日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
大腸内視鏡検査における腺腫検出割合(adenoma detection rate):質の指標としての重要性と臨床的意義
河村 卓二 宇野 耕治田中 聖人
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2025 年 67 巻 6 号 p. 1155-1163

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要旨

腺腫検出割合(adenoma detection rate:ADR)は,大腸内視鏡検査の最も重要な質の指標の一つである.ADRは,大腸内視鏡検査で少なくとも1個以上の腺腫が発見された症例の割合として定義される.欧米では2000年代前半にADRの概念が提唱され,以降の研究により,ADRが内視鏡検査後の大腸癌発生率および死亡率といった重要な臨床アウトカムに影響を与えることが明らかとなった.2015年の米国の推奨値は25%(50歳以上の初回スクリーニング内視鏡を対象)であったが,2024年の改訂では35%(45歳以上のスクリーニング・サーベイランスおよび診断内視鏡を対象)へ引き上げられた.ADRの向上には,適切な前処置や十分な観察時間といった基本的要素に加え,画像強調観察や人工知能支援システムなどの新技術の活用が有用であると報告されている.一方,日本ではADRのモニタリング体制が未だ不十分であり,今後の課題と考えられる.

Abstract

The adenoma detection rate (ADR), defined as the proportion of cases in which at least one adenoma was detected during colonoscopy, is among the most important quality indicators for colonoscopy. The concept of ADR was introduced in the early 2000s in the United States and Europe, with subsequent studies demonstrating its significant impact on clinical outcomes, including the incidence and mortality of post-colonoscopy colorectal cancer. In 2015, the recommended level in the United States was 25% (for first-time screening colonoscopies in individuals aged ≥ 50 years); however, the revised 2024 US recommendation has increased the target to 35% (for screening, surveillance, and diagnostic colonoscopies for individuals aged ≥ 45 years). Besides basic factors, such as appropriate bowel preparation and sufficient observation time, the introduction of new technologies, such as image-enhanced endoscopy and artificial intelligence-assisted systems, is useful for improving ADR. In Japan, systems for monitoring ADR remain underdeveloped, highlighting the need for improvement in this area.

Ⅰ はじめに

日本の大腸癌の年齢調整死亡率は主要7カ国で最も高い水準にある 1.しかし,本邦で広く普及している大腸内視鏡という強力なツールを適切に使用することにより,大腸癌は予防しうるといわれている 2.この予防効果を最大限に発揮させるためには,内視鏡の質の担保が極めて重要である.従来から,大腸内視鏡では術者や検査条件による腫瘍の見逃しが課題とされてきた 3.その中で,腺腫検出割合(adenoma detection rate:ADR)は国際的に最も重要な質の指標の一つとして認識されている 4.本稿では,ADRの基本概念から最新の知見まで,歴史的背景と理論的根拠も踏まえて詳述する.

Ⅱ 基本概念と歴史的背景

ADRの基本概念と定義

ADRは,大腸内視鏡検査において少なくとも1個以上の腺腫が発見された症例の割合として定義される 4.この概念は2002年に米国のMulti-Society Task Forceにより提唱され,当時のレビューには“Adenoma prevalence rates detected during colonoscopy in persons undergoing first-time examinations”という表現で報告されている 5.ここで注意が必要なのはADRを算出する対象者である.米国におけるADRの算出対象は,2006年以降の近年まで50歳以上の初回スクリーニング大腸内視鏡検査のみであった(Table 1 4),6),7.2024年の改訂でサーベイランス内視鏡や診断内視鏡も含めた計算方法が採用されたが,便潜血陽性を検査契機とした大腸内視鏡は対象に含まれていない 4),8.本邦では,便潜血陽性者を対象とした大腸内視鏡も「スクリーニング大腸内視鏡」という用語で捉えられることが多い.しかしADRを議論する際には,便潜血陽性者はハイリスク群に該当するため通常の対象者とは区別して考える必要がある.

