今回,町田より細径ファイバースコープの二器種が完成され,1年間の臨床使用において満足すべき有効性が証明されたので報告する. 細径scopeへの期待は既に10数年前にも溯るが,当時の技術では不可能であり,その後の内視鏡器械技術の進歩の蓄積によりようやく実現したものである.即ち,待ち望まれていた器種とは直視にて,上部消化管の食道・胃及び十二指腸球部を1本ですべて観察し得うるuniversalのものであった.最大の難点は,直視が不利とされている胃の観察を如何に克服するかであった.今回の細径スコープは,直視とし,胃内観察の不利をその優れた屈曲性で充分に補えるように設計したものであり,高度の器械技術の蓄積の賜といえよう. そもそも,内視鏡器械の原理的要素には,(1)解像力,(2)観察性,(3)機能性(屈曲性,操作性,生検能),(4)記録性・及び(5)耐久性等の問題があるが,これらはいずれも互いに相反する性格のものである.今回の細径スコープは,これらの要素のいずれも最大限に生かし,すべてを見事に調和させたものである. FGI-SDは直径9.8mmφで,直視とし,FGI-SOは前方斜視(30度)であり,直径8.8mmφで,いずれも視野角80度の広角にて,固定焦点である.もちろん生検装置が完備されており,上部消化管の生検をも含めたルーチン検査に広く用いられ,満足な評価が得られた. 事実,FGI出現の前後における,上部消化管検査での器種の使用頻度を比較してみると,FESは12.9%→5.2%,FGS-BLは32.0%→31.9%,FDSは17.9%→9.3%,PFSは32.0%→6.2%となり,FGIは実に47.4%とおよそ半分に使用されており,FGS-BL以外のFES,FDS,及びPFSはこの細径scopeにその場を奪われたと考えられるのが現状である. 唯,細径であるため解像力の低下は否めない事実であるが,すべての内視鏡検査における肉眼観察の根本的姿勢である徴細病変の近接拡大観察,及び隅々まで余すところ無く観察すると言う基本的原則を常に念頭に置くならば,本器種は期待通り理想に近いuniversal scopeであり,食道・胃・十二指腸のルーチン観察に素晴しい威力を発揮するものと確信できる.
抄録全体を表示