日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
胃瘻チューブ交換時のガイドワイヤーが結び目を形成した1例
飯塚 泰弘沼田 真理子望月 奈穂子
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2025 年 67 巻 6 号 p. 1164-1167

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要旨

症例は100歳女性.廃用症候群による嚥下機能障害のため,経皮内視鏡的胃瘻造設術後であった.内視鏡やX線透視を使用せずに2回目の胃瘻チューブ交換を施行したところ,ガイドワイヤーが抜去できなくなった.内視鏡で確認すると,ガイドワイヤーが胃粘膜を巻き込むように結び目を形成していた.そこで,生検鉗子で内視鏡的に結び目を緩めることで,ガイドワイヤーを抜去することができた.胃瘻交換時にガイドワイヤーが抜去できなくなった場合には,粘膜で結び目を形成している可能性がある.また,その予防には,必要以上にガイドワイヤーを長く挿入しないことや交換前に送気をして胃を膨らませることも重要である.

Abstract

A 100-year-old woman underwent percutaneous endoscopic gastrostomy for swallowing dysfunction. As the gastrostomy tube was replaced without endoscopy or fluoroscopy for the second time, the guidewire could not be removed. After checking the inside of the stomach with endoscopy, a guidewire knot involving the gastric mucosa was formed, loosened endoscopically with biopsy forceps, and removed. Knot formation must be considered if the guidewire cannot be removed while replacing the gastrostomy tube without endoscopy. Moreover, to avoid knot formation, the guidewire should not be inserted too far into the lumen, and some air should be injected into the stomach preoperatively.

Ⅰ 緒  言

咽頭・食道の通過障害や嚥下機能の低下を有する患者の栄養投与経路として,胃瘻が使用される.経皮内視鏡的胃瘻造設術は侵襲的手技であることから,造設時に出血や穿孔などの有害事象が生じることがある.一方,定期的な胃瘻チューブの交換時にも誤挿入など有害事象が生じるリスクがあり,予防のために内視鏡やX線透視などによる観察下に交換することが望ましい.しかし,実臨床では,患者の状態,施設の設備や人的資源の関係で,これらの観察下に胃瘻を交換することが困難な場合がある 1),2.今回われわれは,内視鏡やX線透視を使用せずに胃瘻チューブを交換した際に,挿入したガイドワイヤーが胃粘膜を巻き込むように結び目を形成してしまい,抜去できなくなった症例を経験した.

Ⅱ 症  例

患者:100歳,女性.

主訴:特になし(胃瘻チューブ交換目的).

既往歴:薬剤性洞不全症候群,うっ血性心不全,高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症,慢性腎臓病,陳旧性脳梗塞,骨粗鬆症,虫垂炎術後,白内障術後.

常用薬:ランソプラゾール15mg.

アレルギー:なし.

臨床経過:廃用症候群による嚥下機能障害を有する患者であり,バンパー型のイディアルボタン24Fr 4cm(Olympus社,東京)で経皮内視鏡的胃瘻造設術が施行された.胃瘻造設6カ月後に,内視鏡観察下で同じ製品の同じサイズの胃瘻チューブに交換し,さらに6カ月後に2回目の胃瘻交換を施行した.内視鏡やX線透視を使用しなかったが,附属のガイドワイヤーとオプチュレーターを使用し,新しい胃瘻チューブを留置した.しかし,最後にガイドワイヤーを抜去しようとしたところ,抵抗があり抜去できなかった.そこで,その15分後に内視鏡(GIF-Q260J,Olympus社,東京)を挿入して確認したところ,ガイドワイヤーが胃瘻挿入部の対側壁で粘膜を巻き込み,結び目を形成していた(Figure 1-a).把持鉗子(FG-49L-1,Olympus社,東京)でガイドワイヤーを把持して,引っ張ることで結び目を緩めようとしたが不成功であった.次に生検鉗子(FB-231K,Olympus社,東京)を結び目のループ内に押し込み,鉗子を開くことで徐々に結び目を緩めることで,ループを形成したままであったが,ガイドワイヤーを粘膜から外すことに成功した(Figure 1-b).結び目が外れた際に,粘膜がフラップ状に剝離された状態であることが判明したが,筋層の露出はみられず,粘膜層あるいは粘膜下層浅層までの剝離と考えられた(Figure 1-c,d).結び目を形成したままのガイドワイヤーを,生検鉗子で把持した状態で,内視鏡ごと経口的に抜去した.もともと投与中であったランソプラゾールを30mg/日に増量し,経過観察をした.その後,内視鏡観察は施行しなかったが,腹痛や発熱など,消化管穿孔などを疑う症状は出現しなかった.

