日本消化器内視鏡学会雑誌
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資料
脈管侵襲の追加染色はT1大腸癌患者のリンパ節転移の診断能を改善させる:システマティックレビューとメタ分析
渡部 純 一政 克朗片岡 裕貴三木 厚染小 英弘本田 宗倫田原 真紀子山階 武Yeoh Khay Guan河合 繁夫小谷 和彦佐田 尚宏
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電子付録

2025 年 67 巻 6 号 p. 1205-1219

詳細
要旨

【背景】脈管侵襲(リンパ管侵襲および静脈侵襲を含む,lymphovascular invasion:LVI)は,リンパ節転移(lymph node metastasis:LNM)の重要なリスク因子であり,T1大腸癌(colorectal cancer:CRC)の内視鏡切除後の追加手術を必要とする場合が多い.しかし,LNMの予測に対する追加染色の影響については不明である.本系統的レビューは,T1 CRCにおけるLNMの判定に対する追加染色の影響を評価することを目的とした.

【方法】5つの電子データベースを用いて文献検索を行った.アウトカムは,階層的要約受信者動作特性曲線を用いて評価された診断オッズ比(diagnostic odds ratio:DOR)と,カッパ係数(κ)を用いて評価されたLVIの病理医間の一致度を設定した.また,SM浸潤度,低分化,簇出などの他のリスク因子を含めた多変量解析を実施し,サブグループ分析も実施した.

【結果】64件の研究(18,097人の患者)を対象とし,ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色およびLVIの追加染色におけるLNM判定のプールされた感度はHE染色で0.45(95%信頼区間[confidence interval; CI]0.32-0.58),追加染色で0.68(95% CI 0.44-0.86)であった.特異度は,それぞれ0.88(95% CI 0.78-0.94)と0.76(95% CI 0.62-0.86)であった.DORはHE染色で6.26(95% CI 3.73-10.53),追加染色で6.47(95% CI 3.40-12.32)であった.多変量解析では,LNMの追加染色に対するDOR(DOR 5.95;95% CI 2.87-12.33)は,HE染色に対するDOR(DOR 1.89;95% CI 1.13-3.16)よりも有意に高かった(P=0.01).HE染色とLVIの追加染色のプールされたκ値は,それぞれ0.37(95% CI 0.22-0.52)と0.62(95% CI 0.04-0.99)であった.

【結論】LVIの追加染色は,LNMのDORと病理医間のLVIに対する観察者間一致度を向上させる可能性がある.

Abstract

Objectives: Lymphovascular invasion (LVI) is a critical risk factor for lymph node metastasis (LNM), which requires additional surgery after endoscopic resection of T1 colorectal cancer (CRC). However, the impact of additional staining on estimating LNM is unclear. This systematic review aimed to evaluate the impact of additional staining on determining LNM in T1 CRC.

Methods: We searched five electronic databases. Outcomes were diagnostic odds ratio (DOR), assessed using hierarchical summary receiver operating characteristic curves, and interobserver agreement among pathologists for positive LVI, assessed using Kappa coefficients (κ). We performed a subgroup analysis of studies that simultaneously included a multivariable analysis for other risk factors (deep submucosal invasion, poor differentiation, and tumor budding).

Results: Among the 64 studies (18,097 patients) identified, hematoxylin-eosin (HE) and additional staining for LVI had pooled sensitivities of 0.45 (95% confidence interval [CI] 0.32-0.58) and 0.68 (95% CI 0.44-0.86), specificities of 0.88 (95% CI 0.78-0.94) and 0.76 (95% CI 0.62-0.86), and DORs of 6.26 (95% CI 3.73-10.53) and 6.47 (95% CI 3.40-12.32) for determining LNM, respectively. In multivariable analysis, the DOR of additional staining for LNM (DOR 5.95; 95% CI 2.87-12.33) was higher than that of HE staining (DOR 1.89; 95% CI 1.13-3.16) (P = 0.01). Pooled κ values were 0.37 (95% CI 0.22-0.52) and 0.62 (95% CI 0.04-0.99) for HE and additional staining for LVI, respectively.

