日本消化器内視鏡学会雑誌
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22 巻, 3 号
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  • ―反復投与における病理形態学的特徴について―
    可知 常昭
    1980 年 22 巻 3 号 p. 341-350_1
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     家兎を用いて,1% amylopectin sulfateを経口的に2日間投与,5日間休薬の反復投与を行うことにより大腸に病理組織学的に潰瘍性大腸炎と酷似した病変を作成し得た.これを用いて内視鏡,実体顕微鏡,走査電子顕微鏡にて粘膜表面構造を観察した.2回反復例では直腸に17%の頻度で肉眼的潰瘍形成を認めた.内視鏡的には色素撒布を行うことにより病変が明瞭となり,実体顕微鏡にて腸小区,腺口の乱れが認められ,走査電子顕微鏡では陰窩周囲の細胞境界消失と,更に微絨毛の脱落と,ポリープ状,糸状変形が認められた.4回および6回反復例では67%の頻度で肉眼的潰瘍形成があり,病理組織学的に潰瘍性大腸炎と酷似した所見が得られた.内視鏡的には明らかな潰瘍性病変があり,腸小区が消失する例や,潰瘍の形もより不整形になるのが認められた.走査電子顕微鏡では陰窩口は破壊され,微絨毛の脱落は広範となったが,これらの変化は潰瘍性大腸炎の粘膜表面構造との関係で重要性を示すものと考えられる.
  • 宮本 二郎, 高瀬 靖広, 竹島 徹, 中原 朗, 川北 勲, 福富 久之, 崎田 隆夫
    1980 年 22 巻 3 号 p. 353-364
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは組織血流量を絶対値で測定できる水素ガスクリアランス式組織血流測定法を内視鏡下で応用することで,開腹や採血などの侵襲を加えることなしに胃粘膜下血流量を測定する方法を考按した.そしてこの血流測定法の有効性及び種々の薬物による成犬の胃粘膜下血流量に与える影響を検討した.水素ガスは成犬の場合,ネンブタール麻酔下で気管内チューブを通して供給した.ガストリン投与による胃体上部の血流は,投与前43.3m1/分/100gの血流が,4γ/kg/hr持続静注では65.7ml/分/100gと増加し,16γ/kg/hr投与では逆に血流は40.2ml/分/100gと抑制された.ヒスタログ刺激では投与量増加に伴い体部,前庭部とも血流増加を示したが,特に体部で著明であつた.セクレチンは無刺激下の胃粘膜下血流量にはほとんど影響を示さなかつたが,ガストリン刺激状態での血流に対しては有意に抑制を示した.カテコールアミンとしてエピネフリンとノルエピネフリンを使用したが,前者は血流増加作用,後者は減少作用を示し,また投与方法を1回静注法にすると両者とも血流増加作用を示すなど,投与方法の影響がみられた.胃粘膜下血流側定のアプローチとして内視鏡的水素クリアランス式組織血流測定法はきわめて有効であり,人への応用も十分可能で,今後臨床的な面で検討を加えていきたいと思う.
  • 丹羽 正之, 小越 和栄
    1980 年 22 巻 3 号 p. 365-371
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的逆行性膵管胆道造影法(以下ERCP)により,主膵管および隣接臓器に異常を認めないと思われる554例について主膵管の走行,膵頭部および尾部の位置,さらに主膵管径を計測し,加齢との関係を検討した・主膵管の走行形態は,6型に分類した.I型(L字型),II型(S字型),III型(頭部急峻型),IV型(水平型),V型(斜上昇型),VI型(尾部急峻型)である.各年齢層ともに,I型が圧倒的に多く,型―年齢層との関連は認められなかった.膵頭・尾部の位置は椎体を上・中・下と細かく分けて検討した場合は,特に有意差を見い出せなかったが,椎体ごとに検討すると明らかに加齢により下垂する傾向にあった.膵管径は頭部・体部・尾部で検討したが,いずれも加齢とともに拡張を認めた.
  • 草間 次郎, 飯田 太
    1980 年 22 巻 3 号 p. 372-376
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的胆道造影(ERC)が胆道疾患の手術適応の決定に重要な指標となることは衆知の事実である.著者らは最近2年7ヵ月間に行ったERC104例を検討し,ERCの外科的意義と限界について考察を試みた. ERC成功率は74.0%であり,同期間中に行ったERPの成功率92.9%より低率であった.ERC不成功例27例について不成功の原因を検討したところ,傍乳頭部憩室内への乳頭の落ち込み,Billroth I法による胃切除のための十二指腸下行脚のねじれの存在等が明らかになった.手術施行例43例中,ERCにより胆道疾患の確診のもとに手術を行ったものは34例,ERC不成功のまま手術を行ったものは9例であった.疾患の内訳は胆石症が最も多いが,ERC不成功のまま手術を行った症例はLemmel症候群に最も多く,6例中4例であった.ERC施行前にDICを行ったものは52例であったが,これらの症例の検索により,ERC施行前のDICは胆道疾患のスクリーニングの役割を果しており有意義であることを確認した.
