日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
Lumen-Apposing Metal Stentを用いたEUS下膵周囲液体貯留ドレナージ(動画付き)
向井 俊太郎 土屋 貴愛糸井 隆夫
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電子付録

2025 年 67 巻 6 号 p. 1195-1204

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要旨

膵周囲液体貯留は,慢性膵炎や腫瘍,膵炎後の局所合併症として発生する液体貯留病変の総称で,感染を伴う場合には侵襲的な治療が必要となる.EUS下膵周囲液体貯留ドレナージ(EUS-guided peripancreatic fluid collection drainage:EUS-PFD)は標準的治療法であり,内部に液体成分を含む膵仮性囊胞(pancreatic pseudocyst:PPC)には高い奏効率を示す.一方,壊死物質を含む被包化壊死(walled-off necrosis:WON)では追加の内視鏡的ネクロセクトミーが有効である.Lumen-apposing metal stent(LAMS)は,EUS-PFDと追加処置を効率化する画期的デバイスで,特に困難なWON治療に適する.本稿では,LAMSの適応,LAMS留置の基本手技,留置後マネージメントを詳述し,その利点と課題を示す.

Abstract

Peripancreatic fluid collection is a general term for fluid collection lesions that occur because of chronic pancreatitis, tumors, or local complications after pancreatitis, and interventional treatment is required in case of infection. EUS-guided peripancreatic fluid collection drainage (EUS-PFD) is a standard treatment technique with a high clinical success rate for pancreatic pseudocysts containing fluid components. On the other hand, additional endoscopic necrosectomy is effective in cases of walled-off necrosis (WON) that contain necrotic tissues. A lumen-apposing metal stent (LAMS) is an innovative device that improves the efficiency of EUS-PFD and additional procedures and particularly suitable for difficult WON treatment. This article describes in detail the indications for LAMS, basic technique of LAMS placement, and post-placement management and shows its advantages and issues.

Ⅰ はじめに

膵周囲液体貯留[(peri)pancreatic fluid collection:PFC]は,慢性膵炎や腫瘍などに伴う膵管破綻から形成される膵仮性嚢胞(pancreatic pseudocyst:PPC),急性膵炎後の局所合併症である急性壊死性貯留(acute necrotic collection:ANC)/被包化壊死(walled-off necrosis:WON),膵切除後の膵液漏などの腫瘍性病変ではない膵周囲に発生した液体貯留病変の総称である.このPFCに感染を併発し,抗菌薬などの保存的治療のみでは感染のコントロール不能な場合は侵襲的なドレナージを中心としたインターベンション治療が必要となる.1992年にGrimmらが初めて経消化管的に超音波内視鏡(EUS)下にPFCを穿刺し,ドレナージステントを留置するEUS下膵周囲液体貯留ドレナージ(EUS-guided pancreatic fluid collection drainage:EUS-PFD)を報告し 1,現在PFCに対するドレナージの第一選択として広く普及している.

内部が液体成分で構成されるPPCに対しては,EUS-PFDによるドレナージのみで臨床奏効率は90%以上と良好な治療成績が報告されている 2.一方で,内部に固形の壊死物質を含む膵炎後WONに対しては,ドレナージ不十分となることも多く,EUS-PFD単独の臨床奏効率は40-50%程度と報告されている 3.そこで開発されたのが,EUS-PFDにより形成されたルートから内視鏡をWON内に挿入して壊死組織除去(ネクロセクトミー)を行う内視鏡的ネクロセクトミー(endoscopic necrosectomy:EN)である 4.現在,膵炎後局所合併症であるANC/WONに対するインターベンション治療としてEUS-PFDによる低侵襲ドレナージを行い,その効果を見ながら必要に応じてENなどの侵襲度の高い治療を追加していく内視鏡的ステップアップ・アプローチによる内視鏡治療がガイドラインでも推奨されている 5)~7.ドレナージ方法としては,従来はプラスチックステントを留置するドレナージが基本であった.近年,ドレナージ効果が従来のプラスチックステントよりも高く,一旦留置すれば内視鏡の出し入れが容易であり,ENを効率よく行うことができる専用のフルカバー型メタルステント(lumen-apposing metal stent:LAMS)が開発され,臨床応用されている 8),9.本稿ではPFCに対するLAMSを用いたEUS-PFDの適応,手技の方法,LAMS留置後のマネージメントについて概説する.