Conclusion: Additional staining for LVI may increase the DOR for LNM and interobserver agreement for positive LVI among pathologists.

Ⅰ 緒  言

大腸癌(colorectal cancer:CRC)は,世界で3番目に多い癌であり,癌関連死の第2位の原因である 1),2.CRCの主な治癒的治療法には,内視鏡切除と外科切除の2つがある 3.内視鏡的粘膜下層剝離術や内視鏡的全層切除術などの高度な内視鏡技術の進歩により,内視鏡治療されたT1 CRC患者の数は増加している 4),5.リンパ節転移(lymph node metastasis:LNM)のリスクに関する病理学的評価は,完全な内視鏡切除の必要性を判断するための鍵となる 6),7.CRCの現在の治療ガイドラインでは,T1b(SM浸潤度>1,000μm)(deep submucosal invasion depth:DSI),脈管侵襲(lymphovascular invasion:LVI),低分化腺癌・印環細胞癌・粘液癌の低分化(poorly differentiated adenocarcinoma:PD),および最も深い浸潤部位における簇出(tumor budding:TB)グレード2または3は,CRCのLNMのリスク因子であるとされている 3),6),8.内視鏡切除と外科切除の適切な治療法を選択することは重要である.なぜなら,外科切除は,特に直腸癌の患者において,手術関連の罹患率と死亡率,高い手術費用,患者の生活の質の低下などのリスクを伴うためである 3),9),10

以前のいくつかの研究では,LVIはLNMの強力かつ信頼性の高い予測因子であると報告されている(Table 1 11)~18.現在のガイドラインでは,リンパ管および静脈への腫瘍の侵襲を診断に,ヘマトキシリン・エオシン(hematoxylin-eosin:HE)染色を推奨されている 8),12.しかし,以前の研究では,追加染色はHE染色よりもLNMに対する診断オッズ比(diagnostic odds ratio:DOR)が高いと報告されている(6.0対2.7) 19.リンパ管侵襲(lymphatic invasion:LI)にはD2-40,静脈侵襲(venous invasion:VI)の診断にはビクトリアブルー(victoria blue:VB)やエラスチカ・バン・ギーソン(elastica van gieson:EVG)染色の弾性染色の追加染色が用いられており,これらの追加染色の使用は施設や病理医によって異なっている 20.以前のいくつかの研究では,追加染色の方がHE染色よりも病理医間の観察者間一致度が高いと報告されている 21),22.しかし,T1 CRCにおけるLNMに対する追加染色の影響を報告した大規模な研究やメタ分析はない.LIに対するD2-40免疫染色やVIに対する弾性染色(VBまたはEVG染色)などの追加染色が,LNMのDORを改善し,病理医間の観察者間一致度を高める役割は,まだ明らかになっていない.

Table 1 

脈管侵襲の定義概要と追加染色の詳細.

そのため,本系統的レビューとメタ分析は,T1 CRC患者におけるLNMの推定に対する,D2-40や弾性染色などの追加染色の使用の影響を評価することを目的とした.さらに,これらの免疫組織化学的染色法を使用した場合の病理医間の観察者間一致度を評価した.

Ⅱ 方  法

本研究は,診断テストの正確性に関する系統的レビューのために,コクランハンドブックと,the Preferred Reporting Items for Systematic Review and Meta-Analysis of Diagnostic Test Accuracy(PRISMA-DTA)(Appendix S1)(電子付録)の方法論的基準に従って実施された 23),24.本研究のプロトコルは,International Prospective Register of Systematic Reviews(PROSPERO,登録番号:CRD42022382897)に登録され,2022年12月9日にOSF( https://osf.io/6f5qt/)で公開された(Appendix S2,S3)(電子付録).

