抄録
直腸鏡(SIG-SL-AX,Machida,×10)による直腸粘膜微細血管の拡大観察は,通常鏡と併用すれば潰瘍性大腸炎の病期判定に役立つばかりでなく,類似疾患との鑑別においても有用であった.正常例ではリーベルキューン腺をとり囲む微細血管の円形模様が蜂の巣状を呈するのが観察される.潰瘍性大腸炎の活動期に観察が困難であった蜂の巣状模様は,非活動(=移行)期には回復がみられる.緩解期には微細血管の規則性の回復は著明であり,ほとんど正常な蜂の巣状模様がみられる.拡大観察は,本症の特に非活動期を判定するうえで役立った.非定型直腸潰瘍,および非特異性直腸びらんと考えられた潰瘍性大腸炎に類似の例においては,血管像は潰瘍性大腸炎のどの病期とも一致するとは考え難かった.この直腸鏡による詳細な観察は容易かつ簡便であることから,この種の内視鏡は直腸の日常検査に有用であると思われる.