Ⅱ EUS-PFDにおけるLAMSの適応

液体成分で構成されるPPCや大きさが小さく壊死物質の含有量が少ないWONに対しては,1本の7Fr両端ピッグテイル型プラスチックステント(double pigtail plastic stent:DPS)と5Frもしくは6Frの経鼻ドレナージチューブを留置する内外瘻ドレナージが基本となる 10.5cm以下など病変が小さい場合には内瘻ドレナージのみもしくは外瘻ドレナージのみを行うこともある.壊死組織を多く含有するWONに対してDPSを用いたEUS-PFDを行い,追加のENを行う際には,ラージバルーンでドレナージによって造設した経路を拡張して,内視鏡をWON内に挿入していく.しかし,十分な拡張がえられないことがあり,また瘻孔の場所が悪いとスコープにうまく力が伝わらずにWON内に内視鏡を挿入することが難しく,効率よくENを行うことができない症例も経験する.一方でLAMSを用いれば,バルーン拡張することなくそのままステント内腔から内視鏡を出し入れすることが可能であり,ENを含む追加の処置が容易にでき,非常に有用なステントである.壊死物質の含有量が多く,追加でENが必要となることが予想されるWONの症例がよい適応となる 11

現在ではLAMSのデリバリーシステムは,先端に通電部分をつけることによりさらに進化し,穿刺・通電による拡張・ステント留置を同時に行うことができる一体型ステントデバイスであるHOT-LAMS(HOT-AXIOSTMシステム,BostonScientific社)となっている(Figure 1 12.本邦では2017年10月にPFCのみを適応にHOT-LAMSシステムとして保険承認され,2018年7月に保険償還を獲得している.安全面を考慮して定期的に行われているドライモデルと膵周囲液体貯留ウエットモデルを用いた講習会を受講した専門医のみが実臨床でHOT-LAMSシステムを用いることができるようになっている.「胃壁または腸壁に密着している,症候性膵仮性囊胞または70%以上の液体成分を認める症候性被包化壊死に対し,経胃または経十二指腸的な内視鏡治療に使用される.」という適応病変を遵守し,さらに「径6cm未満の囊胞への留置は使用経験がなく,安全性が確立されていない.」とあるため,このデバイスが普及し安全性が確立するまでは6cm以上の径を有するPFCに対し使用すべきである.EUS-PFDにおいてステント内径が10mm,15mm,20mmのLAMSが選択できる.追加のネクロセクトミーのことを考慮すると内視鏡を挿入しやすい15mmか20mmがよい.15mmと20mmのLAMSでは治療成績は変わらないと報告されており,ステント抜去が行いやすい15mmのLAMSを主に使用するのがよいと考えられる 13

Figure 1 

一体型ステントデバイスであるlumen-apposing metal stentデリバリーシステム(HOT-AXIOSTM)の概要.

穿刺・通電による拡張・ステント留置を同時に行うことができる一体型ステントデバイスであり,ステント内径が10mm,15mm,20mmのLAMSが選択できる(サドル部のステント長は10mmのみ).

(画像はBostonScientific社より無償提供)

本邦のガイドラインで後ろ向きコホート研究10編によるメタ解析も行われており,臨床奏効率はLAMSの方がDPSよりも良好との結果から,追加処置が必要な困難例にはLAMSを使用することが提案されている 7),14.LAMSの問題点の1つとして,高額デバイスであることによるコストの問題がある.しかし,コスト分析の検討では,全症例の検討でも治療コストに有意差は認められず,ネクロセクトミーなどの追加処置が必要な難治例に対しては効率よく治療を進めることができるため,コスト面でもむしろ優れている可能性が示唆される結果が報告されている 11.効率よく治療が遂行できるため,治療経過における全体の偶発症もLAMS群の方が少ない傾向にあるが,後述するLAMS特有のステント関連偶発症のリスクがある.近年報告されたメタ解析の結果では,追加のネクロセクトミーを必要としないPPCに対してはDPSとLAMSの臨床奏効率は同等であり,確実に内瘻化による再発予防が可能なDPSの方がよいかもしれない 15.LAMSとDPSの利点と欠点を理解し,症例に応じて使い分ける必要がある.

Ⅲ LAMSを用いたEUS-PFDの手技

フルニトラゼパム(サイレース),ペンタゾシン(ソセゴン)などを用いてしっかり鎮静と鎮痛をかけて手技を行う.比較的若年で大酒家の患者など,鎮静鎮痛をかけても激しい体動が懸念される場合は,体位固定具を使用して安全に手技が行えるように準備を整える.穿刺からステント留置まで,すばやく完遂することが安全かつ確実に手技を成功させるコツとなるため,緊急時であったとしてもしっかりと人手の確保と処置具の準備を怠らないことは極めて重要である.

