TXI像,mode1.TXI像では周囲粘膜がオレンジ色,白色,赤色に強調され,癌の視認性が高い.

b:NBI像.薄い緑色粘膜に囲まれた茶色の癌が認められる.色調コントラストが高く,表面構造も観察される.

Figure 6 

早期胃癌0-Ⅱc(幽門前庭部,GIF-1200N).

a:TXI像,mode1.褪色領域が強調され,粘膜の凹凸が明瞭である.

b:NBI像.緑色に囲まれた茶色の領域が明瞭に観察され,色調コントラストが高い.

経鼻内視鏡のTXIを用いた早期胃癌診断の視認性はWLIよりも有意に高く 27,mode1とmode2の比較では経鼻内視鏡ではWLIと類似したmode2が診断法として受け入れやすく 28,癌と周囲粘膜の色差および視認性スコアも上昇すると報告されている 29.一方,経口内視鏡ではmode1の方が早期胃癌の視認性は有意に高いと報告されている 30)~32.経口内視鏡と経鼻内視鏡のスコープの違いもあるかもしれないが,mode1では構造,色調,明るさを強調しており,色調コントラストが高く診断法として理想と考えられる(Figure 5).近年本邦にて多施設randomized phase Ⅱ試験(3G detection試験)が行われ,胃上皮性腫瘍の発見率はWLI群,第3世代NBI群,TXI mode1群でそれぞれ5.6%,7.3%,5.0%であり,第3世代NBIが最も高いことが示された(Figure 6 33

6.地図状発赤

地図状発赤は,ヘリコバクターピロリ除菌後粘膜の約25%に観察され 34),35,癌との鑑別は重要である.組織学的には腸上皮化生を示すことが多く,その中に胃癌を合併している症例がある.白色光画像では腸上皮化生と癌を鑑別することが難しく,LCIでは両病変を色調の違いで区別することが可能である 36.典型的な色調はオレンジ色の胃癌と紫色の腸上皮化生のパターンである.このような色調は経鼻内視鏡でも同じである.一方,TXIやNBIでは白色光画像と比較して地図状発赤の診断の優位性は小さい 21.今後の改善が待たれる.

7.観察部位から考える経鼻内視鏡の優位性

近年,胃粘膜を全体に隈なく観察しようとフォトチェッカーを用いて,観察できた部位をモニターで表示しようという試みがある.経鼻内視鏡の特長は,ただ細いだけではない.直視型の経口標準型内視鏡では,胃角から胃体部の後壁は盲点となりやすい.経口内視鏡では胃の形状により反転観察が不十分なことがあるが,経鼻内視鏡では曲率半径が小さいため反転観察が容易である.Figure 7に胃角部後壁の早期胃癌を示す.経口内視鏡では正面視できないが,経鼻内視鏡では早期胃癌全体が正面視されている.経鼻内視鏡は,その利点である反転観察能を十分に発揮するように操作することで標準型内視鏡よりも部位別観察で病変発見に有利に働く 37

Figure 7 

早期胃癌,標準型内視鏡と経鼻内視鏡の比較.

a:白色光画像(EG-L590ZW),見下ろしの経口内視鏡観察では胃角部後壁にわずかに発赤した陥凹変化を認めるが,わかりづらい.見上げでは病変を捉えられない.

b:白色光画像(EG-L580NW),見上げの経鼻内視鏡観察では胃角部直下の後壁に発赤した病変を正面視できる.

Ⅳ 食道疾患の経鼻内視鏡画像強調診断

1.食道扁平上皮癌

画像強調診断による観察では食道癌の色調はNBI,FICE,BLIのいずれを用いても基本的には茶色を示し,周囲粘膜との色調コントラストが高い.NBIやBLIでは食道癌の特徴であるbrownish areaと血管の異常を拾い上げるのに適している.非拡大観察でも5mm以上の病変であれば病変の鑑別は可能と言われており,領域性,背景血管間色調(intervascular background coloration)の濃淡,異常血管の密度や大小不同を参考にして診断する.