検索戦略

2022年12月10日までコクラン中央登録試験(CENTRAL),MEDLINE(PubMed),EMBASE(ProQuest Dialog)のデータベースを検索した.Appendix S2電子付録)には,検索戦略の詳細を示す.また,進行中の試験のために,the World Health Organization International Clinical Trials Platform Search Portal(ICTRP)やClinicalTrials.govなどのデータベースを検索した.検索戦略には,CRC,粘膜下層浸潤,LVIに関連するキーワードが含まれていた.公開された論文,会議の抄録,手紙など,すべての論文を含めた.観察期間,出版年,言語,国に基づいて研究を除外することはなかった.すべての対象となった研究,国際的なガイドライン 25),26,対象となる研究を引用した論文の参考文献リストを確認した.それぞれの著者に連絡を取り追加のデータの確認も行った.

研究選択

18歳以上の患者を対象とし,内視鏡または外科切除を受けたT1 CRCの患者において,LIに対するD2-40免疫染色やVIに対する弾性染色(VBまたはEVG)などの追加染色とHE染色のDORを評価した研究を対象とした.症例報告,症例シリーズ,レビュー,メタ分析,重複する症例は除外した.参照基準は,手術標本におけるLNMの存在であった.

主要アウトカムは,T1 CRCの患者におけるLNMを特定するための,HE染色とLVIの追加染色の感度,特異度,DORであった.副次的アウトカムは,病理医間のLVI陽性に対する観察者間一致度であり,LVIに対する2人以上の病理医間の観察者間一致度をCohenのκを用いて評価した.

データ収集とバイアスのリスク

6人のレビューアーのうち2人(J.W.とA.M.,H.S.,M.H.,M.T.,またはT.Y.)が独立してタイトルと要約をスクリーニングし,その後,全文に基づいて適格性を評価し,データを抽出した.関連するデータが不足している場合は,元の著者に連絡を取った.2人のレビューアー間の意見の相違は,議論によって解決し,それでも解決しない場合は,第3のレビューアーが仲裁役を務めた(K.I.またはY.K.).

4人のレビューアーのうち2人(J.W.とA.M.,H.S.,またはM.H.)が独立して,the Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies(QUADAS)-2ツールを用いて,バイアスのリスクと適用可能性を評価した 27.QUADAS-2ツールのシグナリング質問は,現在のレビュー質問に合わせて改訂された(Appendix S4)(電子付録).2人のレビューアー間で意見の相違が生じた場合は,議論によって解決し,それでも解決しない場合は,第3のレビューアー(K.I.またはY.K.)が仲裁役を行った.適切な統計的手法が不足しているため,LNMの特定に対する染色のDORに対する出版バイアスは検討しなかった 24

データ合成と統計分析

各研究におけるT1 CRCのLNMに対するHE染色と追加染色の感度,特異度,DORを95%信頼区間(CI)を用いて推定した.メタ分析では,さまざまな染色の間に等しい閾値が存在するという仮定の下,95% CIでプールされた感度と特異度の推定値を計算するために,2変量モデルを使用した.モデルは,ランダム効果を含む,テスト性能の精度における研究内変動と研究間変動を考慮した 28

LVI(LNMの独立したリスク因子)に対する追加染色とHE染色の診断精度を比較するために,ランダム効果メタ分析を実施した.この分析には,多変量解析で他のリスク因子(DSI,PD,TB)を組み込んだ研究のみを含めた.kappaetc,metan,metaregモジュールを使用して,κ値と標準誤差を計算した 29)~33.Review Manager 5.4.1(RevMan 2020;The Nordic Cochrane Centre,Copenhagen, Denmark)とSTATA SE16ソフトウェア(v. 16.1; StataCorp,College Station,TX,USA)をmidasとmetandiパッケージと共に使用した 34),35