HOT-LAMSシステムを用いたEUS-PFDの基本手技を示す(Figure 2電子動画 1).EUSを挿入してPFCを描出する.主に液体成分で構成されるPPCなどの病変の認識は安易である.しかし,WONは被包化された液体成分の中に高エコーの壊死組織を認め,液状化した部分が少ない場合やWON内に空気を含有する場合には,周囲の脂肪組織や空気を含有する消化管と鑑別が安易でなく,WON自体を明瞭に描出できない場合もある.CTでの消化管とWONの位置関係,透視下でのスコープの位置などを参考に慎重に観察して病変を同定する.また,ペルフルブタン(ソナゾイド)を用いて造影EUSを行うと,WONには造影剤の流入がほとんど認められないため周囲の臓器との鑑別に有用である.ステント長が10mmであるため,EUS観察時に穿刺ルートの消化管内腔からPFCの内腔までの距離が10mm以内である部位を選択し,デリバリーシステムを3-4cm挿入する必要があるため,EUSで4cm以上の内腔がある場所を穿刺部位として選択するとよい.留置の方法は,FNA針で穿刺しガイドワイヤーを留置してルートを確保した後にHOT-LAMSシステムで通電する方法もあるが,最近は事前の穿刺やGW留置を行わず,そのままHOT-LAMSシステムで通電穿刺して挿入するsingle step法(freehand法またはfree-style法)が主流である.高周波通電装置に関しては,当科ではERBE社のICC 200を用いており,設定はauto cut modeのcut 100W,effect4としている.通電穿刺の際に,通電する前にデリバリーを押しすぎると胃壁を滑ってしまうため,先端が胃壁にちょうど当たったところからまず通電を行ってからデリバリーを進めるon and pushがよい.ほぼ抵抗なく先端がPFCの内腔に進むため,もし切れないと感じたら,通電コネクターの未装着や切開モードが間違っていないか,操作環境を再確認すべきである.デリバリーを囊胞内に進め,囊胞側を展開するとEUS画面でステントが展開されたことが確認できる.デバイスが内視鏡に固定されているが故に近位端の方へ戻りながら展開され,そのデリバリーシステム先端から戻る距離がおよそ3.5cmあるためこの距離を十分確保してから展開する必要がある.ゆっくりデリバリーを引いてステントの囊胞内腔側の位置を合わせる.EUS画像で囊胞側のフランジが囊胞壁に当たって変形し,ラグビーボール型になっているとちょうどいい位置であるとされている.EUSスコープとしてオリンパス社のUCTを使用する場合は,目安としてステント内腔のインナーシースと超音波画面上のステント左端が着くか着かないかのところまで引き寄せる.位置合わせをしたら,スコープのチャネル内で消化管側のフランジを展開する.その後,十分送気しながらスコープに少しダウンアングルをかけて右に捻ると,消化管壁と内視鏡の間に距離が生まれ刺入部とステントが視認できる.視認できない時はカテーテルロックを外して内視鏡をわずかに口側に引きながらデリバリーをわずかに押すことで視認できるようになる.視認できたらデリバリーをもっと押すことでステントがチャネル内から押し出されて完全に展開する.この際に内視鏡を引きすぎると消化管内に脱落してしまうため,消化管と内視鏡の間に距離が取れてさえいれば,粘膜の襞などの影響で十分に視認できていなくても押し出す方が安全である.もう1つの方法として,ステントを消化管壁に近づける時に内視鏡画面を見ながらデリバリーに付記されているブラックマーカーを確認して消化管側を展開する方法もあるが,内視鏡の視野が取りづらいと,余計に内視鏡を引いてしまいステントが脱落してしまう可能性もあるため,前者の方法が確実で簡便である.展開ステント留置後は一気に囊胞内容液が排出され,LAMSのドレナージ効果の高さを実感することができる.最後に必要に応じてステント内腔からDPSや経鼻ドレナージチューブを留置する 16.通常はトラブル時の対応がしやすい透視室で行うのがよいが,本法であれば透視を用いなくても安全にステント留置を行うことが可能なため呼吸状態が悪く集中治療室で人工呼吸管理下であってもそのままベッドサイドで行うことが可能である.