以前から経鼻内視鏡を用いた画像強調診断の感度は白色光画像より高く 38,異時性食道癌の発見頻度としては標準型内視鏡と遜色のない拾い上げが可能と報告されている 39.最近の画質向上により炎症などのわずかな血管変化も経鼻内視鏡で観察可能である.白色光とNBIの比較では症例数は少ないが,非拡大経口内視鏡によるNBI観察 40と同じように経鼻内視鏡でもNBI観察の方が食道扁平上皮癌診断の感度は高い(Figure 8 41),42.頭頸部癌にて標準型経口内視鏡が挿入困難な患者に対するGIF-XP260Nを用いた食道癌診断では,NBI観察は白色光観察に比べて感度だけでなく特異度・精度も高かった 42

Figure 8 

早期食道癌(GIF-1200N).

a:白色光画像,樹枝状血管が途絶し,角化様所見がほぼ平坦な領域として認められる.

b:NBI画像.緑色と白色に強調され,brown dotsが確認される.

BLIによる食道扁平上皮癌の診断精度は約80%であり,NBIとほぼ同じである.経鼻内視鏡のBLIを用いた扁平上皮腫瘍(squamous intraepithelial neoplasia)ではbrown dotsが明瞭に観察され,扁平上皮癌ではさらに明瞭かつ拡張してみられる(Figure 910).しかし,リスクの高い症例やまだら食道ではヨード染色の有用性も考えておく必要がある 43.一方,特異度を考慮した正診率はヨード染色よりもNBIが高いという報告もある 40.ヨード染色も白色光観察よりも画像強調法との組み合わせが有用である.NBI,LCI,BLIではヨード不染域はmetallic silver,purple,greenとそれぞれ特徴的な色調パターンを呈し,WLIによるpink colorよりも有用であり 44),45,経鼻内視鏡でも同様の結果が得られる可能性がある.

Figure 9 

検診で発見された食道扁平上皮内腫瘍(squamous intraepithelial neoplasia)(EG-840N).

a:白色光像.わずかな褪色域では血管が認められないが,病変の視認は難しい.

b:BLI像.Brown dotsが明瞭となり,やや拡張した血管も観察される.

Figure 10 

検診で発見された早期食道癌(EG-840N).

a:白色光像.中部食道にオレンジ色の領域を認める.

b:BLI像.Brown dotsの血管が明瞭に観察される.

一方,LCIでは食道扁平上皮癌は赤紫色を呈することが多い.LCIとBLIの比較ではOgataらはハイリスク患者を対象とした食道扁平上皮癌の発見率は4~5%で有意差を認めないが,見逃し率はBLIの方が有意に低いと報告している 46.BLIでは観察可能でもLCIでは不明瞭な扁平上皮癌があることを認識する必要がある 47.最近,経口内視鏡を用いたTXIに関する論文もみられる 48.食道扁平上皮癌の発赤がさらに強調され,TXI mode1では扁平上皮癌と周囲粘膜の色差が上昇し,その視認性が改善することが報告されている.経鼻内視鏡を用いたTXI画像診断の有用性に関する研究も期待される(Figure 8).今後は画像強調診断に対するAI診断支援が普及し,食道扁平上皮癌の見逃し予防が注目される可能性がある.

2.バレット食道

バレット食道の診断には柵状血管の存在が重要であるが,胃のヒダの上端の位置が変動したり,炎症によって不鮮明になったりするため白色光画像では十分な情報が得られないことが多い.画像強調診断の有用性についてはRed Dichromatic ImagingやLCIで柵状血管の遠位端が明瞭に観察され,視認性に優れていると報告されている 49)~51.しかし,経鼻内視鏡を用いた報告は少ない.FICEを用いた経鼻内視鏡による観察でも柵状血管と背景のバレット粘膜,およびバレット粘膜と胃のヒダの間の色差が大きく,WLIよりも色調コントラストが高い 52.わずか8症例を対象としているが,NBIを用いた経鼻内視鏡でもバレット食道診断の有用性が報告されている 53.非鎮静下での経鼻内視鏡検査では食道胃接合部の吸気時観察が容易である.TXIは白色光画像やNBI画像よりもバレット食道の視認性がよく 54,その中でも色彩強調機能を有するmode1が優れている 55