サブグループ分析と感度分析

効果修飾因子が結果へ与える影響を明らかにするために,LNMにおけるLVIに対する研究対象の染色の影響について,以下のサブグループ分析を実施した:(ⅰ)EVG対VB染色;(ⅱ)日本対その他の国.追加染色適応(限定症例対全症例)に基づいたサブグループ分析も追加した.コクランハンドブックに基づき,感度と特異度の異質性に対する単変量検定やI2 統計量の推定値は使用しなかった.なぜなら,これらの統計値は,正の閾値効果などの現象によって説明される異質性を考慮していないためである 24.しかし,レビューの結果がレビュープロセス中に下された意思決定に対して頑健であるかどうかを評価するために,LNMにおけるLVIの染色の影響を特定するために,以下の研究のみを対象とした感度分析を実施した:(ⅰ)包含/除外基準を完全に満たした患者を対象とした研究(重複する症例を完全に除外できない研究,LIに対するD2-40免疫染色やVIに対する弾性染色[VBまたはEVG]以外の追加染色が行われた研究を除外).(ⅱ)一次手術と追加手術を受けた患者を対象とした研究.(ⅲ)一次手術を受けた患者を対象とした研究.(ⅳ)同じ患者または施設で追加染色とHE染色を比較した研究.VIに対するCD31染色の感度と特異度の分析を追加した.

Ⅲ 結  果

検索結果と研究の特徴

Figure 1は,研究選択プロセスを示している.2022年12月10日までに,さまざまなデータベースから3,451件の記録を特定した.重複をスクリーニングした後,18,097人の患者を含む64件の研究を対象とした 17),18),22),36)~96.そのうち,59件の研究は,T1 CRCの患者におけるLNMのLVIに対するHE染色と追加染色の診断精度を評価し,4件は病理医間のLVI陽性に対する観察者間一致度を報告し,1件は両方のアウトカムを報告し,8件の研究は多変量解析で4,062人の患者を対象とした.

Figure 1 

研究選択プロセスのフローチャート.

Table S1電子付録)には,T1 CRCの患者におけるLNMのLVIに対するHE染色と追加染色の診断精度に関する研究の特徴を示す.全60件の研究のうち,48件はアジア(13,871人の患者),10件はヨーロッパ(3,745人の患者),1件はロシア(53人の患者),1件はアジアと北アメリカの共同コホート(428人の患者)からであった.患者は,52件の研究で一次手術と追加手術,8件の研究で一次手術と追加手術および内視鏡手術によって治療された.各研究における手術適応は,主に日本,アメリカ,ヨーロッパのガイドラインに従っていた 3),8),11)~13),25),26

方法論的質の評価

Appendix S5電子付録)には,QUADAS-2ツールを用いて対象となった研究の方法論的質の評価結果を示す.3件の研究をバイアスのリスクが不明確と評価し,7件を患者の選択における適用可能性が懸念されると評価した.51件の研究を指標テストにおけるバイアスのリスクが不明確と評価し,11件を適用可能性が懸念されると評価した.参照基準については,3件の研究をバイアスのリスクが高いと評価し,7件を適用可能性が懸念されると評価した.フローとタイミングについては,7件の研究をバイアスのリスクが高いと評価し,2件をバイアスのリスクが不明確と評価した.

LIに対する染色のLNMにおける診断オッズ比

60件の研究のうち,LIに対するHE染色とD2-40染色の影響は,それぞれ24件と16件の研究で報告された.VIに対するHE染色と弾性染色の影響は,それぞれ19件と21件の研究で報告された.LVIに対するHE染色と追加染色の影響は,それぞれ13件と8件の研究で報告された.

Figure 2-Aは,LNMにおけるLIの検出における,HE染色とD2-40染色の診断精度を比較したものである.HE染色のプールされた感度は0.53(95% CI 0.42-0.65),特異度は0.83(95% CI 0.75-0.89),DORは5.48(95% CI 4.17-7.22)であった.D2-40染色のプールされた感度は0.57(95% CI 0.44-0.69),特異度は0.80(95% CI 0.73-0.86),DORは5.87(95% CI 4.27-8.06)であった.Figure 2-Bは,LNMにおけるVIの検出における,HE染色と弾性染色の診断精度を比較したものである.HE染色のプールされた感度は0.25(95% CI 0.15-0.39),特異度は0.90(95% CI 0.83-0.94),DORは3.03(95% CI 2.32-3.95).弾性染色のプールされた感度は0.44(95% CI 0.34-0.54),特異度は0.76(95% CI 0.71-0.81),DORは2.61(95% CI 2.13-3.20)であった.Figure 2-Cは,LNMにおけるLVIの特定における,HE染色と追加染色の診断精度を比較したものである.HE染色のプールされた感度は0.45(95% CI 0.32-0.58),特異度は0.88(95% CI 0.78-0.94),DORは6.26(95% CI 3.73-10.53)であった.追加染色のプールされた感度は0.68(95% CI 0.44-0.86),特異度は0.76(95% CI 0.62-0.86),DORは6.47(95% CI 3.40-12.32)であった.

