日本消化器内視鏡学会雑誌
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Ischemic colitisの一例
中江 遵義大嶋 憲三天野 雅敏山名 良介羽山 恒人
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1979 年 21 巻 10 号 p. 1252-1257_1

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抄録

 症例は下血を主訴とした70歳男性.下血出現後6日目に施行した第1回注腸X線検査(1977年3月1日)ではS状結腸中部から下行結腸下部にかけてハウストラが消失し,管状狭窄像を認めた.下行結腸下部には拇指圧痕像がみられた.第2回注腸X線検査(1977年4月13日)では腸管を縦走する線状陰影とこの線状陰影に向けて集中する粘膜ヒダがみられた.嚢状化も下行結腸下部にわずかに出現して来た.第3回注腸検査(1977年7月26日)では線状陰影は残存し,嚢状陰影像の増加を認めた.初回大腸内視鏡検査(1977年3月24日)ではS状結腸から下行結腸にかけ縦走する発赤とこの発赤部への粘膜集中像がみられた.病変部の口側および肛門側の粘膜は正常であった.第2回大腸内視鏡検査(1977年4月22日)では発赤は消失し,著明な粘膜集中像と嚢状化がみられた.初回内視鏡検査時の生検ではびらん,小血管や線維芽細胞の増生,主に単核性細胞からなる炎症性細胞の浸潤などがみられた.腹部血管造影では腸骨動脈から腹部大動脈にかけて径不同・蛇行がみられたが,下腸間膜動脈の異常は指摘できなかった.下血は対症療法のみで消失し,約2年間の観察中,再発の徴候はない.以上,嚢状形成の過程を観察し得たischemiccolitisの1例を報告した.

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