Figure 2 

HOT-LAMSシステムを用いたEUS下膵周囲液体貯留ドレナージの手技.

a:PFCを描出し,消化管内腔からPFCの内腔までの距離が10mm以内である部位を穿刺部位とした.

b:HOT-LAMSシステムで通電を行ってからデリバリーを進めるon and pushでPFC内にデリバリーを挿入した.

c:デリバリーシステム先端をPFC内に3.5cm以上挿入して,カテーテルロックをロックした.

d:黄色の安全クリップを外して,補綴材ロックをアンロックとした.

e:灰色の補綴材展開ハブを握るように展開した.完全に展開するとカチッという音がし補綴材ロックが自動的にロックされた.

f:カテーテルロックをアンロックとした.

g:インナーシースからのAXIOSTM左端までの距離と右端までの距離が1対9か2対8になるところまでデリバリーを引き寄せた.

h:カテーテルロックをロックした(ここでロックを忘れると次の消化管側の展開時にLAMSがWONの内腔に迷入するリスクがある).

i:補綴材ロックをアンロックとした.

j:灰色の補綴材展開ハブを握り,内視鏡のワーキングチャネル内でステント近位端を展開した(スコープチャネル内展開).

k:十分送気しながらスコープに少しダウンアングルをかけて右に捻った.さらにわずかにスコープを引きながらデリバリーをわずかに押し出すことで内視鏡画面でステントが視認された.

l:視認できたらデリバリーをもっと押すことでステントがチャネル内から押し出されて完全にステントが展開され,囊胞内液がドレナージされた.

電子動画 1

Ⅳ 困難例へのLAMS留置の工夫

LAMSはステント展開するスペースを要するため,6cm以上の径を有し70%以上の液体成分を認める症候性PPC/WONがよい適応病変とされている.しかし,70%以上を壊死組織が占めるような壊死組織量の多い症例がある.特にWONが周囲の腸管に自然穿破した症例では,多くの液体成分はすでに腸管内に排出されており,WONの内部がほとんど壊死組織のみで構成される症例もある.そのような壊死組織含有量が多いWONにこそ複数回の追加ENが必要となる可能性が高く,LAMSの利点が生かされる 17)~19.しかし,壊死組織含有量が多いと通電穿刺後にEUS画面で囊胞側ステントが視認しにくく,ステント端が展開する十分なスペースがないため,囊胞側ステント端が展開不良となる.その状態でデリバリーを引いてきてもステント端のアンカリングの力が弱く,ステント逸脱や迷入などリスクが高くなる.そのような症例に対して安全にステント留置するためのテクニックもいくつか報告されている.

まずは,HOT-LAMSシステムで通電穿刺する前にFNA針でステント留置ポイントを穿刺して,造影剤と生理食塩水を注入して数cm程度の液体成分のスペースを人工的に作成する方法(water filling technique)である 20.生理食塩水はすぐに奥の腔に流れてしまう可能性もあるため注入後はスピーディーに穿刺針を抜去してHOT-LAMSシステムに入れ替えて通電穿刺する必要がある.粘稠度が高く生理食塩水よりも留まりやすい導電性の低いゲル(ビスコクリア)を注入する方法も報告されている 21.WONの中には,内部の低エコーが均一に強い症例や,音響陰影(acoustic shadow)の影響で内部の十分な評価が困難な症例もある.そのような症例では,内部の壊死組織量の正確な評価が難しく,HOT-LAMSシステムで通電穿刺した後に囊胞側ステント端の展開が不十分となることがある.そのような際に対処法として,囊胞側ステント端展開後にデリバリーシースを10~20回ほど押し引きすることで,ステント周囲の壊死組織を押しのけてステント端が展開するためのスペースが少しずつ確保されるという方法(back-and-forth technique)がある 20.通電穿刺後に,HOT-LAMSシステムのガイドワイヤールーメンに,シリンジに20G留置針を取り付けたものを挿入し,生理食塩水を注入することで前述したwater filling techniqueを行う方法も報告されている 22.WONのサイズがそこまで大きくないけれども壊死組織量が多く内部の評価が困難な症例では,通電穿刺でWONの腔を突き抜けてしまうリスクがある.通常はsingle step法が一般的だが,そのような症例では,19ゲージ針で穿刺し,造影でWON腔の広がりを評価した後にガイドワイヤー(guidewire:GW)を十分に挿入し,GWガイド下に通電穿刺するtwo step法の方が安全である.GWガイド下にバルーンカテーテルを挿入し,バルーン拡張で囊胞側ステント端を展開させるスペースを確保することも可能である 23