Figure 2 

A:リンパ管侵襲の評価におけるHE染色とD2-40免疫染色の感度と特異度を示すフォレストプロット.

B:静脈侵襲の評価におけるHE染色と弾性染色の感度と特異度を示すフォレストプロット.

C:脈管(リンパ管・静脈)侵襲の評価におけるHE染色と追加染色の感度と特異度を示すフォレストプロット.

多変量解析では,LNMにおけるLVIのDORは,追加染色(DOR 5.95;95% CI 2.87-12.33)とHE染色(DOR 1.89;95% CI 1.13-3.16)の間で有意に異なっていた(P=0.01)(Figure 3).

Figure 3 

多変量解析において,他のリスク因子(SM浸潤度,低分化,簇出)を同時に調整した研究でのHE染色と追加染色のオッズ比を示すフォレストプロット.

追加分析

Figure S1電子付録)は,VIに対する異なる染色方法のサブグループ分析を示している.LNMにおけるVIに対するEVG染色とVB染色のプールされた感度はそれぞれ0.36(95% CI 0.22-0.53)と0.54(95% CI 0.44-0.64)(P=0.14),特異度はそれぞれ0.80(95% CI 0.73-0.86)と0.70(95% CI 0.62-0.78)(P=0.11),DORはそれぞれ2.36(95% CI 1.70-3.26)と2.77(95% CI 1.89-4.06)であった.

Figure S2電子付録)は,国別のサブグループ分析を示している.LNMにおけるLVIに対するHE染色のプールされた感度は,日本とその他の国でそれぞれ0.57(95% CI 0.31-0.80)と0.38(95% CI 0.25-0.54)(P=0.15),特異度はそれぞれ0.78(95% CI 0.47-0.94)と0.92(95% CI 0.87-0.95)(P=0.10),DORはそれぞれ4.62(95% CI 2.58-8.30)と6.54(95% CI 4.47-9.57)であった.LNMにおけるLVIに対する追加染色のプールされた感度は,日本とその他の国でそれぞれ0.88(95% CI 0.69-0.96)と0.41(95% CI 0.29-0.55)(P=0.02),特異度はそれぞれ0.64(95% CI 0.43-0.80)と0.85(95% CI 0.75-0.92)(P=0.47),DORはそれぞれ10.27(95% CI 4.68-22.55)と3.00(95% CI 1.15-7.80)であった.

Figure S3電子付録)は,追加染色適応のサブグループ分析を示している.LNMにおけるLIに対するD2-40染色のプールされた感度は,全症例と限定症例でそれぞれ0.59(95% CI 0.44-0.72)と0.54(95% CI 0.28-0.77)(P=0.73),特異度はそれぞれ0.81(95% CI 0.73-0.87)と0.78(95% CI 0.59-0.90)(P=0.72),DORはそれぞれ6.22(95% CI 4.67-8.28)と4.09(95% CI 2.60-6.42)であった.LNMにおけるVIに対する弾性染色のプールされた感度は,全症例と限定症例でそれぞれ0.41(95% CI 0.30-0.55)と0.55(95% CI 0.37-0.71)(P=0.36),特異度はそれぞれ0.77(95% CI 0.69-0.83)と0.74(95% CI 0.70-0.78)(P=0.53),DORはそれぞれ2.34(95% CI 1.70-3.22)と3.06(95% CI 1.75-5.37)であった.LNMにおけるLVIに対する追加染色のプールされた感度は,全症例と限定症例でそれぞれ0.80(95% CI 0.58-0.92)と0.34(95% CI 0.26-0.43)(P=0.03),特異度はそれぞれ0.75(95% CI 0.56-0.87)と0.79(95% CI 0.76-0.82)(P=0.66),DORはそれぞれ11.66(95% CI 6.45-21.07)と2.03(95% CI 1.10-3.74)であった.感度分析の結果は,主要な結果と一致していた.Table S2電子付録)は,感度分析の詳細な結果を示している.