Figure 1 

上部消化管内視鏡所見.

a:胃瘻挿入部の対側壁(胃体下部大彎後壁)の粘膜を巻き込むようにガイドワイヤーが結び目を形成していた.

b:ガイドワイヤーが結ばれてループになっている部分に生検鉗子を挿入して開くことにより結び目が緩くなった.

c:ガイドワイヤーが外れ,粘膜が剝離した状態となったが筋層の露出や穿孔はみられなかった.

d:結び目が残った状態で抜去されたガイドワイヤー.

Ⅲ 考  察

バンパー型胃瘻チューブの2回目の交換を内視鏡やX線透視を使用せずに施行した際に,ガイドワイヤーが胃瘻対側の粘膜に結び目を形成したため抜去できなくなり,内視鏡的に結び目を緩めることで抜去できた症例の報告である.1980年から2024年までの期間で,医学中央雑誌で「胃瘻」「ガイドワイヤー」「結び目」,PubMedで「gastrostomy」「guidewire」「knot」をキーワードに検索したが,胃瘻交換時にガイドワイヤーが粘膜で結び目を形成した報告はみられなかった.

胃瘻交換時の有害事象は1-3%に発生するとされ,その内容には出血,瘻孔損傷・胃粘膜損傷,カテーテル破損,カテーテル抜去・挿入困難,腹腔内誤挿入,結腸内誤挿入,バルーン注入水の抜去困難などさまざまなものが挙げられ 2)~4,胃瘻交換はリスクの高い手技と言える.しかし,胃瘻交換時に,ガイドワイヤーが粘膜に結び目を形成したとする報告はなく,まれであると考えられた.

内視鏡やX線透視下に観察して胃瘻交換をすることができれば,本例で生じたガイドワイヤーの胃粘膜への結び目形成を予防することができたと思われる.しかし,胃瘻を有する患者の全身状態が考慮され,実臨床での内視鏡下の交換は22-32%,X線透視下の交換は13%と報告されており 1),2,本例でも2回目の胃瘻交換ということもあり,内視鏡やX線透視は使用していなかった.また,本例では交換前に空気や二酸化炭素などによる送気や液体の注入で胃を拡張させていなかった.その状態で,胃瘻チューブの抜去や挿入時にガイドワイヤーが逸脱することを懸念して,ガイドワイヤーを長めに挿入していた.その結果,ガイドワイヤーが胃瘻挿入部の対側胃壁に当たり,次に挿入側に当たり,再度対側壁に当たりと,少なくとも3回跳ね返ることで粘膜に結び目が形成されたと考えられた.したがって,内視鏡やX線透視で確認せずに胃瘻交換を行う際には,胃内を送気で拡張させることと,ガイドワイヤーを必要以上に長く挿入しないことが重要であると思われた.

一方,本例では重篤な有害事象をきたさずに,内視鏡手技の工夫で結び目を緩め,ガイドワイヤーを粘膜より外すことができた.しかし,結び目を完全に解除することはできず,粘膜損傷をきたした.本例の経験時は思いつかず施行しなかったが,2チャンネルスコープを使用し,2方向から鉗子を操作することで,結び目を完全に解除できた可能性もあったと考えられた.

Ⅳ 結  語

胃瘻チューブの交換時に,胃内に挿入したガイドワイヤーが粘膜で結び目をつくり抜去困難となった症例を経験した.内視鏡やX線透視を使用せずに胃瘻交換を行う場合には,胃内を拡張させることや挿入するガイドワイヤーの長さに注意を払うことが必要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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