Table 1 

腺腫検出割合の定義と米国での対象者・推奨値の推移 4

歴史的背景と発展過程

1980年代から行われた米国のNational Polyp Studyにより,大腸内視鏡で発見された腺腫性ポリープをすべて切除することで将来的な大腸癌が予防できることが報告された 9),10.2000年代に入り全大腸内視鏡検査をスクリーニングに使用する流れが加速するようになった 11)~13.米国での大腸癌スクリーニング受診率は2000年では50歳以上の38%であったが,2021年には45歳以上の59%を占めるようになった 14

スクリーニングに使用される大腸内視鏡の標準化と質の担保は重要な課題である.質の指標として,癌やadvanced adenoma(10mm以上の腺腫や粘膜内癌など)の検出割合ではなくADRが提案されるに至った理由が,2002年の文献には以下のように説明されている 5.①大腸からすべての腫瘍性病変が除去されることが望ましい,②ADRはadvanced adenomaの有病率よりもかなり高いため,ADRの方が内視鏡医の成績のばらつきを検出しやすい,③小さな腺腫を検出する十分な技術があれば,大きなadvanced adenomaも検出されると仮定するのは妥当である.

その後,ADRを質の指標として多くの検討が行われてきた.特に重要な進展として,ADRと内視鏡後発生大腸癌(post-colonoscopy colorectal cancer:PCCRC)との関連が明確化され 15,さらには大腸癌による死亡率との相関も示された 16.これらの知見は,ADRが単なる技術的指標ではなく,臨床的アウトカムを予測する有用な指標であることを強く示唆している.これらの結果から,米国 4や欧州 17ではADRが最も重要な質の指標の一つとして採用されている.

ADRの推奨値

現在,米国では45歳以上のスクリーニング・サーベイランスおよび診断内視鏡を対象にして35%以上というADRの基準値が推奨されている 4.2002年の提唱当初は20%以上(男性25%以上・女性15%以上)が基準とされていたが,後に詳述するKaminskiらの大規模研究において,ADRが20%以上の内視鏡医はPCCRCのリスクが低いことが示され,この基準値の有用性が立証された 15.さらに,Corleyらは1%のADR上昇が3%の大腸癌リスク低下につながることを報告し 16,ADRのさらなる上昇が大腸癌予防に寄与することが明らかとなった 18),19.2015年の改訂で25%以上に引き上げられ 7,ADRを改善させる努力が進んでいる現在では35%以上が推奨されるに至っている 4),20

便潜血陽性者を対象とした場合はより高いADRが求められる 21)~26.2022年のオランダからの報告では,便潜血検査を基盤としたスクリーニングプログラムでのADRの中央値は67%であり,70%以上の内視鏡医のPCCRCのリスクが低かったことが報告されている 23.また,2023年のイタリアからの報告ではADRの平均値は48.3%であり,55%以上の内視鏡医に比べて40%未満の内視鏡医は2.35倍のPCCRCのリスクがあると報告されている 24

なお,同じ便潜血陽性者を対象にしているにもかかわらず上記の2つの研究でADRの値に大きな乖離があるのは便潜血検査のカットオフ値の設定に起因するところが大きいと考えられる.便潜血検査は定量法による測定が可能であり,地域や施設によって異なるカットオフ値が採用されている 22.オランダの研究ではカットオフ値が47μg/g便と高い値に設定とされており,イタリアでの設定(20μg/g便)に比べるとハイリスクの被検者が大腸内視鏡検査の対象となっていることが,高いADRの主要因である可能性が高い 23),24.また,オランダの研究では対象者の年齢がやや高い(55~75歳)ことも高いADRの一因である(イタリアの研究では50~69歳).

また,米国では地域や施設間の比較性を保つため,便潜血検査陽性者を一般的なADR算出対象から区別する運用が採用されている 4.便潜血検査陽性者は他の検査契機の対象者と比べてADRが高くなるため,便潜血陽性者の割合が高いとADRが過大評価されてしまう可能性があるためである.米国におけるADRの推奨値は,45歳以上の対象者に対して20μg/g便をカットオフ値とした場合に50%と設定されている 4.本邦でも20μg/g便(≒100ng/mL)がカットオフ値として採用されている施設は多いが 27,読者の施設や地域での設定値を確認することを推奨する.