病理医間のLVIに対する観察者間一致度

5件の研究が,病理医間のLVI陽性に対する観察者間一致度を報告していた.LIについては,Cohenのκの全体的な推定値は,HE染色で0.30(95% CI 0.16-0.44),D2-40染色で0.50(95% CI 0.37-0.63)(ベータ係数0.20;95% CI −0.22~0.61;P=0.175).VIについては,Cohenのκの全体的な推定値は,HE染色で0.30(95% CI 0.16-0.44),D2-40染色で0.50(95% CI 0.37-0.63)であった(ベータ係数0.37;95% CI 0.0057-0.73;P=0.049).LVIについては,Cohenのκの全体的な推定値は,HE染色で0.37(95% CI 0.22-0.52),追加染色で0.62(95% CI 0.04-0.99)であった(ベータ係数0.21;95% CI −0.47~−0.90;P=0.433).

Ⅳ 考  察

本系統的レビューおよびメタ分析は,64件の研究(18,097人の患者)を対象に,T1 CRC患者におけるLNM(リンパ節転移)の推定に対する,D2-40染色や弾性染色などの追加染色の影響を調査した.主要なリスク因子(DSI,PD,TB)を調整した後の多変量解析において,これらの追加染色法のDORは,HE染色法よりも高い可能性があることを示した.また,追加染色により,病理医間のLVI陽性に対する観察者間一致度が向上する可能性があることも示した.これらの発見は,LIに対するD2-40免疫染色とVIに対する弾性染色(VBまたはEVGなど)を追加すると,HE染色のみと比較して,LNMに対するLVIのDORを向上させる可能性があることを示している.

多変量解析研究のメタ分析では,LNMに対する追加染色のDORは,HE染色よりも高かった.以前の系統的レビューでは,LVIはT1 CRCにおけるLNMの独立したリスク因子だった.しかし,これらの研究のほとんどは,LVIの正確な定義を提供しておらず,病理学的方法は研究間で異なっていた 17),97),98.これにより,標準化の欠如とバイアスが生じた 17),97),98.本研究では,病理学的な方法も評価した.いくつかの研究では,LIとVIを1つの因子にまとめた場合,情報が不足し,LNMのリスクが低くなる可能性があることが示されている 17),97.したがって,LIとVIをLVIとは別に評価することが重要である.本研究では,LIとVIも別々に調査し,特にVIに対する追加染色によって,LNMのDORに影響を与える可能性があることが示唆された.LIとVIに対する追加染色法のDORが改善された理由については不明であるが,小さなリンパ管と静脈を区別するのが難しいことが多いため,特にVIに対する追加染色により,DORが改善された可能性がある.追加染色により,HE染色のみでは難しいLIとVIの区別が可能になる.

T1 CRCに対する内視鏡切除の適応が拡大されるにつれて,LNMのDORを高めるために追加染色が推奨される.これにより,患者の管理を最適化できる.ガイドラインでは,内視鏡切除後の追加手術の必要性を判断する際に,DSI,LVI,PD,TBなどのリスク因子を考慮することを推奨している 8),14.以前のメタ分析では,DSIはLNMに対する予測因子として有用性が低いとされていたが,LVI,PD,TBはLNMに対して高い診断精度を示した 98.本メタ分析では,LNMにおけるLVIのDORが,追加染色(DOR 5.95;95% CI 2.87-12.33)とHE染色(DOR 1.89;95% CI 1.13-3.16)の間で異なることから,追加染色の方がHE染色のみよりも有用である可能性がある.追加染色を使用したLVIの同定は,LNMの最も信頼性の高い予測因子の1つとして(つまり,トレーニングデータに含めることで),最終的には,人工知能やノモグラムなどの他の因子と組み合わせて,LNM予測モデルのDORを向上させるのに役立つだろう 99