3.バレット食道腺癌

バレット食道腺癌の診断にはNBIによる粘膜パターンや血管パターンが有用である.BLIやLCIは非専門医にとってバレット食道腫瘍の視認性を改善する 56),57.経鼻内視鏡を用いたバレット食道腺癌の画像強調診断についてはまとまった報告がない.NBIやBLIではバレット食道腺癌は茶色に観察される.BLIでは粘膜浅層で反射しやすい短波長成分の割合が多く,表面構造を確認するためにはLCIよりも有利であると考えられる.特に焦点距離が2mmのEG-840Nの経鼻内視鏡では近接観察が可能である.色調パターンは経鼻内視鏡も経口内視鏡も同じであるため,見逃しを減らすためにはバレット食道線癌のLCIの色調パターンを頭に入れておくのは重要である.周囲粘膜よりも濃いオレンジ色の領域を示す症例が多く,あるいは紫色を呈している場合もある.

Ⅴ 咽喉頭疾患における画像強調診断

以前から画像強調法を用いた咽喉頭表在癌の診断の有用性が報告されている 58.咽喉頭の観察については,川田らが詳細に記述している 59),60.鼻孔から挿入し,上咽頭を観察する.経口内視鏡で見落としやすい中咽頭前壁は,経鼻的に中咽頭反転法を用いて観察すると良好な視野が得られる.下咽頭では発声させて左右梨状陥凹,喉頭を観察,最後にValsalva法にて咽喉頭展開し,左右前後に内視鏡を振りながら下咽頭後壁~輪状後部を観察する.

1.咽喉頭癌

食道癌では陥凹型が多いのに対し,咽喉頭表在癌では平坦型や丈の低い隆起型が多い.食道癌と同様に咽頭癌で有用な画像は,周囲の正常部分から病変に向かって正常血管が明瞭な境界をもって途切れる所見である.拾い上げ診断では(1)WLIの発赤調病変,(2)NBIやBLIの茶色の血管増生域,brownish area およびbrown dotsの所見が扁平上皮癌の初期像として早期診断に有用である 61.このような所見は最近の画質向上により経鼻内視鏡でも観察される(Figure 1112).LCIでは病変はオレンジ色あるいは紫色を呈する(Figure 12Table 2 60

Figure 11 

早期下咽頭癌(EG-840N).

a:白色光像.小さな褪色領域にわずかにドット状の血管が認められる.

b:BLI像.Brown dotsが明瞭となり,病変の境界が視認しやすい.

Figure 12 

早期下咽頭癌(EG-840N).

a:白色光像.わずかな発赤と血管の途絶が認められる.

b:LCI像.オレンジ色の病変が領域性をもって認められ,同部では紫色の血管が途絶している.

c:BLI像.Brownish area内にbrown dotsが明瞭に認められる.

Table 2 

咽喉頭表在癌の内視鏡所見(文献60より改変).

経口内視鏡観察を含めてBLIとLCIを比較したOgataらの報告では,ハイリスク患者を対象とした場合,咽喉頭癌の発見率はBLIの方が高い傾向がある(2.0%対 0.9%) 46.これは扁平上皮癌全体に当てはまる.しかし,消化管癌既往患者を対象としたLCIを用いたスクリーニング内視鏡の前向き研究(LCI-FIND)の詳細な検討では,経鼻内視鏡を用いた時でもLCIの方が咽頭腫瘍の検出には白色光観察よりも有利である 62.画像強調法はこれからの診断には必須と考えられる.

Ⅵ おわりに

画像強調法を用いた経鼻内視鏡による上部消化管疾患診断は標準型内視鏡と同様に革新的な進歩を遂げている.最近のCMOSセンサー搭載経鼻内視鏡では,解像度の改善によりその画質は標準型内視鏡と遜色はないと言っても過言ではない.そのため内視鏡医には微細画像診断の知識も要求されていることを理解する必要がある.鎮静なしで呼吸や心血管系への影響が少ない,咽喉頭において広角での観察ができる,胃内においても死角が少なく正面視しやすいという長所からも,これからも頻用されていく検査と考えられる.画像強調診断の応用は経鼻内視鏡診断の幅を広げるだけでなく,今後の人工知能支援の内視鏡診断にも貢献していくと考えられる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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