ADR算出の地域性

前述のように,米国では近年までADRの算出対象は初回スクリーニング大腸内視鏡に限定されていた.しかし,スクリーニングに加えてサーベイランスおよび診断内視鏡を含めたADRの値についても,スクリーニングのみのADRの値と大きな違いがないことが報告されている 28.また,Corleyらはスクリーニング大腸内視鏡とすべての検査契機の大腸内視鏡のADRを比較し,いずれの指標でもPCCRCのリスク予測や低パフォーマンスの医師の特定において有効な指標であることを報告した 29.2024年の改訂では前述のように検査契機を限定せずに(ただし便潜血陽性者は除く)ADRを計算することとなっている 4

欧州では便潜血検査によるスクリーニングが一般的であり,緊急内視鏡や既知の病変の治療などを除いて50歳以上のすべての大腸内視鏡検査を分母としてADRが算出されている 17.2017年の欧州の推奨では25%のADRが基準とされたが,便潜血陽性者が多い集団ではより高いADRの基準が必要とされる可能性も述べられている 17

本邦においては,5mm以下の腺腫は切除せず経過観察することが容認されており,病理学的な腺腫をもとにしたADRを算出しようとした場合に適切な値を算出することが困難な場合がある.欧米では病理学的な指標が使用できない場合は一般的にpolyp detection rate(PDR)が用いられる 30.一方で本邦では腺腫の診断として画像強調観察などを使用した内視鏡で行っている場合が多く,内視鏡的な診断をもとにしたADRを指標にできる可能性がある.筆者らは内視鏡的ADRと病理学的ADRが相関することを報告しており 31,本邦の状況を鑑みると多くの施設で測定可能な内視鏡的ADRも指標の一つとして考えてもよいのかもしれない.

Ⅲ 臨床的意義とエビデンス

ADRと臨床アウトカムの関連

ADRは単なる技術的指標ではなく臨床アウトカムと密接に関連する重要な質の指標である.本項では,これらのエビデンスを示したランドマーク論文を詳述する.

ADRとPCCRCの関係

Kaminskiらはポーランドの大規模な大腸癌スクリーニングプログラムのデータを用いて,内視鏡検査の質の指標とPCCRCリスクの関連を検討した 15.45,026名の被験者と186名の内視鏡医を対象とし,中央値52.1カ月という観察期間で実施された.この研究で最も注目すべきことは,内視鏡医のADRがPCCRCリスクと強く関連することが初めて示されたことである.具体的には,ADRが20%以上の内視鏡医と比較して,11%未満,11-14.9%,15-19.9%の群のPCCRCのハザード比が10.94,10.75,12.50と,いずれも統計学的に有意な上昇を示した.一方で,それまで重要な質の指標と考えられてきた盲腸到達割合は,PCCRCリスクとの有意な関連を示さなかった.この研究結果は,大腸内視鏡検査の質を評価する上でADRが極めて重要な指標であることを明確に示した.

ADRと大腸癌死亡との関係

CorleyらKaiser Permanente Northern Californiaの314,872件の大腸内視鏡検査データを用い,136名の消化器内視鏡専門医のADRと,最長10年間のPCCRCの発生および死亡との関連を分析した 16.上記のKaminskiらの研究と比較して対象検査件数が約7倍(314,872件)に増加し,PCCRCの症例数も712例(Kaminskiらは42例)と大幅に増加し,統計学的な信頼性が大きく向上した.内視鏡医のADRは7.4%から52.5%まで広範囲に分布し,ADR最高群(第5五分位)は最低群(第1五分位)と比較して,PCCRCリスクが48%低下,進行癌リスクが57%低下,癌死亡リスクが62%低下することが示された.さらに重要な点として,ADRが1%上昇するごとにPCCRCリスクが3%,癌死亡リスクが5%低下するという直線的な関係が認められた.この研究結果により,ADRの重要性を示すエビデンスがさらに強固なものとなった.