日本の大腸癌研究会と韓国病理学会は,追加染色法を推奨しているが,世界保健機関と米国病理学会は推奨していない 8),11),12),14)~16.各国の病理学会による追加染色法の推奨の違いは,本研究のサブグループ分析における日本とその他の国との間で,追加染色のDORに違いが見られた可能性がある.デルファイ法を使用して開発された病理学的診断基準を示した研究では,HE染色を使用したLVIに関連する組織学的所見は一貫性がなかった.しかし,弾性染色された内弾性膜と,D2-40染色された腫瘍クラスターを囲む円周の半分以上を覆う内皮細胞の観察は,極めて一貫していた 21.本研究では,T1 CRCの患者において,病理医間の観察者間一致度が,HE染色のみと比較して,LI,VI,およびLVIの追加染色で高くなっていることがわかった.均一な基準は,LVIの診断の一貫性に大きく影響するが,異なる国の病理医は,CRCのLVIに対する診断基準を異なる解釈をする可能性がある 22

本研究の結果は,LNMの参照基準として,一次手術および追加手術の症例のみが含まれ,内視鏡治療のみの症例が除外されているため,一般化に限界がある可能性がある.具体的には,T1 CRCの患者は,(ⅰ)内視鏡治療のみ,(ⅱ)内視鏡治療後の追加手術,(ⅲ)一次手術の3つの治療を受けることができる.臨床では,T1 CRCの内視鏡的切除の症例(内視鏡治療のみと追加手術の両方の症例)には,追加染色を検討する必要がある.LNMのリスク因子として,追加手術の適応となるのは,米国のガイドラインではPDとLVI,ヨーロッパのガイドラインではPD,LVI,およびDSI,日本のガイドラインではPD,LVI,DSI(2005年以降は1,000μmを超える),およびTB(2009年以降)である 3),8),11)~13),25),26.注目すべきは,すべてのリスク因子がない場合,LNMの可能性は低いとみなされる.なぜなら,LNMのガイドライン適応は高い感度を持っているからである 100.本研究では,PD,LVI,DSI,およびTBの4つのリスク因子すべてを網羅した多変量メタ分析に基づいて,追加染色の適用によってLNMのDORが向上することが示された.T1 CRCの患者におけるLNMを包括的に理解するためには,内視鏡治療のみで治療された症例(T1 CRCの約30%を占める)を含めたさらなる研究が必要である 20

臨床では,LNMに対する他のリスク因子がない場合,LIに対するD2-40染色とVIに対する弾性染色を実施する必要がある.なぜなら,追加染色によって感度は向上するが,特異度は変わらないからである.追加染色をルーチンで行うと,LIとVIの検出率が向上する 101),102.本レビューでは,VIに対するEVG,VB,およびCD31染色などの異なる追加染色法の診断精度を比較した.VIに対する追加染色では,弾性染色の中でも,EVGとVB染色の間には有意な差は見られなかった.しかし,VIに対するCD31染色では,評価するための十分なデータが得られなかった.なぜなら,CD31染色は,弾性染色と組み合わせて評価されることが多く 37),76),83,VIに対するCD31染色のみを評価した研究はわずかだったからである 38),42.以前の研究では,CD31染色は弾性染色よりもVIを検出する可能性が低いことがわかり,予後と関連していなかった 103.最適な染色法の選択とその適切な利用を明らかにするためには,さらなる研究が必要である.

本研究にはいくつかの限界がある.第一に,本レビューには,主にアジアの研究が含まれており,ヨーロッパまたは北アメリカの研究はほとんどなかった.そのため,一般化に限界がある可能性がある.さらなる研究によって,本研究の結果がアジア以外の地域に適用できるかどうかを調べる必要がある.第二に,本研究では,追加染色の費用を考慮できなかった.しかし,追加染色をルーチンに行うことで,費用は症例あたりわずか4.97ドル,またはVI検出の追加症例あたり44.75ドルである.これは,適切な適用がLVIの正確な検出に依存する補助療法の費用と比較して,取るに足りないものである 104.第三に,本分析には,潜在的な異質性がある可能性がある.ただし,研究結果の精度における研究内変動と研究間変動の異質性を考慮したモデルを使用した 28.潜在的な異質性の原因としては,評価された患者が研究間で異なっていたこと,切除標本が異なる方法で切断/処理されていた可能性があること(例えば,収縮アーチファクトのリスクに影響を与える),病理医の専門知識や経験レベルが異なることで組織学的評価が異なる可能性があること(例えば,一般病理医と消化器系専門病理医,局所評価と集中評価),およびLVI基準が異なることが考えられる.しかし,本分析では,可能な限り,潜在的な異質性の原因を評価するために,感度分析,サブグループ分析,およびメタ回帰分析を実施した.

