日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃隆起性異型上皮巣の内視鏡的・組織学的経過観察例の検討
神谷 利明森下 鉄夫三浦 総一郎宗像 良雄朝倉 均土屋 雅春
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1980 年 22 巻 12 号 p. 1752-1760_1

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抄録

 著者らは170例,183病巣の胃隆起性異型上皮巣を内視鏡的および組織学的に検討し,そのうち71例,82病巣に対しては6ヵ月以上から12薙にわたり経過観察し得た.平均6ヵ月毎に内視鏡的,組織学的検索を施行した成績について報告する. (1)胃隆起性異型上皮巣の出現頻度は男性は女性に比し,3:1と顕著に多く,胃内視鏡被検者のうち20歳台で0.1%,80歳台で3.7%と高齢者になるに従い増加した.同一胃内の胃癌併存率は70歳台が多かった. (2)経過観察による形態学的変化は82病巣中8病巣(9.8%)と極めて少なく,そのうち4個(4.9%)に縮小,4個(4.9%)に増大を認めた. (3)組織学的に変化を示した群は82病巣中21病巣(25.6%)で,Group皿から腸上皮化生になったと思われるものは4病巣(4.9%),腺管構造または細胞に変化のみられたものは8病巣(9.8%),最終的に癌細胞が確認されたものは9病巣(10.8%)であった. (4)形態学的変化と組織学的変化の相関では縮小を認める病巣では異型度も弱く,増大するに従い異型度も強くなる傾向を示したが,形態学的に不変でも組織学的変化を認めた病巣は4個(4.9%)にみられた. (5)増大を認める病巣はもちろん,形態学的変化は認めなくても異型度が強くなる傾向を示したら正診率の向上と治療目的でpolypectomy,piecemeal polypectomy,hot biopsyあるいは外科的切除が望ましい.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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