  • 榊 信広, 飯田 洋三, 斉藤 満, 多田 正弘, 小田原 満, 岡崎 幸紀, 河村 奨, 竹本 忠良
    1980 年 22 巻 3 号 p. 377-383
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃粘膜表面にみられる胃小区よりもさらに細かい模様像である胃粘膜微細模様を拡大内視鏡を用い観察し,新しい拡大内視鏡分類を作った.著者らはこれまで吉井の実体顕微鏡分類を一部改変した拡大内視鏡分類を用いていたが,今回は陥凹部(胃小窩)の形状により,A,AB,B,BC,C,CD,Dの7型に分けた.Aは点状,Bは破線状,Cは連続した迷路状,Dは網状の陥凹部が特徴で,AB,BC,CDはそれぞれA-B,B-C,C-Dの特徴をもつ陥凹部が混在した形である. 一般に胃底腺粘膜はA ,幽門腺粘膜はCをとることが多く,胃粘膜表面の連続観察では口側よりA→AB→B→BC→Cの移行がみられ,中間帯粘膜はBをしめすことが多い.腸上皮化生粘膜は平坦型でメチレンブルー吸収度の低いものはBCを,隆起型で吸収度が高いものは粗大なC(C2)をしめすものが多かった.
  • 高橋 篤, 関谷 千尋, 並木 正義, 伊藤 吉博, 佐藤 富士夫
    1980 年 22 巻 3 号 p. 384-389_1
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     同一胃内に3個の陥凹型早期癌の多発をみた症例を報告した.患者は44歳の男性で,主訴は心窩部痛であった.胃X線検査,胃内視鏡検査にて,胃角上部小彎,胃角部前壁,胃角部後壁大彎寄りにそれぞれ陥凹性病変を認めた.生検の結果,胃角上部小彎からは印環細胞癌,胃角部後壁大彎寄りからは腺癌が証明されたため手術を施行した.切除胃標本の検索で,生検では癌陰性であった胃角部前壁の病変も癌であることが判明した.結局,胃角上部小彎と胃角部前壁の病変はIIc(印環細胞癌),胃角部後壁大彎寄りの病変はIIc+III(管状腺癌)であった.3病変は肉眼的にも組織学的にも独立して存在しており,深達度はいずれもmで,リンパ管,脈管への癌細胞の浸潤を認めず,Moertel等の多発癌の定義を満足していた.3多発胃癌で,すべての病変が陥凹型であるものは稀であり,若干の文献的考察を加えた.
  • 伊藤 俊雄, 清利 省三, 平川 弘泰, 宗友 文男, 芳野 健, 窪田 政寛, 太田 亘, 糸島 達也, 島田 宜浩
    1980 年 22 巻 3 号 p. 390-393_1
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     臨床的に肝硬変症と診断された61歳の女性症例において,腹腔鏡検査時に見落した肝表面の黄白色小結節を,撮影フィルムの検討で発見し,写真所見から悪性病変の否定が困難であったため,再度腹腔鏡検査を行いRobbers鉗子による肝表面生検を実施して,悪性病変を否定しえた.黄白色小結節の生検組織像はliver cell dysplasiaであつた.
  • 児玉 隆浩, 多田 正弘, 香津 美知子, 渡辺 精四郎, 松田 彰史, 福本 陽平, 沖田 極, 竹本 忠良, 原田 善雄
    1980 年 22 巻 3 号 p. 394-399_1
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腹腔鏡検査により2×3cmの細小肝癌を確診し,切除した1症例について報告した.患者は58歳,男で血申のαフェトプロテイン濃度3.200ng/mlを指摘され,腹腔鏡検査の結果,右葉の横隔膜下に黄色調の癌結節が認められ,非癌部は初期結節肝であった.肝シンチグラム,CTスキャン,選択的腹腔動脈造影などの総合診断より,外科的右葉切除が行なわれた.2×3cmの被包型細小肝癌で,組織型は索状型および偽腺管型より成り,また一部に胆汁産生を認めEdmondson II型に相当した.非癌部は乙型肝硬変であり,一部にliver cell dysplasiaの所見も認められた.腹腔鏡検査により細小肝癌が発見される頻度は少ないが,腫瘍が表在性の場合には,その診断は確実であり,肝癌治療の究極が早期診断,早期切除にある現況では,本検査は早期肝癌診断に重要な手技といわなければならない。
  • ―レーザーコアグレーターによる止血対策を含めて―
    原田 一道, 水島 和雄, 小野 稔, 柴田 好, 岡村 毅与志, 並木 正義, 葛西 真一, 水戸 廸郎
    1980 年 22 巻 3 号 p. 400-407
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性で,全身倦怠感を主訴として入院した.40歳頃よりなんら誘因なく,よく鼻出血をくり返していた.数年前に貧血を指摘され輸血を受けたこともある.入院時検査で,高度の低色素性貧血をみとめたが,出血凝固系には異常はなかった.胃内視鏡検査で胃体上部小彎から後壁,大彎にかけて多i数のTelangiectasiaをみとめ,かっ軟口蓋と鼻腔粘膜にも同様の所見をみた.子供二人にも胃にTelangiectasiaを見出し,遺伝関係も明らかとなりOsler病と診断した.腹腔鏡検査で肝左葉に限局性のVarix様所見がみられ,撰択的腹腔動脈造影を施行してみたが,肝血管の特別な異常はみられなかった.しかし,左胃動脈の末梢血管の拡張と造影剤のPoolingをみとめ,胃内動静脈瘻の存在を示唆する所見を得た.現在,主たる消化管出血の原因を胃内のTelangiectasiaと考え,YAGレーザーによる止血を試みながら,経過観察中である.
