日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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ポリープ状早期食道癌の1例
―食道ルゴール法の基礎的検討を加えて―
宮崎 誠司河原 清博渡辺 精四郎永富 裕二平田 牧三飯田 洋三岡崎 幸紀河村 奨竹本 忠良荻野 和彦
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1980 年 22 巻 8 号 p. 1072-1077_1

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抄録
 われわれは,びらん型病巣をともなったポリープ状早期食道癌症例を経験し,さらに臨床的に有用とされている食道ルゴール法の基礎的検討をおこなったので報告する.患者は63歳の女性で,嚥下時の胸骨後部のつかえ感を主訴として来院した.上部消化管検査で胸部中部食道後壁にポリープ状腫瘤が指摘され,食道内視鏡検査では白色調,凹凸不整を示すポリープ状隆起を認めた.3%ルゴール液を撤布することによってあらわれた不染部(癌部),染色部(健常食道上皮)の生検切片を用い,組織化学的,電顕的,さらにアンスロン法により組織内グリコーゲン量を測定し,ルゴール染色性と組織内グリコーゲン量に関して若干の検討をおこなった.組織化学的に,PAS染色では非癌部である表層健常食道上皮の細胞質内に多量のPAS陽性物質が見られたのに反し,癌部の細胞質内では不明瞭であった.電顕的に癌部では細胞質内のグリコーゲン顆粒は確認できなかったが,非癌部では明らかにグリコーゲン顆粒が認められた.アンスロン法による癌部の組織内グリコーゲン量は組織1009中0.16g,非癌部のそれは1.71gであり,癌部が非癌部の約10分の1で明らかな低値を示した.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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