結論として,本系統的レビューおよびメタ分析では,LNMに対する追加染色のDORが,他の主要なリスク因子(DSI,PD,およびTB)とは独立して,HE染色よりも高い可能性があることが示された.追加染色により,病理医間のLVI検出における観察者間一致度が向上する可能性もある.これらの発見は,LNMに対する他のリスク因子がない場合,内視鏡的切除後の追加手術の基準を改善するために,追加染色を推奨すべきであることを示唆している.アジア以外の地域で,LNMに対する追加染色のDORを検証するためのさらなる研究が必要である.

謝 辞

著者らは,本研究に必要な詳細な情報を提供していただいた以下の皆様に深く感謝申し上げます.

Dr. Norikatsu Miyoshi, Department of Gastroenterological Surgery, Graduate School of Medicine, Osaka University

Dr. Daisuke Aizawa, Division of Pathology, Shizuoka Cancer Centre

Dr. Tadahiko Masaki, Shimizugaoka Hospital

Dr. Satoru Tamura, Tamura Clinic Gastroenterology and Internal Medicine

Dr. Yuri Akishima-Fukasawa, Department of Pathology, Toho University School of Medicine

Dr. Shinsuke Kazama, Department of Gastroenterological Surgery, Saitama Cancer Center

Dr. Atsushi Naito, Department of Surgery, Osaka Police Hospital

Dr. Kazuhiro Yasuda, Department of Gastroenterological Surgery, Oita Prefectural Hospital

Dr. Motohiro Kojima, Pathology Division, National Cancer Center EPOC

Dr. Shinji Tanaka, Department of Endoscopy, Hiroshima University Hospital

Dr. Yoshiki Kajiwara and Dr. Hideki Ueno, Department of Surgery, National Defense Medical College

Dr. Young-Seok Cho, Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Seoul St. Maryʼs Hospital, The Catholic University of Korea

Dr. Scarlet Brockmoeller, Pathology and Data Analytics, University of Leeds

Dr. Kazutomo Togashi, Department of Coloproctology, Aizu Medical Centre, Fukushima Medical University

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

資金情報:JSPS KAKENHI(JP21K21121,23K 16289)

補足資料

Appendix S1 PRISMA-DTA.

Appendix S2 検索戦略.

Appendix S3 登録プロトコルからの変更点.

Appendix S4 修正版Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies-2(QUADAS-2)ツール.

Appendix S5 修正診断精度評価ツールQUADAS-2(Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies-2)によるバイアスのリスクと適用可能性.

Table S1 ベースライン特性の概要.

Table S2 感度分析.

Figure S1 A:リンパ節転移に対する静脈侵襲のEVG染色の診断精度のサブグループ解析.

B:リンパ節転移に対する静脈侵襲のVB染色の診断精度のサブグループ解析.

Figure S2 日本および他国における脈管(リンパ管・静脈浸潤)の評価におけるHE染色と追加染色の診断精度のサブグループ解析.

Figure S3 (1)全症例および(2)全症例におけるリンパ節転移の(A)リンパ管侵襲に対するD2-40 染色,(B)静脈侵襲に対する弾性染色,(C)脈管侵襲に対する追加染色の診断精度のサブグループ解析.

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2024)36, 533-45 に掲載された「Additional staining for lymphovascular invasion is associated with increased estimation of lymph node metastasis in patients with T1 colorectal cancer: Systematic review and meta-analysis」の第2 出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
© 2025 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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