日本消化器内視鏡学会雑誌
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Barrett潰瘍の1例
森川 俊洋金山 隆一中谷 泰康根井 仁一高田 昭
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1980 年 22 巻 12 号 p. 1782-1786_1

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抄録

 シメチジンが著効したBarrett潰瘍の1例を経験した.症例は60歳の女性で胸やけ,嚥下困難を訴え入院し,食道レントゲン造影で食道下部の狭窄とニッシェがみられたが,胃から食道へのバリウムの逆流や食道裂孔ヘルニアはなかった.食道内視鏡検査では門歯より30cmに全周性の狭窄と樹枝状の陥凹面があり,そのなかに1個の潰瘍を認めた.陥凹面の生検で悪性所見はなく,円柱上皮がみられた.抗コリン薬の治療では効果はみられず,シメチジン投与により自覚症状の著明な改善と潰瘍の消失がみられた.組織学的には陥凹面からの円柱上皮は消失したが,狭窄部は円柱上皮で被われていた.なおシメチジンの中止により潰瘍の再発をみている.以上のごとく本例ではシメチジンが著効を示したが,その治癒過程よりみて本例でのBarrett潰瘍は後天的に発生したものと推測された.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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