  • 木村 健, 酒井 秀朗, 関 秀一, 井戸 健一, 山中 桓夫, 吉田 行雄, 古杉 譲, 野上 和加博, 堀口 正彦, 田中 昌宏
    1980 年 22 巻 3 号 p. 408-416_1
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回,町田より細径ファイバースコープの二器種が完成され,1年間の臨床使用において満足すべき有効性が証明されたので報告する. 細径scopeへの期待は既に10数年前にも溯るが,当時の技術では不可能であり,その後の内視鏡器械技術の進歩の蓄積によりようやく実現したものである.即ち,待ち望まれていた器種とは直視にて,上部消化管の食道・胃及び十二指腸球部を1本ですべて観察し得うるuniversalのものであった.最大の難点は,直視が不利とされている胃の観察を如何に克服するかであった.今回の細径スコープは,直視とし,胃内観察の不利をその優れた屈曲性で充分に補えるように設計したものであり,高度の器械技術の蓄積の賜といえよう. そもそも,内視鏡器械の原理的要素には,(1)解像力,(2)観察性,(3)機能性(屈曲性,操作性,生検能),(4)記録性・及び(5)耐久性等の問題があるが,これらはいずれも互いに相反する性格のものである.今回の細径スコープは,これらの要素のいずれも最大限に生かし,すべてを見事に調和させたものである. FGI-SDは直径9.8mmφで,直視とし,FGI-SOは前方斜視(30度)であり,直径8.8mmφで,いずれも視野角80度の広角にて,固定焦点である.もちろん生検装置が完備されており,上部消化管の生検をも含めたルーチン検査に広く用いられ,満足な評価が得られた. 事実,FGI出現の前後における,上部消化管検査での器種の使用頻度を比較してみると,FESは12.9%→5.2%,FGS-BLは32.0%→31.9%,FDSは17.9%→9.3%,PFSは32.0%→6.2%となり,FGIは実に47.4%とおよそ半分に使用されており,FGS-BL以外のFES,FDS,及びPFSはこの細径scopeにその場を奪われたと考えられるのが現状である. 唯,細径であるため解像力の低下は否めない事実であるが,すべての内視鏡検査における肉眼観察の根本的姿勢である徴細病変の近接拡大観察,及び隅々まで余すところ無く観察すると言う基本的原則を常に念頭に置くならば,本器種は期待通り理想に近いuniversal scopeであり,食道・胃・十二指腸のルーチン観察に素晴しい威力を発揮するものと確信できる.
  • 多賀須 幸男
    1980 年 22 巻 3 号 p. 419-430
    発行日: 1980/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    In recent years gastrointestinal endoscopy has made great progress in Japen. For further advancement establishment of educational system in endoscopic examinations seems essential. The postgraduate education of physicians in endoscopy can be divided into two courses, namely long-term and short-term. The long-term course is designed for training of endoscopy specialists over a period of three to five years, and the short-term course for basic endoscopic training over a period of two to three months. The long-term training is composed of two or three stages. The first stage is the period for understanding the fundamentals of endoscopy as well as the patient's condition. For effective training in this initial stage, lectures, bed-side teaching and conferences for case studies should be provided with the use of various teaching aids, such as color television, videotapes and cine films. The second and third stages are designed for training of gastroscopic biopsy and upper gastrointestinal panendoscopy. The latter part of this phase is devoted for training in endoscopic retrograde cholangiopancreatography, colonoscopy, emergency endosc opy and endoscopy of the small intestine. The object of the short-term education is endoscopic training of trainees, general practitioners or foreign physicians. The training course for peritoneoscopy is to be outlined separately. Further deliberations are required among the members of this society in regard to the selection of teaching centers and teaching staff.
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