ADRに影響を与える因子

ADRに影響を与える因子は多岐にわたることが報告されており,主に患者側因子・検査側因子・施設因子に大別される 32

患者側因子

患者の年齢と性別がADRに影響を与える重要な因子である.一般に,男性のADRが高く,高齢になるにつれADRが上昇することが知られている 33.生活習慣関連因子も腺腫発生に重要な影響を与えるといわれており,2023年のKimらの詳細な解析では,腹部肥満・高BMI・メタボリックシンドローム・赤肉の摂取が腺腫の発生に関連すると報告された 34

大腸内視鏡の前処置もADRに影響を与える 35),36.欧米で多く採用されているBoston Bowel Preparation Scale 4とは異なり,本邦のガイドラインではより簡便な指標としてアロンチックスケールが推奨されている 37.アロンチックスケールで前処置が不良(poor/insufficient)と判断される場合はADRが低下すると報告されている 36.さらに,前処置が不良の場合,PCCRCリスクも増加することも報告されており 38,良好な前処置は極めて重要である.

検査医側因子

検査医の経験年数 39や年間検査件数 32もADRに影響する可能性があることが報告されている.年間検査件数が多い方がADRの向上につながると報告されている一方 32,経験年数については長くなるほどADRが低くなる可能性が指摘されており 39,継続的なトレーニングが質の向上には重要であることが示唆されている 40),41

検査手技に関連する因子も詳細に検討されている.特に十分な観察時間の確保が重要であることがいわれており,2006年にBarclayらは,病変がない場合の盲腸からの抜去時間が少なくとも6分以上であることがADR向上に重要であると報告した 42.さらに抜去時間はPCCRCとも関連することが報告され,重要な質の指標と考えられるようになった 43.筆者らは本邦の多施設研究で欧米と同様に6分以上の抜去時間はADRの向上に関連することを報告しており 25,本邦のガイドラインでも6分以上の抜去時間が推奨されている 37.近年ではより長い抜去時間がADR向上に有用であることが報告されており 44,2024年の米国の推奨では抜去時間が8分以上に延長されている 4

また,筆者らは盲腸までの平均挿入時間が短い内視鏡医(すなわち,内視鏡技術レベルが高いと思われる内視鏡医)の方が高いADRを得られることも報告している 25.病理学的に腺腫を診断するためには,単に腺腫を見つけるのみならず適切に切除・回収を行い病理診断に供する必要があり,一定の内視鏡操作技術が求められる.

施設因子

イタリアからの報告では,施設因子として鎮静剤の使用やスクリーニングに特化した検査室の運用などがADR向上に結び付くと報告されている 32.施設の状況は各国で異なると思われるが,このような結果をフィードバックしてADRの改善につなげるプロセスが重要と考えられる.

ADR以外の病変検出割合

Adenoma per colonoscopy(APC)

ADRはその定義から,1個のみの腺腫を見つけた検査と,多数の腺腫を検出した検査が同じ評価となる 4.このため,1つの腺腫を発見した時点でその後の注意深い観察をやめてしまう可能性が指摘されており,その欠点を補う指標としてadenoma per colonoscopy(APC)が提唱されている 4),45.2024年の米国の推奨では0.6以上という指標も示されているが,APCの測定はADRに比べて煩雑であることが欠点として挙げられている 4

Sessile serrated lesion detection rate(SSLDR)

近年,serrated pathwayによる発癌経路の重要性が認識されるようになり,serrated lesionの検出割合が注目されるようになってきた.Serrated lesionの検出に関する指標として,Sessile serrated lesion detection rate(SSLDR),Proximal serrated polyp detection rate ,Clinically significant serrated polyp detection rateなどが知られている 4.ADRとこれらserrated lesionの検出割合にはある程度の関連はあるものの,ADRとserrated lesionの検出割合を組み合わせることで,より正確にPCCRCリスクを評価できることが示唆されている 46)~48.よって,ADRとは独立してserrated lesionの検出割合を評価することが提案されている.2024年の米国の推奨では上記の指標のうちの一つであるSSLDRが採用され,6%の値が基準として採用されている 4.しかしながら,SSLの診断は病理医の間でも乖離があり,検出割合の評価が病理医の診断能にも依存していることはSSLDRの弱点の一つといえるだろう 49

Ⅳ ADR向上のために必要なこと

前述のようにADRの改善が大腸癌死亡率の低下に関連することが報告されており 18),19,継続的にADRを向上させる努力を行うことは重要と考えられる.

