抄録
症例は67歳の男性で,全身倦怠感を主訴として入院した.40歳頃よりなんら誘因なく,よく鼻出血をくり返していた.数年前に貧血を指摘され輸血を受けたこともある.入院時検査で,高度の低色素性貧血をみとめたが,出血凝固系には異常はなかった.胃内視鏡検査で胃体上部小彎から後壁,大彎にかけて多i数のTelangiectasiaをみとめ,かっ軟口蓋と鼻腔粘膜にも同様の所見をみた.子供二人にも胃にTelangiectasiaを見出し,遺伝関係も明らかとなりOsler病と診断した.腹腔鏡検査で肝左葉に限局性のVarix様所見がみられ,撰択的腹腔動脈造影を施行してみたが,肝血管の特別な異常はみられなかった.しかし,左胃動脈の末梢血管の拡張と造影剤のPoolingをみとめ,胃内動静脈瘻の存在を示唆する所見を得た.現在,主たる消化管出血の原因を胃内のTelangiectasiaと考え,YAGレーザーによる止血を試みながら,経過観察中である.