Ⅴ LAMS留置後の内視鏡的ネクロセクトミー

ENを追加で行う際にはLAMSの内腔からWON内に内視鏡を挿入する(Figure 3-a).内部を生理食塩水でよく洗浄し,良好な視野をえてからスネアや鉗子を用いて壊死組織を少しずつ除去していく.前方送水機能付直視内視鏡があれば,効率よく洗浄を行うことができ有用である.大腸ポリペクトミー用の10mmミニスネアや20 mmのスパイラルスネア(SnareMasterTM;Olympus社)を用いると無理のない程度に大きく壊死組織を除去することができるため効率がよく,われわれは第一選択としている.スペースが狭いところでは五脚鉗子や生検鉗子の方が効果的なこともあるが,壊死組織の奥に太い血管が隠れている可能性や脆弱な壁が損傷して腹腔内穿通するリスクもあるため,鉗子系デバイスを使用する際には慎重に少しずつ進める必要がある.1回の手技時間は概ね1時間以内を目安に週2回の頻度で行うようにする.壊死組織量が多い症例や骨盤腔まで広がる症例では複数回の治療を要する.壊死組織が周囲組織から剝がれやすくして効率を上げるため0.1-0.3%の低濃度過酸化水素水を散布する方法 24,トンネル法を用いた効率を上げるテクニック 25,骨盤腔への内視鏡挿入性を高めるためバルーン小腸内視鏡を用いた方法 26などの工夫が報告されているがさらなる専用デバイスやテクニックの開発が求められる.血管損傷や穿孔に注意しながら除去を進め,肉芽組織(WONの壁)が確認できればその場所は十分である(Figure 3-b).ENのエンドポイントに関しては,完全な壊死組織の除去と良好な肉芽組織の露出が望ましいが,発熱や炎症反応が落ち着いてきた段階で終了してよい.侵襲度や偶発症リスクを考慮すると,まずはドレナージのみを行い,その後の臨床経過から慎重にENの適応を判断するステップアップ・アプローチの方がよいと考えられてきた.しかし,近年一期的ネクロセクトミー(upfront necrosectomy)と内視鏡的ステップアップ・アプローチを比較したランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)で,一期的ネクロセクトミーは安全に行うことが可能で,処置回数軽減や入院期間短縮に寄与すると報告されている 27.壊死組織量の多いWONでは一期的ネクロセクトミーも許容されるであろう.

Figure 3 

LAMS内からの内視鏡的ネクロセクトミー.

a:留置したLAMS内から上部消化管スコープをWON内に挿入して,10mmミニスネアで壊死物質除去(ネクロセクトミー)を行った.

b:十分な壊死組織除去を行い,良好な肉芽組織が露出された.

ENの治療経過中で最も頻度の高い偶発症は出血である.特に動脈瘤破裂は致死的な偶発症となりうるため,ドレナージを行う前,さらにENの治療経過中も適宜,造影CTの評価をすべきである.動脈瘤を認めた場合は,全身状態が安定していてドレナージが待てるようであれば,IVR(interventional radiology)によるコイル塞栓術を用いた動脈瘤治療を優先した方がよい 28.処置中に発生した出血に対しては慎重に出血点を確認して内視鏡的止血を試みる.経路のバルーン拡張時の出血に対してはバルーン圧迫止血やメタルステント留置による圧迫止血,EN中の血管損傷に対してはクリッピング止血,APC焼灼止血や凝固焼灼止血が有用である.しかし,処置中以外で発生した囊胞内出血は,凝血塊が貯留して内視鏡的に出血点を見つけることは困難であり,多くの症例でIVRによる止血を要する.したがって,本邦のガイドラインでも,ENはIVRと外科のバックアップ体制が十分に整っている専門施設で胆膵内視鏡治療に習熟した医師が治療にあたることが推奨されている 7),14.実際に本邦のナショナルデータベースを用いた解析の結果で,症例数の豊富な専門施設の方が症例数の少ない施設よりも出血偶発症率が低くて入院期間が短い,さらに致命率も有意に低いと報告されている 29.また,空気塞栓も致死的な偶発症となりえるため送気にはかならずCO2を用いる.CO2を用いても過度の送気は囊胞穿破の原因ともなり,稀ではあるがCO2塞栓も起こりうるため禁物である 30.囊胞穿破を起こさないように,無理して1回で奥までENを進めずに,少しずつ壊死組織を除去していくことが重要である.EN中に穿破を疑う透視像の有無や気腹の有無を適宜確認し,穿破による気腹を認めた場合は,すぐに治療を中止し,19Gで腹腔穿刺による脱気を行った後に胃管を留置して持続吸引を行う.