基本手技の順守

既に述べたように,大腸内視鏡施行前の前処置を良好に保つこと,適正な抜去時間を順守することはADRの向上に有効である.しかしながら単に抜去時間を順守するだけでは不十分であり,より多くの粘膜を観察できるように工夫をすることが必要である.抜去時間の基準値は,より多くの粘膜を観察する努力を行った結果としての時間の指標と考えることが重要と考えられる.

右側結腸ではひだが高いため,特にひだ裏病変の見逃しが懸念される.上行結腸では管腔が広いため,反転操作によるひだ裏病変の検出が有効であるかどうか検討されてきた.2022年のメタアナリシスでは順方向の繰り返す観察が有効であることが示唆されており 50,反転観察は必ずしも全例に行う必要はないであろう 37.また,空気や腸液の移動のために体位変換を行うことは簡便に行える工夫である.適宜体位変換を行うことでADRの向上が得られることが報告されている 51),52

画像強調観察の併用

画像強調観察機能を備えた新世代の内視鏡システム(Image-enhanced endoscopy:IEE)は,ADRの向上に重要な役割を果たすことが期待されている.代表的なIEEであるNarrow-band imagingでは,良好な前処置が得られている場合にADRの上昇が得られることがメタアナリシスで報告されている 53.また,Suzukiらは大規模なランダム化比較試験でLinked color imagingの使用がADR向上に有効であることを2023年に報告した 54.さらにTexture and Color Enhancement Imaging 55やi-scan 56でもADRの向上がみられることがランダム化比較試験やメタアナリシスで報告されている.

人工知能(AI)の活用

内視鏡医療における人工知能(Artificial Intelligence:AI)技術の進歩はADRの向上に革新的な変化をもたらすことが期待され,現在研究が盛んに行われている 57)~63.2024年のメタアナリシスでは,AI支援による大腸内視鏡検査は従来の内視鏡検査と比較してADRを20%向上させることが示された 64.ただしこの改善効果は主に微小病変(5mm以下)の発見向上によるものであり,advanced neoplasiaやsessile serrated lesionsの検出率向上は示されなかった.実際に一般病院の日常臨床においてもこのADR向上の効果が得られるのか,またAIの使用がPCCRCの予防効果につながるかどうかなどが今後の課題と考えられる.

Ⅴ 検査記録と日本の現状

大腸内視鏡検査の質を適切に評価し継続的な改善を図るためには,標準化された検査記録システムの確立が不可欠である.内視鏡検査レポートには,患者基本情報や検査契機,観察所見に加え,前処置の程度や抜去時間などの質の指標に関する情報を記載することが望ましい.

近年,日本消化器内視鏡学会が中心となりJapan Endoscopy Database(JED)の整備が進んでいる 65.標準化された用語で必要項目が入力できるシステムとして,ADRの算出に当たってJEDには重要な役割が期待される.しかしながら各病院での現在の入力状況の実際として,多くの欠損データがある点や,ADR算出の基礎となる病理データの取得をどのように行うかといった点などの問題を抱えている 25),31),66

欧州の大腸内視鏡検査の質の現状を評価したECQI Groupの大規模調査では,12カ国91名の内視鏡医,52施設から得られた6,445件の大腸内視鏡検査データが分析された 67.この論文で注目すべきは,ADRの定期的な記録が施設で29%,内視鏡医で34%に留まり,ADR研究が日本よりも進んでいる欧州でも重要な質の指標の記録が十分でなかったという点である.日本においては現状ではほとんどの施設で組織的にADRを測定していないと思われ,ADRの算出に障壁となるような課題を一つ一つクリアしながら質の指標の測定環境を整えてゆく必要がある.

Ⅵ おわりに

大腸内視鏡の代表的な質の指標であるADRについて概説した.本邦においてもADRをはじめとした質の指標が適切に測定されフィードバックされることで,将来的な大腸癌死亡の抑制につながることを期待したい.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:河村卓二(オリンパスマーケティング株式会社)

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