Ⅵ LAMS関連偶発症

従来のDPSに比べてLAMSの方が効率よく治療が遂行できるため,治療経過における全体の偶発症もLAMSの方が少ない傾向にあるが,LAMS使用に伴うステント関連偶発症も懸念されている.まず,囊胞壁からの出血や仮性動脈瘤破裂などの出血偶発症がやや多い傾向があり,注意を要する 31)~33.初めて報告されたRCTでは,30例ずつと症例数は少ないものの,臨床奏効率は同等だがLAMS群の方が出血の偶発症が多かったという結果が報告されている 34.大口径で良好なドレナージがえられるため急激な囊胞腔の縮小をきたし,囊胞側ステント端が対側の囊胞壁に当たることによる機械的刺激が原因と考えられている.さらに長期間留置することでステントが消化管粘膜に埋もれることにより,ステントの抜去に難渋するステント埋没症候群(buried stent syndrome)のリスクも報告されている 35),36.このステント埋没症候群が起きた場合やLAMS留置の際に失敗して囊胞内迷入してしまったLAMSを後日回収する際には,経路部をラージバルーンで拡張後に鉗子で把持して引っ張り出す.しかし,周囲の組織と固着して力が不十分で引き出せない場合には,マルチベンディング2チャンネルスコープ(GIF-2TQ 260M,Olympus社)を挿入し,2つの鉗子でステントの左右をしっかり把持して抜去するとよい 37

Ⅶ 治療後のLAMSマネージメント

WON治療後にほぼ完全に囊胞腔が消失していても液体貯留病変の再発のリスクがあり,フォローを要する.内瘻ステントを抜去した群と抜去しなかった群を平均14カ月間フォローして再発率を比較したRCTの結果では,抜去した群の再発率は36%で抜去しなかった群は0%であった 38.特に主膵管破綻症候群(Disconnected pancreatic duct syndrome:DPDS)を合併している症例で早期にステントを抜去すると50%程度の症例で再発を起こすと報告されており,長期間のステント留置が推奨されている 39),40.しかし,LAMSの長期留置は前述したLAMS関連偶発症である周囲への組織障害による出血やステント埋没のリスクを伴うため,治療後早期に抜去することが推奨されている.7cm以下の小さなサイズの液体貯留性病変と4週以降のLAMS抜去が出血や埋没の偶発症のリスクが高いと報告されており,治療完遂後3-4週程度で抜去を検討するのがよいと考えられる 33.DPDSを伴うPFCの症例でLAMSを抜去後にDPSに入れ替えて内瘻化を行った症例に比べて内瘻化しなかった症例では有意にPFCの再発率が高いと報告されている(5% vs. 37%,p=0.03) 41.したがってLAMS抜去後は,再発予防目的に可能な限り経路にDPSを留置するのがよい.しかし,LAMSのドレナージ効果が高いため抜去時には病変が縮小してDPSを留置するスペースが十分確保できないことも多く,内瘻化成功率が44%と高くないことは課題の1つである 41.この課題を克服するために,知恵の輪テクニック(puzzle ring replacement technique)という方法がある.治療終了時にLAMSの内腔からDPS(ピッグテイル部が15mm,Through & Pass, Gadelius Medical社)を留置しておくと,病変の縮小とともにDPSのWON内腔側が固着される.そして,LAMS抜去時に把持鉗子をうまく使用してDPSを残したLAMSを抜去すれば高い確率で内瘻化に成功することができるという方法である.LAMS留置場所によってはやや煩雑な手技となるが,失敗してDPSも一緒に抜けたとしても偶発症につながることはないので試してみるべきテクニックと考えている.

Ⅷ おわりに

本稿ではPFCに対するLAMSを用いたEUS-PFDの適応,留置手技の基本,留置後のマネージメントについて述べた.HOT-LAMSシステムを用いることで,短時間で安全かつ確実にドレナージを行えるようになっており,追加の処置も行いやすいため,特にWONの症例に対して有用である.しかし,LAMS特有の問題点もあるため,十分に理解してうまく使いこなす必要がある.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:向井俊太郎(ガデリウスメディカル社),土屋貴愛(ガデリウスメディカル社,オリンパス社,ボストンサイエンティフィックジャパン社),糸井隆夫(ガデリウスメディカル社,オリンパス社,ボストンサイエンティフィックジャパン社)

補足資料

電子動画 1 HOT-LAMSシステムを用いたEUS下膵周囲液体貯留ドレナージの手技.

文 献
 
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